面会交流を請求する手続は?~子の監護に関する処分として家事調停を申し立てる~
面会交流を請求する手続は?~子の監護に関する処分として家事調停を申し立てる~
面会交流とは,親権者または監護者として,自ら子を監護していない親が,その子と直接面会すること,又は間接的な方法により交流することをいいます。
別居親との交流として楽しかったと好評なのは、
- 旅行 73.2%
- 遊園地,テーマパーク,観光地 77.2%
- 飲食・外食 64.4%
- 家での普段通りの生活 57.4%
- 家での勉強 43.4%
- 面会・会話 58.5%
- 通話 52.5%
- 手紙,メールのやりとり 51.6%
- 写真のやりとり 63.6%
- SNSのやりとり 58.4%
などが挙げられます。
葛藤が低いと思われる父母の間での面会交流は,旅行,遊園地,外食といったものもありました。
他方,間接交流といわれるものでも,通話,手紙・メールのやりとり,写真のやりとり,SNSのやりとりでも,「退屈だった」「嫌だった」との評価は低いといわれています。このほか,間接的な方法としては,ビデオレターの送付,プレゼントの送付,子の通知表の送付を行うなど様々な方法があります。
今回は面会交流にともなう諸問題を取り上げます。
面会交流方法で悩まれた場合には、ぜひ参考にしてみてください。
1.面会交流の取り決め・内容・継続等
面会交流は,まず当事者間で協議をすることとなり,その協議がまとまらない場合は家庭裁判所で調停や審判をすることができます。
1-1.協議離婚をする際,面会交流の取り決めをする
面会交流については,離婚時に取り決めをきちんとしておくことがおすすめです。
離婚後に面会交流の取り決めをすると,監護親側の生活スタイルの変化を求めることになり,嫌がられるということもあるからです。
面会交流についてどれくらいの方が取り決めをしているのでしょうか。
- 取り決めを行った 20%
- こどもも含めて取り決めをした 7.3%
- 取り決めをしていない 37.7%
―ということもあり,概ね3割程度の方しか,面会交流の取り決めをしていないことが分かります。
1-2.面会交流の頻度
面会交流の頻度は,調停や審判を除くとどれくらいなのでしょうか。
5歳時点の場合はどれくらいの頻度なのでしょうか。司法統計では,月1回が4割を占めていますが,協議離婚も含めると多様な実際があるようです。
- 1か月に1回程度 15.5%
- 2か月に1回程度 13.2%
- 半年に1回程度 24.8%
- 1年に1回未満 12.4%
―このように5歳程度の場合,半年に1回程度という例もあることが分かりました。
10歳時点の場合はどれくらいの頻度なのでしょうか。
- 1カ月に1回程度 20.9%
- 2カ月に1回程度 14.3%
- 半年に1回程度 22.9%
- 1年に1回未満 14.9%
1-3.宿泊や1回の時間(協議離婚も含める。)
宿泊や1回の時間については,5歳時点では次のようになっています。司法統計ではほとんどない宿泊を伴う交流が比較的多いことが分かります。低葛藤父母の間では,宿泊付も多く行われているようです。(ただし,審判ではほとんど認められません。)
- 宿泊を伴う交流 32.6%
- 日中 24.0%
- 2時間~3時間 21.7%
- 1時間程度 6.2%
10歳時点では,どうでしょうか。
- 宿泊を伴う交流 34.1%
- 日中 25.8%
- 2~3時間程度 22.6%
- 1時間程度 6.6%
なお,15歳を超えると,2~3時間程度や1時間程度が増えてきます。
2.当事者間で面会交流の定めがない場合
離婚後の父母,別居後の父母で,面会交流についての協議が整わない場合は,調停や審判を申し立てることになります。
基本的には,まずは話合いの調停手続から始まることが多いといえます。そして,調停でまとまらない場合,審判に移行することが考えられます。
中間的な争いがある場合の多くには,家庭裁判所調査官が関与し,面会交流が可能な事例であるのか,どのような方法による面会交流が相当であるかを検討するため,子の監護状態の調査を行い,場合によっては調停や審判の係属中に,面会交流を試みる,いわゆる試行的面会交流が行われています。
一般的には,非監護親が監護親に対して面会交流を求めることが多いですが,反対に監護親が非監護親に対し面会交流の禁止又は制限を求める事案もあります。
面会交流が問題になりやすい事例としては,以下のようなケースが考えられます。
- 非監護親との面会が全く途絶えているケース
- 監護親が再婚し,再婚相手と養子縁組をしているケース
- 親権紛争があったことから,面会交流の頻度などが争いになっているケース
3.家事調停の実務の実情
2020年6月に,「東京家庭裁判所における面会交流調停事件の運営方針の確認及び新たな運営モデルについて」が公表されました。
このモデルは,面会交流調停事件の運営については,同居親及び別居親のいずれの立場に偏ることなく,ひたすら子の利益を最優先に考慮する立場で臨むというようにされています。
もっとも,そのようなガイドラインが発表されたとしても,多くの調停では,面会交流は原則として人格的利益に資するものとして,特段の事情がある場合を除き,面会交流を認めるべきとの考え方で運用されている例が多いのではないかと思われます。
それでは,面会交流を禁止・制限すべき具体的事例としてはどのようなものがあるのでしょうか。
- 非監護親による子の連れ去りのおそれが高い場合
- 非監護親による子の虐待のおそれがある場合―たとえば過去に子に対して暴力を振るうなど虐待を加えていた事実があり,子が現に非監護親に対して恐怖心を抱いている場合や,面会交流の際に非監護親が子を虐待するおそれがある賠には,面会交流を禁止・制限すべき事由があるということができます。実務上は,過去に非監護親が暴力を振るったか否かが激しく争われるケースが多いといえます。
- 非監護親の監護親に対する暴力
監護親が非監護親によるDVを主張して面会を拒否することが多いといえます。
主に非監護親が監護親に対して,子の面前で身体に対する暴力及びその心身に有害な影響を与える言動を加えることは,児童虐待に当たり得るのです。監護親が非監護親によるDVによるPTSDを発症している場合には,面会交流を禁止・制限すべき場合があります。
- 子の拒絶
面会交流については,子の意思を適切に把握する必要があります。子が拒絶している場合は,面会交流を強行しても,こどもの負担になるだけです。子の拒絶は,その年齢や発達の程度,拒絶の理由,事情を調査して,それが真意からの拒絶と評価される場合には面会交流を禁止・制限すべき事由となります。
子の意思を把握する際には,両親の離婚紛争の経緯,両親と子との関係,子の年齢,発達段階,心身の状況など子の言動の背景事情を考慮したうえで慎重に判断する必要があります。
「東京家庭裁判所における面会交流調停事件の運営方針の確認及び新たな運営モデルについて」では6つの要素が重視されています。これまでの実務と異なり,「親同士の関係」も重要な要素とされている点が注目されます。
- 「安全」
1)児童虐待のおそれ,2)子の連れ去りの恐れ,3)父母間のDVなどに関する要素であり,この3つは,面会交流の判断に当たって,最重要といわれています。
- 「子の状況」
子の状況とは,家庭,学校での適応を含めた子の生活状況,子の年齢や発達状況,心身の状況,意向・心情などです。以前は,子の意向や心情が,「子の拒絶」として,要件になっていましたが,現在では,例えば,こどもが学校がいそがしいといった適応の問題,発達障害が見られ情緒的に不安定な傾向がある場合,こどもが非監護親に会いたがっているか,非監護親のイメージなどが「子の状況」として考慮されています。基本的に,「子の状況」を無視して面会交流を認めることはできないので,「安全」に次ぐ,重要度があるといえます。
- 「親の状況」
「親の状況」というと抽象的ですが,監護親の側に,「合理的な理由なしに面会交流を制限する同居親の言動の有無」,別居親の面会交流時の不適切な対応,例えば,面会交流の受渡しなどで,同居親に与える影響などが考慮されます。
- 「親子関係」
主には,これまでの別居親とこどもとの情緒的交流の状況が考慮されます。
- 「親同士の関係」
従前は,父母間の葛藤は面会交流の制限事由にはなりにくかったものですが,実務上は「親同士の関係」が,背景事情となって面会が実現しないということもあります。
別居に至る経緯における同居親の傷付き,別居親に対する不満や不信,怒りの気持ち,子を連れ去られ,交流を断ち切られたという思いの別居親の悲しみや怒り,焦りの気持ち,葛藤状態の程度などが考えられます。
- 「環境」
兄弟関係,同居親の再婚などが考えられます。
審判でも,基本的にこれらの要素が具体的に検討されているといえるでしょう。
名古屋駅ヒラソル法律事務所では、離婚や面会交流の問題に積極的に取り組んでいます。名古屋や東海地方で離婚問題にお悩みの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。