こどもの面会交流についてシュシュとの対談
1 面会交流とは
シュシュ:面会交流の定義をいまさらながら確認すると、婚姻中の父母が別居している場合、あるいは父母が離婚している場合に、非監護親が子と直接会うなどの交流をすることですね。
弁護士:うん。今までは面会交流については、明文の規定はなかったのだけど、かなり古い時代から裁判例で認められていたね。ただ、民法766条1項に規定が置かれても運用は変わっていませんね。
2 面会交流の意義
シュシュ:面会交流の意義は「喪失感」の緩和だよね。宇多田ヒカルのNHKの番組をみたけど、芸術家って、多かれ少なかれ「喪失感」で成り立っているじゃないですか、ってさらりといっている彼女が印象的でした。僕からしたら多くのものは望んでいないよ。大概の問題はとるに足らないじゃないですか。だからパパと代わり映えせず逢えればいいんだよね。ただね、心のやすらぎみたいな面もあると思って、中学生だから受験があって勉強しないといけないから面会はNGというのは違うと思うな。僕は戦争を知らせる放送も、アクティヴィストの足音も聴こえないところで、心穏やかに面会したいよね、遊びたいよね。
弁護士:そうなんだよね。あまり、堅苦しい説明はいらないよね、喪失された親からも愛情を感じられることが親の離婚や別居による子の悲しみや喪失感を軽減させるということだろうな。そういう意味で、原則実施説になっていますね。
シュシュ:最近は、欧米ではペアレンティングという考え方が主流になっていて、非監護親も育児に参加するという意識になっているのが良いと思います。他方、非監護親が子を虐待していた場合など、面会交流を行うことがかえって子の福祉に反する場合には、慎重に考える必要があります。
3 面会交流を禁止・制限すべき事情
面会交流を禁止・制限すべき事情として、当事者からの主張は、
①子が連れ去られる恐れがある場合
②虐待の恐れがある場合
③DV事件の場合
④子自身が面会交流を拒絶している場合
⑤父母の再婚
―があります。
シュシュ:まあ、アメリカでは、ミッシングキッズのほとんどが、親権争いに敗れた非監護親による犯罪といわれています。だからこそフランスのように共同親権にすればよいのにね。共同親権者だったら連れ去るメリットなんてないよ。
弁護士:最近は「連れ去りの危険」が主張されるケースは少ないですね。漠然としすぎているんですよ。背景には、父母間の高葛藤が多いので、第三者機関や面会場所の限定といった連れ去りの恐れを払拭することが可能です。
シュシュ:児童虐待の場合はこどもは会いたくないでしょうが、裁判所は厳しいと聴きます。
弁護士:性的虐待とか、分かりやすいものでない限り、心理的虐待とかではつらいでしょうね。ただ、こういう場合はこどもの親に対するイメージが悪いことが多いので子の拒絶につながることが多いかなと思っています。なお、虐待の有無や程度、それにより子が受けた影響については、当事者間で争いが生じることが多く、家裁調査官による調査が望ましいとする判事の論文がありますね。
シュシュ:DVの場合はどうかな?
弁護士:非監護親の監護親に対する暴力等の態様・程度を含め、子が受けた影響についても当事者間で主張が対立することが多いといえます。したがって、この場合にも、双方から提出される資料や家裁調査官による調査などで事情を把握することが考えられます。
シュシュ:次は、子の拒絶だね。
弁護士:こどもの拒絶がある場合は、子の年齢、発達の程度、非監護親との従前の関係も踏まえ、子の拒絶が真意に基づくといえるか、面会交流を禁止・制限すべきかが問題となります。
この点、両親の別居や離婚という紛争の渦中にある子は非監護親に会いたい気持ちを持っていても、監護親の拒否感を察知し本心をいえないこともあるので、子の表面的な言動にとらわれるべきではありません。
シュシュ:そうだね。宇多田ヒカルさんの例で、「ヒカル、明日からニューヨークから東京に帰るわよ」といわれて予想がつかない生活だった、だから読書の世界に没頭したというのは印象的でした。僕も生活の拠点はブリュッセルにあるわけで、生活が激変したり大切なものを失うと人格形成に与える影響は多いのだろうな、と感じます。
弁護士:子が面会交流の実施に消極的な態度を示していても、子の真意に配慮し、面会交流の時間や方法を工夫することで、子の心身の負担を軽減できる場合もあります。
4 親の再婚
親の再婚について東京家裁の運用が明らかにされることはめずらしいことです。結論からいうと、再婚したことのみをもって直ちに面会交流を制限できるわけではありません。
しかし、一般の父母の再婚は、子に少なからず動揺を与える場合があり、特に監護親が再婚した場合は、ステップファミリーにおける子の心身の安定や配慮が必要になる場合はあります。
監護親、非監護親の再婚が子に具体的にどのような影響を与えるのか、子の意向や生活状況にも配慮することが必要です。
調停で合意をする場合、当事者間に一定の信頼関係がある場合、互いに協力して面会交流を実施できる場合は面会交流の具体的な内容の決定も、当事者間の協議に委ねる内容の合意にすることが多いです。
これに対して、当事者間の感情的対立が大きい場合は、面会交流の具体的場所を当事者の協議に委ねていたのでは、面会交流のに日時、場所、方法について調停条項で具体的に定めることになります。