海外赴任・駐在での離婚と日本での離婚手続
海外で離婚したくなったとき
シュシュとの会話:海外離婚編
シュシュ:海外でパパとママが離婚したいときはどうなるの?
弁護士:シュシュの場合、父母が日本人だから現地法(この場合はフランス法)ではなく、日本の民法が適用されるよ。
シュシュ:え、僕、フランスで生まれて、フランスに住んでいるけど、日本の民法で裁判するの?
弁護士:うーん、フランスは血統主義と生地主義が併用されているのでそこら辺はビミョウだからネットに書けないよ。
シュシュ:ビミョウって?
弁護士:フランスでは、フランス人と婚姻していれば生まれてきたこどもはフランス国籍を取得するし、フランスで生まれたこどもに関しては5年以上フランスに住んでいれば、フランス国籍取得の意思表示をすればフランス国籍を取得するよ。ただし日本法によりその場合はシュシュはフランス国籍を失います。
シュシュ:なんか難しいね。だから一般的には日本法なんだ?
弁護士:そうだね。ただ、裁判はフランスですることになります。
シュシュ:え、フランスで?!
弁護士:うん、フランスの裁判所に日本法に基づいて裁判やってくれ、みたいな感覚かな。フランスでは、協議離婚でも弁護士関与が法的に義務付けられています。
シュシュ:だから離婚をしたい場合はお互い弁護士を就けた方がよさそうだね。
弁護士:そうだね、弁護士が法的論点を整理して協議が整えば、日本民法で離婚するというのが感覚にあっているだろうね。国際的にみて離婚に弁護士が関与しない協議離婚制度があるのは日本くらいです。普通は後見的立場から何らかの裁判的関与があるのが普通です。
シュシュ:なるほどね。そうなると、まずはどうしたらいいのかな。
弁護士:まあ主流は海外でも日本人弁護士がお仕事しているケースがあるんだ。その人に面談して離婚するのがいいだろうね。ただ、パリでは日本人医師同様、日本人弁護士にアクセスできる人は限られるので、日本国内にいる弁護士に相談してみるのもいいだろうね。
シュシュ:その場合はどうなるのかな。
弁護士:まずは離婚協議をするという合意をしたうえで、場をもうけて子連れ別居やこどもをつれた帰国などはしないことを確認することですね。
シュシュ:ハーグ条約があって、原則帰国になっちゃうもんね。
弁護士:こどもにとってはいきなり日本じゃ環境激変だからね。
シュシュ:こどもに配慮してくれるのはありがたいぞよ。
弁護士:そのうえで、現地の実情に合った解決も必要だね。フランスではDVなどの事情がない限り、共同親権が普通なので、母が親権を持つ場合でも父にフランスにおける面会交流を保障するなどの手当てが必要となるね。
シュシュ:ママと一緒にたとえば僕が日本にいったら、なかなかパパと会えないもんね。
弁護士:そうそう。そういうニーズも考慮にいれて離婚条件を決めていきます。一方の利益代表としての弁護士であっても最後は私は夫側です、妻側です、と決まっているだけで、話しをできる法的整理に向いているので、場合によっては選任が双方にとってウィンウィンになるかもしれないね。
シュシュ:そういうときは、おじさんのヒラソルにメールすればいいの?
弁護士:そうだね。まずは相談票を添付して送付してくださると良いですね。
シュシュ:ところで海外の日本人夫婦はなんで離婚しちゃうの?
弁護士:いろいろな要因があるけど、互いの世界が違いすぎちゃうことを海外生活は促進するような気がするね。
シュシュ:うん、確かに僕はオリジンは日本なので家庭に戻れば日本語、ガッコいけばフランス語だし。家庭は特別っていうか、アレックスのおうちに泊まっていると、ああ日本語使わないな、って思うし。ママもつまらないことで頭がいっぱいなんだよね、スーパーで店員さんが笑ってくれないだけで嫌われているのかなーとか。
弁護士:世界が狭くなりがちになってしまうこともあるしね。
シュシュ:僕は空気読んで、「機嫌が悪かったんだよ」とかいっているけど、毎回、不愛想だから「別に好かれなくてもいいじゃん」って思うけどね。
弁護士:シュシュは「パリ症候群」ってどう思う?
シュシュ:僕はシャンゼリゼなんて滅多にいかないし、おじさんが来ても行くのラーメン屋とか、さぬき屋に行こうとするじゃん。
弁護士:お腹に優しいからなあ。まあ、でもねえ、電車とかも。
シュシュ:新幹線。日本は綺麗だよね。TGVはまあ汚いとまではいえないけどね(笑)。生粋のパリジャンと日本のバラが渦巻くパリに対するイメージはだいぶ違うと思うよ。適応障害になるのも分かる気がする。
夫が海外赴任をした経歴があって離婚するとき
夫が海外赴任をしているという夫婦の離婚をたくさん見てきました。具体的な企業名を挙げても、名古屋市内には世界的に活動する自動車会社やその関連会社があります。東京の弁護士事務所では、ワシントン、ニューヨーク、ロンドン、パリ、北京といったところが代表的な赴任先ではないかと思いますが、名古屋の場合はデトロイト、シカゴ、アムステルダム、バンコク、タイ、アメリカ中部、中国の地方都市という赴任例もあります。また、NHKの勤務の方のように全国を転々とされる方もいます。
駐在員といえば、エリート社員で将来有望、お給料もよく、楽しく裕福な海外生活を楽しんでいる幸せ夫婦、というイメージをお持ちではないでしょうか?私の姉は公務員をしているので赴任に休職して同行することができ、「一度、海外に住んでみたい!」という願望を見せておりましたが、あえなく義兄の「ニッポンが一番いいよ、幸せ」の一言の前に願望は崩れ去ってしまいました。
パリ症候群
さて、みなさんはパリ症候群というのを知っていますか。フランスに赴任、移住した人、思い浮かべると雨宮塔子さんや中山美穂さんなどが思い当たります。しかし共通しているのは、雨宮さんも中山さんも離婚なされているということですね。パリ症候群というのは、憧れと現実との乖離が大きくうつ病になってしまうことです。憧れだけでは生活できないのですね。私は、毎年、パリを訪れていますが、フランスはまず綺麗じゃありません。というより尿のにおいで街中包まれているかもという気がします。また、壁も薄いので夜10時以降はお風呂やトイレは禁止といったローカル・ルールもあって生活するのは不便です。また家を借りるのもとても大変ですし、長期賃貸借と短期賃貸借では賃借人の法的保護が異なります。そんな疲れとこどもが中学に進学するのを機に単身赴任生活を始めるということが多いのではないかと思います。
例えば、フランスでは、大学に進学するにはバカロレアを受ける必要があります。社会民主国家のフランスでは高卒、学士、修士、博士ではお給料も違ってきます。また、ほぼ中学で将来の進路を決めなければならないという事情もあります。日本人の感覚だと、中学生で一生の仕事を選ばなければならないと聴くと、びっくりですよね。結果、カルチャーが合わず、日本人学校を経て日本の学校に復帰というパターンは多いです。
海外志向の低下とストレスフルな海外生活
東京では、以前に比べ、海外志向の若者が減っているようです。名古屋では年齢が若い社員も壮年期の社員も、ラインの仕事であっても海外赴任がありますが、英語やタイ語が離せないとためらいもあるようです。
私の義兄によると、九州の田舎から東京に出てきたので、それだけで十分なカルチャーショック。日本は日本語が通じるし、東京は何でも揃うし、学校もたくさんあるからこどもの教育にもいいので、海外には行きたくないのだそうです。エンジニアをしているので海外で気楽に勤務してもよさそうですけどねえ。
また、多くの場合、妻が夫の赴任について行くかでトラブルが起きます。
一般的には、こどもが小さいときは妻も同行し、こどもが高校生くらいになると単身赴任してもらうというのがステレオタイプなイメージです。
しかし、妻だからといって簡単に赴任することを決断できるわけではありません。
まず、問題になるのは、キャリアパスです。当事務所のクライアントでアメリカ赴任が決まり、妻が帯同のため大手企業を退職したという事例がありました。
このように大手企業はいったん退職すると復職はできません。この時点で形成しているキャリアが停止してしまったり、その後日本ではパートタイム仕事しかできなくなったりして、能力を伸ばしていけないという点が雇用の流動性に乏しい日本では問題となっています。また、夫としても、妻が夫より「格上」の会社に務めている場合、「男のプライド」で辞めて欲しいと心の底で思っているケースもあります。
専業主婦の場合、異国での生活や新しい環境に身を置くことに不安を感じたり、せっかく作り上げた友人関係を中断して渡航することを不満に思ったりします。
つまり日常的に英語を使ったりビジネスの英語を使ったりするには苦労しない旦那さんに比べて、専業主婦の場合は日常で英語やタイ語などに接する機会はほとんどありません。日常で名古屋に住んでいてフランス語が必要になることもまずないでしょう。
そして、夫は会社で語学研修や赴任前オリエンテーションなどを受けることが多いですが、妻たちは少ないといえます。多くはイスラム圏などに赴任するなどの特殊ケースを中心としているイメージがあります。しかし、実際はフランスのような先進国でも、住んでみたら「パリ症候群」という一種の適応障害になってしまったということがあるのです。こどもがいる場合は、教師とも渡り合わないといけません。そういう筆者も甥っ子の学校のオリエンテーションに代理で出席をしたことありますがフランス語で何をいっているのか、さっぱり分かりませんでした。面談ではフランス語(国語)の点が悪いと文句をいわれているのは分かりますが、細かいところまでは分かりません。
面倒くさいし、英語くらい先生、話してよ!ととてもストレスを感じました。
海外での仕事の適応の大変さ
海外での仕事は適応できる人とそうでない人の落差が顕著です。名古屋の日本法人の場合は、海外赴任をして仕事で不自由したという話しは聴かず、むしろ出張でよくいっていたので問題ないとか、仕事でも日本ルールなので問題ないとか、の感想が多いような気がします。他方、プライベートでは、文化の違いや仕事上の文化の違いでストレスを募らせやすいものです。
外資系の会社でもない限り、名古屋を中心とした会社の海外赴任は、大きな差異はないような気がしますが、当然交渉相手は外国人となります。また現地採用の部下が何人かいるのが普通です。
有働アナウンサーも
有働アナウンサーのニューヨーク赴任時代を記した「うどうろく」でも、「ハリソン川の奇跡」に遭遇し東京の本局に連絡をとっていたがアシスタントは何もしてくれないので怒ったところ、「あなたから何の指示を受けていない」と言われてしまったとあります。フランスでも、甥っ子の口癖は「それは僕の仕事じゃない」です。バレー部の部長をしていたとき、いろいろ悩んでいましたが、退任した後はバレー部の調整は、「それは僕の仕事じゃない」と言い出しました。まあ、それはそうかもしれないけど・・・。確かに職制上そうかもしれないけど組織人として動かないといけない場合もあるッ!といいましたが、一例を挙げるとフランスなどは超個人主義ですし、他人のことなどどうでもいいうえ、生産性の問題もありみんな家族との生活を犠牲にしてまで働くつもりはない、というポリシーの人が多いように感じます。しかしながら、日本人は海外赴任をすると、早く適合するため一生懸命、仕事をして接待をして、海外の自宅にいる家族を放置してしまうこともあります。
妻の場合
奥さんの場合は、海外赴任もママ友コミュニティに入る方が多いです。一昔前の社宅文化に似ていますが閉鎖性の強さゆえ気の使い方は半端じゃありません。特に今まで仕事をしていた人はストレスで疲弊してしまうこともあります。
また、口コミが大事であるので情報収集も欠かせません。また、海外では家事に対する規制もあり、フランスではこどもの両親による登下校や夜間自宅にひとりでいることについて禁止されています。そのため乳母や日常的に保育園以外にこどもを預ける家庭を開拓しておく必要があります。
妻の方としては、うまく友達ができなかったり、言葉の壁があったりして生活に支障がでるケースもあります。一例を挙げると、フランス人の「怖い」などです。フランス人の話すフランス語の特性上、「ち」と言われたように感じることが多いです。舌打ちされるとイラつきますよね。また買い物をするとき顔なじみになっても超不愛想だったりします。スマイルはゼロ円ではないのです。びっくりするのは、買い物でレジ打ちも買い物客が手伝います。最初は、「かごからかごに移すのはあんたの『仕事』でしょ」とレジ係からいわれたときはとてもイラつきました。
気候や治安の問題があって自由に外出できなかったり、落とし物をしたらまず見つからない、外出したいけど規制で子どもを一人にできないなど、ストレスにつながります。
日本では5分でできていた戸籍の取得も、フランスではなぜか3か月かかったりします。アマゾンの宅配も基本後れてきますし悲惨な場合は壊れてしまっているケースがあります。アイパッドが壊れて届いたときのダメージは結構大きいですよね。
日本語の通じる病院は超人気で混雑していますし、修理を頼んだら遅れてくるなどありますが、実は大事なのは口コミ情報でキャッチすることが欠かせません。そういう情報がないうちは苦労にたえません。
買い物に行っても、ちょっとした言葉のやりとりができないとか、気晴らしにテレビでも見ようと思っても全部英語のNHKと韓国のKBSしか映らない、などストレスはたまるばかりです。もっとも最近は動画配信サイトやユーチューブなどのおかげでこの辺のストレスはほとんど感じないし情報時差もほとんどありません。まあ、主義主張を問わないのであれば最新の産経新聞なら簡単にスマホで紙面を読むこともできます。昔のニューヨークのように、朝日を買うためにヒルトンまで行くという必要もなくなりました。
とはいえ、子育てをしているとき、小さいお子さんがいる場合、家でずっと子どもと向き合っていなければいけない孤独さは日本の場合の数倍という感じです。
現地での子育ての大変さ
現地語が分からないといじめられるケースも多いのでこどももこどもで大変ではあります。甥っ子も「シュシュ」と呼ばれていました。私のお気に入りという意味ですが、うーん、まあ悪気はないような気もしているけれども対等には見られていない気もしていましたが、本人が気に入っているのでいいか、と思いました。
また、インドなどの場合やワシントンの勤務など、現地進出企業のお世話や情報収集をして本社に届ける役回りの場合は、夫もそんなにいそがしくはありません。フレキシブルに働けて海外生活をエンジョイするケースもあれば、駐在員は独りでそれ以外は全部現地採用という「ブラック赴任」もあります。このように、離婚や家庭の問題は、実は労働法制に大きく依存していることも分かってきますね。
基本的に海外赴任の場合、30代くらいが多いかなと思います。つまり現地採用では年上の部下がいたり口達者な部下がいたりして、他方でマネージメントのスキルがそれほどでもないのでストレスの連続ということはあります。
よく言えば、支社長という「立場が人を変える」ということですね。
また、現地社員と日本本社との板挟みになってしまうこともあります。いろいろな海外赴任者向けのカウンセラーや弁護士サービスもありますが、男性は相談しないで抱え込んでしまうケースが多いようです。
男性の場合
男性側の赴任は若いマネージャーの共通の悩みが多いので、「なあんだ」と思って聞いていることもあります。例えば、業際が曖昧(マネージャーなのだから何でも屋で当たり前)、尋ねる人がいない(マネージャーは孤独なもの)、引き継ぎがない(マネージャーの引継ぎは国内でも形式的なことが多く番頭が継続的にいるかの方が重要です。)、現地の大変さが分からない(分かっているけど、気付かないフリをしているのだと思います。みんな通った道なので)、日本の本社から批判され無理難題をいわれる(会社ってそういう理不尽なものです。)、フォロー役がいない(マネージャーなら当たり前です。)、数少ない日本人スタッフ同士で喧嘩してしまった(マネージャー同士で派閥はあるものです)、など誰もが悩む話しを海外で悩むとストレスが倍増で家庭経営を怠ってしまうようです。
奥さんも負けずにストレスがあるでしょう。典型的なものは、憧れた海外赴任と違うという「パリ症候群」、「ママ友コミュニティ」での息苦しさや「会社の家族会への参加」だと思います。
そんなとき、夫から優しい言葉もあれば頑張れるのですが。
日本と欧米、アジアはまだ時差が乏しいため、日本の友人にも電話で相談しやすいですが、アメリカの場合などは昼夜が逆転しているので気軽に相談もできない生活に、「時差ぼけ」ストレスを覚える方もいるかと思います。また、乳母が数名いる場合は労務管理も必要になり、妻がストレスを感じる場合があります。
こうして、夫婦喧嘩が増えることになります。または乳母が常駐しているため、完全家庭内別居になるケースもあるようです。特に親権争いが激しいケースでは、海外での完全家庭内別居で父子関係が強固になった一方で、母が孤立感を深めていたケースなども経験します。当然この場合は帰国後に「成田離婚」しても、父は親権を求めて争いたくなるのは自然な情操です。
病気のとき
また、病気のときの不安は大変です。自分が病気になっても気軽に母(祖母)に来てもらうことは海外ですとできません。またこどもが病気の場合は現地の医師に現地語で痛みなどを説明しないといけません。これが結構難しい。自分の痛みですらなかなか伝えられない。しかもフランスではまずはかかりつけに行かないと大きな病院には行けません。おちおち病気にもなれないのが海外生活といえます。とはいえ、日本にいても同じようなケースはあります。夫は仕事、自分は病気、こどもの面倒を見てもらおうと母親に電話すると、「私、これから屋久島にお友達とバカンスなんだわ」といってあえなく電話を切られたケースもあるようです。まあ、それぞれの方にそれぞれの事情がありますよね。
妻、エンジョイ。フル充電で帰国後離婚起業パターンも。
他方で、妻が海外生活をエンジョイするケースもあります。英語も得意で活かす機会がなかったが夫の海外赴任でアメリカンカルチャーの洗礼を受けて、日本に帰国後離婚して起業というケースもそれなりに聴きます。旦那さんとしては、互いを尊重しながら良いパートナーであり続ける努力も必要になります。
こうして海外生活を通して、絆を深める夫婦もあれば、反対に精神的にも経済的にも亀裂が入る夫婦もいます。
意外と多い海外での不貞問題
海外赴任をすると、妻も他の男性に目がいって不貞してしまうことがあります。そもそも海外では、フリーセックスの国もあり、不貞は絶対に許されないという雰囲気も日本より薄い地域もあります。欧米では宗教がそれを規制しますが法的には民事訴訟も禁止されている国も多く、感覚が日本とは違います。
お相手は悩みを聴いてもらっている人が多いように思います。具体的には、他の同僚の男性、現地の対人援助業の人、本当にステキな映画に出てくるような男性などです。
どうせ夫は仕事でいないしこどもは乳母がいるし、夫もキャバクラなのだから自分も悔しいし寂しいからという気持ちもあるかもしれません。
海外で離婚を実現させるための適切な別居とは?
みなさんからよく聞かれるのは、海外駐在中の別居は「別居期間」として算入されるかどうかという質問です。
海外駐在が離婚における別居期間にカウントされるかは、物理的に住所の違う場所で寝起きをして、頻繁に、もともとの自宅に帰宅していないことが条件でしょう。そして離婚協議をしている客観的な証拠(メール)があり、協議を開始しているとカウントされやすいといえます。正直、海外赴任のこじらせ離婚の場合、「別居するにもできない」のでやむを得ず同居してきたが日本に帰ったら最後、空港で別れてやる!となりやすいです。
しかしこの場合は法的な別居期間はゼロですので、特に既に恋人がいる場合は、「有責配偶者からの離婚請求の法理」に阻まれ、なかなか離婚ができず海外赴任をこじらせている人がいます。
家庭内別居では、日本の裁判所はなかなか離婚のための別居期間とは認めてくれません。第三者を挟んだ離婚協議をして、衣食住を分けているかがポイントになるでしょう。つまり寝室をともにしていたりご飯をともにしていたりバカンスに一緒にいっていたりしていた場合はまず「家庭内別居」になりません。
弁護士泣かせの会社後押しによる「合法的家出」
一方、他方が海外赴任になる場合、離婚協議が進まないものです。一般的に日本企業は家庭内に不和があると人事が暗黙の指令として「合法的家出」ができるように単身赴任にならざるを得ない辞令を出すことがあります。私が担当したケースではトヨタ系の方が、発達障害があるのではないかと思われる妻が日本におり、離婚協議が難航しているうちにブリュッセルに赴任するよう配転命令を受けたことがあります。結局、弁護士とスカイプでやりとりをして、国内の裁判所で協議を続けて和解したケースなどがありました。最終的には、非公式に裁判官が海外の私のクライアントと電話で話してくれたケースもありました。(もうその裁判官は名古屋にはいません。個人的な情実による談合もありません。念のため。)
同居している場合は、適用される法律は日本民法ですが、一般的に紛争解決は現地の裁判所に任せるという法律になっていることが多いと思われます。そのため、協議離婚制度がない国では日本民法が理解されないこともあります。そのため、日本民法に基づいて簡単な条件交渉でまとまるのならば、海外同居でも弁護士を入れた方が良いでしょう。メールにしても、スカイプにしても、プライバシーが守られるのであれば同居であっても交渉に応じてくれる人もいます。
海外で別居している場合も
海外で別居している場合は、日本の離婚弁護士に依頼しても良いでしょう。実際、示談交渉をするにしても、日本国内同士のケースでも弁護士が相手方と直接会うことは珍しいですし、片方が日本弁護士を就ければ他方も日本弁護士を就けて国内で弁護士同士が離婚条件をまとめてくれるかもしれません。この場合、重要なのは企業法務ばかりをやっている弁護士事務所ではないのかという点です。企業法務は「顧客ファースト」のため過激で依頼者の感心を買う弁護をしたがる弁護士が多いといえます。他方、和解の仕方を知っている弁護士は恰好をつけずに上手に交渉をまとめてくれます。特に判決で解決しているばかりの事務所は「和解の仕方を知らない弁護士」の可能性もあります。海外赴任同士の弁護士案件は、きちんと相手方弁護士にも必要であれば会ってくれる弁護士に任せるべきでしょう。
協議離婚であれば、一度も帰国せずに離婚をすることができます。さらには、弁護士に依頼すれば、海外にいながらにして離婚協議をすることもできます。なお、最近、海外にいる方を対象に行政書士がADR機関を名乗って示談交渉をしていることもあるようです。
悪徳行政書士にひっかからないようにする。
しかし行政書士は書類を作ることができるだけで示談交渉は一切できませんし、他方から法律相談を受けた後は仲裁行為をするも公正であることの期待がないので倫理上できません。このような行為は非弁行為として犯罪になっていますので、犯罪をしている行政書士やADRには依頼をしないように気を付けて、そのような場面に遭遇したら刑事告訴を検討しても良いでしょう。
離婚調停や離婚裁判であっても、帰国せずに裁判をした例もあります。裁判官によると海外赴任は特別な事情にあたるので出頭しなくても弁護士がついていればしっかりしているだろうから調停や裁判でも本人出頭なしでできるような運用に事実上なっているようです。(推奨はされませんが)また、日本出張を利用して弁護士と打ち合わせをしている例もあります。海外ではむしろ弁護士関与が法的に義務付けられているところもあり、どうぞお気軽にご相談ください。ただし、適用法が海外法にある場合は対応できない場合があります。
名古屋市に縁があり、海外におられる方も、お気軽にメールや電話などでお問合せください。