フランスで離婚する場合

フランス人と結婚する日本人の数が多い一方でフランス人と離婚する人も多いことからフランスの離婚手続きについて説明していきたいと思います。

 

1 フランスではどのような離婚があるのか

 協議離婚、許諾離婚、破綻離婚、過失離婚があります。

シュシュ:協議離婚というのは、夫婦がどちらも離婚したいと思っていて、かつ離婚した後、どのように財産を分けるか、親権など、離婚の条件についてすべて意見が一致している場合です。その合意の内容の契約書を弁護士に作成し、その内容を裁判官に許可してもらい成立する離婚です。(フランス民法230条)

弁護士:日本の協議離婚も養育費や財産分与などがある場合は、条件がすべて一致していても、離婚協議書を弁護士に作成してもらい、公証人に離婚給付公正証書を作成し離婚届けで離婚するのが一般的ですね。

シュシュ:許諾離婚というのは、離婚には争いはないのだけど、財産分与、監護権に争いがある場合に離婚条件を裁判所に決めてもらうというものです(民法233条)。

弁護士:日本では調停前置主義がとられていますが、財産分与、親権に争いがある場合は離婚訴訟になりますので、日本における離婚自体には争いはないけど離婚条件がまとまらなくて離婚訴訟に発展するケースと同じですね。

シュシュ:破綻離婚というのは、夫婦が2年以上続けて別居し、夫婦生活がない場合に離婚することを望む父母がその配偶者に訴訟を起こし裁判により離婚する方法です(民法238条)。夫婦が2年間別居しているという客観的要素だけで離婚できます。

弁護士:日本の場合は有責配偶者からの離婚請求の法理がありますし、未成熟子がいる場合は感覚的に5年程度、若い人は3年程度、熟年離婚の場合は5年程度の別居期間が「長期の別居」とされ、婚姻を継続しがたい重大な事由に該当するものとされています。

シュシュ:フランスでは有責配偶者という概念がないので、2年の別居で離婚できるという点で破綻主義が徹底しており、日本の有責主義との併用とは決定的に異なります。

次に過失離婚は、夫婦生活を持つ義務、相互に助け合う義務、配偶者以外の異性と関係を持たない義務などを守らない場合、義務違反の者に訴訟を起こして離婚するということですね。

弁護士:でも、2年の別居で離婚が認められるなら、争っているうちに破綻離婚が成立してしまいそうだよね。

シュシュ:うん。だから、自分たちに一番有利な離婚形式を選ぶ人が多いよ。

日本では離婚させないことにより「生活を保護」するという考えがあるみたいだけどフランスでは、2004年にこのような考え方は撤廃され破綻主義が徹底されることになりました。なので、経済的事情や病気がある場合でも2年の別居があれば破綻離婚が認められます。

弁護士:そうなると、離婚後の補償金の額やこどもの監護権などの離婚条件をできるだけ自分の有利になるように争うしかないね。

シュシュ:フランスでは、協議離婚でも弁護士が関与しなければならないことと、パックスという内縁制度があることから法律婚を嫌う人もいるんだよ。だからそれが反射して法律婚だからといって過度に強い拘束力を認めることは個人主義やその人の生き方を制約すると考えているんだよ。フランスでは女性も働くのが当たり前だしね。

弁護士:おもしろいのは証拠制限があるんだね。

シュシュ:うん。不貞の立証などは日本と似ているけど、執行官の浮気についてのレポートなんてものが出されることがあります。執行官が調べてくれるのですね。他方、盗聴など詐欺的な方法や暴力を用いて証拠を入手してもその証拠は裁判所に提出することは許されない(民法259条1項)。

弁護士:こどもの制限もあるんだね。

シュシュ:こどもの証言については、一緒に住んでいる親の影響を受けている場合が多いので離婚訴訟では客観的な証拠としては受け入れられないとされています(民法259条)。ただし、心理鑑定はできますが、きちんとした鑑定人を選びます。

弁護士:日本の離婚後扶養に該当する制度があるので破綻主義を貫けている理由になっているよね。

シュシュ:うん。フランスでは、離婚後、収入の多い側の配偶者が元配偶者に離婚補償手当を支払うことが定められています。ポイントは、離婚補償手当というのは養育費ではなく、あくまで元配偶者のためのものということですね。養育費ではなくて、離婚によって一方の配偶者の生活レベルが大きく下がってしまうことを防ぐために支払う補償金ということになります(270条)。原則は有責配偶者でも受け取れるんだけど、あまりに正義に反する場合は裁判官は給付を認めない決定をすることができます。

離婚補償手当は財産分与の一環として行うことができるのも日本と同じだね。

もっとも、フランスでは、離婚補償手当は離婚後12か月から所得税の課税がされるので、1年間程度の支払が念頭にあるんだと思う。

弁護士:日本でも、紛争解決金を定めるにあたり、離婚補償手当を定める基準、つまり、それぞれの経済的な状況や健康の状態、結婚していた期間、子育ての必要などを考慮して決められているような気がします。フランスでは、結婚している期間が長く妻が子育てのためパートタイマーだったり自営業の夫の仕事を手伝っていた場合は、支払われる離婚補償手当の額が多くなると考えられています。

シュシュ:フランスには基本的に慰謝料はないと考えてもらっていいです。フランスでは非常に極限的な場合に慰謝料が認められるだけで、不貞や暴力は個別の一般の損害賠償で処理され家庭裁判所で判断されることはありません。(1382条)

弁護士:フランスの親権制度はどうなっているのかな。

シュシュ:親権は定義が大事なんだ。親権とは、こどもの教育や世話に関する義務と権利をいうのですが、フランス法では父母が離婚した後も18歳未満の未成年の子供に対する親権は原則として父母双方が持つものとされています。したがって、一緒に住んでいない非監護親も親権を行使することになります。

ただし、暴力、親権行使に害悪がある場合は片親のみに認められています(民法372条2項1号)。

弁護士:まず決められるのは監護権だよね。どちらが一緒に住むか。

シュシュ:日本ではいろいろいわれているようだけど、フランスでも小さなこどもがいる場合は母親に監護権を認める裁判官が多いです。父親が監護する場合は、母親の精神状態や生活態度の事情により父親がこどもと一緒に住むべきであると判断することがあります。

弁護士:こどもには大変かもしれないけど、交互監護権というのもあるね。

シュシュ:うん。基本的にはちっちゃい子が対象だね。例えば毎月奇数の週は母親の家で、偶数の月は父親の家で住むというものです。ただ、交互監護権が裁判所が認めるのは近くに住んでいる場合に限られます。

弁護士:国際結婚の場合はどうかな。

シュシュ:国際結婚の場合は、こどもが小さいころからフランスで育てられフランス語しか話さないというような場合は、こどもの利益に考慮して、フランスに住む方に監護権を与えます。

弁護士:こどもの監護権が認められなかった場合は?

シュシュ:その場合はこどもを訪問する権利と自宅に宿泊させる権利があります。面会交流に近いですが、フランスのビジテーションは、父親が毎月奇数の週の週末と夏休みの半分をこどもと一緒に過ごすとか、そういうレベルの話しです。

弁護士:妻が日本人で、夫に無断でこどもを連れて日本に帰ってしまった場合はどうなるのかな。

シュシュ:夫側の親権の行使が困難になりますので、監護権が父親に移転する可能性が高いです。また、フランスでは、連れ出し行為は、幼児誘拐罪に該当することになるので、インターポールを通じて国際手配されることになります。特に離婚訴訟係属中に連れ出した場合は、母親の親権は絶対に否定されます。

また、ハーグ条約を日本が批准しているので、連れ去られた場合は日本の外務省に援助を求めることができますが、原則こどもは返還拒否事由がない限りフランスに戻されることになります。

 

 

 

 

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