子の養育の在り方~未成年期に父母の離婚を経験をしたこども
子の養育の在り方に関するデータについて~未成年期に父母の離婚を経験したこどもの養育に関する全国実態調査とその分析から~
ここでは、離婚にあたり、こどもはどのような心情なのかをデータに基づき明らかにしていきたいと思います。
- こどもたちを対象とした親の離婚・別居の影響
- こどもたちの置かれた状況
- こどもの思い・気持ち
- 必要な支援
の調査結果をまとめたものです。
1.離婚・別居後の同居者やその関係性について
別居後、いずれと暮らしたかでは、「母親」としたものが82.9パーセント、父親とするものが17.2パーセントでした。このように8割以上は母親と暮らしていました。離婚後、弁護士にご相談されることが多いのは以下のようなお悩みです。
- 離婚後の同居者は、兄弟、祖父母が多く、再婚相手が続きます。
- 同居親との関係は概ね良好のケースが多かった。
これらに照らすと、祖父母、兄弟、親族が支えになった可能性を示している。
しかし、再婚相手については、関係が良くないが4割を超えていることが分かる。
2.離婚前の父母の様子
こどものパースペクティブからは、離婚・別居前から、父母が円満だったのは3割しかなく、会話も少なく、喧嘩が約6割で見られていました。また、暴言、暴力なども2~3割で見られていたました。
3.別居時の話合いについて
離婚・別居については、「父母で話し合った」が32.2パーセントと最も多くなり、子連れ別居は8.8パーセント、別居親が一方的に出て行ったが13.2パーセント、裁判所を利用したが6.6パーセント、弁護士を利用したが2.2パーセントであることが分かったのです。
このように、こどもの視点からは、一方的な別居と認識しているケースは少ないことが分かります。また、別居時の父母の説明については、父からの説明は20.3パーセント、母からの説明が45.7パーセントと差があり、その説明内容の合理性の担保が問題となり得るといえます。
もっとも、父母からの説明に納得しているかは、7割から8割と高い水準を示しています。
4.離婚・別居に至るまでのこどもの行動
別居に至るまでにこどもがとった行動は次のようなものです。
- 離婚・別居のリクエスト 15.5パーセント
- 離婚、別居の協力、付添 14.9パーセント
- 親の争い、口論の制止 18.7パーセント
- 様々な我慢 37.1パーセント
以上から分かるのは、別居を希望するこどもは、10パーセント程度にすぎず、むしろ夫婦間の別居については52.8パーセントが介入していませんでした。
こどもたちはできるだけ離婚紛争に巻き込まれないように、「要求」に関わりを持たないようにしていることが分かります。
離婚及び別居で経験したことについては、
- 別居親との疎遠 56.7パーセント
- 経済的苦労 45.9パーセント
- 離婚・別居による転居が42パーセント
- 家事の負担が36.1パーセント
このように、離婚後のこどもは、「別居親との疎遠」「経済的苦労」「転居」「家事の負担」で苦労している様子がうかがえる。
5.こどもに安心感を与える別居
離婚・別居については、以下のとおり。
- 平穏・安全な生活が50.1パーセント
- 安堵感 39.0パーセント
- 健康状態の良好が48.9パーセント
- 家でくつろぐ時間とゆとりが44。0パーセント
- 無力感・孤立感が36パーセントだった。
このようにみると、こどもは、離婚や別居により、心理的平穏や安堵感を感じているこどもがいると考えられる一方、孤立感など否定的に感じているこどももいることが分かります。
6.養育費の支払と面会交流
養育費については、支払いがあったとするのは19パーセントという結果となったのです。
養育費の支払がなかったケースは4割を超えているものと考えられる。
別居親との具体的交流は以下のようなものです。
- 旅行
- 遊園地、テーマパーク、観光地
- 飲食・外食
- 家での普段通りの生活
- 家での勉強
- 面会・会話
- 通話
- メールのやりとり
- 写真のやりとり
- SNSのやりとり
などが考えられることが分かりました。
こどもの感想として、旅行、遊園地、外食、面会、通話、手紙、メール、SNSなどは楽しかったが5割から7割を占めています。
面会交流の取り決めについては、5歳のケースと10歳のケースを取り上げます。
5歳のケース
- 1か月に1回程度 15.5パーセント
- 2か月に1回程度 13.2パーセント
- 半年に1回程度 24.8パーセント
- 1年に1回未満 12.4パーセント
10歳のケース
- 1か月に1回程度 20.9パーセント
- 2か月に1回程度が14.3パーセント
- 半年に1回程度 22.9パーセント
- 1年に1回未満 15.3パーセント
この点、「司法統計」では、月1回が4割を占めているが、それは断面的なものに過ぎません。
宿泊付きの面会交流や1回の時間について
5歳のケース
- 宿泊を伴う面会交流 32.6パーセント
- 日中 24.0パーセント
- 1時間程度 6.2パーセント
10歳のケース
- 宿泊を伴う面会交流 34.1パーセント
- 日中 25.8パーセント
- 2~3時間 22.6パーセント
- 1時間 11.3パーセント
以上のように、「宿泊」が案外多いことが分かり、こどもの年齢が上がるについて宿泊も減り、時間も短くなる傾向にあることが分かっています。
7.面会交流の効用
こどもからみて、別居親との交流の様子について良かった点は、
- スケジュールや体調に配慮してくれた 46.1パーセント
- あなたへの言動 48.9パーセント
- あなたの意思の尊重 47.0パーセント
- あなたへの関心 48.9パーセント
- 面会交流のルールを守ったか 37.2パーセント
こどもは面会交流を通して、自己肯定感を得たり、嬉しさ、安堵感を得たりしています。
また、こどもからみて、交流が続かなかった理由としては、
- 疎遠で交流希望がなかった
- 別居親からの金銭援助なし
- 別居親の別居前までのDV・虐待
- あなたとの生活のすれ違い
- 別居親との再婚
- あなたの都合
が続いている。
8.まとめ
こどもの目線でみた離婚の原因は、6割が喧嘩程度のことのようであるようです。
また、こども目線では、監護親である母と良好な関係を持っていることが多かったといえます。
しかし、この点は、離婚、別居前の親子関係の在り方が、離婚、別居後の親子関係にも影響を与えている可能性も否定できません。
こどもとしては、離婚の説明よりも、離婚やその後の生活、住まい、学校の説明のニーズが強いことが分かります。
養育費は支払いは4割程度にとどまっています。
また、面会は7割で交流がありませんでした。
交流できない理由としては、
- 疎遠
- 交流希望なし
- 養育費の支払なし
などが多く、
- DV・虐待は1割程度に過ぎない。
こどもとしては、心理的支援としては、緊張、不安、ストレスの軽減を求め、離婚の際に父母に決めて欲しかった点について、養育費、面会交流、学校、転居、親族関係を挙げています。
この点、こどもたちは、父母や祖父母の協力を得ながら、対立する親とは距離を置きつつ、支援のない中で頑張っている姿が浮かび上がるといえるのです。
以上