養育費や不倫慰謝料の公正証書作成にかかる費用や必要書類について
養育費や不倫慰謝料の公正証書作成にかかる費用や必要書類について
不倫相手から慰謝料を払ってもらう約束(示談)をするときには「公正証書」を作成するようおすすめします。
ただ公正証書は日常的に目にするものではないでしょう。どういった書類なのか、どうやって作成すればよいかわからない方も少なくありません。
また公正証書を作成すると費用がかかります。どのような費用がどの程度必要になるのか、把握しておきましょう。
今回は不倫慰謝料の公正証書を作成しておくべきケースやかかる費用、必要書類について解説します。
離婚協議,不倫相手へ慰謝料請求したい方や公正証書の作成を求められた方はぜひ参考にしてみてください。
1.公正証書とは
公正証書とは、公証人が公文書として作成する書類です。公証人は元・裁判官,検察官の中から選ばれる傾向があるようです。名古屋市では,定年退職前の裁判官が公証人に転身する例などがあります。
一般の民間人や民間企業が作成する文書は公文書ではありません。私文書であり信用性も低くなります。
一方、公正証書は公文書の一種なので、私文書より信用性が高く強い法的効力も認められます。たとえば公正証書に「強制執行認諾条項」を入れておけば、債務者が支払いをしないときにすぐに強制執行(差し押さえ)ができるメリットがあります。
さらに公正証書を作成すると、原本が公証役場で保管されます。当事者には写しである正本や謄本が支給されるだけなので、そういったものをなくしても原本が失われません。再度謄本を申請して入手できるのもメリットです。
このように公正証書には通常の私文書には認められない効力がたくさん認められるので、重要な書類を作成したいときには公正証書にしておきましょう。
不倫慰謝料の示談書を作成する際も、公正証書にしておくと相手が不払いを起こした場合などに備えるリスクヘッジとなります。
2.公正証書作成にかかる費用
不倫慰謝料の示談書を公正証書にすると、相手が不払いを起こしたときにすぐに差し押さえができる、原本が公証役場で保管されるので紛失しないなどのメリットがあります。
ただし公正証書を作成すると、費用がかかってしまいます。
具体的にいくらの費用がかかるのか、みてみましょう。
公証人の手数料
公正証書を作成する際にかかる主な費用は「公証人の手数料」です。
政府が「公証人手数料令」という政令によって具体的な金額が定められています。
金額は、公正証書の「目的の価額」によって異なってきます。不倫慰謝料の示談書の場合、目的の価額は「払ってもらう慰謝料の金額」と考えましょう。慰謝料の金額が高額になるほど手数料も増額される仕組みです。具体的には以下のとおりとなります。
【公正証書作成の手数料】
目的の価額(慰謝料の金額) | 手数料の金額 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
なお公正証書の枚数が4枚(場合によっては3枚)を超えると、1枚ごとに250円が加算されます。
たとえば300万円の慰謝料の支払いを約束する公正証書の場合、公証人の手数料は11000円となります。
不倫慰謝料で慰謝料を1000万円以上に定めるケースは少ないでしょう。公証人の手数料は、概ね5000円~17000円以内に収まる事例が多数と考えられます。
養育費については,高額になる傾向があります。
例えば、「月額5万円の養育費を8年間支払う」という内容を公正証書に記載してもらう場合は、8年間分の養育費の総額は480万円を基準にするのです。この場合の公正証書の費用は,1万1000円となります。
ただし、養育費の支払期間が10年を超える場合には、10年分までの養育費総額から手数料を算出することになります。例えば,「月額5万円の養育費を12年間」を支払う場合は,10年間分となりますので,600万円が基準となります。そうすると,1万7000円となります。
相談料は無料
公正証書を作成する際、事前に書面作成方法などについて相談することができます。
その場合の相談料は無料です。
ただし相談できるのは公正証書の作成方法などの手続き的な内容であり、不倫トラブルそのものについてではありません。
一般的には,文案も事前に必要ですので,弁護士を通じて,公証人にアクセスする例が多いのではないかと考えています。また,駅前の公証人役場の場合は,相談も予約制としているケースもあるようです。
ただし,
- 慰謝料をいくらにすべきか
- 相手が払ってくれないので困っている
こういった不倫トラブルについては弁護士に相談する必要があります。
手数料の支払い方法
公正証書を作成するための手数料は、公正証書を作成する日に現金で支払うのが原則です。
クレジットカードなどのキャッシュレス決済には対応している公証人と対応していない公証人がいます。一般的には,当日は現金で支払うケースが多いと思います。
ただし資力がないことが市町村長等の証明書によって明らかな場合、手数料の全部や一部を猶予できるという規定もあります(手数料令5条)。とはいえ一般の不倫慰謝料請求では猶予してもらえるケースは「ほぼない」と考えて良いでしょう。
印紙税はかからない
慰謝料支払いの示談書には「印紙税」はかかりません。慰謝料とは、相手方の不法行為によって被害者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償金です。損害賠償金には税金がかからないので、印紙税も非課税とされているのです。
また公証人の手数料には消費税もかかりません。
3.公正証書の必要書類
公正証書を作成する際には、以下の書類を用意しましょう。
- 当事者の印鑑証明書と実印
- 当事者の身分証明書と認印
身分証明書を用意する場合には、以下のようなものを準備しましょう。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- 住民基本台帳カード(写真付き)
- パスポートや身体障害者手帳または在留カード(外国人の場合)
公正証書を作成する場合には、自分だけではなく不倫相手にも身分証明書や実印、印鑑証明書を用意してもらわねばなりません。公証人役場は身分確認できる身分証明書が極めて限られていますので,運転免許証,マイナンバーカードがない方は,事前に身分証明ができる書類について確認しておくようにしましょう。
事前に公証人から必要書類を聞いて相手に伝え、当日までに準備してもらいましょう。
4.不倫で公正証書を作成すべきケース
不倫慰謝料請求をするとき、公正証書を作成すると費用も手間も発生します。
「必ず作成すべきなのか?」「一括払いなら作成しなくても良いのではないか?」と考える方も多いでしょう。
以下で不倫慰謝料請求の際に公正証書を作成すべきケースをご紹介します。
4-1.分割払いにするケース
不倫慰謝料を分割払いにする場合には、必ず示談書を公正証書にしましょう。
分割払いの場合、途中で支払われなくなるリスクが高くなるためです。
もしも自分たちで作成した示談書しかなかったら、差し押さえはできません。
公正証書があれば、支払いが滞ったときにすぐに相手の給料や預貯金などを差し押さえられます。また公正証書を作成しておくと、相手も「支払いをしなかったらすぐに給料などを差し押さえられるかもしれない」とプレッシャーを感じるため、きちんと支払われる可能性も高くなります。
4-2.相手に資力が小さいケース
慰謝料が一括か分割かに限らず、相手に資力がない、あるいは小さい場合には示談書を公正証書にしましょう。
相手に支払い能力が低い場合、約束とおりに入金されないリスクが高くなるからです。
たとえば相手がアルバイトの月収10万円で生活していて貯蓄もない場合などには「支払えない」と言い出すおそれもあります。
示談締結前に相手の資産や収入状況を確かめ、不安があるなら公正証書を作成しましょう。
4-3.金額が大きいケース
慰謝料の金額が大きい場合にも公正証書を作成すべきです。
金額が大きいのに不払いが起こると、不利益が大きくなってしまうためです。
たとえば10万円の慰謝料が不払いになっても、さほどのダメージは受けない方が多いでしょう。一方で500万円の慰謝料が不払いになると、たいていの方にとっては一大事になります。
「慰謝料額がいくら以上であれば公正証書を作成すべき」という基準はありませんが、ご自身の感覚で「大きな金額」と感じるなら公正証書化しておくと安心です。
ただ,支払ってくれない場合,公正証書がないと裁判をしないといけませんが,公正証書の場合は,金銭債権については強制執行ができるので,多額の場合や長期の分割,扶養債権などは必ず公正証書化しておきましょう。
4-4.支払時期が先になるケース
分割払いの場合はもちろん、一括払いであっても「支払時期が先になる」なら公正証書を作成しましょう。
たとえば合意後2週間以内に一括で入金されるなら、公正証書を作成する必要性は小さくなります。一方で合意後半年後に一括で入金する約束をしても、果たされる保証はありません。
概していうと支払時期が1か月以上先になるなら、安心料として費用を払っても公正証書を作成するのがおすすめです。
5.公正証書を作成する手順
不倫の公正証書を作成する際には、以下の手順で進めましょう。
5-1.公正証書作成について合意する
まずは不倫相手との間で「公正証書を作成する」ことについて合意しなければなりません。
こちらが「公正証書を作成したい」と思っても相手が納得しなければ書面はできないので注意が必要です。
公正証書の作成は強制できません。相手が躊躇するようであれば説得したり条件交渉をやり直したりしましょう。
5-2.公証役場へ申し込む
公正証書作成について合意ができたら、公証役場へ申込みをしましょう。
特に定まった管轄はなく、全国どこの公証役場でもかまいません。
申込みについては,弁護士を介して申し込むケースが多いと考えています。
担当の公証人が決まったら必要書類などについてのやり取りを開始します。
5-3.公証人へ合意内容を伝える
公証人に公正証書を作成してもらうには、示談書の内容を伝えなければなりません。
- 不倫慰謝料の公正証書であること
- 慰謝料の金額
- 慰謝料の支払時期や支払い方法
5-4.必要書類を用意する
公正証書作成に必要な書類は書類を作成する当日までに当事者双方が準備しなければなりません。
事前に公証人から必要書類の内容を聞いて不倫相手にも連絡を入れ、当日までに準備しましょう。
5-5.当日、相手方にも出頭してもらって公正証書を作成する
公正証書を作成する日には、相手方にも出頭してもらう必要があります。
公証役場の場所を説明し、必要書類を持参して来るよう事前に伝えましょう。
当日当事者がそろったら、公証人が用意していた書面を確認して当事者が署名押印します。
公証人も署名押印することにより公正証書が完成します。
5-6.正本や謄本を受け取って保管する
公正証書ができあがったら、公証人から「正本」や「謄本」という写しが交付されます。
なくしても再発行は可能ですが、なるべく紛失しないように大切に保管しましょう。
また書類を受け取る際、現金で手数料を払わねばなりません。
6.公正証書作成は代理人に依頼できる
公正証書を作成するときには、当事者が全員公正証書へ行かねばなりません。相手と会いたくない方も多いでしょう。
そんなときには代理人へ依頼するのが得策です。委任状があれば公正証書の作成は他者へ任せられます。弁護士に依頼すれば自分は公証役場に行かなくても不倫慰謝料の公正証書を作成できるので、手間もストレスもかかりません。代理人に任せる場合は,委任状に印鑑証明書を添付する必要があります。
名古屋駅ヒラソル法律事務所では離婚・不倫トラブル解決に力を入れて取り組んでいます。不倫慰謝料請求で公正証書の作成をご検討の方がおられましたらお気軽にご相談ください。