自己愛性人格障害の人との離婚

自己愛性人格障害について

 

  • 夫が自己愛性人格障害だと思うが離婚できるのか?
  • 自己愛性人格障害の特徴は?
  • 自己愛性人格障害の相手と離婚するときの注意点はある?
  • 自己愛性人格障害の相手が離婚を拒絶した場合、どうすれば良いのか?

最近ではいろいろな精神病や人格障害の研究が進んでおり「自己愛性人格障害」という症状も明らかになっています。家裁調査官においても、調停にくる人が人格障害がある場合の対処法についての論考も存在しています。特に面会交流調停で問題になることが多いようです。

配偶者が自己愛性人格障害だとどのような問題があるのか、どう対処すれば良いのか、名古屋の弁護士が解説していきます。

 

1.自己愛性人格障害とは

1-1.自己愛性人格障害の特徴

自己愛性人格障害は人格障害の一種です。人格障害とは、正常とはずれた人格が形成されている状態です。

自己愛性人格障害の人は承認欲求が一般の人より大きくプライドが高く、他者への迷惑を顧みない傾向があります。

 

具体的には以下のような特徴を持っています。

  • 自分が重要であるという誇大な感覚
  • 業績や才能を誇張する、十分な業績がなくても優秀と認められたがる
  • 成功や権力、才気や美しさに限りなく憧れる、理想的な愛の空想にとらわれている
  • 自分が特別で独特であると感じており、特別な人にしか理解してもらえないと思っている
  • 過剰な賞賛を求める
  • 特権意識があったり特別有利な取り計らいを求めたりして、自分の思い通りにならないと気が済まない
  • 自分が成功するためであれば、相手を不当に利用しても平気
  • 共感が欠如しており、他人の気持ちを理解、認識しようとしない
  • 他人に嫉妬することが多く、他人から嫉妬されていると思い込む
  • 尊大で倣慢な行動や態度をとる

 

配偶者に上記のような特徴があれば、精神科を受診すると自己愛性人格障害の診断がつく可能性があります。

 

1-2.自己愛性人格障害の人は「無自覚」

ただし自己愛性人格障害の人は、自分の症状に無自覚なことがほとんどです。また「自分が正しい」と思い込んでいるので、あなたが相手に「自己愛性人格障害だと思う。病院に行こう」などと言っても「俺を病人扱いするのか。お前がおかしい」と言われてしまう可能性が高いです。

 

2.自己愛性人格障害とモラハラ

自己愛性人格障害の場合、本人は意外と「苦しい」と思っていません。「自分が正しい」「自分は優れている」と思い込んでいるためです。

むしろ大変なのは周囲の家族です。特に配偶者は自己愛性人格障害の相手から、常に蔑まれたり罵倒されたり召使いのように働かされたりして苦しむケースが多くなります。

 

しかも自己愛性人格障害の人には「周囲を振り回している」自覚がないため、被害が拡大しやすいです。本人の言うままに従っていると、配偶者は自分のペースで生きられなくなり精神的に削られます。

つまり自己愛性人格障害の配偶者がいると、いわゆる「モラハラ」被害が発生しやすいのです。

 

3.自己愛性人格障害と離婚

配偶者が自己愛性人格障害の場合、離婚できるのでしょうか?

3-1.話し合いによる離婚は困難なケースが多い

協議や調停で離婚するには、相手の同意が必要です。

しかし自己愛性人格障害の相手の場合、話し合いによって離婚するのは非常に困難です。

自己愛性人格障害の人は自分が正しいと思い込んでおり、配偶者から否定されることをまったく予想していないためです。

自分が正しくて相手が間違っているのだから、相手が直すのが当然だと考えていますし、相手から離婚される謂われはないと考えます。

また「離婚」は社会的な「失敗」ととらえています。優秀な自分がそのような「失敗」をすることは受け入れられないので、離婚を突きつけられても「絶対に応じない」態度をとることが多数です。むしろ怒りだして、延々と説教を始めるケースも多くみられます。

 

もちろん子どもの親権は断じて譲らないでしょう。親権争いが発生したら、平気で子どもを連れ去っていく可能性も高いので注意が必要です。

別居したとしても、婚姻費用を払わないので婚姻費用調停や差押えが必要になることも多いです。

 

3-2.訴訟による離婚

協議や調停で離婚できないなら、訴訟で離婚するしかありません。

訴訟では「裁判上の離婚理由」が必要です。民法で認められている裁判上の離婚理由は、以下の5つです。

  • 不貞
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復しがたい精神病
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

 

自己愛性人格障害の相手からモラハラを受けている場合でも④の回復しがたい精神病には「該当しません」。これは、相手が重度の統合失調症や認知症などにかかって、今まで献身的に介護してきたけれどどうしようもなくなった場合の問題なので、自己愛性人格障害で婚姻関係が破綻した場合の問題ではありません。

 

むしろ該当する可能性のあるのは②や⑤です。モラハラが酷ければ「婚姻を継続し難い重大な事由」となりますし、生活費を払ってもらえていなければ②の悪意の遺棄となります。

相手が別の女性と不貞していたら①によっても離婚できます。

 

4.相手が離婚を拒絶する場合の対処方法

自己愛性人格障害の相手が離婚を拒絶する場合には、以下のようにして離婚を進めましょう。

4-1.別居して婚姻費用分担調停、離婚調停を起こす

まずは別居をして、家庭裁判所で婚姻費用分担調停(生活費の請求)と離婚調停を起こします。

婚姻費用分担調停が成立するか審判が確定したら、相手から毎月生活費を払ってもらえますし、払わない場合には給与差し押さえなども可能となります。

なお別居の際、子どもは必ず連れて出るべきです。そうでないと相手に親権を取られてしまう可能性が高まるからです。

調停では、相手方である人の

・こだわりの増減

・感じ方、理解の違い

・具体的な配慮

・別の考え方を提示する

・丁寧な手続説明

 

4-2.離婚訴訟を起こす

離婚調停で解決できず不成立になった場合には、離婚訴訟を起こしましょう。訴訟で相手のモラハラ行為などによる婚姻関係破綻を証明できれば、裁判官が離婚を認めてくれます。

 

 5 ディスカッション

 自閉症スペクトラムの当事者等が家庭裁判所の手続きをよりよく利用するためには、大変ともいわれます。

5-1.調停条項の厳格な実施を求めるトラブル

  父にPDD(広汎性発達障害)の疑いがあるものであり、多数回の期日を重ねて調停が成立せず、その後面会交流が実施されなくなったとして、何回も履行勧告の申立てがあり、間接強制の申立てがあった。

 ・こどもが病気の際は診断書を要求した

 ・父が父の家での面会にこだわりこどもが疲弊した

 ・調停で1時間以上話し続けた

 ・条項の変更にも容易に応じずトラブルが多い

5-2.「うつ」との合併が認められた事例

  ・妻は家事ができない

 ・ごみ屋敷になっていた

 ・妻はかつては有能なキャリアウーマンであったが抑うつの状態

 ・長男のアスペルガー障害に妻は疲弊していた

 ・父によると母はマルチタスクができない傾向があった

 ・長男が発熱した際でも、夫が近道を指示しても妻はいつも通り通る道ではないと夫に抗議した

 ・事実の調査の結果、妻もアスペルガー障害であり、二次症状として抑うつも併発していると発覚

5-3.人格障害との合併が疑われた事例

 ・長男は5歳で話しができるが、1歳の二男は話しができないので面会の申請をしないと主張した

 ・調停委員を脅す発言をしたり、どうせ自分は理解してもらえないなどの態度をとったりした。

 ・調査官は、この夫が、自閉症スペクトラムか、人格障害であったのか、それとも発達障害が背景にある重ね着症候群であるのか見極めが難しかった

 ・適切な対人関係の距離を保てず、捜査的な対人関係を持ち、感情のコントロールに困難を抱えている現在の様子をみると人格障害が強く疑われた。

 ・当初の申立てにこだわったり、相手の気持ちへ共感が示されず、長男の表情や雰囲気を読み取れない

 ・独自の理論を主張していること

 ・視覚優位であること

5-4.相手の心情を読み取るのが困難な父の事例

   ・父はPDD、母は抑うつ

 ・離婚の経緯としては、自閉症スペクトラムの父が事故に遭って引きこもりになった

 ・父は事故現場でのフラッシュバックに苦しんだ

 ・父は、母の子育ての苦労について、思いが至らない相手の心情が読み取れない可能性

 ・面会交流を3時間予定でありながら2時間で切り上げようとすると、執拗に攻撃したこと

 ・約束どおりの字義どおりの解釈、ルールへのこだわりが見えること

 ・面会日にこどもが熱を出したでは納得しないこと

 ・母は訴訟での高緊張があるものの、父は訴訟がまとまった以上、「終わったこと」と母の気持ちに共感を示さなかった。

 自己愛性人格障害の相手からモラハラを受け続けていると、一体何が正しいのか自分でもわからなくなってしまうものです。一人で悩んでいても解決できないので、まずは弁護士までご相談ください。

依頼者様の想いを受け止め、
全力で取り組み、
問題解決へ導きます。

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