モラハラの後遺症とは?症状や克服方法を詳しく解説!
モラハラの後遺症とは?症状や克服方法を詳しく解説!
モラハラが原因で離婚してからも、モラハラの後遺症に悩まされる人は少なくありません。
この記事では、モラハラの後遺症に見られる具体的な症状や、後遺症の克服方法をご紹介します。
また、後遺症で慰謝料が請求できるのかどうかについても解説しましょう。
モラハラとは
モラハラとは「モラル・ハラスメント」の略で、「精神的暴力」と訳されます。もっとも、家庭内の領域であれば「モラル・ハラスメント」、就業場所であれば「パワー・ハラスメント」、顧客によるパワハラであれば、「カスタマー・ハラスメント」というように、最近は、「場所的な領域」の問題であるかのように思われます。
例えば、カスハラの定義は、最近は、「商品・製品やサービス、補償などに関し、顧客や住民が不満足を表明したもののうち、その顧客、住民が必要以上に攻撃的であったり、感情的な言動をとったり、悪意を感じるような過度な金品や謝罪を求めてきたり、明らかな嫌がらせや迷惑行為で従業員に心理的な被害を与え、就業場所が害されること」と定義されるように、常識外れなクレーマーや正当な理由のない嫌がらせであるとか、迷惑行為全般で、対応者が心理的負担を感じるもの全てといった形となっています。
よくモラハラをする方はカスハラをするというように言われるように、領域が異なるといえます。ただし、モラハラは家庭内で行われるため、「外面」や「営業」が得意な人は、カスハラをする方々とイコールではないのですが、モラハラ対策とカスハラ対策はかなり重なるところがあります。
モラハラ対策はどうしても「家庭内の問題で限界がある」とか、「家庭内に弁護士が立ち入るわけにはいかない」といった形で筋の悪いカスハラ事件のようになってしまっているケースも少なくありません。そこで、あなたがモラハラを問題にする場合はカスハラ対策もまた参考にするのも新しい視点として必要になるといえるでしょう。
夫婦間のモラハラは、DV(家庭内暴力)の一つといわれています。すなわち「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」、つまり、俗にいう「DV防止法」では、心に有害な影響を与える言動もDVであると定義しています。
ただし、「家庭内暴力」というラディカルな用語のため、身体的暴力を典型として考える裁判官も圧倒的多数といえるため、外延が掴みにくいというのは事実です。
配偶者に対して、人格を否定したり侮辱した態度で接したりする行為がその典型的な例で、許されるものではありません。他方、経済的な支配の源泉を背景にするパワハラ類似のものや、必ずしも上下関係にはないといえるものの、カスハラのような場合に近い事例もあるといえます。
一方でモラハラは身体的暴力と比べて、外からは見えにくい特徴があります。同様にモラハラでできた心の傷や後遺症も分かりにくく、深刻な問題となる場合があるのです。
このように、確かに離婚原因や慰謝料原因として「モラハラ」は大切ですが、「カスハラ」でもなぜ「カスハラ」対策に取り組まなければならないかというと、従業員が心身を害し労災を発生させることがないようにする点が本質なのです。したがって、モラハラでもまずご自身やお子さんの心身の健康を第一に考えるようにしましょう。
出典:内閣府男女共同参画局「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の概要」
モラハラの後遺症の具体例8つ
モラハラの後遺症は自分でも気づきにくいものですが、「もしやこれはモラハラの後遺症なのでは?」と思われるサインがあります。小さなサインを放置すると精神疾患にいたることもあるため、自分からのSOSには敏感でいたいものです。
モラハラの後遺症は、適切に対処すれば回復が見込めます。そのためにはまず、後遺症の症状を自覚することが重要だといえるでしょう。
ここからは、後遺症の具体例8つについて解説します。
人間不信に陥る
配偶者からモラハラを受けた人の中には、信じていた人からひどい仕打ちを受けたことで、他人を信じられなくなっている人がいます。
これは、カスハラを受けたスーパーの店員さんがトラウマになってしまい接客業が怖くなってしまうのと同じです。
誰かにやさしくされたとしても「急にひどいことをされるのではないか?」「この人も本当は冷たい人なのでは?」などと、不信感を抱いてしまいがちです。
人との付き合いが怖くなり友人関係や恋愛関係をうまく築けなくなるのは、モラハラ後遺症のサインの一つと考えられます。
カスハラであれば、その顧客と付き合わないようにしたり、究極的には会社を辞めたりしたりすれば良いかもしれませんが、夫婦問題では、簡単に配偶者を変えることはできないため、モラハラは問題が大きいのです。
感情が不安定になる
モラハラをしている方も感情が不安定な場合もありますが、はやり、毎日のように攻撃を受けていると、モラハラ被害者も心が不安定にならざるを得なくなります。
これは、心理学的には、「モラハラの後遺症」の一つといえるかもしれません。
些細なことでイライラしたり急に怒ったり泣き出したりして、自分でも感情の変化を抑えることが難しくなります。これはモラハラに遭っていた時に抑えていた気持ちが、表に噴き出したためと考えられます。
離婚して相手とはすでに離れているのに、常にストレスを抱えた状態にあるのです。
このような状態にある場合は、まずは、別居してストレス源から離れること、医療機関を受診すること、心の安心基地となれる両親と一緒に過ごすなどが考えられます。
自己肯定感が低下する
JAL=ANAのカスハラ禁止ポリシーの発表では、「カスハラからは何も生まれない」との発表がありましたが、実際上、「モラハラからも何も生まれない」のではないかと思います。
モラハラ被害に遭った人は、長い期間、配偶者から責められたり見下されたりしてきたため、自分を認められなくなっています。
自己肯定感が低下し、何をするにも自信が持てない、あるいはちょっとしたことで自分を責めてしまう。これらの精神状態から抜け出せないのは、モラハラの後遺症であるといえるでしょう。
こうした自己肯定感の低下の修復のプロセスは、それなりの時間を要します。
加害者と復縁したくなる
モラハラを受けて離婚した人の中には、加害者と復縁したくなる人がいます。
しばしば臨床上、Aさんの戸籍を見ていると、Bさんと離婚と再婚を繰り返している場合などがこれに当たります。
これは、「モラハラ」というよりも「DV被害者」にあり得る心理的傾向といえるかもしれません。
「やっと離婚できて被害から逃れられたのに、どうして?」と、周囲の人にとっては理解しがたいことですが、婚姻中「お前ひとりでは何もできない」といわれ続けたことが頭をよぎり「別れてよかったのだろうか」と不安になるケースがあるのです。
あるいは、「たまに優しいの」とお話しになられることなどがあります。
離婚したにもかかわらず精神的支配から抜け出せずにいるのも、モラハラの後遺症と考えてよいでしょう。
少し冷たいかもしれませんが、離婚意思がない方は離婚することは当たり前ですができません。周りが説得するのにも限度ということがあります。こうした心理的傾向を持っていると自覚した場合は、カウンセリングやセラピーを受けて自分と向かい合うのも方法の一つです。
うつ病
モラハラの後遺症が、精神疾患にいたるケースもあります。その代表例がうつ病です。
「自分を否定してしまう」「常にやる気がない」といった症状に悩む人は、うつ病を発症しているおそれがあります。症状が進むと抑うつ状態になり、日常生活や仕事にも影響を及ぼします。
心身の不調を感じたら、早めに精神科や心療内科を受診することがおすすめです。モラハラ被害は目には見えにくいですので、医療機関に通っていくことで証拠を残すことができます。
PTSD
PTSDとは、「心的外傷後ストレス障害」という精神障害の1つです。PTSDは、日本では、生理的機能を害した場合に当たると解されており、身体的暴力に該当します。したがって、もはや精神的暴力の範疇とは言い難く、慰謝料なども請求し得る可能性が出てきます。
ただし、臨床上、PTSDは、DSM―Ⅴに基づいて6か月程度経過を見ながら診断されるものですので、すぐにはPTSDという診断を得るのは難しいかもしれません。
PTSDは、一般論としては、急激かつ外来な出来事、つまり、大きな災害や事故を経験した後に、自分の意思とは関係なくその時のことを思い出し不安や緊張が高まる状態を指します。
この点、モラハラの後遺症の場合は、より複雑な症状が現われる「複雑性PTSD」を発症するケースがあります。辛い経験がトラウマとなり、ふとした時に恐怖・虚無感・自責の念などが押し寄せるのです。
PTSDが疑われる場合も、早めに専門のカウンセラーや医療機関で受診することをおすすめします。比較的PTSDは専門的な領域のため、知り合いの医師があれば紹介状を書いてもらうようにしましょう。
摂食障害
モラハラの後遺症で、摂食障害になる場合もあります。
摂食障害には、極端に食事制限をして痩せてしまう「神経性食欲不振症」や、無茶食いと体重増加を防ぐ行為(嘔吐や下剤服用)を繰り返す「神経性過食症」があります。
配偶者から体形に関する暴言を浴びせられたことが原因となり、離婚後もそれが続いている場合が多いでしょう。
依存症
依存症とは、特定の何かに心を奪われてやめたくてもやめられない状態になることを指します。
モラハラの被害者は、精神的暴力を受けているにもかかわらず加害者を生きる軸としているケースがあります。そのような場合、離婚後に心の拠り所を失い何かに依存してしまうのです。
依存する対象は、アルコール・ギャンブル・薬物・異性などさまざまです。回復のために、まずは専門機関で受診しましょう。
モラハラの後遺症を克服するには
モラハラの後遺症から立ち直るには、どうしたらよいのでしょう。克服方法は後遺症の程度によって異なります。
ここでは、3つの方法をご紹介しましょう。
心身を十分に休める
長期間モラハラを受けていると、心身ともに大きなダメージを受けます。まずは、ゆっくり心と体を休めることを優先してください。
離婚後すぐに「今の精神状態を立て直したい」「今後の生き方を見直したい」と考える人も多いことでしょう。しかし、疲弊した状態で考えても、答えはなかなか見つかりません。
時間が解決してくれる問題もあります。無理をせず頼れる人には頼りながら、しっかりと休息をとってください。
仕事や趣味などに打ち込む
夢中になれるものを見つけてチャレンジするのも、おすすめの克服方法です。仕事・趣味・ボランティア・資格試験の勉強などに打ち込んでみてはいかがでしょうか。きっと新たな世界が広がり、気持ちが紛れます。
モラハラを受けていた人は、知らず知らず加害者を生きていくうえでの「軸」にしている場合があり、離婚後に復縁したくなるケースがあります。何かに打ち込んで心の拠り所を見つければ、加害者のもとへ気持ちが引き寄せられることもないでしょう。
カウンセラーや医師に相談する
心と体を休めて気分転換することによって、モラハラのトラウマを克服できる人もいるでしょう。その一方で、自分の力だけではどうしようもないケースもあります。
そのような場合は、専門の機関に相談することをおすすめします。特にうつ病やPTSDが疑われるようなら、早めにカウンセラー・精神科・心療内科で受診してください。精神の安定を保つ心理療法やPTSDの治療法、薬物を用いた対症療法など、最適な対処方法を提示してもらえるでしょう。あるいは、弁護士に法律相談して、医師への受診の必要性に気付かれる方もいます。
モラハラの後遺症を防ぐには
モラハラの後遺症には、さまざまな症状があります。離婚後かなりの期間が経ってから症状が出ることもあり、本人がなかなか自覚しないケースが多いと考えられます。たしかに、法律上、後遺障害が生じた場合、その点も慰謝料も請求できるはずですが、なかなか交通事故の後遺障害のようにはいかないのが現実です。
このようなモラハラの後遺症を防ぐには、すぐに加害者と物理的・心理的距離を置くことが重要です。
離婚の交渉をする際に相当なストレスを受けるおそれがあるため、弁護士に間に入ってもらい相手とは直接会わないようにしましょう。
この際、弁護士などにアドバイスをもらうことも大切です。弁護士は、様々な別居事例を見ており、緊張状態が高いにもかかわらず、こどもの学校を変えるべきではないと絶対的に信じる余り、すぐにモラハラ配偶者に発見され、トラブルを拡大させた方もいます。こどもの転校を伴わない場合、探偵をつければ一日で居場所は発覚することは間違いないので、物理的・心理的距離の置き方として、医療上適切かという観点も考慮しましょう。
なぜなら、こどもは保護される親のメンタルの状態に影響を受けますから、仮に転校を伴っても、親のメンタルが健康な方が良い場合も少なくないからです。
自身の心と体を守るため、できるだけ早く法的な論点を整理すべく弁護士に相談し離婚の交渉を依頼してください。
モラハラの後遺症で慰謝料を請求できるのか
離婚した後にモラハラの後遺症が出た場合、慰謝料を請求できるのでしょうか。実際のところ慰謝料の請求は困難ですが、不可能ではありません。とりわけ民法が改正され、不法行為の短期消滅時効が3年でかかるのに対して、PTSDなどの診断を受けている場合は、「身体を害する不法行為」として5年とされています。このような民法の文言に照らしても、特にPTSDの場合は民法は重視しているといっても良いでしょう(民法724条の2)。
鍵となるのは、現れた症状の原因がモラハラであると断言できる「証拠」と「因果関係」の証明です。そのために、医療機関の診断書・通院履歴・処方箋などを揃えておきましょう。
また、一般的に後遺症というのは、交通事故ではもはや常識となっているように、「症状固定後」に後遺障害、つまり、労働能力喪失部分がある場合にその慰藉を求めるものや逸失利益の賠償を求めるものです。
したがって、厳格に症状固定後の予後が悪いということと、もともとの精神的な問題が峻別できるかは実務上難しい問題があるように思われます。
慰謝料の請求は、離婚成立後3年以内に行わなくてはなりません。民法724条において、慰謝料の請求権は損害及び加害者を知ってから3年で消滅すると定められているためです。なお、PTSDについては5年と考えられることは既に述べているとおりです。
慰謝料を請求したいとお考えの場合は、早めに弁護士に相談してください。
モラハラ問題をカスハラ問題から学ぼう
こんなことがモラハラに当たるかしらと思う方もいるかもしれませんが、カスハラでは、従業員の安全を図るため、むしろ企業がカスハラを定義しています。つまり、あなたの心理的安全性が失われて医療上の助けが必要になる懸念があれば、それがモラハラなのです。
まずは、定義からアップデートしましょう。
そして、モラハラが起きていることを周囲に知らせましょう。カスハラと同様、モラハラも一人では対処が難しいのです。第三者委員会ではありませんが、第三者の視点(医師や弁護士)が入り込むと社会通念上相当であるか、心理学的に圧迫を加えるものではないかといった意見をもらえ真摯に検討するきっかけになります。
そして、モラハラ問題の解決も少しビジネスライクにカスハラ解決の指針を取り入れて考えてみるのも悪くありません。
一例を挙げると、配偶者の口癖が「誠意を見せろ」である場合、その方は家庭以外の領域でもトラブルを起こしている可能性があります。基本的には、金銭をたかるときに用いる言葉だからです。実際、モラハラの方は会社でパワハラが問題視され降格となっているというような事例もあります。あるいは、建築業界や港湾関係など比較的上下関係が厳しい業界で働いている配偶者の場合、その感覚を家庭に持ち込んでいる方もいるのです。
さらに、土下座しろ、など刑法の強要罪に当たりうることをいわれた場合は警察を呼んでしまいましょう。夫婦といえども契約関係はあれど、土下座をする義務などありません。
そして、永遠の神学論争が「言った言わない問題」です。結論的には、夫婦の間では、LINE上の会話からモラハラがうかがえることが少なくないですが、神学論争を予防するためには、録音データをこまめにとって文字起こしまでしておくこと、防犯カメラを設置しておく、日記で後日改ざんできないような不動文字にしておく(コピー機を通すなど)などが考えられます。ただし、「言った言わない問題」は、証拠がない限り神学論争でそこに重点を置くのは賢明ではありません。
弁護士や医師への相談は、あなたもエチケットをもって
例えば、法律相談に、録音データは広く持ってこられる方もいますが、弁護士が法律相談で聴くのは30秒くらいです。依頼を受けても、長くても30分聞くか否かということであり、誠実に聴いて欲しいのであれば、録音反訳を自分で作成されることが大事です。
最近はAIによる自動反訳もできるため文字化もできるようになっています。弁護士は録音反訳から問題と思われるやりとりをピックアップして聴くことが多いのです。
こうした創意工夫をされている依頼者か否かで、対人援助業はこの人のために頑張ろうという気持ちは大分変ってきます。
また、社会常識を有しているか否かの判断もなされてしまうでしょう。
少し手厳しいですが、モラハラ被害者であることを強く訴える余り、自己中心的になり、弁護士や医師などの対話者のことを忘れている場合、ご自分もモラハラやカスハラの気がある可能性もないとはいえないでしょう。
モラハラの後遺症というのは、モラハラそれ自体に「共鳴」している側面もあるのです。
このように、今日では、様々な「ハラスメント」の基準がリファインされています。配偶者のハラスメントを主張する場合は、ご自身の判断基準もリファインされているかの確認も必要と思います。そうすると、おのずと配偶者のモラハラもやっぱり問題なのだ、と気づかれるのではないかと思います。
まとめ
モラハラが原因で離婚した場合、しばらく経ってからモラハラの後遺症が現れるケースが少なくありません。これは後発損害というのですが、交通事故でもなかなか慰謝料などの請求が法的因果関係の問題から困難とされるものであり、適時に医療機関に通う大事さを示唆するものと考えられます。
後遺症の小さなサインを見逃してしまうと、うつ病やPTSDといった重度の精神疾患を発症するおそれがあります。「モラハラの後遺症かも?」と思ったら、すみやかに専門のカウンセラーや医療機関で受診しましょう。
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