新算定表における裁判実務の初評価等
本日、名古屋家裁で、以下のような提案を受けました。 「婚姻費用の算定は、いわゆる標準的算定方式に基づく算定表によるのが相当である。申立人は、日本弁護士連合会が逓減する新たな算定方式によるべき旨主張するが、裁判実務における使用実績等に鑑み、当調停委員会としては、これを採用しない。」とされました。 この婚姻費用分担調停では、多額の婚姻費用が生じるため申立人である女性が様々な主張をしていました。 第一が日本弁護士連合会が採用している新算定表の可否でした。 松浦游さんと光希さんは、光希さんから離婚調停を提起しています。その理由は教員である游さんが、わいせつ事件を起こして減給処分を受けるともに別居することになりました。 そして、朔さんと立夏さんの養育費として新算定表による請求をしました。 そのある意味での判断が上記のものです。文書で出されました。 第二が婚姻費用の始期ですが、別居時から請求されていました。 しかし、弁護士がついていると争い調停申立時とすることができます。 第三は朔の取り扱いです。立夏は、14歳ですが、朔は23歳です。策は大学3年生ですが2浪しています。この点について、游さんは、未成熟子として扱えるのは障害があるなどの特段の事情がない限り、自助の原則が妥当しせいぜい22歳までであるという主張を展開しました。たしかに浪人まで認めると監護費が際限なく広がっていきますし、そのすべてが親の負担とする論拠もないように思います。 裁判所は、「当事者間の長男朔は、私立大学3年生である。婚姻費用の算定において成人した大学生を未成熟子として扱うか否かは様々な見解があり得るところ、本件では、長男が既に23歳で、アルバイトをして平成28年に80万円の収入を得ており、自らの日常生活に要する費用を相当程度は賄うことができるはずであることからすると、長男が受験浪人して私立大学に進学することを相手方が承諾していたとうかがわれることを踏まえても、この調停案においては、長男を未成熟子としては扱わず、・・・後記のとおり学費の負担について別途考慮することとするのが相当である。 そこで、14歳以下の子ども1人用を使用すべきである。 第四は、給与の減額に責任がある場合ですが、これは新しい法理として紹介に値するものといえます。 教師がわいせつ事件をおこして減給になった場合、婚姻費用について昨年分についてではなく今年の減収が確実であるのにそれを減額することが実質的に権利の濫用になるという判断がなされました。自招避難のような刑法法理を思い出しますが、減収の原因が自ら招いたものであること等も考慮すると、・・・昨年度分で考慮するということになるというものです。 しかし、游さんは光希さんの潜在的稼働能力について主張をしていました。しかし、裁判所は、「算定の基礎は実収入が原則」つぃてこれを排斥しています。しかし他方、男性の有責性による減収の場合については、原則が崩れるというのは内在的に論理矛盾を抱えており相当ではないように思われます。 第5 朔の学費については50万円しか認めない。 そもそも、裁判所案は、朔を未成熟子として認めていないので、学費を親の負担とするのはおかしいですが、論理的ではありませんが、50万円の負担を求めてきました。おそらく100万円が年間なのでその半分という趣旨なのだと思われます。 その理由付けなのですが、少し注目に値します。相手方の収入が相当高額であり学費の負担能力があるというべき婚姻費用の額も高額になり、これが確実に履行されれば申立人の生活が困窮するとは考え難いことを挙げており、大阪の家事抗告集中部の婚姻費用の場合は折半説に近い判断を名古屋家裁管轄で初めて示したものではないか、と思われ注目に値すると思われます。