婚後契約(婚姻の後にする財産分与等の夫婦間契約)はすることができる?

 

婚後契約(婚姻の後にする夫婦間契約)

 

民法上の夫婦財産契約は、「婚前契約」といわれるように、結婚前でないと締結できないところに特色があります。

では、婚姻してしまった後、夫婦財産契約を締結することはできないのでしょうか?結論からいうと、法律上、婚姻後に「婚前契約を締結した」と評価されない範囲、つまり、不可変更性に抵触しない範囲であれば、契約を締結できる可能性があります。ただし、そもそも不可変更性の原則自体が、それほど強い論拠に支えられているとはいえません。例えば①夫がモラハラで妻の財産を奪ってしまう恐れがあるとか、②法定財産制を変更してしまうと、第三者からは、夫婦の責任財産が少なくなり取り立てできる財産が少なくなってしまうということにあります。

しかし、①については、現在も離婚によって、財産分与が行われ第三者からすれば、責任財産が減少することはありますし、また、②そもそも相続を前提に夫婦の財産を把握すること自体が妥当ではないのではないか、とも考えられます。

いずれにせよ、不可変更性に抵触しない範囲での婚後契約は認められる可能性があります。

では、どういう場合に、婚後契約を締結したら良いのでしょうか?

名古屋市の離婚弁護士が,解説していきます。

 

昨今、「投資」のシーンで夫婦間契約の重要性が広く認識されるようになってきています。例えば、出資者のAさんからすれば、Bさんというスタートアップオーナーにエンジェル投資をしようとしているものの、夫婦間の離婚トラブルでの財産分与関係がネックとなり、出資者のAさん側にまで被害が生じてしまう可能性がないではありません。

そこで、ここでいうエンジェル投資家の資産であるスタートアップ企業の株式の価値を毀損しないことを狙いとして、婚前契約や姻後契約が話題になることがあるようです。

このような場面で、既に結婚されているスタートアップオーナーや出資を考えられているエンジェル投資家の方はぜひ参考にしてみてください。

 

1.婚後契約とは

先ほども解説したように、婚姻されているパターンでは婚前契約を締結することができません。しかし、実際上は、結婚後の方が、財産関係のルールを取り決めておきたいというニーズが生じる場合があります。

既に触れたように、例えば、夫のBさんに出資することを考えているAさんからすれば、BさんとCさんの夫婦関係までエンジェル投資家としてケアしなければならない事項になりかねないということになります。

婚後契約は、法定財産制度の定めの全部又は一部を修正する合意でなければ、不可変更性に抵触しないことになります。

反対解釈をすれば、法定財産制度を修正してしまう内容の合意は意味がありませんので、婚姻後に婚後契約を作成しようとする場合は、この点を意識しないといけません。

法定財産制度とは?

法定財産制度についていえば、①婚姻費用の分担、②日常家事の連帯債務、③夫婦間における財産の帰属の定め(離婚時の夫婦の財産分与)となります。

 

2.婚姻後に定める財産分与や婚姻費用のルールの意義

不可変更性の原則に抵触せずに定める婚後契約についていえば、主に、財産分与のルールや婚姻費用のルールを明確にしておくということも重要と思われます。

この点、不可変更性の原則がありますから、全く離婚時の夫婦の財産分与をしない、という約束をすることは難しいでしょう。

ただし、例えば株式の評価を一定額にとどめる旨の約定や、財産分与の特有財産についてお互い確認をしておく約定は有意義なものと考えられます。

既に述べたように、エンジェル投資家のAさんとしては、スタートアップオーナーのBさんとCさんの夫婦関係のケアまではできないので、争いが熾烈にならないように、出資の条件として婚後契約を締結することという条件を付けることも今後あり得るのではないでしょうか。

例えば、財産分与では、本来、財産分与の対象とならない特有財産の範囲をめぐって熾烈な争いをしている例が散見されます。

たしかに、特有財産だったとしても、立証責任を主には特有財産であると主張する側が負うこと、婚姻期間が相当長期である場合、分別管理を意識していないために、特有財産の立証ができない場合に該当すると判断されることがあります。

仮に、婚姻時、夫が1000万円の預金を持っていたとしても、婚姻後20年が経過し、サラリーマン時代の給与振込や携帯代、NHKの引き落としなどがなされた場合は、特有性が喪失したと判断される場合もあります。

別の具体例として、婚前に株式を保有していて、その後株式分割がなされ株式数や資産価値が実質的に上昇している例があります。このような場合、値上がり分は財産分与の対象外とすることが離婚訴訟での考え方ですが、離婚調停で妻側がそのような主張をするとは限りませんし、株式分割の立証責任などは夫側にあり、トレーダーのような場合、特有財産との紐付けができないというケースがあります。

このように、財産分与や婚姻費用分担のルールや考慮要素を明確に決めておくだけでも、立証の問題や法的評価の問題を解決するため、婚後契約は有効といえるかもしれません。

今回のパターンは、夫婦の問題にとどまらず、エンジェル投資家など、第三者がいて、財産分与で責任財産が散逸してしまうことを懸念されている、という点が、他の財産分与の解説と異なるかもしれません。

3.夫婦間契約取消権のリスク

民法上、夫婦間には契約取消権が認められています。取消権の対象には、当然、婚後契約も含まれる可能性があります。

まず、前提として、夫婦間の契約取消権は、判例上、婚姻関係が破綻した状態で締結された契約や、円満な状態で締結されていても破綻後に取消しが問題になるものについては取消権が制限されることになっています。

したがって、円満な状態で締結されていても、破綻後であれば取消しは制限されるので、夫婦間の契約取消権があるから、婚後契約は一律無意味だ、ということにはなりません。

また、既に述べたように、財産分与や婚姻費用の仕方のルールを定めたり、特有財産の範囲についての認識を確認しておいたりすることは、果たして契約といえるのか、という問題もあるのではないか、と思います。

ここまでのポイントをまとめると,

・通常は、婚後契約を考える方は少ないかもしれないものの、スタートアップオーナーに出資を考えているエンジェル投資家が夫婦間の諍いに巻き込まれたり、会社価値を毀損されたりすることを懸念し、責任財産の減少を許さないという第三者の立場から、Bさん、Cさん夫婦に、婚後契約を締結を求める、ということはあり得るでしょう。

・既に述べたように、婚前契約のような幅広い契約は婚姻後には結べず、不可変更性の原則への抵触がないようにする必要があります。

そのため、一般的には、婚姻費用の決め方、財産分与の株式の評価の決め方、特有財産の範囲についての事実認識などを決めることがポイントになりそうです。

・婚後契約は、不可変更性の原則への抵触や、夫婦間の契約取消権の対象になる恐れはあるものの、今回のパターンでは、第三者から見た夫婦の責任財産ないしスタートアップオーナーの責任財産の減少を防止するという予防法務的側面から見るべきです。そして、万一、紛争の際に、双方が署名・押印した婚後契約書が出てくれば、作成の経緯なども踏まえて、立証の助けになることが期待できますし、当事者間の事実上の心理的な拘束的能力も期待できるといえます。

・いずれにしても、婚後契約は、スタートアップオーナーが、エンジェル投資家から出資を受けたい場合において、円満な婚姻関係状態において婚後契約を作成し、婚姻関係が悪化後に意味を有するものであるから、第三者から見た信用や責任財産の担保という観点を意識することも大事です。

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