調停や裁判の離婚届けの方法、離婚後の戸籍や姓(名字)について

 

調停や裁判の離婚届けの方法、離婚後の戸籍や姓(名字)について

 

「離婚すると、戸籍や名字はどうなるのでしょうか?」

「離婚後、子どもの戸籍を私の戸籍に入れるにはどうすれば良いのでしょうか?」

 

といったご相談を受けるケースがよくあります。

調停や裁判で離婚した場合、どのように離婚手続きをすればよいのか迷ってしまう方も多数おられます。

 

調停や裁判で離婚した場合でも、協議離婚のケースと同様に役所へ行って離婚届を提出しなければなりません。婚姻時に相手の戸籍に入った方は、離婚時に新しい戸籍を作るかどうかや離婚後の名字を選べます。

 

この記事では調停や裁判における離婚届の方法、離婚後の本人や子どもの戸籍や姓(名字)について、弁護士が解説します。

離婚後に届出を行う方、婚氏続称しようかどうか迷っている方や子どもを自分の戸籍に入れたい方などはぜひ参考にしてください。

 

1.調停や裁判の離婚でも届出をしなければならない

「調停や訴訟など裁判所の関与する手続きで離婚した場合、離婚届は提出しなければならないのだろうか?」

と疑問を持つ方が少なくありません。

 

結論的に、調停や裁判における離婚でも離婚届は必要です。離婚届をしなければ、いつまでも戸籍が書き換わりません。

 

ただし調停や裁判の場合、離婚自体は調停成立時や判決確定日に成立しています。届出によって離婚が成立するわけではありません。協議離婚の場合には届出日に離婚が成立するので、その点が根本的に異なる部分といえるでしょう。このため、調停離婚、審判離婚、和解離婚、裁判離婚は報告的届出といわれることがあります。

 

1-1.婚届の提出は当事者の義務

調停や裁判で離婚した場合、離婚自体は調停日や判決確定日、訴訟上の和解日などに成立しています。それにもかかわらず届出が行われなかったら、戸籍と実情が異なって混乱が生じてしまうでしょう。そこで調停や訴訟で離婚が成立した場合、当事者は「義務的に」離婚届を提出しなければなりません。

届出をしなかった場合には5万円以下の過料の制裁を科される可能性もあるので、注意が必要です。

 

外国法にしたがって離婚した場合

海外で外国法にしたがって離婚した場合でも、日本で届出をしなければ戸籍が書き換わりません。ただしこの場合、届出をしなくても過料の制裁は科されません。

 

1-2.離婚の届出の方法

調停や審判、訴訟などで離婚が成立した場合、どのようにして届出をすれば良いのでしょうか?必要書類や手順を確認しましょう。

 

必要書類

離婚が成立したことを証明するため、以下のいずれかの書類が必要です。

  • 調停調書
  • 審判書と確定証明書
  • 判決書と確定証明書
  • 和解調書
  • 請求の認諾調書

また届出人の身分証明書も必要となります。

最近、多用されている「調停に代わる審判」でも「確定証明書」が必要となりますので、主に調停手続きだからといって法形式をよく確認するようにしておきましょう。

 

離婚届を提出する日には、役所に備え付けてある離婚届に必要事項を記入して役所へ提出します。ただし調停や審判、訴訟によって離婚する場合、相手の署名押印は不要です。離婚届けの証人も要りません。裁判所が証人になっていると考えられるからです。

届出を行う当事者が1人で役所へ行って離婚届を提出できます。

 

1-3.離婚届の義務者

調停や裁判で離婚する場合、離婚届は誰が提出しなければならないのでしょうか?

基本的には「離婚を請求した人」(申立人)に届出義務があります。つまり調停であれば申立人、訴訟であれば原告が届出をしなければなりません。

ただ相手方や被告が婚姻時に戸籍や姓を変えた側である場合、離婚届の際に新しい戸籍を作ったり婚氏続称届を同時に行ったりするケースが多数です。そこで相手方や被告が離婚届を提出する方が便宜となります。

よって調停の相手方や裁判の被告が婚姻時に戸籍や姓を変えた側である場合には、「相手方や被告の申出により離婚した」ことにして、相手方や被告から離婚届を提出できるようにするのが一般的です。男性が申立てをして、結局、離婚することになった場合、婚氏続称の関係から女性で手続をすることが望ましいので、「申立人と相手方は、本日、相手方の申出により調停離婚する」という記載になることがあります。

 

そうすると、届出義務者は調停の相手方や裁判の被告となります。

なお離婚届けの義務者を相手方や被告にできるのは、調停や調停に代わる審判、和解によって離婚する場合です。判決で離婚する場合にはそういった柔軟な対応ができないので注意しましょう。

 

2.離婚後の戸籍について

離婚すると戸籍も変わります。どのように変わるのか、当事者にどういった選択肢があるのか確認しましょう。

 

婚姻時には、夫婦と子どもが同じ戸籍に入っています。ところが離婚すると、婚姻時に相手の戸籍に入った配偶者は婚姻時の戸籍から抜けます。

そのとき、抜けた配偶者は以下の2つの方法から新しい戸籍をどのようにするか選べます。

  • 婚姻前の戸籍に戻る(実家の戸籍に戻るなど)
  • 新しい自分1人の戸籍を作る

 

新しい戸籍を作る場合、日本の中であれば好きな場所を本籍地として指定できます。

 

2-1.婚姻前の戸籍に戻るメリットとデメリット

婚姻前の戸籍に戻る場合、多くのケースでは親が筆頭者となっている実家の戸籍に戻ることになるでしょう。この場合、戸籍謄本などが必要な際に親などの同じ戸籍に入っている方に取得してもらえるメリットがあります。元の家族と同じ戸籍に入ることで安心感を得られる方もいるでしょう。

 

ただし実家の戸籍に戻ると、姓は元の実家の姓に戻るので、婚姻時の姓を名乗り続けることはできません。また子どもがいる方の場合、子どもの戸籍を親の戸籍に入れることもできません。親、子、孫の3世代にわたる戸籍の編成はできないからです。

また実家の戸籍にはいったん婚姻をしてその後、戻ってきたことが明らかになるので、離婚経験があることを一見して知られてしまいます。離婚歴について気にする方にとってはデメリットといえるでしょう。

 

2-2.新戸籍を作るメリットとデメリット

新しい戸籍を作ると、新たに人生をやり直せるような気がするものです。精神的に前向きになりやすいメリットがあるでしょう。また子どもを自分と同じ戸籍に入れることもできますし、婚姻時と同じ性を名乗り続けることも可能です。一見しただけでは離婚経験があるかどうかわかりづらい点もメリットとなるでしょう。

 

ただし家族とは異なる戸籍になるので、戸籍謄本の取得を家族に依頼することはできなくなります。実家の戸籍に戻ってなるべく「離婚前と同じ状態」にしたい方に取ってもデメリットとなるでしょう。

 

 

実家の戸籍に戻るべきか新しい戸籍を作るべきかについて、正解はありません。ご本人の置かれた状況や考え方によって決めると良いでしょう。

ただし子どもがいて、子どもを自分と同じ戸籍に入れたい場合、婚氏続称したい場合には必ず新しい戸籍を作る必要があります。

 

3.婚氏続称

離婚後、姓(名字)がどのようになるのか心配したり迷ったりする方も多数います。

婚姻時に相手の姓に変えた方の場合、離婚後の姓は婚姻前の姓に戻すか婚姻時の性を名乗り続けるか選べます。

婚姻時の姓を名乗りたい場合、離婚後に役所へ「婚氏続称届」を提出しなければなりません。

離婚届と同時に出せるので、婚氏続称を希望するなら離婚届を提出する際に一緒に婚氏続称届を提出するとよいでしょう。

 

すぐには婚氏続称するかどうか決められない場合、離婚後3か月以内であれば婚氏続称届を提出できます。ただし離婚後3か月をすぎると裁判所での手続きが必要になってしまうので、婚氏続称するかどうかについては早めに決定するのが良いでしょう。3か月を過ぎたあとの裁判所での婚氏続称のための手続きを「氏の変更許可の申立」といいます。

 

なおいったん婚氏続称を選んだあと、元の姓に戻したい場合にも同じく家庭裁判所で「氏の変更許可の申立」を行う必要があります。

 

婚氏続称すると新戸籍が編成される

婚氏続称をする場合には、実家の戸籍に戻ることができません。必ず新しい戸籍が編成されます。婚氏続称しようと決めているなら、新戸籍の本籍地も決めておくと良いでしょう。

 

4.子どもの戸籍と姓について

子どものいる方が離婚する場合、子どもの戸籍と姓についての知識も必要です。

「親権者になれば当然に子どもの戸籍も自分と同じになる」と思いこんでいる方もいますが、実際にはそうではありません。

離婚して一方の当事者が他方当事者の戸籍から抜けても、子どもの戸籍は元のまま残ってしまいます。子どもの姓もそのままになるので、親権者となった側が婚姻前の姓に戻った場合、子どもと親権者の姓が異なる状態になってしまいます。

 

4-1.子どもの戸籍と姓についての具体例(母親が父親の戸籍に入っていたケース)

たとえば婚姻時に母親が父親の戸籍に入り、子どもが生まれたとしましょう。離婚時には母親が子どもの親権者となるよう合意しました。この場合、離婚しても母親が父親の戸籍から抜けるだけで、子どもの戸籍は父親の戸籍に残ったままになります。母親が実家の戸籍に戻って名字を戻しても子どもの名字は父親のもののままなので、親権者であるにもかかわらず子どもと母親の名字が異なる状態になってしまいます。

 

 

4-2.子どもの戸籍や姓を変更する方法

親権者と子どもの戸籍や姓が異なる状態になった場合に子どもの戸籍や姓を親権者と同じものに揃えるには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」をしなければなりません。多くは、女性が親権者となり、母の旧姓にこどもの氏を改めるという場合です。

家庭裁判所で氏の変更が許可されれば、子どもは親権者の戸籍に入り、親権者と同じ姓となります。

一般に、離婚後の子の氏の変更許可申立は比較的簡単に認められますが、時間が経過しすぎると認められない可能性もあるので、気を付けましょう。基本的には、特別な事情がなくても「母の離婚に伴い、子も同じ氏にする必要があるため」「親権者と同じ戸籍に入りたい」「社会生活上、親権者と同じ名字を名乗る必要がある」などと説明すれば変更が認められると考えられます。

 

4-3.新戸籍が編成される

子どもを親権者と同じ戸籍に入れる場合、親権者は元の実家の戸籍には戻れません。実家の戸籍を3世代(親、子、孫)にできないからです。これを、三代戸籍禁止の原則と呼びます。

ですから、こどもがいる場合は、新戸籍を作ることがおすすめです。

必ず親権者を筆頭とした戸籍を編成し、そこに子どもを入れる必要があります。

婚氏続称しない場合でも新戸籍の編成が必要になるので、間違えないように覚えておきましょう。

 

4-4.子の氏の変更許可申立ができる人

子の氏の変更許可の申立は、子どもが14歳以下の場合は親権者が行いますが、子どもが15歳以上の場合には子どもが行います。また役所への届出は、親だけではなく子どもからもできます。

4-5.子どもの選択肢

子どもが子の氏の変更許可申立によって性や戸籍を変更された場合、18歳に達すると、そのときから1年以内であれば子ども自身が入籍の届出をするだけで以前の姓に戻れます。

また子どもが成人すると親の戸籍から出て、自分だけの新しい戸籍を作ることも可能です。

 

5.渉外離婚の場合

渉外離婚とは、外国人が関連する国際的な離婚をいいます。外国人の場合、日本人と違って戸籍が編成されません。結婚しても婚姻した日本人の戸籍が書き換わるだけです。夫婦が同じ姓になるわけでもありません。

名字が変わらないので離婚後も婚氏続称などの問題は起こりません。ただし日本人が戸籍法により外国人配偶者の姓に変更していた場合、離婚後3か月以内であれば家庭裁判所の許可がなくても婚姻前の姓に戻れます(戸籍法107条3項)。3か月をすぎると家庭裁判所で氏の変更許可申立をしなければならないので、婚姻前の姓に戻りたい場合には急いで手続きした方が良いでしょう。

 

子どもが外国人の親の姓を名乗りたい場合

親の離婚後に子どもが外国人の親の姓を名乗りたい場合には、家庭裁判所の許可が必要です。戸籍法において、父親または母親が外国人の場合において、子どもが親の外国の名字に変えたい場合には家庭裁判所の許可が必要になる、と規定されているためです(戸籍法107条4項)。

 

戸籍法107条 やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

② 外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。

③ 前項の規定によつて氏を変更した者が離婚、婚姻の取消し又は配偶者の死亡の日以後にその氏を変更の際に称していた氏に変更しようとするときは、その者は、その日から三箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。

④ 第一項の規定は、父又は母が外国人である者(戸籍の筆頭に記載した者又はその配偶者を除く。)でその氏をその父又は母の称している氏に変更しようとするものに準用する。

第百七条の二 正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

 

6.戸籍や名字についてご不明点があれば、お気軽にご相談ください

離婚後の戸籍や名字についての取り扱いは非常に複雑です。混乱してしまう方も多いでしょうし、どうすべきか悩まれる方も多いでしょう。

名古屋駅ヒラソル法律事務所では離婚問題似積極的に取り組んでおり、戸籍や姓、子どもの問題についても多数の案件でアドバイスしてきた実績があります。離婚について不安な点がありましたら、お気軽にご相談ください。

依頼者様の想いを受け止め、
全力で取り組み、
問題解決へ導きます。

の離婚弁護士

初回60
無料相談受付中

052-756-3955 受付時間 月曜~土曜 9:00~18:00

メールでのお申込み

  • 初回相談無料
  • LINE問い合わせ可能
  • 夜間・土曜対応
  • アフターケアサービス

離婚問題の解決の最後の最後まで、どんなご不安・ご不満も名古屋駅ヒラソルの離婚弁護士にお任せください。