セックスレスは離婚原因になる?慰謝料請求できるかどうかも解説

 

セックスレスは離婚原因になる?慰謝料請求できるかどうかも解説

 

「セックスレスの状態ですが、離婚できますか?」

といったご相談を受けるケースがよくあります。

 

結論的に、セックスレスが離婚原因になる場合はありますが、ならない場合もあります。またセックスレスで離婚する場合、慰謝料が発生するケースもしないケースもあります。

 

どういった事情があれば離婚できて慰謝料を請求できるのかなど、状況ごとの取り扱いを把握しておきましょう。

 

この記事ではセックスレスが離婚原因になるのか、弁護士が解説します。配偶者から性交を拒否されていたり、結婚相手が性交不能であることが発覚したりした場合にはぜひ参考にしてみてください。

 

1.セックスレスとは

セックスレスとは、夫婦の性交渉が長期にわたって行われない状態です。

セックスレスにはいろいろな原因があり、それ自体が違法というわけではありません。

ただ一方が性交渉を望んでいて他方が拒否し続けるなどの事情があると、夫婦関係の維持は難しくなってくるでしょう。特に若い夫婦ほどそれは妥当するようにも思います。法的にも「婚姻関係を継続しがたい重大な事由」として裁判上の離婚が認められる可能性があります。

 

ただしセックスレスの夫婦にはいろいろな事情があり、すべてのケースで法的な離婚理由になるとは限りません。

 

2.セックスレスで離婚できるかどうかの判断基準

実際にセックスレスで離婚が認められるかどうかについては、以下のような事情を総合して判断されます。

  • 婚姻中における夫婦それぞれの態度
  • 婚姻継続の意思の有無
  • セックスレスの理由
  • セックスレスの期間
  • 夫婦それぞれの年齢や病気の有無などの状況

 

「婚姻が男女の精神的・肉体的結合であり、そこにおける性関係の重要性に鑑みれば、病気や老齢などの特段の事情のない限り、婚姻後長年にわたって性交渉のないことは、原則として婚姻を継続し難い重大な事由に該当する」と判断した裁判例もあります(京都地裁昭和62年5月12日)。

 

たとえば若くて健康な夫婦のケースにおいて、一方がセックスを拒否し続ける場合、正当な理由がなければ婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、離婚が認められる可能性があります。

参考になる裁判例として、京都地裁昭和62年5月12日判決があります。これは、夫には性的興奮がなく、婚姻に際して性交不能を告げておらず、3年半の同居期間中性交渉がなかったという事案です。

裁判所は、「婚姻が男女の精神的・肉体的結合であり、そこにおける性関係の重要性に鑑みれば、病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意があるような特段の事情のない限り、婚姻後長年にわたり性交渉のないことは、原則として婚姻を継続し難い重大な事由に当たる」として、婚姻前に告知しなかったことについて信義則違反があるとして離婚を認めています。

 

このように、性交不能、性交拒否がすべて直ちに離婚原因になるわけではなく、一方的な性交拒否が愛情の喪失・不存在を示すようなものであったり、婚姻前に知っていたにもかかわらず告げなかったような場合に、離婚原因があるとみるべきものと思われます。

 

単に性交渉がなかったという事実のみによって離婚の可否が判断されるのではなく、婚姻中の生活全般をみて夫婦関係が破綻しているかどうか判断されるものと考えましょう。

 

2-1.離婚の目安となる年数

セックスレスで離婚が認められるかどうか判断されるときには、期間もポイントになります。目安となる期間はおよそ1年です。もっとも、夫婦の年齢にもよるのではないかと思います。

1年以上特に理由もないのに性交渉を拒否され続けたら、離婚できる可能性があると考えましょう。

一方、性交渉を拒否した期間はせいぜい1~2か月などの場合、セックスレスによる離婚は認められにくくなります。ただし結婚後に1回もセックスをしていない場合や、極端に回数が少ない場合、セックスレスの期間が1年未満でも離婚が認められる可能性がないとはいえないでしょう。

 

 

セックスレスの期間が長い場合

セックスレスの期間が長ければ必ず離婚できるわけでもありません。性交性のない期間が長くなりすぎると、反対に「セックスをしなくても円満な夫婦関係を維持できる」と判断される可能性があります。そうなると、やはり離婚は認められません。

 

 

2-2.夫婦関係が破綻しなければ離婚はできない

セックスレスで離婚が認められるのは、セックスレスが原因で夫婦関係が破綻した場合です。

たとえば性交渉を拒否するので夫婦関係が不和となり喧嘩が絶えなくなったり別居したりお互いに夫婦を続けていく意思を失ったりすると、離婚が認められやすいでしょう。

一方、セックスレスでも夫婦仲が悪くない場合やお互いが不満を感じていない場合もあります。そういったケースではセックスレスであっても法律上の離婚原因になりません。

 

 

セックスレスによって婚姻関係が破綻したかどうかの判断は、専門知識がないと正確にはできないでしょう。配偶者とのセックスレスの状態が長く続いていて離婚を検討している場合、一度弁護士までご相談ください。

 

3.セックスレスが離婚原因になる状況

以下のような場合、セックスレスが離婚原因として認められやすくなります。

 

  • 夫婦のどちらかが特に理由もなく一方的に性交渉を拒絶し続ける
  • 相手の不貞行為(浮気・不倫)を理由としたセックスレス
  • 相手が性交不能なのに隠されて結婚した
  • お互いに愛情がなくなってセックスをしなくなり、離婚を望んでいる
  • 一方が子どもを望んでいるが相手が性交渉に応じてくれない
  • 相手が性交不能

 

夫婦のどちらかがセックスを一方的に拒絶する場合や、一方が子どもを望んでいるのに相手が性交渉に応じてくれない場合、セックスレスは離婚原因になります。このように、セックスレスも一つですが、こどもをめぐる価値観の相違という側面でもあります。

浮気や不倫が原因の場合にもセックスレスになるケースが多いですが、こういったケースでももちろん離婚原因として認められます。

お互いに愛情を持てなくなって自然にセックスレスになった場合であっても、夫婦双方が離婚を望んでいれば離婚理由が認められます。

 

4.セックスレスが離婚原因にならない状況

以下のような場合、セックスレスであっても離婚は認められにくくなります。

 

  • セックスレスであってもお互いに夫婦として愛情を持っている
  • 性交渉をしないことに夫婦が互いに同意している
  • 高齢のため性交渉をしなくても夫婦関係に問題が生じない
  • 単身赴任などで物理的にセックスができない
  • 仕事が忙しい時期なのでセックスをする余裕がない
  • うつ病などの病気で性交渉ができない
  • 妊娠によって一時的にセックスができない

 

5.セックスレスの証拠

セックスレスで離婚を認めてもらうには、証拠を提出しなければなりません。

ただセックスレスの場合、証拠を集めにくい特徴があります。

たとえば相手から性交渉を拒否された場合、「拒否された証拠」を集めるのは簡単ではないでしょう。相手が「セックスを拒否したことはない」と言ってきたら、証明が難しくなる可能性があります。

 

以下のようなものがあれば、セックスレスの証拠にできるので訴訟提起前にできるだけ多く集めましょう。

  • 相手がセックスを拒否していることがわかる音声の録音記録
  • セックスを拒絶されたときの詳細な事情を書いた日記やメモ
  • LINEやメールでセックスを誘ったけれども何度も断られていることがわかる記録
  • セックスレスについて相談していた親族や友人知人による証言
  • 相手の親にセックスレスについて相談したときの手紙など

 

自分で日記やメモを残す場合、断られたときの状況や話した内容を可能な限り、詳しく記す必要があります。夫婦の生活状況をタイムスケジュールにして示すと、性交渉が可能なタイミングがあったかどうか判断しやすくなるので、作成してみてください。

 

セックスレスの証拠を集めるには、裁判の専門的な知識も必要になります。迷ったときには弁護士までご相談ください。

 

6.セックスレスによる慰謝料請求について

セックスレスが原因で離婚する場合、慰謝料を請求できるケースもあります。

ただし全ての事案で慰謝料が発生するわけではありません。

慰謝料が発生するのは、夫婦のどちらか一方に非があって不法行為が成立する場合に限られます。どちらかに不法行為が成立すると、被害を受けた(精神的苦痛を受けた)側が加害側へ離婚慰謝料を請求できるのです。

 

以下ではセックスレスで慰謝料請求が認められやすい状況と認められにくい状況について、お伝えします。

 

6-1.セックスレスで慰謝料請求が認められやすい状況

セックスレスで慰謝料請求できるのは「性交渉が可能であるにもかかわらず、正当な理由なく一方的に拒否した場合」です。

若くて健康な夫婦であるにもかかわらず一度も性交渉に応じてくれない、などの事情があれば慰謝料を請求できる可能性が高くなるでしょう。昔は夫婦であれば子どもがいて当たり前という価値観もあり、性交渉の拒否は、高額な慰謝料の根拠とされる傾向があったように見られます。ただ、近時は正面からセックスレスのみが離婚原因として争われているケースは少ないのではないか、と思います。

 

不貞行為が原因の場合

一方の不貞行為が原因でセックスレスになるケースもよくあります。その場合には、不貞行為による慰謝料も発生し、金額も高くなります。

 

実際、以前には普通に性交渉をしていたのに、突然セックスを拒否され始めた場合、不貞行為が原因となっているケースが多いので注意して相手の行動を観察してみてください。

 

6-2.セックスレスで慰謝料請求が認められない状況

以下のような場合、セックスレスで離婚するとしても慰謝料請求は認められません。

 

  • 夫婦の双方がセックスを望んでいない
  • どちらともなくセックスをしなくなった
  • 協議離婚や調停離婚でお互いに合意して離婚した
  • 病気や高齢を理由にセックスをしなくなった

 

夫婦のどちらもセックスを望んでいない場合、どちらに非があるともいえないので慰謝料は発生しません。また3か月に1回は性交渉に応じてくれるなど、セックスレスの程度が軽い場合にも慰謝料は認められにくいでしょう。

 

また協議離婚や調停離婚では、細かい離婚理由を問わず「お互いが慰謝料を請求しない」条件で離婚するケースが多々あります。そういったケースでも慰謝料請求はできません。

 

 

6-3セックスレスの慰謝料の相場

セックスレスが原因で離婚する場合の慰謝料の相場は、数十万円~200万円程度です。

ただし具体的な事情により慰謝料の額は変動します。不貞行為があれば慰謝料が300万円程度に上がる可能性もあります。

 

 

慰謝料が高額になりやすい事情

セックスレスが原因による離婚の慰謝料相場は、次のような要素があると高額になりやすい傾向があります。

 

  • セックスレスの期間が長い
  • 性交渉を拒絶したときの態度がひどい(無視する、暴言を吐くなど)
  • 結婚後、1回もセックスしたことがない
  • 相手が不貞行為をしている
  • セックスを拒絶された側が初婚

 

7.セックスレスで離婚や慰謝料が認められた裁判例

最高裁判所の判例では「夫婦の性生活」は「婚姻の基本となるべき重要事項」と判断されています(最高裁昭和37年2月6日)。

またセックスレスを「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚を認め、慰謝料を認容した裁判例も多数あります。以下でセックスレスを理由に離婚や慰謝料が認められた裁判例をご紹介します。

 

200万円の慰謝料が認められたケース(京都地方裁判所昭和62年5月12日)

結婚してから約3年半の間、夫婦が同居していましたが、その間1回も性交渉をしませんでした。夫は性交不能である事実を妻へ婚姻前に告げていなかった事案です。

慰謝料の金額…200万円

 

120万円の慰謝料が認められたケース(福岡高等裁判所平成5年3月18日)

結婚当初は性交渉を2~3回行って子どももできましたが、その後セックスが全くなくなりました。夫はAVで自慰行為をしていた事案です。

慰謝料の金額…120万円

 

150万円の慰謝料が認められたケース(名古屋地方裁判所昭和47年2月29日)

結婚した当初は性交渉があって子どもも生まれましたが、その後は性交渉を拒否するようになりました。夫は男性と同性愛の関係をもっていたケースです。

慰謝料の金額…150万円

 

8.協議離婚や調停離婚なら離婚原因は問われない

セックスレスが原因で離婚を希望しても、離婚訴訟となれば必ず離婚が認められるとは限りません。

一方、協議離婚や調停離婚であれば、セックスレスでも他のどういった原因であっても離婚できます。協議離婚や調停離婚の場合、離婚の理由は問題にならないからです。

夫婦の両方が「離婚すること」に合意さえしていれば離婚できます。

 

8-1.協議離婚や調停離婚と慰謝料

協議離婚や調停離婚の場合、夫婦のどちらも悪くない場合や、そもそもセックスレスが裁判上の離婚原因にもならないような状況であれば慰謝料は発生しないケースが多数です。

一方、協議離婚や調停離婚であっても正当な理由なくひどい態度でセックスを拒否し続けられた場合や不倫された場合などには慰謝料を請求すると良いでしょう。

 

8-2.協議離婚する場合の注意点

協議離婚する場合には、必ず離婚条件を公正証書にまとめましょう。公正証書にしておくと、後で相手が財産分与や慰謝料、養育費などを払わなくなったときにすぐに差し押さえができるからです。公正証書がなかったら、あらためて訴訟や調停をしなければ差し押さえができません。訴訟や差し押さえを準備している間に資産を隠されるおそれもあります。

公正証書を作成する際には手間と費用がかかりますが、そういったコストをかけておく価値はあるでしょう。

相手に公正証書作成を打診して了承を得た上で、2人で公証役場へ行って離婚公正証書を作成しましょう。

 

9.子どもの親権や養育費とセックスレスの関係

セックスレスと子どもの親権や養育費には何の関係もありません。

セックスを拒否したために慰謝料を払わなければならない側が親権を取得することも可能ですし、養育費も請求できます。

親権については、主となって子どもを養育してきた側や、離婚後に子どもを育てていくための体制をしっかり整えている側、別居しているなら子どもと一緒に暮らしている側が有利になります。

 

まとめ~セックスレスの離婚はお気軽にご相談ください

セックスレスで離婚を考えても、すぐに離婚しなければならないとは限りません。相手と話し合ってわかりあえれば解決できる可能性もあります。一方、夫婦関係が修復不可能になっていたら離婚せざるをえないでしょう。セックスレスで離婚すべきかどうかについては、状況に応じた判断が必要となります。

 

名古屋駅ヒラソル法律事務所では、離婚問題に積極的に取り組んでいます。離婚すべきかすべきでないか、慰謝料を請求できるのかなど、丁寧にアドバイスさせていただきますので、迷われたときにはお気軽にご相談ください。

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