【ワンオペ育児】相手が家事育児に非協力的な場合、離婚できる?

 

【ワンオペ育児】相手が家事育児に非協力的な場合、離婚できる?

 

相手が家事や育児にあまりに非協力的な場合、離婚を考えてしまうものです。

最近では「ワンオペ育児」に悩む方も増えています。

法律的に「家事や育児に協力してくれない」ことを理由に離婚できるのでしょうか?

 

今回は相手が家事や育児に協力してくれないときに離婚する方法を解説します。

ワンオペ育児に疲れてしまった方はぜひ参考にしてみてください。

 

1.ワンオペ育児とは

ワンオペ育児とは、家事や育児を1人の配偶者が背負い込み、他方がほとんど協力しない状態をいいます。

 

ワンオペとは英語のone operetion(ワンオペレーション)の略語です。ワンオペレーションとは、一連の作業を1人が行うことを意味します。育児という作業を1人の配偶者がすべてこなさねばならないので、ワンオペ育児といわれるようになりました。

 

ワンオペ育児の状態になると、育児を担っていう側の負担が非常に大きくなります。特に共働きであるにもかかわらず女性の側に一方的に家事や育児の負担がかかってくるケースが多数です。ワンオペ育児状態になると、精神的にも肉体的にも追い詰められてしまうでしょう。一例を挙げれば、夜泣き対応、夜間の授乳、慢性的な睡眠不足が挙げられます。また、相談相手が限られてしまう可能性があると悩みを抱えやすいという面もあります。

相手があまりに家事や育児に非協力的な場合には、離婚を考えてしまうのもやむを得ません。

 

統計的にも、「6歳未満の家庭」の「一週間の家事時間、育児時間」は、男性が1時間23分、49分であるのに対して、女性は、7時間34分、3時間45分であるとされています。(総務省統計局「平成28年社会生活基本調査」)

2.専業婦主婦でもワンオペ育児といえるのか

ワンオペ育児が問題となるのは、主に夫婦共働きのケースです。

専業主婦の場合でもワンオペ育児といえるのでしょうか?

 

確かに専業主婦の場合、家を守るのが仕事なので「家事や育児を全面的に担っても当たり前」と思われがちです。

しかし夫の仕事には休暇や休日がもうけられているのに対し、妻の家事育児には休日などありません。子どもが小さければ目を離すこともできず、休憩時間すらとれないでしょう。

妻が専業主婦だからといって、100%すべて妻が家事育児をすべき、という結論にはなりません。専業主婦の家庭であってもワンオペ育児の状況はありうると考えるべきです。

 

夫があまりに家事育児に非協力的であれば、妻が離婚を考えるようになってもやむを得ないといえるでしょう。

 

3.ワンオペ育児で離婚できるのか?

夫が家事や育児を全く手伝わずワンオペ育児状態になったら、離婚できるのでしょうか?

離婚できるかできないかは具体的な状況によって異なるので、以下で場合分けしてみていきましょう。

 

3-1.夫が離婚に同意する場合

協議離婚や調停離婚では、相手方が離婚に同意すれば離婚することができます。

ワンオペ育児で離婚できるかどうかは、相手が離婚に応じるかどうかで変わります。

相手が離婚に応じる場合には、協議離婚や調停離婚ができます。

協議離婚や調停離婚の場合、離婚理由は何でも良いからです。

夫婦の双方が「離婚」に納得さえしていれば、離婚が成立します。

 

ただし、多くは、6歳未満の小さなお子さんがいるケースもあり、養育費については、公正証書に残すなど弁護士の助力を得るのが望ましいケースもあります。

 

ワンオペ育児で相手と一緒に暮らすのが耐えられない場合、まずは相手と話し合って協議離婚を目指すのが良いでしょう。

 

3-2.夫が離婚に同意しない場合

相手が離婚に応じない場合には家庭裁判所で調停を申し立てなければなりません。

それでも相手が離婚に同意しなければ、離婚訴訟を提起して裁判所に離婚を認めてもらう必要があります。

 

ただ離婚訴訟を提起しても、裁判所が常に離婚を認めてくれるわけではありません。

訴訟で離婚を認めてもらうには、法律上の離婚理由が必要だからです。

原告(離婚を求める側)が法律上の離婚理由を証明できなければ、離婚請求は棄却されてしまいます。

 

法律上の離婚理由は以下の5つとなっています。

  • 不貞

相手が不倫(不貞)した場合です。

  • 悪意の遺棄

相手が生活費を払ってくれない場合や家出された場合などです。

  • 3年以上の生死不明

相手が生死不明な状態になって3年以上が経過していたら離婚が認められます。

  • 回復しがたい精神病

相手が重度の統合失調症などの精神病にかかっていたら、一定の要件を満たすときに離婚が認められる可能性があります。

  • その他婚姻関係を継続しがたい重大な事由

上記の4つに直接該当しなくても、夫婦関係が破綻して修復不可能な状態になっていたら離婚が認められます。

 

ワンオペ育児で相手が家事や育児に協力してくれないことは、直接的には法律上の離婚理由に該当しません。

ただし相手が家事や育児に非協力的な態度をとるために夫婦関係が悪化して、もはや修復不可能な状態になっていたら「その他婚姻関係を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性があります。

その場合には、裁判によって離婚を認めてもらえます。

 

3-3.婚姻を継続しがたい重大な事由が認められるケース

ワンオペ育児が原因で婚姻を継続し難い重大な事由が認められるのは、以下のようなケースです。

 

  • 長期間別居していて別居中、夫婦の交流がほとんどない
  • ワンオペ育児が理由で夫婦関係が悪化してケンカが絶えない状態となっており、夫婦の双方ともにやり直す気持ちを持っていない

 

ワンオペ育児状態に耐えられないのであれば、一度別居して相手と距離を置くのが良いでしょう。その方が、訴訟で離婚が認められる可能性も高まります。

 

ワンオペ育児でも法律上の離婚理由が認められるケース

なお以下のような場合には法律上の離婚理由が認められるので、ワンオペ育児状態になっているかどうかにかかわらず訴訟で離婚が認められます。

 

  • 相手が不倫(不貞)している
  • 相手から暴力を振るわれている
  • 相手からモラハラ被害を受けている
  • 相手が生活費を払ってくれない
  • 相手が家出して戻ってこない

ワンオペ育児の場合、モラハラも伴っていると評価できる場合もあるかもしれません。

3-4.和解で解決する方法

裁判(離婚訴訟)になって判決を出してもらう場合には、夫婦関係が破綻していることを裁判所で証明しなければなりません。

「家事や育児に非協力的」とだけ主張しても離婚を認めてもらえない可能性があります。

判決になったら請求が棄却されてしまうでしょう。

 

ただ訴訟になった場合には和解(裁判上の和解)で解決できるケースがよくあります。

裁判上の和解とは、当事者同士が話し合って裁判を終わらせることです。

和解は訴訟手続のいつでも行うことができます。実際に離婚訴訟では、裁判官が間に入って夫婦間の話し合いを調整してくれるケースが多数あります。

 

和解であれば、法律上の離婚理由がなくても問題なく離婚ができます。

 

ワンオペ育児の離婚訴訟の途中で裁判官から和解の勧告があったら、一度話し合いの席についてみるようおすすめします。

4.ワンオペ育児で離婚する手順

ワンオペ育児で離婚したい場合には、以下のように進めましょう。

 

STEP1 相手と話し合う

まずは相手と離婚について話し合ってみるべきです。

相手も離婚に応じるのであれば、協議離婚できます。協議離婚であれば法律上の離婚理由を証明する必要はありません。2人が離婚届を作成して役所へ提出するだけで離婚が成立します。

ただ協議離婚であっても、財産分与や養育費などの事項についてはきちんと取り決めをしておきましょう。そうしないと、離婚後に請求しなければならなくなって紛争の蒸し返しが起こってしまう可能性があります。

 

離婚公正証書を作成する

協議離婚する場合には、必ず弁護士に相談して、離婚公正証書を作成しましょう。

離婚公正証書とは、協議離婚の条件をとりまとめた契約書を公正証書化したものです。

 

ワンオペ育児で離婚する場合には、多くのケースでこちらが子どもの親権者となるでしょう。その場合離婚後も相手に養育費を払ってもらわねばなりません。養育費が払われるようにするために公正証書が必要です。

 

単なる口約束や当事者同士で作成した書面だけでは、相手が払わないときに給料等の差し押さえができません。公正証書があれば、滞納されたときにすぐに差し押さえができてスピーディに取り立てができます。公正証書があれば、強制執行の後、財産開示等の手続にも複雑な手続を経ることなく、移ることができます。

 

お近くの公証役場へ申込みをしたら離婚公正証書を作成してもらえるので、ひと手間かけても公正証書を作成しておきましょう。

 

☆コラム ワンオペ育児で離婚する場合

ワンオペ育児で離婚する場合、お子さんが小さい場合が多いといえます。例えば、1歳ということもあるかもしれません。養育費が20歳までとすると、19年間の養育費を決めるものは、長期に及びます。仮に、未払いになっても公正証書で決めておくと、過去分も含めて回収できる可能性がないとはいえないでしょう。

相手に資力がないケースもありますが、中には再婚して意図的に支払ってこないケースもあります。その場合は、預金や給与に強制執行をすることができる可能性が高まる公正証書か、調停調書を持っておくと安心でしょう。もちろん、相手に預金があるとは限りませんし、勤務先も民事執行法の改正を踏まえても、簡単には知り得ません。ただ、財産開示を経た後であれば、養育費債権については、第三者からの情報取得手続で勤務先を知ることができるかもしれません。

こうしたことからも、養育費は、口約束ではなく、公正証書か、調停調書にしておくのが良いでしょう。

 

STEP2 相手が離婚を拒否するなら別居する

相手が離婚を拒絶するなら、一度別居しましょう。

別居したら、相手も現実を受け止めて離婚する気持ちに変わる可能性があります。もっとも、逆に「自分は働いているのだから、子育ては妻がするのが当たり前であり、家事は、少しは手伝っていた。自分は被害者である」という昭和的価値観がはっきりするケースもあります。

また子どもを連れて出た場合やこちらの収入が相手より低い場合などには、相手へ生活費(婚姻費用分担請求)も請求できます。

 

 

STEP3 離婚調停を申し立てる

相手が協議離婚に応じない場合には、家庭裁判所で離婚調停を申し立てましょう。

調停とは、家庭裁判所で調停委員会を介して相手と話し合うための手続きです。

調停では調停委員が間に入って話を進めてくれるので、相手と顔を合わせて直接話す必要はありません。

調停委員が解決案を提示してくれて、お互いが納得できて離婚が成立するケースもよくあります。

もっとも、離婚意思が固い場合は弁護士を代理人にしておくことをすすめます。

なぜなら、調停委員は多くは60代の人が多いのではないか、と推測します。

これらの人は、「昭和」の価値観の人が少なくない可能性も否定しきれません。昭和的価値観にシンパシーを感じている人の場合、ワンオペのつらさを伝えても伝わらない可能性があります。

また、昭和的調停委員に、「これくらい『昭和』の時代では当たり前だよ」「我慢しなさい」といわれてしまうときもあるのです。

公正中立とされる立場の人が、「昭和の人」だと、適切な解決策の提示が得られない可能性がある場合もあるからです。

そのため、適切な代弁をしてくれる弁護士を代理人として選任しておく必要があるのです。

ワンオペ育児が理由でも相手が離婚に納得すれば離婚ができます。

 

ただし相手が離婚に同意しない場合には調停は不成立になり、離婚できません。

 

STEP4 離婚訴訟を検討する

相手が離婚に同意せず調停が不成立になってしまった場合には、離婚訴訟を検討しましょう。離婚訴訟において法律上の離婚理由を証明できれば、裁判所が判決で離婚を認めてくれます。裁判上の和解によって離婚できる可能性もあります。

 

ただ離婚訴訟で離婚するには、基本的に法律上の離婚理由の証明が必要と考えるべきです。

法律上の離婚理由がないのに離婚訴訟をするかは、弁護士さんと相談して決めることをおすすめします。

多くは、法律上の離婚理由と併せて、離婚訴訟を検討する方が良いでしょう。

  • 長期間別居していて相手と交流がほとんどない
  • 相手が不倫をしていて肉体関係を証明できる証拠を持っている
  • 相手から暴力を受けていて、暴力を証明できる証拠がある
  • 相手が長期にわたって生活費を払っていない
  • 相手が家出した
  • 相手は離婚を拒否してはいるが夫婦関係は極めて悪化しており、訴訟になれば気が変わって離婚する方向での和解に応じる可能性がある
  • 相手は離婚を拒否してはいるが夫婦関係が極めて悪化しており、婚姻関係を継続できないと認めてもらえる可能性がある

 

離婚訴訟で離婚が認められるかどうかの判断は専門知識がないと困難です。迷ったときには弁護士までご相談ください。

 

5.ワンオペ育児で慰謝料を請求できる?

ワンオペ育児が原因で離婚する場合、相手に慰謝料を請求できるのでしょうか?

 

基本的にはワンオペ育児では慰謝料は発生しないと考えることが多いと思います。

以下でその理由をお伝えします。

 

慰謝料が発生するには夫婦の一方に「有責性」といって、民法709条の不法行為の要件を満たしている必要があります。

有責性とは、夫婦関係をもっぱらあるいは主として破綻させた事情です。その多くは、不貞(浮気)、暴力、性的異常などではないでしょうか。

 

たしかにワンオペ育児の場合、相手に責任があるともいえそうです。しかしワンオペ育児だけでは慰謝料が発生するほどの精神的苦痛を受けるとは考えにくいというのが裁判実務です。実際、ワンオペ育児状態でもそれだけでは離婚が認められません。

離婚原因とのバランスからしても、やはり慰謝料請求は難しいと考えましょう。

 

ただし以下のような場合には相手に慰謝料を請求できます。

  • 相手が不倫した
  • 相手から暴力を振るわれていた
  • 相手からモラハラ被害を受けていた
  • 相手が家出した
  • 相手が生活費を払わなかった

 

6.養育費や財産分与は請求できる

ワンオペ育児で離婚する場合でも養育費や財産分与は問題なく請求できます。

  • 養育費…子どもを養育するための費用。子どもが成人するまで請求できる。家庭裁判所に金額の基準が設定されている。
  • 財産分与…夫婦共有財産を分け合う手続き。婚姻中に積み立てた財産を夫婦で2分の1にするのが原則。ただし合意があれば別の割合で分けてもかまわない。

養育費や財産分与などの取り決めをしたら、必ず離婚公正証書にまとめましょう。

 

 

名古屋駅ヒラソル法律事務所では離婚案件に力を入れて取り組んでいます。ワンオペ育児にお悩みの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

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