DV(家庭内暴力)で離婚する方法、慰謝料について
DV(家庭内暴力)で離婚する方法、慰謝料について
配偶者から「暴力」を受けているなら、離婚を検討すべき状況かもしれません。
配偶者間の暴力を「DV(ドメスティック・バイオレンス 家庭内暴力)」といいます。
たとえ婚姻している夫婦であっても暴力は人格権を侵害する許されない違法行為です。法律上の離婚原因になりますし、離婚の際には慰謝料も請求できます。ただし,暴力が苛烈であったケースでも200万円程度が「上限」ではないか,という経験的な話となります。
我慢していると大ケガをしたり子どもにも悪影響を及ぼしたりして重大な被害が生じる可能性があるので、早めに配偶者暴力センターや離婚問題に専門的に取り組んでいる弁護士などに相談しましょう。
今回はDVで離婚できるケースや慰謝料、保護命令について解説しますので、相手から暴力を振るわれている方はぜひ参考にしてみてください。
1.DVとは
DVとは、家庭内で振るわれる暴力をいいます。日本で「DV」というと夫婦間の暴力を指すケースが多数です。
- 身体的暴力
殴る、蹴る、髪の毛を引っ張るなど身体へ直接加える暴力です。
- 精神的暴力
なじる、侮辱する、暴言を吐くなど精神的に追い詰める暴力です。
- 経済的暴力
生活費を渡さない、一切自由にお金を使わせないなど、消え罪面で追い詰める暴力です。
- 性的暴力
性行為を強要する、避妊を拒絶するなどの行為もDVになります。
- 社会からの隔離
実家や友人と会わせない、仕事をさせないなど社会から隔離しようとするパターンもよくあります。
DVには上記のような種類があり、必ずしも身体的な暴力ばかりとは限りません。
2.DVは犯罪になる
DVは重大な人格権の侵害であり、違法行為です。
特に身体的な暴力を振るったら夫婦間であっても「暴行罪」や「傷害罪」が成立しますし、性行為を強要すると「強制性交等罪」が成立する可能性もあります。
実際、警察におけるDVの認知件数はこの5年間で増え続けています。
平成27年には63141件だったところ令和元年には82207件となっており、その後もコロナウイルス感染症などの要因によってさらに増加しているといわれています。
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/115833.pdf
(2ページご参照)
ただDVは家の中という密室、しかも夫婦間という閉じた人間関係において行われるので、外部からは発覚しにくい傾向があるのも事実です。被害に遭っているなら、早めに女性センターや警察、弁護士に相談してみてください。
3.DVは離婚原因になる
DVは、法律上の離婚原因になります。
民法は5つの法定離婚事由を定めていますが、DVはその中の「その他婚姻関係を継続しがたい重大な事由」に該当するためです。
法定離婚事由に該当する場合、相手が拒絶しても裁判を起こせば離婚が認められます。またDVは「不法行為」に該当するので、離婚するなら慰謝料も請求できると考えましょう。
3-1.DVで離婚できるケース
DVを理由に離婚できるのは以下のようなケースです。
- 相手から日常的に暴力を振るわれ続けている
月に数回、週1回くらいのペースで相手から暴力を振るわれているなら、DVで離婚できる可能性が高いでしょう。
- 1回の暴力の程度がひどい
1回暴力を振るわれると2~3時間は止まらない場合、相手の暴力によって骨折などの大ケガをした場合などにはDVで離婚できる可能性が高くなります。
3-2.DVにならないケース
- 暴力の程度が軽く頻度が低い
10年間の婚姻期間中に1回だけ暴力を振るわれた、その際には1回頬を平手打ちされただけだったなど、暴力の程度が軽く頻度が低い場合には「DV」とは認定されない可能性も高くなります。そういったケースでは離婚も慰謝料請求も難しくなると考えましょう。
ご自身ではDVに該当するかわからない場合、弁護士へご相談ください。
4.DV離婚と慰謝料
DVで離婚する場合には、相手に慰謝料も請求できます。
裁判所が認める慰謝料の金額の相場は50万~200万円程度。ただし当事者間で合意ができればそれより高額な金額を定めてもかまいません。
また以下のような場合、慰謝料の金額が高額になる傾向があります。
- 婚姻期間が長い
- 暴力を振るわれた頻度が高い
- 暴力を振るわれた期間が長い
- 被害者が大ケガをした、後遺症が残った
- 被害者がうつ病などの精神病になった
5.DV離婚の注意点
5-1.直接話し合うと危険なケースが多い
一般に離婚する場合には夫婦が話し合って協議離婚するケースが多数です。
しかしDVを受けている場合、相手に離婚を切り出すのは難しくなるでしょう。相手がいきなり怒り出して暴力を振るわれ、身体に危険が及ぶ可能性も高くなります。慰謝料請求などもとうていできない方が多いでしょう。
そういったケースでは、家庭裁判所で「離婚調停」を申し立てなければなりません。
離婚調停をすると調停委員が間に入ってくれるので、相手と直接話さなくても離婚できます。相手も調停委員から説得されて離婚に応じる可能性が高くなりますし、慰謝料も払ってもらいやすくなります。
5-2.別居して身の安全を守る
相手からDVを受けている場合、同居したまま離婚を進めるのは困難です。
離婚調停を利用して顔を合わせないようにしても、同居している限り家で顔を合わせてしまうからです。調停で話し合った後、家で感情的になった相手から暴力を振るわれる危険が高まるでしょう。
DV案件で安全に離婚するには、離婚前の別居が必須です。その際、相手に住所を知られないように注意しなければなりません。
住民票を移さない、あるいは住民票を移すとしても役所の担当者の方に相手に住所を知らせないよう適切な措置をとってもらうなどの対応をしましょう。
また相手が実家に押しかけてくるケースも少なくありません。親を巻き込まないための配慮も必要です。
5-3.離婚調停を申し立てるときのポイント
離婚調停を申し立てるとき、相手に現住所を知られないよう注意しなければなりません。申立書には現在の住所ではなく、相手と同居していた住所を記載しましょう。
家庭裁判所内で相手から暴力を振るわれる可能性がある場合には「別室調停」を適用してもらうようお勧めします。別室調停とは、相手と別々の部屋で待機し、調停委員に移動してもらう方法による調停です。この方法であれば、裁判所内の廊下などで相手とすれ違う危険がありません。また呼び出し時刻や帰宅時刻をずらしてもらえたら、相手との鉢合わせを防ぎやすくなります。
事前に家庭裁判所へ「DV事案」であると報告し、配慮してもらえるようにお願いしましょう。弁護士にご依頼いただけましたら、弁護士が裁判所へ状況を伝えて調停にも同行しますので、安心して調停を進められます。
6.DVの証拠集め
DVで離婚したいときには「暴力の証拠」が必要です。「同居中に暴力を振るわれた」と主張しても加害者は認めないケースが多いからです。
「暴力なんて振るっていない」「軽く平手打ちしただけだ、妻が大げさで困っている」などといわれてしまいます。
DVを証明できなければ訴訟を起こしても離婚も慰謝料も認められません。
- 診断書、診療報酬明細書
- ケガをしている部位の写真や動画
- 相手から暴力を振るわれているときの音声録音
- 友人や親族に送ったメール
- 暴力について詳細に記した日記
- 友人や親族の陳述書、証言
- 警察に相談した記録
こういったものをなるべく多く集めておいてください。
7.DVの保護命令
相手からDVを受けていて、別居しても追いかけてこられる危険がある場合などには「保護命令」を申し立てましょう。
保護命令とは、裁判所から相手に被害者や被害者の家族、子どもへの接近を禁止してもらえる命令です。
保護命令が出たら、相手は被害者や被害者の実家の親族、子どもなどに接触できなくなります(具体的な命令内容はケースによって異なります)。違反すると逮捕されるので、ほとんどのDV加害者は命令が出たら被害者に近づかなくなります。
離婚を前提に別居するなら、家を出ると同時に保護命令を申し立てましょう。
保護命令を申し立てるには、事前に配偶者暴力相談支援センターや警察へ相談したり保護を求めたりしなければなりません。その実績を作った上で、地方裁判所で保護命令の申し立てを行う必要があります。申立書には暴力の内容を詳細に書かなければならないので、事前に相手からどういった暴力を受けてきたのか、まとめておくとよいでしょう。
8.DV離婚は弁護士へご相談を
DVで離婚する場合、被害者お1人では対応が困難なケースが多数です。
そもそも相手との力関係があるので、話し合っても対等に条件交渉しにくいでしょう。また,新しい出発をするために,福祉の利用を考えるべきときもあります。
あなたは,暴力を振るわれて身体的な危険を生じる可能性も高まります。子どもがいる場合、悪影響が及ぶリスクも考えなければなりません。
そんなとき、弁護士に離婚交渉を任せると、意外とスムーズに協議離婚できる可能性があります。調停や保護命令を申し立てる際にも、法律家の支援があると安心できるでしょう。また,引き時などのアドバイスも得ることができますし,警察を介入させるべき,いわば沸点のアドバイスも得ることもできます。
当事務所ではDV被害者へのサポートに積極的に取り組んでおり、初回のご相談は60分まで無料とさせていただいています。DVにお困りの方がおられましたら、別居前でも別居後でもかまいませんので、一度お気軽にご相談ください。