モラハラ被害を認定のため,知っておいて欲しい知識!
モラルハラスメントを認定してもらうために,知っておくべき知識
モラルハラスメント被害を受けていたとしても,なかなか立証が難しいといわれることがあります。
- モラルハラスメントを立証できるのか
- モラルハラスメントを受けている被害者の心理状態を裁判所に十分説明できるのか
―が問題になるといえます。
モラハラで優位に立つポイントとしては,
- モラハラを示唆する証拠を用意できた
モラハラの証拠として,当時作成したメモ,夫宛ての手紙,夫の言葉を録音した媒体などです。
- モラハラ夫の本人尋問でその本性を露わにできた
夫が弁論準備や尋問で,感情をむき出しにした言動をしたことです。
- 女性側の誠実さのアピールができることです。
女性側としては、尋問で誠実に,具体的な陳述をして,これによって,モラハラの実態が浮かび上がることがあります。
今回はモラハラで,離婚を決意したときに知っておくべき知識を弁護士が紹介していきます。
離婚協議を進めている方、話し合いが難航している方など、ぜひ参考にしてみてください。
1.モラルハラスメントとは
モラハラは,言葉や態度によって,巧妙に相手の人格を侵害し委縮させることで,操ることをいいます。
ただ、その実態は十分に理解されているとはいえず、軽度の精神的DVと解釈されていることが多いといえます。
もっとも,その本質は,相手の人格を破壊して道具化するという不法行為であり,軽度どころか,証拠を残さない巧妙な手口からして、多くの離婚事由の中でも,本来は,最も重大な問題の一つといえます。
モラハラは,支配服従関係に変えてしまいます。モラハラ加害者は,相手の思考・信条・価値観・希望・嗜好等,人の精神面すべてを否定し続けることで,相手の自尊心や自信を喪失させ,本来対応であるべきパートナー関係を支配服従関係に変えてしまいます。
DVは身体的暴力が伴いますが,その背後には,モラハラがあることが多いのです。
モラハラの手口はどのようなものでしょうか。
- 無視
- 侮辱
- 非難
- 皮肉
- 指示
- 命令
- ルールの押し付け
- 舌打ち
- ため息
- 独り言
- 威嚇的な表情
- 説教
- 支出チェック
- 生活費の不払い
- 行動制限・交際制限
―などです。
これらに複数該当する場合はモラハラの恐れがあります。モラハラ被害を繰り返し受けていると,受ける側は,次第に自分自身を失う状態に陥ってしまいます。
既に述べましたとおり,DVの行為類型のうちの、精神的暴力、経済的暴力等に含まれています。しかし、被害者としては,モラハラと該当することもあります。
この点,DV,すなわち身体的暴力がクローズアップされがちであるので,DVの背景に,外見的には攻撃性が見られず,無視とか無言の威嚇であって,暴力を受けていると実感するものがなくても,支配服従関係にある場合はDVと見るべきように思います。
DVもモラハラも,その本質は,支配服従関係の形成にあることは同じであり,モラハラも広い意味では,DVに含められる可能性があります。
以下で加害者の特徴や被害者の状況について紹介します。
1-1.加害者にありそうなパターン
加害者の特徴としては,
- 極度に自己中心的
- 他者に対する思いやりに欠ける
- 共感を持つことがない
- 虚栄心が強い
- 人によく見られたいという欲求が強い
- 人前では,「外面」が良いことが多い
このため,社会性もあり,職場や近隣では評価されているケースもあります。
しかし,家庭内では全く別人である。
モラハラ加害者は,家庭内を自分の思うままにしようとして,自らの過ちは認めません。問題が生じれば,すべて責任転嫁するということが考えられます。
モラハラ加害者は,被害者に依存しているという面があり,被害者が逃げ出そうとすると,あらゆる手段を使って妨害しようとする。
そのために,嘘もつき,更生すると口でいっても本気ではありません。
最近は,女性によるモラハラも増えています。自己中心的で日常的に夫を支配する妻も存在しています。
他方、男性によるモラハラの場合は、男尊女卑の傾向が見られます。
1-2.被害者の状況
被害者としては,モラハラ被害を受けているのに,なぜ離婚しないで耐えてしまうのでしょうか。
一例を挙げると,加害者が,突然不機嫌になったり,無視して何も話さなくなったりすることがあります。被害者は,不安になりますが,自分に落ち度があったのだろうと考え、思い当たることを改善したり,職場でストレスが溜まったりしたりしたのだろうと推測して機嫌をとろうとします。
しかし,その後も理由が不明のまま,同じことが繰り返され,被害者はこれ以上,何を改善すれば良いのか分からなくなります。その後,理由を尋ねると,「そんなことも分からないのか」「ダメな奴だ」「自分で考えろ」といったり,被害者の実家に対する侮蔑や前の口答えに対する恨みであったりします。
この時点で,弁護士に相談して,離婚を決意できると被害は最小限度となります。
しかし,モラハラの被害者は,加害者に対して愛情を持っている面もあります。
また,こどもがいる場合は,こどものために自分が耐えなければならないと考えがちになります。
その結果,被害者は,何も反論せず,加害者の顔色をうかがいながら生活することになります。それでも,なかなか原因がモラハラにあることに気付かず,自分が悪いせいだと思い込まされています。
1-3.モラハラでこどもが受ける影響
こどもがいる家庭でモラハラがあると,子に与える悪影響はさらに大きくなります。具体的には,下記のようなことが考えられます。
- モラハラを模倣し,わがままを通す手段として利用するようになる
- 親が侮辱されたり,言いなりになったりするのを見たりして,被害者を軽蔑するようになる
- 親が精神的に不安定になるため、こどもも不安定になり,不登校・引きこもり・家庭内暴力・非行等につながることがある。
- 子が直接モラハラ被害を受けている場合は、弱いものいじめをするようになる
最初は,こどものために離婚を我慢していたものの,こどもへの悪影響を懸念して,離婚を決意することも増えていきます。
1-4.すべては「別居」から始まる
別居することによりストレスが軽減されるということが一番大きいといえるかもしれません。被害者の心身の健康と、何よりも自分自身の信念を取り戻すことができます。別居することにより,かえってこどもも安定し,数々の悪影響も最小限とすることができると考えられます。
いずれにしても,別居は離婚の必須条件とも言えます。どんなにひどいモラハラを受けていても,別居していなければ,裁判所は婚姻関係の破綻を認めず,離婚請求を棄却してしまうかもしれません。
また、反対にモラハラの立証が困難であっても,別居期間が長期にわたっていれば,破綻を認めて,離婚請求が認められる可能性もあります。
離婚調停を申し立てる前に、弁護士を代理人に立てて相手と協議離婚の交渉をする方法もあります。頑なに離婚を拒否していた相手でも、間に弁護士が入ればあきらめて離婚に応じるケースが少なくありません。
弁護士が依頼者にとって最善の条件で離婚できるように調停を進めます。相手が離婚に応じてくれずに困っている場合には、早めに弁護士に相談してみましょう。
2.モラハラ離婚の注意すべきポイント
さて、モラハラ離婚をする場合、その後の手続は、基本的な離婚手続と同じであるのですが注意すべきポイントがります。
2-1.別居状態が安定しない可能性
加害者からすぐに婚姻費用や養育費の支払が得られるかは分かりません。場合によっては,弁護士に依頼し,婚姻費用の審判前の保全処分の申立てを検討しましょう。
また,こどもの転校は避けられないことがモラハラのケースでは多いですし,立ち入りを拒むモラハラ加害者もいるため,二度と自宅には戻れない可能性もあります。
そうすると、荷物の引き取りなども困難を極めることがあります。
そうしたことは理解しておく必要があると思います。
2-2. 証拠について
身体的暴力であれば,
- けがの写真
- 診断書
―などの証拠が存在します。
しかし、モラハラは,
- 無視
- 威嚇的態度
ですから,場合によっては口論の録音すら証拠にないということもあります。
説教の録音などを考えてみるべきかもしれません。
また,被害者は,モラハラを受けるたびに,メモや日記を作成するべきです。
証拠として最も有効なのは,
- 加害者からの命令口調
- 侮辱的な言葉の入ったメール
- 電話の録音
―などの直接証拠です。
その他,
- 精神科・心療内科の診断書,カルテ
- カウンセラーの意見書
- 自治体相談の記録
- 参考になったモラハラの書籍
―などを証拠として出すことになります。
しかし、一番大事なことは、モラハラ加害者と別居し,長期の別居をすること、そして,被害者の信念や自尊心を取り戻すことになります。
証拠集めは重要ではありますが,弁護士と相談しながら進めていくのが良いでしょう。
2-3. 陳述書などの作成について
モラハラはセクハラと違って,いまだ十分に理解されているとまではいえません。
調停や裁判で「モラハラ」としても、ほとんど内容が伝わることはありません。
重要であるのは、「モラハラ」という言葉に頼らないことです。
そして,
- どのような加害行為があるか
- どのような被害が生じたのか
- どのような経緯で破綻に至ったのか
―を1つ1つ,事実を丁寧に記載して理解してもらうしかありません。訴訟においては、被害者作成の陳述書で,動揺に加害行為と被害状況を可能な限り詳しく記載する必要があります。
大事なことは,身体的暴力がないのに、一体何が怖いのか、と裁判官は疑問に思っていることでしょう。そうであるから、裁判では、夫婦喧嘩や口論として、性格の不一致とすることもありますので、モラハラの文献も準備し,理解を深めてもらうことも大事といえるかもしれません。
3.慰謝料請求
離婚裁判において、人格に対する侵害行為及びこれによって婚姻が破綻に至ったことを主張し、かつこれが証拠により立証されたとしても、裁判所が認定する離婚慰謝料の金額は,およそ50万円から100万円程度と考えられます。
身体的暴力の場合はしばしば200万円以上が認定されるのに対して,比較的低いといえるかもしれません。
また,モラハラを「離婚原因」としてのみ捉えて,性格の不一致が原因とみなして,慰謝料請求を棄却してしまうこともないわけではありません。
モラハラによる慰謝料については、以上のような厳しい理論的状況を考慮する必要があるといえるでしょう。
4.婚姻費用及び養育費など
モラハラの加害者は,同居中より,生活費を十分に渡していないなど,「経済的締め付け」をしているケースが多くあります。経済的支配が,支配服従関係の源泉となるからです。
このため,別居後は,ますます婚姻費用及び養育費の支払を出し渋ることもあるので,早めに弁護士に相談するのが良いでしょう。
例えば、会社経営者の場合、自らの報酬を下げてしまうことすらあります。
加害者に婚姻費用や養育費を支払ってもらうには、あきらめず、粘り強く交渉しておく必要があります。このことは,財産分与も同じことがいえます。
5.親権など
モラハラ案件では,親権が争いになることもあります。親権が争いになっている場合は,子の福祉の観点もありますし,また,加害者がこどもを囲い込んでしまうこともありますから,一度,速やかに,弁護士に相談されてください。
場合によっては,親権のみならず,子の監護に関する処分(子の引渡し等)についても求めていく必要がある場合もあります。
弁護士事務所である,「名古屋駅ヒラソル法律事務所」では離婚案件を最重点取り扱い分野と定め、これまで多くのケースを解決まで導いて参りました。離婚協議の段階からアドバイスや代理交渉を承っております。
モラハラ被害を受けて,離婚を決意されて今後に関して不安を抱えている方がおられましたら、まずはお気軽にご相談ください。