配偶者が認知症になり離婚を決意したときの知っておくべき知識

 

配偶者が認知症になり離婚を決意したときの知っておくべき知識

 

配偶者が重病にり患していたり、障害があったりする場合でも、そのことが主たる破綻の原因となっていても、それだけで「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると認められることは少ないとされています。全般に妻の病気が問題とされることが多いといえます。

 

妻の認知症が進み、心の通う伴侶を得たいと望む夫の願いをかなえるため、離婚は認められるのでしょうか。

 

一般的には、原告夫に特に有責性がなく、看病をするなどの誠意を尽くしてきたが、それ以上の負担を原告に強いることが酷である場合、被告側に破綻について有責性がある場合は離婚請求が認められているものがあります。ポイントは、逆に、原告に被告の病気について誠意ある行動がみられない場合は請求が棄却されています。

 

本件の場合は、妻について成年後見を開始して、裁判所に成年後見人を選任してもらうか、自らが成年後見人になる場合は、後見監督人の選任を受けるなどして、離婚の手続を進めることが考えられます。ただし、入所している妻の今後の生活への十分な配慮が必要になります。

 

今回は離婚を決意したときに知っておくべき知識を弁護士が紹介していきます。

離婚協議を進めている方、話し合いが難航している方など、ぜひ参考にしてみてください。

 

1.認知症と離婚のケース

4号の精神病離婚は、「強度の」精神病であるという厳しい要件が課されています。

このため、4号に該当しないとされる事案であっても、5号により破綻が認定され離婚が許容されるケースもあるのです。

 

例えば、妻が統合失調症だが意思能力を欠くほどではなく、4号には該当しないものの、妻の粗暴で家庭的でない言動に破綻の原因があるとして5号に該当するとした例があります。

 

高齢社会になるにつれて、認知症になり、ものごとを理解できなくなったりする可能性は否定できません。

他方、実際の介護は、過酷な面もあり、他方配偶者の体や心を蝕んでしまうケースもあります。

 

たしかに、ただ、介護がつらいというだけでは、離婚が認められることはありません。しかし、認知症がかなり進行し、コミュニケーションがとれなくなり、婚姻の本質である精神的結合が失われている場合、民法770条1項4号の強度の精神病に該当しなくても、5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」があるというパターンで離婚が認められることがあります。

 

以下で離婚が認められた事例を紹介します。

 

1-1.離婚が認められたパターン

離婚が認められたケース(長野地裁平成2年9月17日)では、妻は重度のアルツハイマー型認知症とパーキンソン病にり患していました。

既に妻は夫を認識できなくなっており、日常会話も困難になっていました。

42歳の夫は退職し、しばらく自宅で看病をしていたというもので、その後妻は特別養護老人ホームに入所し、入院後も夫は1週間~2週間に一度の割合で見舞ったり、身の回りの世話をしていました。

しかしながら、妻の病状は回復の見込みがなく、離婚後の療養費は全額公費になるというものでした。

配偶者として必要な誠意を尽くし、かつ、離婚後の妻の生活の具体的な見込みがついているということが。離婚認容のポイントといえそうです。

ポイントとしては、病気にり患した人を、ただ、追い出す体裁での離婚は信義則上認められないということです。

離婚後の配偶者の生活が成り立つように十分に配慮し、信義(民法2条)を尽くしていると認められる場合のみ、離婚が認められるといえそうです。

相手が離婚に応じないときには、こちらの「離婚したい」という強い思いが充分に伝わっていないケースが多々あります。相手としては「放っておけばそのうち気が変わるだろう」などと軽くとらえていることも少なくありません。

 

そういった場合には、こちらが本気で離婚を望んでいると伝える必要があります。きっちり話し合いの時間をとり、理由とともに離婚の決意が固いことを伝えましょう。相手がすぐに応じなくても、粘り強く説得すればいずれは相手も根負けして離婚に応じる可能性があります。

 

1-2.長野地裁の判旨

判決は、「婚姻関係は、妻がアルツハイマー病に(又は同時にパーキンソン病にも)り患し、長期間にわたり夫婦間の協力関係を全く果たせないでいることなどによって破綻していることが明らかであり、上記の各事実(夫が見舞いを続けていること、再婚を希望していること、離婚すればホームの費用は全額公費負担になること)をも併せ考慮すると、夫の民法770条1項5号に基づく離婚請求はこれを認容するのが相当である」と判決しました。

この判決は、老人性認知症が4号事案になるか疑問とも判断をしていますが、実質的には精神病離婚の事例といえます。

離婚をすれば扶養義務者がいなくなり、ホームに入所しやすいという現実も考慮されています。

判決では、何をもって婚姻破綻と認めたかについては、見解が分かれています。

一般的には、夫婦間の協力義務の履行不能によって婚姻の破綻を認めていると理解されています。

しかし、それでは、婚姻の多くは、最後は「破綻」で終わることになりかねないと批判されています。

そこで、一方の重病が他方の人生に過度の負担を与え、配偶者とはいえ、これ以上は介護をなしえない状態に至っていることを破綻とみるのが相当との見解もあります。

これ以上は無理という限界は個々人により様々といえるので、結局は配偶者がそのように判断したときに破綻したと言わざるを得ません。

本件については、原告の男性が42歳と若く、再婚の可能性を持つことが責められないということを指摘されるものが多くみられました。

 

1-3.離婚手続を申し立てる

配偶者が重度の認知症である場合、意思能力がなく、心神喪失の常況にあるといえますので、離婚の手続を進めるためには、成年後見人を選任してもらう必要があります。

つまり、配偶者が、精神病のために、離婚の意味を理解することが困難である場合には、まず、配偶者について、後見開始の審判を受けて、成年後見人を選任してもらいます。

そして、成年後見人を被告として、離婚訴訟を提起する必要があります。

例えば、人事訴訟法14条では、人事訴訟の原告または被告となるべき者が成年被後見人であるときは、成年後見人は、成年被後見人のために訴え、または訴えることができると記載されています。

 

なお、夫婦が、成年後見人及び被後見人の場合は、成年後見監督人が成年後見人のために訴え、または訴えられることができるとされています。

離婚調停では、調停委員が間に入って夫婦の関係を調整してくれます。

ただ離婚理由が薄弱な場合には注意が必要です。反対にこちらが「離婚を思いとどまってはどうか?」などといわれてしまうケースもあります。

調停委員をうまく説得できる自信のない方は、弁護士に調停の代理を依頼しましょう。

 

1-4.弁護士を立てて話し合いを継続する

離婚調停を申し立てる前に、弁護士を代理人に立てて相手と協議離婚の交渉をする方法もあります。頑なに離婚を拒否していた相手でも、間に弁護士が入ればあきらめて離婚に応じるケースが少なくありません。

弁護士が依頼者にとって最善の条件で離婚できるように調停を進めます。相手が離婚に応じてくれずに困っている場合には、早めに弁護士に相談してみましょう。

 

2.軽度の認知症の場合

さて、認知症といっても、離婚の意味が分かる程度の判断能力はある場合もあります。そうした場合は協議離婚をすることも可能です。

 

協議離婚するときには、必ず離婚条件を定めましょう。

確かに親権者さえ決めれば協議離婚自体は可能ですが、それ以外の条件も定めておかないと後に大きなトラブルにつながってしまうからです。

 

2-1.協議離婚

もともと離婚は代理にはなじまないものとされていますので、本人の意思が尊重される傾向にあります。したがって、本人が希望すれば離婚届に署名捺印して協議離婚をすることも可能と考えられています。

2-2.    軽度の認知症で後見開始の審判がある場合

その人について、既に後見開始の審判がなされている場合でもあっても、離婚の意味が分かる程度の能力を備えている場合も同様といえます。

成年後見人の同意を得ることなく、協議離婚をすることが可能なパターンもあります。

しかし、決して、本人の能力の低さにつけこんで離婚をするようなことはしてはなりません。

こうしたケースではトラブルになることも多いといえますから、医師による判断能力による診断書を得ておくと良いでしょう。

そうすると、後に、意思能力のない者による協議離婚による無効といわれることはなくなります。

なお、そうした判断能力を有する当事者は、調停手続や訴訟の進行能力はないわけではなく、他方で成年後見人や成年後見監督人が原告、被告になることも否定されていません。(人事訴訟法14条)

3.離婚給付など

信義則上、離婚できないようなケースであったとしても、夫に直ちに誠意ある行動を求めることは困難なように思います。

つまり、「愛情ある看護」は、強制することはできず、病気の妻にプラスになるかもわからないケースもあります。この場合は、離婚後扶養も含めた「離婚給付」を命じて離婚認容する方向性もあり得ると思います。

4.財産分与など

当事者が、婚姻の意味がわかる程度の判断能力がある場合でも、財産分与、離婚慰謝料、婚姻費用、養育費、年金分割等の合意については、財産に関する法律行為となります。

したがって、成年後見人が法定代理人として処理すべきことになると考えられます。(家事法252条1項)

 

5.親権など

離婚自体、離縁、親権や子の監護に関する事項(養育費以外)についてや、氏に関する事項は、基本的には身分行為であるので代理にはなじみません。

このように、成年後見人や成年後見監督人が関与できる範囲は限定的なものになるといえます。

当事務所では離婚案件を最重点取り扱い分野と定め、これまで多くのケースを解決まで導いて参りました。離婚協議の段階からアドバイスや代理交渉を承っております。

離婚を決意されて今後に関して不安を抱えている方がおられましたら、まずはお気軽にご相談ください。

依頼者様の想いを受け止め、
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問題解決へ導きます。

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