DV・モラハラ原因の離婚「後」の注意点
DV・モラハラ原因の離婚「後」の注意点
勇気を出して離婚を実現できたとしても、「DV・モラハラ原因の離婚後の注意点」とは何でしょうか。
DVは、身体的なもの以外に、1)無視する、2)暴言を吐く、3)こどもの前で罵倒するなどの精神的DV、4)生活に必要なお金を渡さない経済的DVも含まれます。
特に、最近では、DVの中核に「モラハラ」があるとの理解が進んでいます。
これは「上下関係」を背景にして、言葉や態度による人格否定などで、相手を精神的に追い込み、恐怖や罪悪感を植え付けるなどを利用して、支配することです。
DV・モラハラ案件では、「なぜ、離婚したのに、この人は元夫のいいなりになっているのだろう??」と思われるケースも散見されます。
モラハラの場合は、離婚後の精神的離婚が難しいといえるので、離婚後の心身の安全の確保が、こどもとともに重要となるのです。
今回は離婚後のDV・モラハラ被害者の注意点について解説します。今後、離婚を検討されている方はぜひ参考にしてみてくださいね!
1.離婚後に心配なのは、つきまとい
離婚が成立すると、普通は他人になり、最低限の付き合い以外はなくなるのが普通です。最低限といえなくても、一線を引くのが常識といえるのではないでしょうか。
ところが、離婚が成立しても、「やっぱり私が悪かった」と言い続ける女性は多いものです。
だいたい、離婚事件で2年くらい経過したときに、「先生、私、モラハラ支配されていたんでしょうか?」とようやく理解してくれることがあります。
それまでは、一例を挙げれば、「毎日、面会交流をすることを認める」といった上記の社会通念上の一線を越えているようなものもある場合があります。
また、夫について、元妻は「ときどき優しいこともあるんです」と擁護する姿勢を持っていて、「もう二度と暴力をふるわないから」と優しく連絡を受けて、つきまとわれるケースもあります。
1-1.親族や弁護士が困惑するケース
客観的事情では、夫に主として、又は、専ら責められるべき事由があるときがあります。
以前あったのは、政略結婚したいので離婚してくれといわれて、その後付きまとわれていたケースがありました。
その場合でも、女性は、「私がバカだったから」「私がちゃんとしていなかったから」と思い込んでしまうケースが少なくなく、相手の支配から脱却できていないことがあります。
これは、警察の生活安全課に対処に苦労する場面と似ているといえます。
1-2.明確な「NO」と相談先の確保
まず、モラハラ被害を受けている方の場合は、支配が続いているので、それに乗じて相手は食い込もうとしてくるわけです。ですから、自宅にあげたり、必要以上に父母間であったりせず、会う場合は子供から見た祖父母を立ち会わせたり、ファミリーレストランなどで会うのが良いかもしれません。
また、相談先の確保も大事です。これは、相手方にもいえることですが、結婚後は、なかなか友人や兄弟に相談することは難しくなるものです。そこで、警察の生活安全課にこまめに相談したり、配偶者暴力相談支援センター、女性センター、DVシェルターなどに定期的に相談したりしてもらうことも必要ではないかと思います。どこも引き受け手がない場合はカウンセラーや親族に相談することも考えましょう。
こうした相談や助言に基づく一貫した対応をとると、相手方もなかなか不安定に乗じることができなくなるので、不足の事態が起きる場合の予防になります。また、何かあったときの助け先の人間関係を作っておくことになります。
つきまといを避けるためには、別居先を特定されないことが何より大切です。主に警察が所管していますが、自治体に住民基本台帳法上の閲覧制限請求もしておく必要があります。
離婚後にも、身の危険を感じたら、まずは警察の生活安全課にすぐに相談しましょう。差し迫った危険であれば110番をしましょう。
弁護士は、暴力に対する対抗はできません。法律家は、例えば地方裁判所に、DV防止法による保護命令を申し立てることができます。
しかし、経験上、離婚後は、保護命令よりかは、警察に相談した方が良いと思われます。
2.DV・モラハラ離婚のマスト情報
DVには、5種類のDVがあります。
- 身体的DV
・殴る、蹴る、押し倒す
・髪を引っ張る
・物を投げつける
・首を絞める
・刃物を突き付ける
- 精神的DV
・暴言を吐く、罵声を浴びせさせる
・大声で怒鳴る
・意図的に無視する
・他人、こどもの前で否定する
- 性的DV
・性行為を強要する
・避妊に協力しない
・中絶を強要する
- 社会的DV
・家族や友人との付き合いなど交友制限を制限して社会的に孤立させる
・メールや手帳を細かくチェックする
・GPSをつけるなど行動を管理する
- 経済的DV
・十分な生活費を渡さない
・仕事を辞めさせる
・外で働くことを認めない
-個人的な経験では、モラハラ被害者で支配が長く続くのは、「社会的DV」を受けていた人に多いような気がします。一度、チェックしておきましょう。
2.分かってもらう方法
長年、法律相談を経験していて、「モラハラなんです」「DVなんです」といわれても、裁判所は証拠がないと跳ねつけてしまいます。保護命令事件も、証拠の疎明の程度が低ければ、もっと多く出されるのではないかと考えています。
例えば、弁護士に相談するにしても、警察に相談するにしても、心理的相談ではなく、身の危険を感じての相談であるのだ、と理解するためには、客観的な証拠をきちんと収集しておくことです。
よく離婚するにあたって証拠が必要といいますが、離婚後も安心して生活し、自分の境遇を理解してもらうためには証拠があった方が分かりやすいのです。
具体的に、証拠を集めても破棄されてしまったり、無くしたりしてしまうこともありますので、スマートフォンで写真をとっておくとよいでしょう。
暴力から逃げるには、別居して身の安全を確保することが全ての出発点です。
ただ、別居後に証拠を集めるのはほぼ不可能です。自分が、DVやモラハラを受けていると気づいた時点から、証拠を集め始める必要があります。
DV・モラハラの加害者の中には、外では、「外面」が良い夫が多いといえます。
つまり、外部的には、良き上司、良き部下などで通っている人も少なくなく、その評価を外部の人が変えるには、まず証拠がないとそういった思い込みから抜け出すことはできないのではないかと思います。
離婚後、元妻は、当事者間では抜け出せない独特の支配関係にあることが多く、加害者と被害者との二人の関係性は固定化していることがあります。実は、こういう状況下で、面会交流や養育費減額などの離婚後紛争が起こると、かなり大変なことになることが少なくありません。
そこで、離婚後の心身の安全を得るためにも、1)自覚を持つこと、2)必要であれば心理職の支援を得ること、3)身の危険と心理的不安を区別して、身の危険は、警察や弁護士に相談すること―が大事です。
それが警察であれ、弁護士であれ、第三者のサポートにどのようなものがあるのか、調べておきましょう。
なお、なるべく離婚後は夫と遠く住むのが妥当ですが、こどもの学校の関係で近くに住むケースもありますが、それも単なるモラハラの支配から抜け出せておらず、こどもを言い訳にしているだけというケースもないとまではいえないのではないかと考えています。
所轄が一緒ですと、警察署も混乱しますので、男性の方が先に相談してしまうと、女性の側は相談しにくくなるというケースが、田舎の警察では発生することもあり、弁護士に生活安全相談が持ち込まれることもあります。そういう点では住む場所も十分安全のために留意しましょう。
離婚に必要な証拠は、ケースによって大きく異なります。素人判断では適切に集められないことも多いので、離婚の際は専門家に相談してみてください。
また証拠が揃っている場合、離婚協議や離婚調停で提示することによって相手があきらめて応じるケースも少なくありません。また、証拠がある限り、離婚後もスムーズな保護が得られることがあるといえます。
当事務所では後悔しない離婚を実現するため、離婚を考えている方へのサポートに力を入れています。相手が離婚に応じてくれない事案も多数取り扱い、解決してきました。これから離婚しようと準備を進めている方、すでに相手と話し合いをしているけれども離婚に応じてもらえない方、離婚理由があるかどうか知りたい方などおられましたら、お気軽にご相談ください。