内縁の夫婦に生まれた子どもの戸籍、氏、住民票はどうなるの?名古屋の弁護士の充実した法律相談

 

内縁の夫婦に生まれた子どもの戸籍、姓、住民票はどうなる?

 内縁の夫婦の間に子どもが誕生すると、まずは母親の戸籍に入り、母親の姓を名乗ることになります。最近ベルギー王室の王にも内縁のこどもがおり、認知請求や称号を王室に求めたと伝えられ、内縁の夫婦に生まれたこどもの氏なども話題になっています。

 

ただし一定の手続きを踏めば父親の戸籍にも入れる可能性があります。

 

今回は、内縁の夫婦の間に生まれた子どもの戸籍や姓、住民票がどうなるのか、父親の戸籍に入れる方法も含めて弁護士が解説します。

 

1.内縁の夫婦の子どもの戸籍、姓

内縁の夫婦に子どもが生まれた場合、子どもの「戸籍」や「姓(名字)」はどうなるのでしょうか?

 

内縁の夫婦とは、婚姻届を提出していない「事実婚」の男女です。事実婚の場合、父親と母親の名字や戸籍が違うので、子どもがどちらの戸籍に入り名字を引き継ぐのかが問題となります。

 

内縁関係のような「未婚の男女」の間に子どもが生まれた場合、子どもと父親の関係は明らかになりません。母親は「出産」するので明らかですが、父親はDNA鑑定などをしないと確定できないのです。

 

そこで未婚の男女に子どもが生まれたら、基本的に母親の戸籍に入り、名字も母親と同じになります。戸籍における父親の欄は空欄で「父親がいない(不明な)状態」となります。

 

2.父親の戸籍に入る方法

内縁の夫婦の子どもが父親の戸籍に入る方法があります。

2-1.父親が認知する

子どもを父親の戸籍に入れたいなら、まずは認知をしなければなりません。認知しない限り、子どもと父親が「親子」であることすら明らかにならないからです。

父親が役所で認知届を提出すれば、認知が成立します。

この点、長年の交際関係からそもそも「任意認知」で解決をするケースが多いのではないかと考えていますが、そうでない事案こそ弁護士に相談があるのかもしれません。ちなみにベルギー王のケースでも認知自体は争わなかったといいます。

 

2-2.子の氏の変更許可申立をする

次に家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」を行います。子の氏の変更許可申立とは、子どもの姓を変更する必要性がある場合に、家庭裁判所に申し立てて戸籍や名字の変更を許可してもらえる手続きです。子どもの生活上、戸籍や名字を変更すべき場合に変更が認められます。

これは、認知がされた後、こどもは「父母」の氏を名乗ることができますので、氏の変更許可申立てをすることができるものと解されています。この点は、戸籍や名字を変更するべき場合は広く認められているといえるでしょう。

 

ただし、認知を得たくらいで、父親の氏を名乗るというケースも少ないと思います。実際は母親が育てることが多いため、名字が異なると不便だからと考えられます。

 

家庭裁判所で子の氏の変更が認められたら「審判書」を作成してもらえます。その審判書を役所に持参したら、子どもの戸籍と姓を父親のものへと変更できます。これは、離婚後における子の氏の変更許可申立てと同じですので、離婚に際して、子の氏を母の氏に変えたい方も参照されてください。

 

2-3.子の氏の変更許可申立の手順

子の氏の変更許可申立は、以下の手順で進めましょう。

申立書を作成する

まずは「子の氏の変更許可申立書」を作成します。子どもが15歳未満の場合と15歳以上の場合で書式が異なります。子どもが15歳未満の場合、子の氏の変更許可申立をするのは法定代理人である母親となるためです。15歳以上の場合には自分で申立ができます。

以下の裁判所のサイトに書式があるので子どもの年齢に応じた方を選択し、必要事項を記入して作成しましょう。

https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/index.html

必要書類を集める

子の氏の変更許可申立の必要書類は、以下の2つです。

  • 申立人(子ども)の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 父母の戸籍謄本(全部事項証明書)

 

申立の際には収入印紙800円と連絡用の郵便切手が必要なので、合わせて用意しましょう。郵便切手については事前に申し立て予定の家庭裁判所で確認してください。

 

家庭裁判所へ提出する

申立書と戸籍謄本が揃ったら、家庭裁判所へ提出します。管轄は「子どもの住所地を管轄する家庭裁判所」となります。

 

審判書を受け取る

書類を提出すると、家庭裁判所で審査が行われます。結果、戸籍の変更が認められたら「審判書」が交付されます。審判書には、子どもの氏を父親のものに変更すると記載されています。

 

役所へ提出する

審判書を役所に持参すると、子どもを父親の戸籍に入れてもらえます。自動的に名字も父親と同じものになります。

 

3.認知しても父親の戸籍には入らない

内縁の夫婦に子どもが生まれた場合、父子関係を明らかにして養育費を請求するには「認知」してもらう必要があります。認知が成立すると、子どもは父親に養育費を請求できますし、お互いに遺産相続権も取得します。

 

ただ「認知」をしても子どもの戸籍や名字は変わりません。あくまで「父子関係」が明らかになるだけなので、子どもの戸籍は母親のところに入ったままですし、姓も母親と同じです。この点、戸籍がどうなるのか、相続権があるのかを混同されている方もいます。戸籍が別々でも相続はできます。

 

子どもの戸籍や姓を変更したい場合には、認知が成立した後に家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」をしましょう。

 

4.夫に別の家族がいる場合の問題点

内縁関係の夫婦の場合、夫に「別の家族」がいるケースが少なくありません。

つまり夫が前妻と籍を抜いておらず、前妻との婚姻状態が続いたままになっている場合です。前妻との子どももいるケースもあります。このように、夫に戸籍上の妻と内縁の妻の両方がいる場合を「重婚的内縁関係」といいます。場合によっては「重婚的な課題」になっているといえるでしょう。

 

重婚的内縁関係の状態で夫が内妻の子どもを自分の戸籍に入れようとすると、法律婚の妻や子どもが強く反対するケースがよくあります。

 

子の氏の変更許可申立が行われると、妻や子どもは家庭裁判所へと反対意見を提出します。近年の審判では、家庭裁判所も戸籍上の妻や子どもの意見を聞いたうえで、子どもの氏を変更するかどうかを判断する傾向があります。いずれにしても、戸籍が同じであるか否かくらいは、法的な利益ではなく事実上法務大臣の戸籍事務の裁量の範囲であり法的利益といえるか疑問です。

 

家庭裁判所は、法律婚の妻や子どもによる反対意見にどの程度影響されるのでしょうか?

 

4-2.家庭裁判所の判断基準

家庭裁判所は子の氏の変更を許可するかどうかについて、以下のような事情を総合的に評価して判断します。

  • 子どもと父母との共同生活の有無、生活実態
  • 法律婚の婚姻関係破綻の程度や原因
  • 子の氏の変更が法律婚の妻や子どもに与える影響
  • 法律婚の妻や子どもが反対する理由
  • 子の氏の変更許可申立の動機、理由

子どもが小さい場合、実際の監護状況について調査が行われるケースもあります。

 

4-3.審判例

実際の事例で認められるかどうかはケースバイケースです。

肯定例としては、子どもの小学校入学を機に子の氏の変更許可を申し立てた事案において、戸籍上の家族の反対があっても子どもが父親の戸籍に入る利益が大きいとして氏の変更が認められた事案があります(大阪高裁平成9425日)。

 

5.内縁の子どもの住民票

内縁の子どもの住民票はどうなるのでしょうか?

内縁の夫婦であっても、同居している以上、住民票は通常「1つの世帯」になっています。

住民票では1人が「世帯主」となり他の構成員については「世帯主」との「続柄」が記入されます。内縁の配偶者の場合「妻(未届)」「夫(未届)」と表記されるのが通常です。ただし、同じ住所でも世帯を分けている場合もないではないと思われますが、これは総務大臣の裁量によるところがあると解されるといえます。

 

内縁の子どもができた場合、続柄は「子」と表記されます。この取扱い方法は、婚姻中にできた子どもと同様です。従前は、婚姻中にできた子どもについては「長男」「長女」などと記載され、内縁関係の子どもについては「子」と表記される区別がありました。しかし差別的であるという批判を受けて制度が改正され、今は「子」の表記に統一されています。(住民票の取扱いです、戸籍は異なります。)

 

内縁の夫婦に子どもができたら、一般的な法律婚の夫婦と取扱いが異なるので困惑する場面があるでしょう。迷われた際には弁護士がアドバイスやサポートを致しますので、お気軽にご相談ください。これは同性パートナー間の子育ての問題にも射程が及ぶものと考えられます。

 

離婚、財産分与、内縁解消、こどもの親権、人権、パートナー契約などに詳しい弁護士までご相談ください。

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