養育費不払いへの対処方法
養育費不払いへの対処方法
- 離婚後、シングルマザーになるけど相手からきちんと養育費をもらえるか不安
- 養育費はどうせもらえないからあきらめている
- 離婚後しばらくしたら、養育費を払ってもらえなくなった!
テレビで養育費不払いの番組を見た方もいるかもしれません。養育費の不払いは行政処分で氏名の公表が検討されているくらい、「社会問題」と化しています。養育費については、「どうせ払ってもらえなくなるもの」とあきらめている方もおられるでしょう。しかし離婚時や離婚後にきちんと対応していれば、養育費を最後まで払ってもらえる可能性がグッと高まります。また、調停調書などの債務名義を得ておけば、未払い分を回収することができる可能性もあります。
今回は養育費不払いへの対処方法について、名古屋・安城の離婚問題・養育費問題に注力する弁護士が解説いたします。
1.離婚時の対処方法
養育費不払いを防止するには「離婚時の対応」が重要です。離婚時にきちんと養育費が支払われるように取り決めておけば、その後に支払いが継続される可能性が大きく高まります。
1-1.支払い可能な相場の金額を定める
養育費不払いを防止するコツは2つあります。1つ目は支払い可能な金額を設定することです。ときどき「なるべく高額な金額にしてほしい」という思いが先走ったり、相手が不貞したのでそのペナルティを科したいという希望があったりして、相手の支払い能力を大きく超える高額な金額を要求される方がいます。しかしそれでは相手が支払えなくなり、近いうちに不払いとなってしまう可能性が高くなります。
養育費については、法律が定める相場の金額があるのでその範囲内で取り決めをしましょう。
1-2.公正証書を作成する
2つ目のコツは、養育費の合意書を作成することです。口約束ではすぐに不払いにされてしまいます。相手が「必ず支払うから信用してくれ」などと言っていても必ず書面化して相手に署名押印させましょう。中には弁護士を入れると後悔するなどといって正当な解決をしないことを正しいと思いこませるものもいます。
またその書面は「公正証書」にしておくべきです。公正証書にしていない場合、相手が約束を守らなかったらその時点で「養育費調停」をしないと払ってもらえなくなります。その手続きが負担となり養育費を諦めてしまう方もおられます。離婚の際、弁護士などの法律家に私製証書を書面化してもらうだけで、異なる場合もあります。養育費を問題にされる夫婦は若い夫婦が多いかもしれませんが、口約束はこどものためにならないと考えましょう。
公正証書があれば、相手が不払いとなった時点ですぐに相手の給料や預貯金などの資産を差し押さえて養育費を回収できます。このことがプレッシャーとなり、相手が不払いを起こしにくくなる効果も期待できます。離婚後の場合は住所の調査が必要の場合は弁護士に依頼せざるを得ない場合もあるでしょう。
2.離婚後の対処方法
次に離婚後、実際に不払いが発生した場合の対処方法をご説明します。離婚時に公正証書を作成したかどうかで対応方法が変わってきます。
2-1.公正証書がある場合
養育費支払についての公正証書がある場合には、相手の給料や資産を「強制執行(差押え)」します。手順は以下の通りです。
差押え対象資産を探す
強制執行をするときには、債権者が差押え対象を特定しなければなりません。
相手が会社員や公務員なら給料や退職金債権を差し押さえるのがもっとも有効ですが、その場合でも相手の勤務先を特定する必要があります。例えば、会社でも大会社の場合は養育費の回収の実効性が高いといえます。公務員は差し押さえると供託される例が多いように思います。
相手が自営業の場合、預貯金や生命保険の差押えを検討しましょう。預貯金の場合には金融機関名と支店名、生命保険の場合には生命保険会社名を特定する必要があります。自営業の場合は役員報酬という概念が税法上ありませんので、詳しい場合は売掛金債権を差し押さえる必要性を検討する必要もあるかもしれません。ただし、生命保険はある程度の年齢になっていないと高額の解約返戻金は期待できないという事情もあります。
相手がアンダーローンの不動産を所有している場合、不動産の差押えも可能です。特に相続財産や生前贈与財産がある場合は検討に値します。
必要書類を取り寄せる
強制執行の申立てには以下の書類が必要です。
- 執行文
- 送達証明書
上記の書類を公証役場に申請して取得しましょう。また公正証書も手元に用意してください。執行文も公正証書は公証人役場でとることになります。
差押えの申立をする
書類が揃ったら地方裁判所で差押えの申立をします。裁判所の管轄は「相手の住所地の地方裁判所」です。書類に不備があると差押え命令が遅くなるので、できるだけきちんと揃えて提出しましょう。お一人では自信がない場合、弁護士にお任せいただくことも可能です(弁護士に依頼したら執行文や送達証明書の取得なども代行します)。
取り立てを行う
差押え命令が発令されたら、取り立てを行います。給料を差し押さえると、将来にわたって毎月差押え可能な分を会社から直接支払ってもらえるようになります。相手が仕事を辞めるまで給料やボーナスから自動的に養育費が支払われるので、相手が公務員や上場企業勤務などの場合には大変有効です。
預貯金などの場合、金融機関に連絡をして差押え対象分の支払いを受けます。
2-2.公正証書がない場合
公正証書がない場合、いきなり差押えはできません。自分たちで作成した合意書があっても同じです。以下の手順で対応を進めましょう。
家庭裁判所で養育費調停を申し立てる
まずは家庭裁判所で「養育費調停」を申し立てます。養育費調停とは、養育費の金額や支払い義務を法的に定めるための話し合いの手続きです。調停を申し立てると調停委員が間に入り、当事者間の話し合いを仲介してくれます。「相場の金額の提示」なども受けられるので、自分たちでは適切な金額を定めにくい場合にも有効です。
調停が成立する
話し合いによって両者が合意したら調停が成立します。すると合意内容を定めた「調停調書」が作成されて当事者のもとへ郵送されます。その後は定められたとおりに相手から養育費の支払いを受けられます。
調停が不成立になったら審判で金額が決まる
調停で話し合っても両者が合意できないケースや相手が調停を無視して裁判所に来ない場合もあります。そういったケースでは話し合いでは解決できないので、手続きが「審判」に移行します。審判では裁判官が両者の収入状況などに鑑みて妥当な養育費の金額を決定します。
相手が調停に出席せず収入資料を提出しない場合には、平均賃金などをもとに養育費を算定し、支払い命令が下されます。審判が下されたら、当事者両名の元に「審判書」が郵送されてきます。
養育費が支払われない場合、差押えを行う
養育費の調停や審判で金額が決まったら、基本的にはその内容に従って相手から支払いを受けられるようになります。
しかし調停で決まった内容が守られなかったり相手が審判の支払い命令を無視したりする場合もあります。特に審判での支払い命令には従わない人が多数います。
その場合、地方裁判所で強制執行(差押え)の申立を行いましょう。差押えの手順は基本的に「公正証書がある場合」で説明したものと同じです。
相手の資産や勤務先を調査し、相手の資産や勤務先を調べて「地方裁判所」へ強制執行の申立をすれば、その後相手の給料や預貯金、生命保険などから取り立てができます。
ただし執行文や送達証明書の申請先は、調停や審判を行った「家庭裁判所」となります。
養育費不払いを防止するには、法的な知識と状況に応じた適切な対応が必要です。また事実上では各銀行が実施する自動振り込み制度を契約してもらうといったことも考えられます。
また、面会交流を取り上げると養育費と面会交流は無関係というところもありますが、養育費は非監護親の愛情表現の一つと理解されています。ですから、存在をイメージしてもらいやすいように定期的な交流や写真の交付など工夫をして養育費がとぎれないようにするのも一つでしょう。
名古屋・安城で養育費が支払われずお困りの方は弁護士が手続の代行などサポートいたしますので、あきらめずにご相談下さい。