養育費の大学進学費用の加算の認定が具体的な裁判例を獲得しました!
養育費増額審判における事情変更の認定と学費加算の算定構造
──専門学校進学の終期延長否定論と標準教育費控除の再検討~東京家庭裁判所令和8年5月29日審判(未公刊)を通して――
弁護士 服部 勇人(法務博士(立命館大学)、日本家族社会学会会員)
一 事実の概要
申立人(母)と相手方(父)は、平成27年に協議離婚した元夫婦である。離婚に際しては公正証書(以下「本件公正証書」という)を作成し、長男及び二男(以下、あわせて「子ら」という)の養育費を、子1人につき段階払い(最大月額7万5000円)とする旨取り決めた。なお、親権は当初相手方と定められたが、その後の調停成立により申立人に変更され、離婚以降、申立人が子らを監護養育している。
平成30年、相手方の申立てにより成立した調停(以下「前件調停」という)により、養育費は子1人につき月額5万5000円に減額された。なお本件公正証書は、①大学院進学の場合に支払終期を延長すること、②大学進学に伴う学費等は双方が協議して負担額を定めること、③再婚した場合でも養育費額を変更しない旨、それぞれ定めていた。
前件調停後、相手方の収入は大幅に増加(約51.8パーセント増)し、申立人の収入も一定程度増加した。また、長男は令和7年4月に大学を卒業し同月専門学校へ入学し、二男は令和8年4月に医療系4年制大学へ進学した。申立人は令和7年1月に養育費増額を求めて本件調停を申し立てたが、同年6月に調停不成立となり、審判手続に移行した。
本審判は、①双方の収入増加及び二男の大学進学を事情変更と認め、②長男の専門学校進学については事情変更を否定し、③標準算定方式に基づいて再算定した養育費を主文のとおり定めた。相手方は大学院を卒業しており、その最終学歴は本審判においても事実認定の対象とされている。
二 主文(審判の結論)
本審判は、令和7年1月分以降の養育費を次のとおり変更した。
(1)長男 令和7年1月から同年3月まで 月額9万7000円
(2)二男 令和7年1月から同年3月まで 月額9万7000円、同年4月から令和8年3月まで 月額19万6000円、同年4月から令和12年3月まで 月額22万1000円
1 大学進学費用の拾い方が具体的である
本審判の最大の美点は、二男の医療系大学進学費用について、具体的な費目を個別に認定している点である。認められた費目は、学納金(入学金・授業料・実験実習教材費・教育充実費)、学友会費・同窓会費、教科書代、パソコン代、白衣代等、一定限度の予防接種費用、通学交通費であり、さらに、受験料・入学前準備教育費、滑り止め大学の受験料・入学金も考慮されている。
大学進学費用について、裁判所はしばしば「協議事項」「特別費用」として曖昧に処理しがちであるが、本審判は、実際の大学生活に必要な費用を項目ごとに検討した。特に、医療系学部において必要となる白衣代、パソコン代、通学交通費まで個別に認定している点は、実務的に価値がある。
2 標準教育費控除を明示した上で加算している
本審判は、標準算定方式に基づく養育費には標準的な教育費相当額が含まれているとして、大学費用を加算するにあたり、年額58万9000円を控除している。これは、加算のロジックとして整理されている。すなわち、
実際の大学進学費用 — 標準算定方式に含まれる教育費相当額 = 特別に分担すべき教育費
という構造を採っており、相手方から「養育費に教育費は含まれている」と反論された場合にも耐えやすい論理構成である。同種事案において教育費加算を求める際、この構造を参照することができる。
3 塾代・模試代を標準教育費に含まれず控除の対象から除外していること(加算の対象にした珍しい判例といえる)
本審判は、二男の大学受験に向けた塾代・模試代等の合計額について、「習い事の費用」は標準算定方式において考慮されている算定表の教育費に含まれていないとして、全額を分担対象とし、基礎収入按分により相手方の負担額を認めた。この点は画期的と思われる。
大学進学に伴う塾代・模試代については、相手方が「通常養育費に含まれる」と争う場合がある。しかし本審判は、これを標準教育費外の費用として扱い、基礎収入按分で加算している。医療系・理系・資格系学部の受験では塾代が相当額になるため、実務上参照価値が高いように思われる。
評釈1 事情変更の認定枠組み
家庭裁判所は、扶養に関する協議又は審判の基礎とされた事情に変更が生じ、従前の定めが実情に適合せず相当性を欠くに至った場合には、事情変更として内容の変更等をすることができる(民法880条・879条、家事事件手続法157条)。本審判は、この一般論を確認したうえで、収入変動と二男の進学という二つの柱から事情変更を肯定した。
収入変動については、前件調停時から相手方の収入が約51.8パーセント増加したことが主たる根拠とされ、これは事情変更の典型例として異論を挟む余地は少ない。申立人についても一定程度の増加があるが、高収入義務者における算定表上の感応度を考えれば、実質的な変更は相手方側の増収が主因である。
二男の大学進学については、前件調停時10歳であった二男が審判時には医療系大学の1年生となっており、生活費指数の変動と学費加算の双方において算定上の影響が生じる。この点を本審判が「事情変更」として独立して認定した意義は、学費加算の正当化根拠を手続法的に明示した点にある。
評釈2 専門学校進学と支払終期の問題
(1)本審判の論理
本審判は、長男の大学卒業後の専門学校入学について事情変更への該当を否定した。その論拠は二点である。第一に、本件公正証書第2条第2項が養育費支払終期の延長事由として、公正証書は単に「大学院進学」のみを文言上定めており、専門学校進学は明記されていないこと。第二に、相手方がSNS上のやりとりで「今からでも就職活動した方が良い」と述べ専門学校進学に反対の意思を示していたことである。
この判断は、当事者間の明示的合意内容の尊重という観点からは疑問が残る。合意時点で双方が大学院進学以外の場合を意識的に除外したと解釈する余地はあるかもしれないが、むしろ、大学卒業後、教育目的に沿う限り、一定の養育費分担を離婚時に約束していたと解する方が合理的意思解釈に適うと思われるのであって、テキスト主義に陥っていると批判せざるを得ない。
(2)批判的検討
しかし、この判断の射程については慎重に検討する必要がある。
まず理論的問題として、養育費の支払終期の延長根拠は、本来、子の「未成熟性」の継続にある(最判昭和42年2月17日民集21巻1号88頁参照)。未成熟子とは、年齢のみならず、精神的・経済的・発達の程度により自律できるか否かによって判断される概念である。
進学先の形式的名称によって画一的に決定されるものではない。この点、相手方自身が大学院卒業という高学歴であり、かつ本件公正証書において大学院進学の場合の終期延長を容認していた事実に照らすと、大学卒業後の追加的教育課程の必要性を原則否定することには整合性の問題が残る。
本審判のアプローチは、合意文言の「テキスト主義的(条文教条主義的)」解釈を通じて未成熟性の教育や発達の必要性に関する実質判断を回避している。
その帰結として、大学卒業後に専門学校へ進学する子は、その教育の内容・必要性・期間を問わず、原則として成熟子として扱われることになりかねない。これは、現代の多様化する教育・職業訓練経路の実態と乖離するおそれがある。
とりわけ、IT系・医療系・福祉系・デザイン系等の大学院や専門学校は、現代の労働市場において職業的自立と密接に結びつく教育機関である。
この点、4年制大学よりも職業的自立に直結する場合すら少なくない。また、大学院が地理的・経済的に容易にアクセスできない地域においては、専門学校が事実上の高度職業教育機関として機能している実情もある。
地方には、大学院が多くなく、むしろ専門学校が多いという実情を無視しているのではないか。
これらを大学院より低位の教育機関として一律に扱うことは、養育費制度の目的に照らして再考を要する。長男はなお発達過程にある可能性があり、本件の具体的事情のもとで未成熟性の実質判断を省いたことは相当ではない。
手続的問題として、本審判はSNS(LINE)上における相手方の反対の意思表示を重視しているが、父母の間の人格尊重義務による話合いは面談のよる話合いを要すると解すべきである。
ゆえに、子の教育方針に関する協議が真摯に行われたものといえるかについてはなお留保が必要である。非監護親の「反対意思」が、未成熟子の養育費請求権の実質的な阻却事由となり得るとすれば、その法的根拠は何かという問題が残る。相手方が大学院卒のエリート層であるという属性が、子の教育的利益の判断において独立した評価要素となり得ないかも含め、理論的な説明が求められる。
(3)本判断の射程
以上から、本審判の専門学校進学否定論は、次の三要素が重なる固有事情に限定して把握すべきである。すなわち、審判曰く、①当事者間に、大学院進学の場合にのみ終期延長を予定する明示的な合意条項が存在すること、②非監護親が具体的に専門学校進学に反対の意思を表明していたこと、③専門学校進学の職業的必要性・合理性について監護親側の積極的立証が尽くされていないこと、の三点である。これら要件のいずれかを欠く場合には、異なる結論もあり得る。
評論3 基礎収入の認定と非監護親の再婚相手との子の生活費指数修正
(1)再婚条項の解釈
本件公正証書は、当事者双方が再婚した場合でも養育費額を変更しない旨定めていた。本審判はこの条項について、「非監護親の再婚相手に対する扶養は考慮しない」一方で、「相手方の実子である再婚相手との子に対する扶養義務は考慮する」という解釈を採用した。
この解釈は、子の扶養義務が法定義務(民法877条1項)であり、私的合意による排除は許されないという実体法の構造から当然の帰結ではあるものの、当事者間では債権的に有効であり、また個別具体的な事情もあり権利の濫用が疑われる事案ではあった。
この点、扶養条項の「再婚しても変更しない」という文言は、信義則に反しないことが条件のはずであり、扶養義務の発生・存続を排除するものではないとしても、再婚に伴う諸事情を「変更事由として主張しない」という手続的合意として解するべきであるとしても実体法上も権利の濫用として処理されることはあり得る。
ケース・バイ・ケースの事情で、相手方父が減額を申し立てた時期が申立人及び子らにとって様々な逆境や不利が重なった時期であるという特殊な事情もあり、本件文脈において同条項の解釈が一方当事者、とりわけ母や長男・二男に不利に作用していたことはにわかに否定しがたいところであると思われた。今後、学術的な検討が望ましい。
(2)非監護親の再婚相手の潜在的稼働能力の認定
本審判は、非監護親の再婚相手について片頭痛・不定期発作という疾患を認定しながらも、再婚相手との子が小学校高学年に達していることを踏まえ、年間100万円程度の潜在的稼働能力を認めた。
この判断は、離婚事件における配偶者の稼働能力認定の一般的傾向と整合し、概ね穏当であるとしても、2歳から3歳以上の子の監護に関しては、150万円から200万円程度の潜在的稼働能力の認定もあり得るところではないか、と思われる。特に東京では共働きが6割から7割という女性の就労が多様性に影響を与える中で保守的に過ぎるように思われる。
家裁実務の観点からは、①頭痛の診断経緯・発作頻度・就労制限の具体的内容、②再婚相手との子の保育・学校状況と実際の就労可能時間、③労働市場における具体的な就労機会の有無、という三点について医療記録・就労記録を通じた積極的立証を行うことで、認定稼働能力の変更を求めることは依然として可能ではある。しかし、例えば、小田靖子元名古屋家裁判事は、①詐病は考慮に値しない、②就労時間は2~3歳でも認めていること、③東京に就労機会は豊富にあること―なども総合的に考慮すると、妥当性のほどは疑問を指し挟む余地はないではない。
(3)再婚相手との子の生活費指数修正
本審判は、再婚相手との子の生活費指数を原則値の62から、次の式により57に修正した。
修正後指数 = 62 × 相手方基礎収入 ÷(相手方基礎収入 + 再婚相手基礎収入)≒ 57
すなわち、義務者の基礎収入に加算するのではなく、再婚相手との子の生活費指数自体を按分修正するという手法を採った。この処理は、義務者と第三扶養義務者(非監護親の再婚相手)の基礎収入比を用いて、再婚相手との子の生活費のうち義務者が負担すべき部分を按分するものである。
非監護親の再婚相手に稼働能力を認めた結果、子の指数を原則値より低く設定することで、実質的に義務者の負担を適正化する精緻な処理であり、実務上参照価値が高い。つまり、再婚相手が無職のため、再婚相手のこどもの生活指数が全て非監護親に割り付けられるのは不平等である、という議論である。
評論4 標準教育費控除の問題
(1)本審判の処理
本審判は、大学進学費用の加算にあたり、「標準算定方式に基づく養育費には標準的な教育費相当額が含まれているから、大学の学費等の分担額の算定に当たっては、上記教育費相当額を控除すべきである」として、次の計算式により一定額を控除した。一般的に、算定表では、公立高校の学校教育費相当分が考慮されているにとどまることから,これを超える部分については,夫と妻双方の基礎収入に応じて按分するとされる裁判例が多い(東京高決令和2年10月2日家判37号41頁)。
相手方基礎収入 × 25 ÷ 総生活費指数 ≒ 年額58万9000円
この式は、相手方父の基礎収入に、教育費相当として設定した生活費指数25を乗じ、総指数で除したものである。なお、本審判と同様の算定手法は東京高裁の決定においても採用されている例があるとのことであり、権利者と義務者の世帯収入を基礎としている可能性があるようである。
(2)通常実務との乖離
ここで重要な問題がある。標準算定方式において、15歳以上の子について算定表に既に含まれている学校教育費相当額として実務上一般的に参照されているのは、年額25万9342円、すなわち概ね26万円である。
これに対し、本審判の控除額は約58万9000円であり、通常実務の控除額の約2.27倍に達する。本審判は生活費指数25を「教育費相当額の生活費指数」として設定している。
これは、同種の判断をしたと思われる東京高裁決定があるからといわれているが、通常の算定方式における子の生活費指数(15歳以上62)との関係でいかなる基準から25が導かれたのか、審判文上の理論的な説明は必ずしも十分ではなく精緻な説明が求められる。
(3)批判的評価
本審判の処理を批判的に評価すると、少なくとも二点の問題がある。
第一に、固定額控除方式(約26万円控除)と本審判採用の可変額控除方式(基礎収入連動型)とでは、高収入義務者事案において控除額が大幅に拡大し、その結果として大学費用の純加算額が圧縮される。本件のような高基礎収入事案では、この差異が加算額の実質的な半減以上をもたらす可能性がある。制度趣旨から見て、高収入義務者ほど学費加算が圧縮されるという逆説的な結果が生じることについて、理論的な正当化が求められる。
第二に、生活費指数25という数値は、公表されている標準算定方式のいずれの部分から導かれるかが不明確である。この数値が裁判所の裁量的設定であるならば、その設定根拠と類似事案への影響を明示することが望まれる。
もっとも、固定額26万円という控除額は、平均的収入の義務者を前提とした数値であり、高収入義務者に対してそのまま適用することが常に妥当かについても疑問はある。再婚家庭の場合、権利者と義務者を通算するべきという見解があるように思われる。
この点、基礎収入に連動させることで義務者の経済実態に応じた控除額を算出しようとする発想自体は理論的に検討に値する。ただし、その場合でも、指数25の設定根拠を明示し、固定額控除との比較考量を行った上で選択すべきであった。
評論5 学費等の個別認定の精緻さ
本審判は、二男の大学進学費用について、各費目を個別に精査している点が特筆できる。
父母会費については、「子の大学の学修に要するものとは認められず、専ら申立人が加入することが見込まれるもの」として分担対象から除外した。この判断は、扶養費用の範囲を子の生活維持・教育に直接必要な費用に限定するという本来の趣旨に沿うものであり妥当である。
予防接種費用については、大学発行資料・母子手帳という一次資料を参照した上で接種の必要性を検証し、申立人主張額を一定限度に減額した。このような費目ごとの精査は、実費認定の恣意性を排除し説得力を高める手法として、実務上参照に値する。
通学交通費については、通学定期代とスクールバス運賃という実費資料から年額・4年間合計額を算出しており、客観的根拠に基づく認定としてそれなりに評価できる。
評論6 本審判の実務的含意と理論的限界
本審判の判断構造を整理すると、大学進学費用については実額に基づく柔軟かつ詳細な認定を行いながら、大学卒業後の専門学校進学については合意文言と非監護親の反対意思という形式的要素を重視して延長を否定した。この非対称性は、「合意があれば厳格に適用し、合意がない費用については実態に基づいて柔軟に対応する」という二分的アプローチを採用していることを示す。
ただし、相手方がエリート大学院卒であり、かつ離婚時公正証書において大学院進学の場合の終期延長を自ら容認していたという本件固有事情のもとで、専門学校進学に対する実質的反対意思を重視することの相当性については、なお再検討を要しよう。当事者の合意文言が子の利益の実質的判断を規定する度合いをいかに制御するかという問題は、家事事件一般における課題として残る。
実務家の観点からは、本審判が示した以下の算定構造は、類似事案において参照価値が高い。①非監護親の再婚相手の潜在的稼働能力認定を通じた再婚相手との子の指数修正手法、②塾代・受験費用と大学学費等を時期区分して月額加算に換算する方法、③費目別の根拠資料に基づく個別認定の手法、の三点である。
他方で、標準教育費控除の計算方式については、固定額控除方式との比較検討を欠く点で、先例としての説得力に欠けるところがある。今後の同種事案における積み重ねにより、この点の実務的統一が図られることが望まれる。
結びに代えて
本審判は、高収入義務者事案における養育費増額審判として、算定構造の細部にわたる精緻な処理を示した点で、実務的に重要な資料である。
評釈として強調すべき点を整理すると、第一に、専門学校進学否定論は本件固有事情に即したものであり、一般に公正証書に「大学院進学まで」と書かれている場合に、「大学卒業後の専門学校進学は養育費延長事由にならない」とする先例として読むことは、余りにテキスト主義的であり相当でない。本件では長男が扶養料請求という別途の手続を採り得るという事情も存在し、この点が結論に影響している可能性がある。
第二に、標準教育費控除として用いた金額は、通常実務における固定額控除とは異なる計算構造を持ち、高収入義務者事案における学費加算額を圧縮する効果を持つ点で、その算定根拠の明示については家事事件に詳しい弁護士の間では一定のコンセンサスがあるものの、理論的明確化が求められる。第三に、再婚相手との子の生活費指数修正と個別費目の精査という手法は、同種事案における実務指針として評価できる。
養育費算定をめぐる実務は、令和元年の改訂算定表の公表以降も、大学進学・専門学校・大学院進学・高収入事案等における個別論点について継続的な検討を要する状況にある。
本審判はその一場面を示すものとして、引き続き分析の対象とする必要がある。
補足意見
なお、所論に鑑みて、補足的に意見を述べておきたい。
二男について、大学進学費用の個別費用を丁寧に認定し、かつ、医療系大学進学の受験料も相当とした点については画期的ということができる。
しかしながら、養育費の終期は、子が発達を終えた時と解すべきところ、公正証書上、「大学院進学の際は大学院進学時も養育費を支払う」旨の合意があったものである。
しかるところ、仮に、相手方父がLINEで反対の意思を示したとしても、個別具体的な事情を知り得る執筆者からは、ケース・バイ・ケースの判断の中で、このようなテキスト主義的解釈は明らかな相当性を欠くように思われる。
特に、一般論として、高校生のころに勉学に力が入らず就職に弱い大学に入った場合などこどもには、多様な事情があるのであって、大学卒業後であっても、本件は、高校附属の大学に、むしろ非監護親が主導して入学させたかのような事情も審判では認定されていないが、背景事情としてはあったように思われる。このように経済的な自律を果たしていない場合、なお、未成熟子として判断するべきではないのか、特に公正証書の判断などの合理的意思解釈を避けたことは、契約実務の観点からも相当とはいえないように思われる。
本審判については、長男が利害関係参加の申立てをしたところ、職権で扶養料請求として立件された経緯があり、一般に大学卒業後の専門学校進学を養育費延長事由から排除する射程ではないものと思われる。また、反対の意思も、本来は離婚時の合理的意思解釈も考慮に入れるべきであり、長男についての判断については不自然・不合理な点があるように思われる。加えて、未成熟子の定義は子が親に発達の支援を求めなくなったときと解すべきように思われる。この点は、将来の残された課題としたい。
