名古屋家庭裁判所令和8年3月判決――義務的単独親権が命じられた日本初の事例 | ヒラソル法律事務所

 

名古屋家裁令和8年3月判決
――義務的単独親権が命じられた「日本初」の先行裁判例

 

改正家族法(新民法819条7項)を念頭に、共同親権を認めず義務的に単独親権とすべきと明示した先行判決。

本事務所(ヒラソル法律事務所)が原告代理人として関与した事案です。

令和8年3月判決 名古屋家庭裁判所家事第1部

 

本判決の位置づけと概要

名古屋家庭裁判所は、令和8年3月、離婚・親権・財産分与・慰謝料が争われた本件において、以下の主文を言い渡しました。ヒラソルの弁護士は原告(妻)側の代理人として本件に関与しました。被告(夫)側は、親権者指定を求める附帯処分の申し立てていました。

 

原告と被告とを離婚する。長男の親権者を母である原告と定める。被告は養育費として月額4万円を支払え。被告は財産分与として一定額を支払え。被告は離婚慰謝料として一定額を支払え。

 

本判決が特に注目されるのは、親権者指定において次の判示を明示した点です。

日本で初めて共同親権を否定し、必要的単独親権が妥当であると判決

これは、改正家族法が施行される前夜において、裁判所が改正後の法律条文(新民法819条7項2号)を明示的に引用しつつ、共同親権は認められないと宣言した先行事例です。単なる裁量判断として「今回は単独親権が妥当」と述べたのではなく、法が予定する「義務的単独親権」類型、すなわち、第1審裁判所として、こどもの最善の利益のために裁判所は必ず単独親権を言い渡さなければならない事例に該当すると位置づけた点に重大な意義があります。


選択的共同親権の判断規範
――二段階構造

改正家族法の下で離婚後の親権を定める際、裁判所は以下の二段階の判断構造をとります。「共同親権が広く認められる」と誤解されがちですが、実務上は次の順序で検討されます。
Step 1 — 義務的判断

必要的単独親権事由の有無裁量なし・義務

①子に対する虐待のおそれ、②他方親へのDVその他有害な言動のおそれ、③「父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」(新民法819条7項2号)――のいずれかに当たる場合、裁判所に共同親権を選ぶ余地はなく、必ず単独親権と定めなければならない。ヒラソルが担当した事例は、裁量的判断ではなく、この「必要的単独親権事由あり」とされたのです。

Step 2 — 裁量的判断

子の利益に関する総合考慮裁量あり

DVや虐待など法定の排除事由がない場合に初めて、父母と子との関係・監護実績・子の意向・父母間の最低限の協力可能性等を総合的に考慮して、共同親権・単独親権のいずれかを裁量で選択する。この段階では共同親権と単独親権の間に「原則・例外」の関係はない。

義務的単独親権を認定

 

本判決は、この二段階構造の第一段階(義務的単独親権―「父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」(新民法819条7項2号))―に該当すると明示したものです。

すなわち、本判決は、裁量的比較衡量の結果として単独親権を選んだのではなく、共同親権を選択する余地そのものが民法の明文で閉ざされていると判断した点が、他の多くの事案と一線を画します。今後、裁量的親権か否かでの紛争は予測されますが、「義務的単独親権である」と言い切った点は日本初の判例と見られます。


義務的単独親権に至った
キーポイント事実

名古屋家庭裁判所が民法819条7項2号(父母が共同して親権を行うことが困難)への該当を認めた背景には、次の認定事実が積み重なっています。単一の出来事ではなく、支配・統制の構造的継続として評価されている点が重要です。

行動支配とモラル・ハラスメント

休日の行動・外出先・帰宅時間を報告させ電話で監視。飲み会・宿泊出張の禁止。LINEアプリの使用禁止(職場連絡手段を封じる)。「頭が悪い」「俺の言うことを聞いておけばいい」「ぶっ殺すぞ」等の罵倒メール。裁判所はこれらを「自分の支配下に置こうとした行動」と認定。(※公開法廷の証人尋問でも明らかになった事実です。)

身体的暴力(継続的・複数態様)

長男出産後から外から見えない太もも・お尻を日常的につねり、令和2年には痣が生じた。平成29年の口論では複数回、顔を平手打ち。裁判所は「スキンシップ」との被告主張を排斥し、「相手を思い通りにしようと支配するため痛みを与えるもの」と認定。

子への行き過ぎた指導

長男が年長・小1の頃、詳細はプライバシー保護のため明かせないが30分間怒鳴り続ける。小2でも同様に怒鳴られた。そして、被告から、「おもちゃ全部捨てる」「通知表で二重丸10個以下はゲーム禁止」等の誓約書を書かせられた。子への支配構造が親権共同行使の前提を崩すと評価されたとの評価もできる。

別居後・子の精神状態

長男は、小児期逆境性障害にみられる様々な症状がみられるようになった<プライバシー保護のため割愛>と診断(令和5年)。その後も心的外傷症候群の診断が継続(令和7年)。原告も不安障害・心因反応と診断。被告は別居後もアンガーマネジメント講座を受講したが、その後、長男と会っていない。

 

裁判所は、これら各事実を個別に評価するのではなく、「(被告は)原告の人格を尊重する態度に欠け、自分の支配下に置こうとしていた」という一貫した構造として評価しました。この評価こそが、単なる夫婦不和(裁量的判断の領域)ではなく、共同親権行使の前提(実質的協調関係)を根底から崩す事情(義務的単独親権の領域)と認定したものと考えられます。

同居親にとっての
望ましい行動・望ましくない行動

本判決の親権者指定に関する判示は、同居親(監護親)として評価されるための行動指針を具体的に示しています。以下に、判決の認定から読み取れる実践的な含意を整理します。
望ましい行動(原告が評価された点)
  • 別居後3年以上、継続して子を監護養育する(監護の継続性・安定性)
  • スクールカウンセラーやクリニックのカウンセリングを受けさせ、「ケア」を具体的にとる
  • 学校復帰に向けて能動的に働きかける(困難への積極的関与)
  • 高裁決定に従い、第三者機関エフピックにこどもを連れて行ったり、連れて行こうと試みるなど、弁護士の助言に従い、原告としてできる面会交流を実施しようとする努力を尽くしたうえでその事実を記録にしたこと
  • 面会交流への協力姿勢を維持し、「阻害」と評価されない行動をとる
  • 監護補助者との安定した養育体制を整える
監護親として望ましくない行動(評価を下げる典型)
 本件の事情ではなく、抽象的に監護親として望ましくない態度も占えます。
  • 子が外に出ることを拒んでいるので、第三者機関での面会交流をさせないまま放置する。やはりエフピックの受理面談や何度かエフピックに連れていく労をとる必要がある。
  • 別居後に間接強制を止めさせる
  • 子の拒否感情を盾に、面会交流審判・調停への協力を一切拒む
  • 医療・カウンセリング等の専門的介入を子に受けさせない
  • 他方親の悪口を子の前で言い続け、子を紛争に巻き込む
  • 子の意向確認・調査への非協力的態度をとる

特に注目すべきは、本件で原告が面会交流を阻害したとは評価されなかった点です。子が第三者機関に行かなかったのは、子自身が「外出が面倒、今さら何を話せばよいか分からない」と述べたことや、背景事情として、子もエフピックには行きたくないと述べている事情がありました。

このように、原告が積極的に阻害した事情はないと認定されました。同居親は、面会交流に対する姿勢(協力しようとしたか否か)と、実際の実現(子が実際に会ったか否か)が区別されることを理解した上で行動することが重要です。

親権判断で評価される具体的事実の構造

本判決の親権者指定の論理を分析すると、裁判所が評価する事実は次の六つの軸に整理されます。これは、抽象的な「子の最善の利益」論ではなく、生活実態に即した事実の積み重ねによって判断が形成されることを示しています。
別居後の監護の継続性・実績
誰が現実に3年以上養育を担ってきたか。他方親は別居後、子と会っているか否か。この実績の格差は、現実の監護能力の証明として機能する。
子の心身の状態と監護親の対応の質
子が困難な状態(例えば不登校)にある場合、その困難に監護親が具体的に対応しているか。医療・カウンセリング等への介入の有無が評価の対象になる。
子の意向・心情の内容と背景
単なる好き嫌いではなく、拒否感情が継続的・具体的経験に裏打ちされているか。子が「怒ると止まらなくなる」と述べていることの意味を、調査官は丁寧に分析する。
面会交流への姿勢(阻害の有無)
審判・調停への協力姿勢があるか。実現しなかった場合でも、監護親が「阻害」したか否かは区別される。協力しようとした証拠の蓄積が重要。本件では、エフピックを通じた証拠の蓄積があり、究極的に子の意向もあったように思われる。
同居中の養育態度・関わり方の質
長時間の叱責・誓約書強制・嫌がる行為の継続等、子の心身に影響を与えた具体的言動が評価の対象。「虐待」の枠に限らず、「懲戒権」が削除された令和4年改正法の影響も強く受けているように思われ、「適切とはいい難い行き過ぎた指導」として親権判断に直結する。
今後の監護環境の見通し
監護補助者の有無・生活基盤の安定性等、将来の養育体制が整っているか。親権判断は過去の責任追及ではなく、将来の子の生活を誰に委ねるかの判断である。

 

重要なのは、これら六つの軸が独立して評価されるのではなく、相互に連関して一つの像を形成するという点です。本判決においても、「監護の継続性(Ⅰ)」と「子の状態への対応(Ⅱ)」と「面会交流への姿勢(Ⅳ)」が組み合わさって、原告の監護適格性が認定されています。


「共同親権が導入されれば、すべての事案で共同親権になる」という誤解への名古屋家庭裁判所からの明確な反論

改正家族法の施行に際して、「これからは共同親権が広く認められる」との論調が見られます。しかし、本判決は、法が想定する「義務的単独親権」類型に正面から向き合い、DV・支配的関係・深刻な非協力状態がある事案では、共同親権を選ぶことができないと明示した点で、この誤解に対する司法からの明確な答えです。とりわけ、こどもが10歳を超えており、体調を崩している事例などは慎重な判断が重要であり、「子の意見」も考慮されるべきです。

本判決は、改正後の民法819条7項2号という具体的条文を引用し、共同親権を排除した理由を法的義務として位置づけました。これは、日本の裁判所が改正家族法の下でこの問題を令和8年4月1日改正を前に、正面から扱った先行事例として、今後の実務において参照されるべき初の裁判例です。

共同親権は、父母間に最低限の協力関係(実質的協調関係)が維持できる事案に限って選択可能な制度です。その前提を失わせる事情がある事案では、法は選択的共同親権ではなく家庭裁判所に単独親権を義務づけているのです。

本判決が実務に示す含意は、以下の三点に集約されます。

第一に、実務上の判断順序の確認。まず必要的単独親権事由(DVや虐待の有無、協力が困難かどうか)を検討し、それが認められれば共同親権の議論に進む必要はない、という二段階の判断順序が改めて確認されました。

第二に、「支配構造」の評価方法の具体化。このアメリカのDVの構造(CCV、VR、SIV)の分類は、代理人が主張していたものであり、有形力の行使だけではなく、「支配構造」を丁寧に見る必要があると立論していました。本判決は、DV・モラハラ・子への行き過ぎた指導を個別事象としてではなく、「自分の支配下に置こうとする一貫した態度」として評価しました。これは、代理人が、面会交流の抗告審で、児童虐待を「しつけ」と美称していると批判した論旨に名古屋高等裁判所が答えたものでした。単一の重大事実がない事案でも、支配の構造的継続が義務的単独親権事由に該当し得ることを示します。これらは、今後の「急迫の事情」にも影響を与え得るでしょう。

第三に、親権判断が生活実態の事実認定に基づくことの確認。本判決は、抽象的理念ではなく、監護の継続性・子の心身状態・面会交流への姿勢・同居中の養育態度という具体的事実の積み重ねによって親権者を判断しています。今後の実務においても、この事実認定の軸が維持されることを示しています。

なお、本件は、年齢もあり、子の意見も考慮されたものと考えられます。

 

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