婚約破棄の慰謝料請求

婚約破棄は慰謝料が発生するかは、正当理由があるか否かによることになります。

離婚とは異なり、婚約解消の正当な理由としては緩やかに判断されるべきとされていますから、結婚に向けた熟度が高まっていること、が必要と思われます。

婚約後、結婚を前提に交際してみて初めて分かることもありますが、反対にいえば婚約期間が長い場合は余り理由にならない、ともいえそうです。

婚約初期のころは、性格の不一致、家族も含めた価値観の相違などもあり、婚約破棄は、婚約初期の段階であれば婚約解消の動機や方法が公序良俗に反し、著しく不当性を帯びている場合に限られると解されています。婚約破棄は慰謝料はもちろんのこと、結婚への熟度の関係で婚姻準備段階にかかった費用の公平な清算の方が重要な問題になることが多いと解されます。

岡山地裁平成24年3月28日では、結婚に向けた具体的活動がやはりポイントとされています。

1 事案の概要
 本件は,離婚歴のある独身の男性の原告(昭和40年生)が,昭和61年に他の男性と婚姻して一男一女を出産し,平成19年7月に参議院議員選挙に当選した被告(昭和34年生)に対し,原告は平成13年12月に当時県議会議員であった被告と性的関係を持ち,平成16年2月に伊勢神宮に特別参拝して婚約していたのに,被告によって参議院議員選挙出馬を控えた平成18年10月に婚約を不当に破棄されて精神的苦痛を受けたなどと主張して,不法行為に基づく損害賠償として2800万円の慰謝料と遅延損害金の支払を求める事案でした。
 被告は,原告との性的関係を否認し,原告とは議員と支援者の関係に過ぎない等と主張して争った。
 本件の争点は,(1)婚約の成否,(2)婚約の不当破棄の有無,(3)原告の損害額であり,本判決は,(1)の争点につき,婚約の成立が認められないと判断して,原告の請求を棄却した。

2 本判決の判示内容
 本判決は,まず,一般論として,「婚約(婚姻の予約)については,諾成契約であるから,当事者が真実夫婦として共同生活を営む意思で婚姻を約したものであれば足り,必ずしも同棲を伴う必要はなく,また,結納などの特段の方式も不要であるけれども(最高裁昭和38年9月5日第一小法廷判決・民集17巻8号942頁参照),何ら外形的な事実関係を伴わない場合には,両者間における婚約の成立については相当慎重に判断する必要があるというべきである。」と判示した。

 ここのところは、最高裁の規範において昭和38年判例がスタンダードであることを示したといえます。

 そして,本件は,実はいろいろ外形的事実関係がありました。

・原告と被告は,遅くとも平成14年3月下旬ころから平成18年10月ころまでの長期にわたり,二人で全国各地に旅行をする
・性交渉を伴った交際
・血酒の誓い
・伊勢神宮への特別参拝
・共同経営

 両者間における恋愛感情を高め,男女関係を維持するためのものとみるのが相当であり,これをもって法的保護に値する婚約とまで認めることはできないというべき、としています。

 不倫のうえの婚約破棄事例であるということが影響しているのかもしれません。

 しかし、最近は、結納の儀をする人も少なくなっており、婚約破棄の慰謝料が認められる要件がそろうことがあるのか、という問題が生じてしまいます。

 婚姻の予約(婚約)の不当破棄による損害賠償請求を求める訴訟は,実務上,従来から多数提起されており,婚約の成立が認められ,それが正当な理由がないのに(不当に)破棄された場合に,これによって生じた財産的損害及び精神的損害の賠償責任が肯定されている。その訴訟物としては,①婚姻の予約という諾成契約の債務不履行によることができることは異論がなく,他に,②婚約関係という法律上保護される利益の違法な侵害による不法行為に基づく損害賠償としても構成され得るものであり(後記の最高裁昭和38年判決も,不法行為構成の原判決を維持している。),両者を請求するのは選択的併合となる。①と②とは,①は,婚約破棄の正当性(被告の帰責事由の不存在)の立証責任が被告となり,②は,不当性(被告の故意・過失と違法性)の立証責任が原告となる点や,消滅時効の期間で異なり,判例の多くは,原告側が選択する①で構成されているようにと思われるが,多くの事案では結論に影響はないものと考えられる。また,婚約の破棄について加担者がいる場合には,共同不法行為の関係となると考えられ,この場合の婚約の相手方に対する請求は②の構成によるのが適当であると思われる。

  この訴訟では,婚約の成否が争点となる事例が多く,本判決も説示するように,「婚約(婚姻の予約)については,諾成契約であるから,当事者が真実夫婦として共同生活を営む意思で婚姻を約したものであれば足り,必ずしも同棲を伴う必要はなく,また,結納などの特段の方式も不要である」と一般に解されており,この点に関し,本判決も引用する最高裁昭和38年9月5日第一小法廷判決・民集17巻8号942頁は,「原判決は,被上告人が上告人の求婚に対し,真実夫婦として共同生活を営む意思でこれに応じて婚姻を約した上,長期間にわたり肉体関係を継続したものであり,当事者双方の婚姻の意思は明確であつて,単なる野合私通の関係でないことを認定しているのであつて,右認定のもとにおいては,たとえ,その間,当事者がその関係を両親兄弟に打ち明けず,世上の習慣に従つて結納を取かわし或は同棲しなかつたとしても,婚姻予約の成立を認めた原判決の判断は肯認しうる」,「上告人,被上告人間には婚姻予約が成立しているのであるから,不当にその予約を破棄した者に慰藉料の支払義務のあることは当然である」旨を判示している。このように,婚約の成立は,「真実夫婦として共同生活を営む意思で婚姻を約したこと」や「双方の婚姻の意思は明確であること」が認定される必要があり,同最高裁判例解説223頁(奈良次郎著)は,問題は,法的保護に値する将来婚姻をなすべき「確実な合意」がどのような程度で成立したといえるかということであり,学説では,当事者の主観だけでは決し得ず,ある程度の客観性ないし公示性を必要と解する説があるが,結局,この学説の立場をも考慮に入れて個々の具体的事案に応じて決する外はないとしています。

外形的事実のポイント
・結納の儀式
・婚約の念書(合意書)
・婚姻届出用紙の署名と交付
・定期的な食事,旅行等の親密な交際状況
・性的関係の継続
・妊娠
・婚約指輪の購入と贈呈
・同居のための住居・備品等の購入
・同居の開始
・結婚式場の下見や予約
・「対外的な事実関係」として,双方の両親との面会と婚約者としての交際の報告
・互いの親族への婚約者としての紹介
・互いの親族の結婚式への婚約者として出席
・結婚式の招待状の作成や発送等が挙げられる。

 婚約の成立が肯定される場合の慰謝料額については,婚約後の交際期間の長短,性的関係の有無,出産や中絶,婚約及び解消の周知性の有無及び程度,婚姻解消の理由における被告の責任の程度と原告の帰責性の有無と程度,原告及び被告の年齢,社会的地位,職業と収入,婚約に伴う退職等の原告の経済的不利益の有無及び程度等を総合考慮して算定されることになると思われる。
 参考文献としては,岡村・前掲書は,婚約の不当破棄に基づく損害賠償請求の全般について詳しく論じ,参考判例を紹介しており,実務上,参考となる。また,婚約の不当破棄が肯定される場合の損害額(慰謝料額)について記載した文献として,千葉県弁護士会編「慰謝料算定の実務」(株式会社ぎょうせい発行)25頁は,30万円から500万円の慰謝料を認めた8判決を紹介している。

 参考判例として,最近の裁判例で婚約の成否及び損害額が争点となった事案を挙げると,東京地判平19.1.19本判例秘書登載は,婚約指輪は購入していないものの,結婚指輪及び原告のためのマンションの購入と同居の開始,結婚の挨拶のための各両親との面会,婚約者としての原告の妹の結婚式の出席等の事実で婚約の成立を認め,慰謝料250万円,勤務先退職による逸失利益約191万円,結婚準備品購入額50万円,交際交通費約30万円,弁護士費用の合計額から失業保険給付金45万円等を控除した約522万円の支払を命じ,東京地判平19.3.28本判例秘書登載は,同居の開始,双方の両親を交えた昼食会が開催され,結婚を前提に交際しており同居することを確認したこと,原告と被告の共有名義で新築のマンションを購入したこと,その必要書類に被告が原告を婚約者と記載したこと,ハワイ旅行の際に婚約指輪の購入の話が出たこと,同マンションの共同入居等の事実で婚約の成立を認め,本件に顕れた一切の事情や,「もともと婚約というのには現実に婚姻に至るまでは不安定な要素を含むものであること」等も考慮して慰謝料として80万円を認定している。

 他方,婚約の成立を否定した判決として,東京地判平19.8.21本判例秘書登載は,性交渉,互いの住居の宿泊,箱根旅行,原告による被告の業務の補助,被告の業務用事務所賃借の際の賃料等の一部18万円の立替払い,被告の賃借アパート選定に同伴し,敷金等の55万円の立替払い等が認められるが,同居生活や婚約指輪の贈呈の事実がないこと,明示的な結婚の申込みがないこと,原告が被告の両親に会ったことがないこと,上記アパートも一人住まい用の面積であり,実際に被告が一人で居住していたこと等から,婚約の成立は認められないと判断しています。

第3 当裁判所の判断
 1 争点(1)「原告と被告間の婚約の成否」について
  (1) 証拠(甲7,280,281,乙17,18,原告本人,被告本人。特に注記のない限り,枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,①△△高校の教員をしていた原告は,平成12年9月29日,岡山県華僑総会の祝賀会において,被告と知り合ったこと,②原告と被告が知り合った当時,被告は岡山県議会議員の職にあり,夫と二人の子がいることを公にしていたこと,③原告は,遅くとも,平成14年5月以降は,被告が既婚者であることを知っていながら,被告との交際を続けたこと,の各事実が認められる。前記各証拠中,この認定に反する部分は採用しない。
  (2) 次に,原告は,原告と被告間には性的関係が存在したと主張するのに対し,被告は,これを全面的に否認するので,この点について検討するに,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告と被告は,交際中,少なくとも,次のとおり,二人だけで各地を泊まりがけで旅行したり,被告が原告の家に来たりすることなどがあったことが認められる。
   ア 平成14年3月28日ころ,大分方面に旅行し,途中,下関市の高杉晋作の像のある公園に立ち寄って車中泊をした後,別府に向かい,大分オアシスタワーホテルに同宿した(甲143,144,306,370,598,1039,原告本人)。
   イ 平成14年12月6日から同月8日にかけて,大分県臼杵市方面に旅行し,大分全日空ホテルに同宿した(甲10~21,598,原告本人)。
   ウ 平成15年5月1日ころ,和歌山県勝浦方面に旅行し,料理旅館「万清楼」に同宿した(甲34~37,598,1039,原告本人)。
   エ 平成15年7月30日ころ,被告が,原告宅を訪れ,ジャージ姿で食事をしている(甲240~247,598,1039,原告本人)。
   オ 平成15年12月20日ころ,宮崎県の高千穂峡方面に旅行した(甲118~120,146,598,1039,原告本人)。
   カ 平成16年2月9日から翌10日にかけて,三重県の伊勢神宮及びその近辺を旅行した。同月9日,原告と被告は,被告が事前に用意した特別参宮章を持参して伊勢神宮に特別参拝をした後,同県志摩郡志摩町(当時。現志摩市)所在の旅館「松栄荘」に同宿し,伊勢神宮において購入した金杯を用いて御神酒を酌み交わした。なお,原告と被告は,その後も伊勢神宮方面を訪れている。(甲29~31,40,42~46,75~79,106~113,147,148,516,307,766〔ただし,同号の3の右上端の写真を除く。〕,598,779,1039,原告本人,調査嘱託の結果)
   キ 平成17年5月2日ころ,高知県の室戸方面に旅行した(甲8,9,92,93,1039,原告本人)。
   ク 平成17年5月4日ころ,香川県の小豆島に旅行した(甲66~69,98,99,151,152,1039,原告本人)。
   ケ 平成17年8月10日ころ,和歌山県の白浜温泉に旅行し,旅館「鯛鼓判」に同宿した(甲126~132,598,850,1039,原告本人)。
   コ 平成18年1月2日ないし3日,佐賀県の祐徳稲荷神社を訪れている(甲102~105,1039,原告本人)。
   サ 後述するように,原告と被告は,平成18年4月ころ,共同で飲食店「××」を開店したが,××の1階には,ベッドがあって寝泊まりのできる6畳の部屋が存在し,原告が,被告とともに,その部屋に宿泊することもあった(甲89,586,原告本人256,257)。
   シ 被告は,平成19年12月25日,「○○」と題する書籍(甲305)を出版した。その書籍の中において,被告は,原告と推認される男性に出会い,惹かれたことは,後悔していないなどと述べている(同号証)。
   ス 平成14年4月19日ころ,岡山県牛窓西脇海岸で撮影されたとする原告と被告が肩を組んだ写真(甲154)がある。このほかにも,原告と被告が肩を組んだり,親しげに寄り添ったりしている写真(甲844の5の番号21~25)がある。
   セ 原告は,被告が一人で写っている水着姿の写真(甲87,67,69)のみならず,被告の寝顔の写真(甲128,138,309,310,866。ただし,これらのうち一部のものは重複している。)を多数所持している。
  (3) 以上の認定事実によれば,遅くとも,原告と被告が大分に旅行をした平成14年3月28日ころまでには,両者間において性的関係を伴う交際が始まっており,その後も,後記(5)カに述べるように,平成18年10月ころに破綻するまで継続していたと認めるのが相当である。
  (4) 被告は,上記認定事実に対し,原告との関係について,議員と支援者という関係にすぎなかったと供述し,原告と性的関係をもったことすら否定する。
    しかしながら,①前記(2)認定事実において摘示したものを含め,原告と被告が二人だけで県外の旅行をした写真が多数存在し(甲8~25,92~154,167~177等),それらの中には,原告と被告が二人だけで旅館の同じ部屋に宿泊したことをうかがわせる写真や領収証も存在すること(甲42,779,870等),原告宅において二人で食事をしている写真も存在すること(甲240~247),②これらの写真とりわけ寝顔の写真について,被告において,それらが,どのような機会に誰に撮影されたのかにつき,合理的な説明がなく(被告本人324),特段反証がされていないこと,③複数の人が,その陳述書において,原告と被告が二人で旅館等に宿泊した旨の供述等をしており(甲237,238,347,348,779),その信用性を排斥する反証もないこと,④被告の本人尋問における供述自体が,各写真に写っている状況につき,二人だけだったのは覚えていないが,他に誰がいたのかも思い出せないとか,たまたま偶然原告と一緒になったと供述するなど,不自然不合理なものであること(被告本人48~51,64~73,94~105,133,146~157,167,176,190~193,324),⑤被告自身が,著書の中において,原告に惹かれていたことを認めていること(前記(2)認定事実シ)などからすれば,被告の供述は,信用性に乏しいというほかはないから,採用することはできない。
  (5) 次に,原告は,原告及び被告間において婚約が成立していたと主張し,それを裏付ける事情として,両者間に性的関係が存在したことのほか,本争点に係る前記原告の主張(イ)ないし(ケ)のとおり主張するので,以下,これらの点について検討するに,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
   ア 原告と被告は,平成14年3月6日,銭湯「□□」において,それぞれ入浴を済ませた後,△△高校の剣道場の指導員室において,飲食をしたが,その際,「血酒の誓い」を行った(甲675~677,810,原告本人)。
   イ 被告の長男は,平成14年10月8日,被告の夫の父母と本件養子縁組をした(甲854)。
   ウ 被告は,平成16年7月8日,株式会社エイチ・アイ・エスにおいて,被告と原告のバリ島への旅行(平成16年8月9日出国,同月19日帰国)の予約をしたが,被告は,旅行に行くことができず,原告が一人で行った(甲184,855の6・7・8,原告本人,弁論の全趣旨)。
   エ 原告は,平成16年7月31日,被告と一緒に,原告の先祖の墓参りをした。原告と被告は,墓参りの帰途に,呉服店「◇◇」,元鮮魚店「竹や」を訪問した。(甲678~681,原告本人)
   オ 被告は,コミュニティカフェとして「××」を開くことを計画し,原告とともに,同店の開店に向けて準備をし,同店は,平成18年5月13日,グランドオープンした。××の経営は,被告と,原告及び原告の両親との共同経営であり,その経費は,被告が負担し,利益のうち90パーセントは,原告側が取得するという約束であった。××の共同経営につき,最終的な契約書は作成されていない。(甲599,原告本人,被告本人)
   カ 平成18年10月ころ,××の共同経営は破綻し,原告と被告の交際も終了した。被告は,平成18年11月ころ,××の6畳一間にあった原告の衣類等をまとめて原告に郵送した。(甲90,原告本人,弁論の全趣旨)
   キ そのころ,被告と,原告及び原告の両親の間で,××のことについて,2回,話し合いがされたが,その席において,原告と被告の婚約に関する話は,一切出なかった。また,原告は,被告と交際していた期間において,原告の両親や親族に対して,被告との婚約の報告をしたことはなかった。(原告本人220~226,260)
   ク 被告は,平成19年7月29日,参議院議員選挙に当選した(乙10,弁論の全趣旨)。
  (6) 以上の事実を前提に,原告と被告間の婚約の成否を検討するに,婚約(婚姻の予約)については,諾成契約であるから,当事者が真実夫婦として共同生活を営む意思で婚姻を約したものであれば足り,必ずしも同棲を伴う必要はなく,また,結納などの特段の方式も不要であるけれども(最高裁昭和38年9月5日第一小法廷判決・民集17巻8号942頁参照),何ら外形的な事実関係を伴わない場合には,両者間における婚約の成立については相当慎重に判断する必要があるというべきである。
    この観点から本件をみるに,原告と被告は,上記(2)(3)に認定したように,遅くとも平成14年3月下旬ころから平成18年10月ころまでの長期にわたり,二人で全国各地に旅行をするなどして,性交渉を伴った交際を続けていたのであって,その間,上記(5)に認定のとおり,血酒の誓いや,伊勢神宮への特別参拝を経て,最終的には,××の共同経営をするに至ったのではあるが,それ以上に,原告において両親に被告との婚約を報告したり,被告においては既婚者であり原告と結婚するには法律上の障害があったにもかかわらず,夫と離婚の協議をしたりするなど,いずれも結婚に向けた具体的な行動をとった事実は認められない。
    このように,何ら外形的事実関係がないことに照らすと,両者間における婚約の成立については相当慎重に判断する必要があるところ,原告と被告の二人の間においてすら,結婚の時期や,結婚に向けた手続等について具体的な話が進んでいたとは認められないことからすれば,仮に,原告と被告間において,将来の結婚に関する言辞が交わされていたとしても,それは両者間における恋愛感情を高め,男女関係を維持するためのものとみるのが相当であり,これをもって法的保護に値する婚約とまで認めることはできないというべきである。
  (7) これに対し,原告は,平成16年2月9日の伊勢神宮への特別参拝によって,被告との間で婚約が成立していたと主張する。
    しかしながら,前記認定の血酒の誓いや,伊勢神宮への特別参拝によって,原告と被告の間の男女の絆がより強くなったと認められるとしても,前述したとおり,①伊勢神宮に特別参拝をした日から原告と被告の交際が終了するまで約2年8か月の期間があったにもかかわらず,原告と被告がいずれも結婚に向けた具体的な行動をとっていないこと,②原告と被告の交際が終了した後に,原告の両親を交えて話し合った際も,原告と被告の婚約の話は一切出なかったことからすれば,伊勢神宮への特別参拝の事実をもって,原告と被告の間に婚約が成立したと認めることはできない。
  (8) そして,原告は,被告が,夫と離婚するために,被告の長男を被告の義父母の養子にしたと主張するが,子を養子に出す理由は様々であるところ,相続対策であるとの被告の説明に特段不合理な点は認められない上,離婚のためというのであれば,長男に限る必然性もないと思われる。その他,本件各証拠中に,本件養子縁組が夫と離婚するためであると認めるに足りるものはないから,原告の同主張は採用できない。
    また,原告は,被告とAの夫婦関係が冷え切っていたと主張するが,原告と被告との関係がマスコミ等で取り上げられるようになってからも被告は離婚しておらず,また,その後のAの対応を報じた乙第8号証に照らすと,被告夫婦の関係が完全に破綻していたと認めることもできない。
    さらに,原告は,被告と××において同棲していたと主張するが,原告と被告が,婚約をして同棲しようとしたのであれば,十分な家具類が整った通常の居住施設において同棲するのがむしろ自然であると思われることに加え,原告が被告との同棲生活を送ったとする××1階の6畳スペースは,本来倉庫であった所にベッドなどを持ち込み,その外部(従業員の更衣室)に簡易シャワーユニットを設置したものにすぎないから(甲89),日常生活を送る住居としての機能は低いものである上,原告の供述によっても,原告が宿泊したのは,毎週3日にとどまるというのであるから(原告本人256),たとえ被告がそこに一緒に泊まることがあったとしても,これをもって同棲と評価することはできず,他に両者が同棲するに至っていたと認めるに足りる確たる証拠はない。
  (9) 以上のとおりであって,結局,原告と被告の間に婚約が成立したと認めることはできないから,その余の点について判断するまでもなく,婚約の不当破棄に基づく原告の請求は理由がない。

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