親権を譲りたくない場合は子どもを連れて別居する
相手方の承諾がなくても、自分や子どもの住民登録を異動させることはできます。 もっとも、住民票を移すと現在の居場所が知られることになりますので、その点は注意が必要になります。 したがって、実務上、あまり問題がないようであればわざわざ離婚前に住民票を異動させる人は少ないように思います。 近時はハーグ条約の影響を受け、裁判所実務がどのように変化するかが注目されています。現在は別居に際して子どもを連れ出しても違法ではありませんが、ハーグ条約では典型的な「連れ去り」と評価されており、国際的な見方と日本の見方は大きく異なっています。今後はハーグ条約の批准と国内法の整備によって、子どもを連れての別居が全く問題がない行為とされてきたこれまでの評価に変化が生じることはありかもしれません。 逆に言うと、子どもをおいて単身で家を出てしまった場合に、この状態が長期化した場合、継続性の原則から、相手方での監護教育実績が評価され親権が相手方にいく可能性もあります。 子連れ別居がなされてしまうというケースは男性の場合でもあります。この場合、1歳半のケースでも女性が取り戻すことはなかなか難しいという事例に接しました。別居からさほど時間が経過していない場合には、子の監護者指定、引渡し、その保全処分を申し立てることになります。その場合は1日でも早い方が良いと思います。時間が経過するにつれて効果がなくなり、数か月を経過してしまうと審判前の保全処分については取り下げるように事実上勧告される例もあります。もちろん子連れ別居は、親権獲得に有利に交渉を進めることができますが、別居された場合は1日でも早く法的手続をとり、その後の面会交流調停や審判でも和解的な解決ができる場合があります。子連れ別居は平穏な監護状態を確立される前に法的措置を講じることが重要となりますので、反対に、子連れ別居をされてしまった場合は法的手続を講じておくことで、子連れ別居を不当な連れ去りと主張していくことになります。こうした場合は離婚に詳しい弁護士に迅速な措置を講じてもらうことが最終的な解決をより良いものにするものと考えられます。 ひとりで別居してしまった場合は速やかに離婚弁護士に相談し、子どもの監護者の指定と引き渡しを求める審判と保全処分を行ったことのある弁護士に相談されるのが良いと思います。