3歳を超えているこどもに母性優先の原則はどう考えられるか

名古屋の離婚弁護士のコラムです。 今日は、結局、母親を監護者と指定したものの家裁調査官調査の在り方が問題提起された事案をみます。 一般的に、監護の継続性の原則と母性優先の原則は、監護者や親権者を決める一つの座標軸とされています。 したがって、その他のもの、例えば子の意思の尊重、兄弟不分離といった原則は、座標軸から決められる結論を修正するのに利用されるもので強弱は2つの考え方で決まります。 例えば、男性監護親が監護を続けているような場合に、監護継続性維持の原則と母子優先の原則が衝突するという関係にあります。 親権者指定の場合には、監護の安定性の方が重視されるといわれていますが、母子優先の原則を優先させた裁判例もあります。 本件も、極端かもしれませんが、2つの座標軸しかない判断において監護の安定性を優先すれば父に、母子優先の原則を優先すれば母となる事案であり、こどもは6歳と4歳であり、心情はともかくとして意向は修正要素とならず、また兄弟不分離の原則からこどもたちの監護者はゼロサムになるということになります。 本件は、妻がいわゆる子連れ別居をせず実家に帰ったパターンでしたが、父のもとで長らく順調に生育していたので監護者を変更する必要性に乏しい事案でした。 しかし、双方の監護能力などを検討して、「母性に日常的に接することである」との説示があった事案でした。 本件においては、調査官報告書の存在が問題を複雑にしています。名古屋家庭裁判所もそうですが、本来は手続を選び取るだけのインテークに、結論まで書いて手続を選別してしまいます。 そのため「結論ありき」が横行しており、その判断の基準は戸籍謄本などしかみないというから驚きです。 そして、本件では、未成年者らの心身の状態が良好であれば移転の必要がないこと、教育などの環境問題などの記述に不十分と思われると高裁で指摘された報告書の存在でした。 一般的にも問題点として指摘されますが、報告書は一部を開陳するにすぎず全部を余すところなく披露するものではありません。したがって、報告書に対する反論や重要な事実は裁判所内部に隠匿されてしまうため、調査官報告書への反論を難しくするというものがありました。恐らくは、兄弟間での葛藤があることについて秘匿とされた例がありましたが、兄弟不分離の原則を適用するのに不都合でしたので、秘匿という処置をとられたケースもありました。調査報告書では、結局、結論ありきで「母性の要求が満たされていない」とされています。しかし、抗告人も臨床心理士の大学教授の意見書をつけて反論するなどしています。そして、高裁は、抗告人が本件調査には、母親優先の原則による思い込みがあると指摘する所以であり、この批判に十分耐えられるだけの根拠の記述はない」と高裁も認めています。しかし、それでも母親が指定されているのは、調査官報告書に載せられない、結論ありきの「インテーク意見」という内部の感想です。ですから、調査官報告書に有効な反論があっても核心的事実はインテーク意見とされてしまうということもあり批判が難しいところです。 一部では、調査官報告書の可視化を唱える意見があります。たしかに、監護者を決めるにあたっては、調査官による心理学的ないし社会学的な専門的事実関係の調査が不可欠ですが、最近は、最初に結論を決めてそれに沿う報告書をデコレーションのように作成しているものが多いように思います。一部詳しい報告書もみましたが、父母ともに監護者として適切であるが、理由は分からないものの母親部分のみ抜き出して引渡しを命じるべきとの調査官報告書もありました。しかし、父母ともに監護者に相応しく、その理由も書いてあるのに調査官の意見は、母親部分のみを取り出して、母親とするものですが、これでは結論を導いた思考過程はもちろんわかりません。これも母親優先の基準を所与の前提として、判断の根拠すら明らかにしていない調査官調査に疑問が残るという見解もあるようです。 しかし、調査官サイドとしては、むしろ結論やその思考過程を検証されることを嫌がり密室性を強めており、刑事事件の取調べの可視化と同じ問題点が指摘されるようになってきました。また、調査官は少年事件では、明らかに心理学ないし社会学的な事実調査の得意な弁護士ではなく、別の鑑別技官が鑑定にあたるものであり、家事だけ突如「得意な弁護士」といわれても無理があるといわざるを得ないでしょう。事実の調査は探偵や警察、時に法律意見は弁護士が担当することですが、最近はどうも調査官が探偵気取り、弁護士気取り、ひどい場合は裁判官気取りのケースもされ、「裁判官もオレたちがいなければ何もできない。審判の下書きを書いているのは俺たち」という印象で、現実に調査官の論文に、一部しか報告書に記述しないのだから有効な反論はできないと誇らしげに書いているものもありました。 そもそもそういうことを誇らしげに論文として公表すること自体に問題がありますが、可視化やいわば証拠開示的な制度をしなければ、「結論ありき」との批判は免れないところと思います。東京高決平成15年3月12日家月55巻8号54頁は、母子優先の原則が安易に適用されているという指摘もありますが、むしろ監護の安定性を重視しすぎとの批判もあります。結局のところ、フレームワークとして座標軸が2つしかないという安易な監護者の決め方が、こどもの最善の利益に反しているように思えてなりません。

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