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一度決めた生活費(婚姻費用)を変更できるのか?

一度決めた生活費(婚姻費用)を変更できるのか?

 

 

離婚前に夫婦が別居するとき、専業主婦などの収入の少ない方は相手に「婚姻費用(生活費)」を請求できます。このような意味で、例えば所得が同じ東京電力の社員さん夫婦同士などの離婚事案では婚姻費用は請求できないことが多いです。

しかし別居中、相手の経済事情が悪化したり反対に自分の収入が増えたりして婚姻費用の金額が不適当になるケースもあります。また、婚姻費用調停は冒頭で決められてしまうので弁護士が介入した時点で、すでに決まっていたという残念なケースもあります。このように算定表より例えば3万円高くしてしまったというケースは、減額しても3万円については事情変更はみとめられないケースが多いでしょう。 

そんなとき、婚姻費用の金額を増減できるのでしょうか?

 

今回は一度定めた婚姻費用の金額を増減できるケースと変更する方法について、名古屋市の弁護士が解説していきます。

 

1.婚姻費用の相場と基本的な定め方

婚姻費用とは夫婦が互いに分担すべき生活費です。夫婦はお互いに助け合うべき「相互扶助義務」を負っており、経済面でも生活を支え合う必要があります。

収入が高い配偶者は相手に生活費を支払わねばなりません。ただし婚姻費用は相手に贅沢をさせるものとまではいえません。

 

婚姻費用は通常、毎月一定額が支払われます。金額は夫婦の収入状況や子どもの有無、人数や年齢を考慮して決められます。このホームページにも目安の算定式があるので参考に利用してみてください。

実務では、こちらの家庭裁判所の定める婚姻費用の算定表を使って相場の金額を算定し、その範囲内で毎月の婚姻費用の金額を取り決めています。その後、日弁連が新しい「新算定表」を公表しましたが、定着しないまま現在も算定表は健在です。2019年に発表されるとされていた裁判所の算定表も報道どおりにはならず公表されないまま2019年11月6日を迎えています。

http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf

 

2.事情の変更により、婚姻費用を増減できる

別居時や別居後にいったん婚姻費用の金額を定めても、後に変更できます。ただし変更できない場合もありますので例外的な場面では弁護士を入れるようにしましょう。

婚姻費用の金額は夫婦の収入状況や子どもの人数、年齢などによって相場が決まりますが、ときの経過によってこういった要素が変わる可能性があるためです。

 まず調停は話合いですから、算定表より高い金額を夫が支払うことは認められていますので、法外な婚姻費用を調停で成立させられていたというケースも一般調停委員のケースではあります。

妻が夫から婚姻費用を受け取っているとき、夫が昇進したり転職したりして収入が大きく上がったら現在の婚姻費用の金額が低額すぎる状態になる可能性があります。ただし、算定表は100万円で枠が一つ動くという建付けですので、少々の昇給では事情の変更にはならないでしょう。また、特に個人事業主など、売上の変動が大きい職種は半額になっても減額調停が認められなかった判例もあります。

子どもが15歳になったら学費や食費など大人と変わらない、お金がかかるようになるので婚姻費用が上がりますし、反対に子どもが20歳になったら子どもの扶養分が要らなくなるので婚姻費用は下がります。(ただし大学生は別途協議)

 

夫が失業して収入がなくなったら婚姻費用分担義務が一時的になくなる可能性もあります。ただ、失業保険も所得認定されますし、潜在的稼働能力が認められる可能性も大きいのではないかと思います。

 

このように婚姻費用は夫婦のそのときの状況に応じて相当な金額が変わるので、状況に応じて決め直す必要があります。これを事情変更の原則といいますが、ポイントは事情の変更だけではなく、変更しなければ当事者間の衡平に反するかという点にあります。

 

3.婚姻費用を変更できるケース

以下のようなケースでは、婚姻費用の金額を変更できます。

3-1.婚姻費用を増額できるケース

  • 支払う側の収入が上がった

支払う側が転職や昇進などによって以前より高い収入を得るようになった場合、婚姻費用の増額請求できる可能性があります。

  • 支払いを受ける側の収入が下がった、なくなった

支払いを受ける側が収入を得ている前提で婚姻費用の取り決めをした場合、収入が減ったりなくなったりしたときに婚姻費用を増額請求できる可能性があります。

  • 子どもが15歳以上になった

婚姻費用の取り決めをしたときに子どもが14歳以下だったら、その後に子どもが15歳以上になると婚姻費用が増額される可能性があります。

  • 子どもを高額な私立の幼稚園、学校に入れたい

子どもを私立中学や高校に入れるために婚姻費用を増額してほしいと希望される方もいます。算定表の金額は子どもが公立の学校に進学した場合を基準にしているので、私立に入れるときには増額が認められる可能性があります。

 

 

3-2.婚姻費用を減額できるケース

反対に、婚姻費用を支払っている側から減額請求できるケースもあります。以下のような場合です。

  • 支払う側がリストラや降格のために収入が減少した
  • 支払う側が病気やけがをして働けなくなった
  • 支払いを受ける側の収入が上がった
  • 認知してこどもが増えた

 

4.婚姻費用を変更できないケース

一方、以下のようなケースでは夫婦間の合意がない限り婚姻費用の変更は認められません。

4-1.増額請求が認められにくいケース

  • もっとよい家に引っ越したい

今の賃貸住宅に不都合はないけれどもっとよい家に引っ越ししたいから相場以上の金額を出してほしいと希望しても、通常は認められません。

  • 子どもに高額な習い事をさせたい

子どもに高額な習い事をさせたり塾に行かせたりしたいので、その費用を全額相手に負担してほしいと希望しても認められません。相場以上の負担については個別に夫婦で話し合って合意によって支払いを約束する必要があります。

 ただし、大学受験に備えた予備校は往々にして高額の予備校代をとらえれますので、こうしたものは大学進学に同意している非監護親(義務者)は支払わざるを得ないことも考えられます。

 

4-2.減額請求が認められにくいケース

  • 借金したので婚姻費用を支払えない

サラ金やカードなどで借金を作り、返済の負担が重いので婚姻費用を支払えないという言い訳は通用しません。借金返済よりも婚姻費用支払いが優先されるからです。自己破産をしても婚姻費用の支払い義務はなくなりません。

 

  • 家賃が高くて婚姻費用を支払えない

現在の家賃が高すぎるので婚姻費用を減額してほしいと希望しても通用しません。安い家賃の場所に引っ越して婚姻費用を支払うべきと考えられます。これは住宅ローンの支払いがきついという言い分にも同様にあてはまります。

 

  • 収入が減ると分かっていて仕事をやめた

自ら収入が減ると分かっていながらあえて仕事を辞めた場合や意図的に収入操作をして額面額を減らした場合などには、婚姻費用の減額が認められない可能性が高くなります。名古屋家庭裁判所の裁判官の個人的見解によると、いくら不正経理などをしていると疑われても3~4年程度、不正が続けられていれば端緒がないとして、このような収入操作を事実上追認しているとのことです。これに対して、婚姻費用や養育費の争いになってから収入を操作して減額した場合については、裁判所は会社の財務諸表の提出を求めるなど態度を一変させるとのことです。運用上は一貫せず正義にかなっているかもわかりません。しかし、そのような取り扱いであると覚えておいて欲しいと思います。

・弁護士トリックへの対応

 実家に帰っているのに住居費負担がない、本来はこども監護している親の保険に入っていて支払っているからその分は控除するべきなどという、弁護士トリックにはまらないように、弁護士をお探しになられてもしれません。

5.婚姻費用を増減する方法

婚姻費用を増減額したいときには、以下のような手順で進めましょう。

5-1.話し合う

まずは夫婦で婚姻費用の増減額について話し合いをします。増額を求めたいなら事情を説明して相手に増額を求め、減額を求めたいなら理由を述べて相手に理解を求めましょう。

お互いの連絡方法はメールやLINEなどの普段使っているものでかまいません。双方が納得できたら婚姻費用の増減額が可能です。ただし面会交流専用LINEなどで、養育費や婚姻費用の増額を切り出すのはマナー違反です。別のLINEアカウントであるとか、メール、郵送、弁護士間連絡など別の方法で切り出しましょう。

合意が成立したとき、新たな取り決め内容を明確にするため「婚姻費用についての合意書」を作成して書面化しておくようお勧めします。こうしておくことで後の調停で優位に立てる可能性があります。

 

なお話し合いで決めるときには、「婚姻費用の増減額が認められないケース」で紹介した例(習い事をさせたい、私学に入れたいなど)であっても相手が納得さえすれば婚姻費用の増額が可能です。特に私学に入れたいという場合は、両親がともに大学卒業の場合は、今般は「授業料」についての負担について話し合うのは調停の場では常識のように思います。

 

5-2.婚姻費用増額調停、婚姻費用減額調停を申し立てる

夫婦間で話し合いをしても相手が増減額に応じてくれないときには、家庭裁判所で「婚姻費用増額調停」「婚姻費用減額調停」を申し立てましょう。調停では調停委員が間に入り、それぞれの意向が合致するように調整してくれます。お互いの収入状況の変動などに応じて妥当な婚姻費用の金額についても提案してくれるケースも多数です。

調停で夫婦双方が増減額に納得すれば調停が成立し、婚姻費用の金額が変更されます。

5-3.審判で決定される

調停で話し合ってもお互いの意見が合致しない場合には、婚姻費用分担審判という手続きに移行して審判官が婚姻費用の金額を決定します。収入の増減や子どもの成長など婚姻費用を増減額すべき要素があれば、現状に応じて婚姻費用の金額が変更されます。

審判ではお互いが納得していなくても裁判官(審判官)が妥当な婚姻費用を決めます。自分の主張を通すには、なぜその金額が妥当と言えるのか法的な根拠を示す必要があります。審判は話し合いではなく裁判に近い手続きなので、弁護士に依頼する方が有利になりますし安心です。

 

現状の生活費が高すぎるあるいは安すぎるために不満や疑問を感じているなら、一度弁護士までご相談下さい。増減額が可能か、可能ならどのくらいまで変更される見込みがあるのか算定し、お伝えいたします。弁護士にご相談されるのは、破産や信用不安が起きているからではなく、再婚したいので法律関係を整理したいとか、相手方が再婚しているので権利関係をしっかりしておきたいという動機でヒラソルの弁護士にご相談される方が多いように思います。

婚姻費用、養育費の名古屋、安城での相談なら名古屋駅ヒラソル法律事務所の弁護士にお尋ねください。離婚前は60分無料相談、離婚後相談は30分無料です。特に高額所得者の方は婚姻費用も養育費も高くなりがちです。一度調停や審判で決まると、動かせませんので、なるべく大学教授、年収1000万円を越える、医師、弁護士、税理士、会社の役員、個人事業主、経営者などの方々は、婚姻費用分担調停も離婚弁護士を探されてはいかがでしょうか。

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