離婚時年金分割について

 

離婚時年金分割について

 

「長年連れ添った相手との離婚を決意した」

 

熟年離婚のケースでは特に「年金分割」が重要です。

年金分割をしておくと、将来年金を受け取れる年齢になったとき受給できる年金額が調整されます。少ない側の年金が増やされて多い側の年金が減らされます。熟年離婚後の収入ともなります。

専業主婦だった方などにとっては離婚後の生活を維持するために重要な手続きです。

 

年金分割の手続きは、離婚後2年以内にしないといけないので注意が必要です。

 

今回は離婚時年金分割の仕組みについて、解説していきます。

 もちろん一般的ではありませんが、単身で生活するには、住宅ローン支払い済みの自宅マンション居住では月額12万円、賃貸住宅の場合は月額17万円の生活費が必要になるのではないかといわれています。 

あなたも定年退職した後や、支出が上回る場合は必要となる生活費に相当する収入の基本は何といっても年金なのです。

 

1.離婚時年金分割とは

離婚時年金分割とは、夫婦が婚姻中に払い込んだ年金保険料を離婚時に分け合う手続きです。

分けられるのは「払い込んだ年金保険料(年金記録)」であり「年金受給額そのもの」ではありません。2分の1の割合で年金分割をしても「年金が半分ずつ」になるわけではないので注意しましょう。

 

年金分割すると、将来年金を受け取れる年齢になったときの年金額が変わります。金額の少ない方は金額を加算され、多い方の金額は減算されます。

専業主婦などの方の場合、自分一人が受け取れる年金は微々たる金額なので、年金分割をして夫の年金を加算してもらうことが非常に重要です。

 

2.年金分割の対象になる年金

年金分割の対象になる年金は、「厚生年金」と「共済年金」です。国民年金は対象になりません。

夫や妻が「会社員」「公務員」などでどこかに勤めているケースでは年金分割できます。

夫婦のどちらも自営業やフリーランスなどで厚生年金・共済年金に加入していないケースでは、年金分割できません。例えば、「国民年金」は1階建て部分ですので年金分割制度の対象にはなりません。

 

また夫だけではなく妻の年金も対象になります。共働きのケースで年金分割をすると、夫と妻の年金が両方とも按分対象になります。「夫の年金の一部をもらえる制度」ではないので注意が必要です。まれに妻が夫から年金をもらう権利と誤解している方もいますが、妻の年金も対象になることも注意しましょう。

 

3.年金分割によって額を変更された年金を受け取れる期間

年金分割を行った場合、いつから金額を変更された年金を受け取れるのでしょうか?

夫婦の年齢が違うケースなどでは、夫と妻の年金受け取り開始時が異なるので注意が必要です。

金額を変更された年金を受け取れるようになるのは、「夫婦がそれぞれ年金を受給できる年齢になったとき」です。

たとえば年齢差5歳の夫婦が年金分割すると夫が65歳になったときに減額された年金を受け取り始めます。そのとき妻は60歳ならまだ年金を受け取れません。5年後、妻が65歳になったとき、年金分割によって加算された年金を受け取れるようになります。(2019年11月9日現在)

「夫が65歳になって夫の年金が支給されるようになったら妻にもその一部が支払われるようになる」制度ではないので勘違いしないようにしましょう。

 

4.合意分割と3号分割

年金分割には合意分割と3号分割があります。

4-13号分割

3号分割は、配偶者が「3号被保険者」のケースで利用できる年金分割です。3号被保険者とはいわゆる「扶養家族」です。妻が専業主婦やパートで稼ぎが少なく夫の扶養に入っていた場合に3号分割できます。

ただし適用されるのは平成204月以降の年金保険料についてのみです。それ以前の年金保険料については次に紹介する「合意分割」が必要です。

 

3号分割の特徴は、夫婦の合意がなくても当然にできることです。また分割割合は2分の1ずつとなります。専業主婦が離婚した場合、夫に何も言わなくても離婚後一人で2分の1の年金分割ができます。

 

4-2.合意分割

合意分割は、夫婦が合意して決定しなければならない年金分割方法です。相手の合意がないと年金分割できませんし、分割割合も決定できません。分割割合は2分の1に限らず合意によって2分の1までの割合で自由に定められます。

3号分割が適用されない場合、すべて合意分割が必要です。ですから、2019年現在、「熟年離婚」といわれる方は、専業主婦の場合でも合意が必要になることが多いと思われます。

 

5.年金分割の手続き方法

年金分割の手続き方法は、3号分割と合意分割とで大きく異なります。

5-13号分割のケース

3号分割の場合、分割を受ける側(3号被保険者)が離婚後に単独で手続できます。

年金手帳と戸籍謄本、本人確認書類を持参して管轄の年金事務所に行き「標準報酬改定請求書」という書類に必要事項を記入して提出すると、年金分割の手続きが完了します。

 

5-2.合意分割のケース

協議離婚の場合

合意分割の場合には、手続き前に相手の合意が必要です。協議離婚のケースでは、年金分割を行うことを相手と合意した上で「年金分割合意書」を作成しましょう。

年金分割することだけではなく分割割合も決めなければなりません。平等に2分の1ずつにするのが良いでしょう。

合意書を作成したら、離婚後に年金事務所で手続きを行います。年金分割合意書を公正証書にしていない場合には、夫婦二人とも年金事務所に行く必要があります。公正証書にしていたら分割を受ける側(妻など)一人で手続きできます。夫婦二人でいくことが現実的ではない場合は、下記のとおり年金分割審判の申立てをするのが一般的です。

 

離婚調停、離婚訴訟をする

協議で話し合っても相手が年金分割に応じないときには、2つの方法があります。

年金分割だけではなく財産分与や慰謝料などの他の条件でも意見が合わないなら、家庭裁判所で離婚調停を申し立てて、調停内で離婚条件について話し合いましょう。

離婚後、調停でも解決できない場合には、自動的に年金分割審判に移行しますが、離婚前紛争になっている場合は、離婚訴訟によって解決する必要があります。

 

離婚後に年金分割調停をする

財産分与などの他の条件についてはすべて合意できて年金分割の点だけでもめているなら、先に離婚をしてしまう方法があります。その場合、離婚後に「年金分割調停」を申し立てて年金分割についての話し合いをしましょう。調停で相手が年金分割に応じないときには、「審判」に移行して裁判官が年金分割を命じてくれます。審判になったらほとんど必ず2分の1の分割割合で年金分割が認められます。

 

合意分割は「相手の合意がないと年金分割を受けられない」「当事者が2分の1までの範囲で自由に割合を決定できる」とは言っても、年金分割審判をすれば2分の1の割合で年金分割を受けられる可能性が非常に高くなっています。離婚協議で無理に譲って年金分割の割合を低くしたり権利を放棄したりする必要はありません。

 

6.年金分割の期限

年金分割には期限があるので要注意です。離婚後2年以内に手続きをしないと権利が失効して年金分割を受けられなくなります。

期間が間近に迫っているときには家庭裁判所で「年金分割調停」または「年金分割審判」を申し立てましょう。調停や審判の申立があるといったん年金分割請求権の時効が停止し、調停・審判の最中には時効が成立しません。調停や審判が決定した後1か月以内に年金事務所で手続きを行えば年金分割できます。

ただし調停や審判が決定した後1か月以上放置すると、せっかく決まった年金分割を受けられなくなるので、早めに手続きを済ませましょう。

 実際いくらもえるのか、具体的な年金金額はどうなるのか

年金分割は、熟年離婚後の貴重な収入源となります。しかしいくらもらえるか分からないと、離婚後の生活設計ができません。

そこで、年金事務所で、年金加入記録照会や年金見込額試算など年金に関する個人情報を提供していますのでご自身で入手して調べてみましょう。請求できるのは、おそらく50歳以上の方で、年金手帳(年金番号)と印鑑を持参して照会すると、厚生年金に加入していた月数に応じた年金見込み額及びその内容が分かります。また、ねんきん事務所のホームページでも、年金額簡易試算などができますが、あらかじめIDなどの登録が必要なようです。

年金分割による影響は婚姻生活が長ければ長いほど大きくなり、主婦の方が熟年離婚する場合などには非常に重要です。名古屋で離婚問題・熟年離婚に悩まれている方がおられましたら、名古屋駅ヒラソル法律事務所の離婚弁護士にお気軽にご相談下さい。

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