面会交流中の子どもの奪取

最近、面会交流を行っている際に、相手方が子どもの返還を拒み略取されるという案件に関与しました。

違法な監護の開始については、特に面会交流は元両親の信頼関係に基づくものであり、面会交流のルールを守れない以上は、今後の面会交流は応じられなくなってしまうでしょう。

その代償は高いように思います。

面会交流の際の連れ去りのように違法性が高いケースでは、犯罪とされており審判前の保全処分を利用しなくても警察に相談すれば対応してもらえます。また、審判前の保全処分を利用しても構いません。このように手続は複数ありますが、原則として原状回復が認められるというのは、ポリシーといえ、これまでの現状追認、つまりノンポリシーの運用からすれば評価できるものです。

 

刑事裁判所の働き掛け

もっとも、このような運用が始まったのは、建前では、違法な連れ去りによって有利な地位の獲得を許すことは、子どもを身体的・精神的に過酷な状況に追い込むことになるからと説明されています。

しかし、現実には、別居中の共同親権者間の子どもの連れ去りについて、最高裁平成17年12月6日判決が、未成年者略取罪の成立を認め、刑事的救済を受けられることになったことが大きいと思います。つまり、家庭裁判所があまりポリシーがないので、刑事裁判所の側が弱肉強食の世界はダメだ、とNO!をつきつけたところ、家庭裁判所でも審判前の保全処分において原状回復を認めるものが現れました(東京高裁平成20年12月18日)。これは、警察が取り戻すから家裁は役に立たないといわれ始めたために危機感を覚えた裁判例といえるでしょう。それだけ頼りない家庭裁判所像というのが浮かび上がってきます。警察が動き始めて初めて裁判例が変わるのです。

しかしながら、最近東京高裁平成20年12月18日を引用して、本案(つまり監護者指定の裁判)で主張をしましたが、やはりこの裁判例は「審判前の保全処分」(つまり仮の裁判)でしか妥当しないと現場では理解されている印象を持ちました。ハーグ条約では、現在地に戻すことが子の最善の利益に資するものとされており、東京高裁平成20年はハーグ条約とも平仄が合いますが、家庭裁判所ではあくまでも「仮」の裁判だけしか妥当しないと判断しているように考えられました。

ハーグ条約の施行後は、子連れ別居も違法な子の奪取になるという判例タイムズでの論文の公表もありました。しかし、この論文を引いて最高裁判所に許可抗告を求めたところ、理由なく「不許可」とされてしまいました。現場の家事裁判官の意識はすぐに変わるものではありませんので、今のところは、子連れ別居が違法と解した裁判例はありません。特別抗告も行っているので、最初の最高裁の判断をうかがいたいと思っています。

最高裁の判断

★横浜家庭裁判所審判平成14年10月28日
子の引渡仮処分の事案で、離婚調停中、勝手に連れ去らないとの約束に反し、夫が妻の元から女子(3歳)を連れ去った。そして2カ月後の母親との試行面接で、大泣きするなど子の母親に対する拒否態度が明示的であったにもかかわらず、監護開始の違法性を根拠に、父親に引渡しの仮処分を命じた例があります。しかし、子の意向に反しており、残虐な判断ということもできるかと思います。試行面接では、どうして拒否態度が明示的であったのか、それを心理学、社会学見地から判断するのが相当であると考えられます。

★東京高等裁判所平成24年12月28日
面会交流中にこどもを引き揚げた際の婚姻費用について、こども分の養育費相当額を婚姻費用から減額することは信義則上許されないとの判断が出ました。このように婚姻費用にも信義則が適用された一事例ということができます。判断は、「一件記録によれば,平成24年4月27日から同年8月3日まで,長男及び長女は,品川区所在の「A保育園」に入園・通学していた事実が認められ,この間,抗告人が事実上養育していたものと認められる。
しかしながら,その経過は,相手方が1泊の予定で長男及び長女を抗告人に委ねたところ,抗告人は,連絡も断ち,長期間,長男及び長女を相手方のもとに戻すことを拒んできたことによるものであるから,この間の事実上の養育が抗告人によってされたからといって,その間の費用を減額したり,支払を拒むことは,信義則上許されないものと判断される。
また,当審提出の資料によれば,抗告人の平成24年の収入は,1月から9月まで約360万円程と試算されるが,ボーナスの支給の有無等により影響される平成24年分の収入を確定することはできないから,直近の確定収入として平成23年分の収入を採用することが不相当であるとはいえない」という部分にとどまっています。

婚姻費用算定の際に信義則の適用による修正,あるいは権利濫用の法理による制限を認めることができるかどうかについては,夫婦が別居に至った原因につきいずれか一方がいわゆる有責配偶者である場合に,その有責性を考慮することができるかという形で論じられることが多いといえます。しかし学説は,どちらかといえば有責性は副次的な事情として考慮するにとどまるか,ほとんど考慮しないという立場が強いよのです。

学説の立場

・「婚姻費用は,基本的に現在および将来の婚姻生活共同体維持の費用だから,破綻原因としての過去の有責事由が将来の婚姻生活維持費用の判断基準となるべきではないであろう。婚姻費用の分担は,婚姻生活回復の可能性がある限り義務づけられ,婚姻破綻の程度(協力関係の期待度)が分担の程度の判断基準となる。制裁的性格をもつ有責性は離婚の際の財産分与に併せて考慮されるのがよく,婚姻費用分担に際して考慮される有責性は,将来の婚姻協力の期待度を判断する副次的斟酌事由にとどまる。」(松嶋道夫『新版注釈民法(21)』436頁以下)

・「婚姻費用分担事件の審判(調停)においては,単なる生活費紛争の領域を超えて,離婚原因の有無とりわけ有責性の有無に焦点が移り勝ちとなる。しかし,このような事態は,いきおい審理を長期化させ,特に未成熟子がいる場合にはその保護に欠ける結果となりかねないので,(中略)有責性の要素は可能な限り排除するという配慮が必要となる。」(梶村太市「婚姻費用の分担」岡垣学=野田愛子編『講座・実務家事審判法2』41頁)

・「不貞行為は,有責性及び破綻を顕著に認めるものであり,容易に認定できる資料が提出されることも多く,(不貞行為に及んだ)申立人の請求を権利濫用として却下するか,事案によっては,(中略)扶養義務を生活扶助義務程度とする解決もあろう。そのような場合であっても,請求者が未成熟子を監護している場合は,子の監護費用相当額を制限することはしない。婚姻関係が継続している限り,原則として生活保持義務を前提とした婚姻費用分担義務を負うとする立場が相当である。」(中山直子『判例先例親族法―扶養―』47頁以下)とされている。

・裁判例は,有責性そのものが婚姻費用の減額又は免除の事由となることを認めて,信義則又は権利濫用の法理の適用を明言しているものが少なくない。

・東京高決昭58.12.16判タ523号215頁は,「夫婦の一方が他方の意思に反して別居を強行し,その後同居の要請にも全く耳を藉さず,かつみずから同居生活回復のための真摯な努力を全く行わず,そのために別居生活が継続し,しかも右別居をやむを得ないとするような事情が認められない場合には,前記各法条(民法760条,752条を指す)の趣旨に照らしても,少なくとも自分自身の生活費にあたる分についての婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず,ただ,同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるというべきである。」と判示しています。

・福岡高宮崎支決平17.3.15家月58巻3号98頁は,「(有責配偶者である)相手方が婚姻関係が破綻したものとして抗告人に対して離婚訴訟を提起して離婚を求めるということは,一組の男女の永続的な精神的,経済的及び性的な紐帯である婚姻共同生活体が崩壊し,最早,夫婦間の具体的同居協力扶助の義務が喪失したことを自認することに他ならないのであるから,このような相手方から抗告人に対して,婚姻費用の分担を求めることは信義則に照らして許されないものと解するのが相当である。」と判示しています。

・東京家審平20.7.31家月61巻2号257頁は,「別居の原因は主として申立人である妻の不貞行為にあるというべきところ,申立人は別居を強行し別居生活が継続しているのであって,このような場合にあっては,申立人は,自身の生活費に当たる分の婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず,ただ同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるものと解するのが相当である、としています。

なお,実務における最近の傾向として,請求者に不貞行為がある場合は,有責性が明白であるので権利濫用や信義則によりその請求を制限するが,それ以外は,生活保持義務を前提とした標準的算定方法に従った婚姻費用分担額を定めている。婚姻費用は,当座の生活費であるから,簡易迅速な審理をする必要があり,できるだけ定型的に処理されている印象があります。したがって、紹介した東京高裁は事実関係を前提に生活保持義務を認めないものですから、審理の長期化を招くことは必至のように思われます。

本件は,婚姻関係破綻についての有責性が問題となっている事案ではなく,未成熟の子らを一時的に預かるとの約束で引き取った親が,子らを通常監護している親の下に戻さなかったことの有責性が問題となって,その点につき信義則を適用したという事案であり,その他に類似の裁判例は公刊されていませんでした。婚姻費用は規範的判断は別として事実状態を基調に支払われるべきで、判旨自体も道徳的にすぎるのではないか、と感じ、法律家としての観点からは判旨に賛成することはできません。
本件は問題となっている期間が3か月余という決して長いとはいえない期間であることから事実上妻が監護していると事実認定のレベルでみなせる限界とみることができるうえ,父が子らを引き取って相手方の下に戻すのを拒否し続けた期間が相当長期にわたるような場合は、この裁判例の射程は及ばずまた扶養をしていないこどもの扶養料を請求すること自体にも相当の疑問を禁じ得ません。今後検討を要する部分も少なくないのであって,その点は今後の裁判例の集積が待たれるところである。

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