妻と離婚した後再婚したいのですがばれてしまいました。離婚請求はできますか。

 不貞は離婚の原因にはなりますが、不貞をした者が離婚を請求することは、原則としてできません。基本的には、夫婦関係を相談しているうちに不貞関係に陥る例がほとんどなので、適時に別居して婚姻関係を破綻させた後に交際する必要があります。

離婚の原因となる不貞と有責配偶者からの離婚請求

 不貞をした者が配偶者から離婚請求をして、裁判所が不貞を認定して離婚判決が出ると、ある意味、その後は独身に戻り、意中の交際相手と再婚することができます。

 しかし、こどもがいる場合などを中心に、不貞をした者から離婚を求める場合には、大きな障壁が立ちはだかります。これが有責配偶者からの離婚請求という問題です。

 最高裁は、別居期間が長期間であること、未成熟のこどもがいないこと、離婚することで配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態にならないことの3要件を課していますが、①及び②は基本的に、こどもが20歳近くになることが要件で同じことをいっているに等しいといわれています。

未成熟のこどもには最高裁はきまぐれ

 原則として、未成熟のこどもがいる場合には、未成年者という意味ではなく、また、経済的に独立していないこどもを指します。したがって高校生など精神的な成熟があっても、直ちに離婚はできないのです。こうなるとほとんど罰ゲームのようになってきてしまいますが、最高裁は3つの要件を相補的補完要件としてとらえていることから、③の条件で良い条件を示していれば、たまに②の論点において、高校生のこどもがいるが、3歳のときから一貫して妻が育て、夫は生活費の送金を続けてきたことから養育にも無関心ではないので、未成熟のこどもがいることは離婚請求の妨げにはならないとしたものもあります(最判平成6年2月8日家月46巻9号59頁)

一番重要な過酷要件―条件次第では調停で同意がとれることもある。

 

 裁判例の中には、約13年間も長い間、別居しているにもかかわらず、有責配偶者からの離婚請求を認めなかったものもあります(東京高判平成9年11月19日判タ999号280頁)。

 この事例では、夫が不貞をして、妻とは約13年間も別居生活を続けていたが、夫は月額80万円の給与をえながら妻子には少額を送金するにとどまり(高校3年と中学2年)、妻子の生活費が10万円にも満たないので、やむを得ないので、妻が実家から援助を受けていた事例でした。離婚すれば婚姻費用がなくなり、ますます生活が苦しくなる可能性がありました。

 以上のとおり、有責配偶者からの離婚請求は相当にハードルが高いのが現状です。裁判実務では非常に簡単な判決文で有責配偶者からの離婚請求を退けているものもみます。

調和の観点

 

 私の知っている案件で、有責配偶者からの離婚請求で妻が離婚を拒否したことから、夫は会社を辞めて、引っ越してしまい、住民票は実家に置いたままで場所が行方不明になっている、というものがあります。実は、名古屋市内におり、交際相手と同棲しこどもももうけています。

 つまり、有責配偶者からの離婚請求というのは、①婚姻関係は破綻→②離婚請求をすることが信義則上許されない―というものにすぎません。しかし、かもみーる法律事務所(仮)の弁護士が2000万円を解決金として要求してきたことから、結果として、夫は法律上の離婚を断念し、重婚的内縁関係を選ぶことにしました。

 妻は、①養育費、婚姻費用も受け取れない、②解決金も受け取れない、-という結果になりました。強欲に交渉した結果ということになります。

 いくら有責配偶者を相手にしている場合でも、相手とは誠実に話し合うことを示すことが大事な例です。

DVのでっちあげも厳禁

 

 不倫妻は、夫のDVを理由に名古屋市の配偶者暴力支援センターなどでシェルターに入り、保護命令の申立てや事実上保護命令と同一の効力がある名古屋市のこども・女性福祉課の証明書を取得して、DVをでっちあげようとします。

 ある不倫妻は、共産党系の弁護士を立てて、サッカーチームのマネージャーをしていましたが複数人と交際し、淫乱な行為を繰り返していたにもかかわらず、夫から性的レイプをされたなどと主張して、DVをでっちあげようとしました。しかし、裁判所は、妻の不倫を認定し夫の暴力を否定し、反対にDVをでっちあげた不倫妻と共産党系弁護士は訴えられました。最近、名古屋地裁ではDVのでっちあげに厳しく、診断書や写真など客観的根拠を欠いている場合の面会交流妨害について女性や愛知県に賠償を命じる判決を行っています。

 DV専門弁護士から、「DVをでっちあげましょう」「シェルターに入れば大丈夫」とそそのかされても、結局は誠実に話し合う方が早道です。結局、男児はシェルターに入れない場合も多いので身勝手な不倫で男の子にも傷を負わせてしまいました。

 当該女性は共産党系弁護士にDVのでっちあげを依頼し、準備書面に「レイプされた」「性暴力」「おつとめをしいられた」「性奴隷にされた」などと記載したことから、名誉毀損でも訴えられることになり、他の様々な手続きにも女性は巻き込まれました。

 この弁護士は財産分与でも「性暴力があったから財産分与の時期は調停申立て時になる」などと主張し、裁判所から「いっていることの意味が理解できない」といわれたといいます。最終的には、この共産党系弁護士は、強制執行妨害行為といわれてもやむを得ない行為をして、男性側から刑事告訴されました。

 このように卑怯な手は、最終的には、上手くはいかないもので見ている人は見ているのです。「性暴力」というのは不倫を誤魔化す弁護なツールである時代は終わりました。

できるだけ誠実な話し合いをすること

 協議離婚や調停離婚で決着をつける必要があります。そのためには、高額の慰謝料や財産分与に関する相手方の高い水準の要求にも粘り強く交渉していく必要がある誠実な態度が必要です。そのために着地点を探す離婚弁護士が必要といえます。再婚相手との間にこどもが欲しいかなど、交渉のスピードによっては、相手方の慰謝料や財産分与の要求にも真摯に向かい合う必要があります。

長期の別居後の交際は不貞ではないこと

 妻が働くことを嫌がり、長期にわたり別居生活をしていると、当然、男性側に交際相手が生じることになります。この場合、当該交際相手に慰謝料は請求できませんし、こどもができた場合は婚姻費用は当然減額されます。そして、こどもが20歳になった際には離婚請求は認容されますので、それまでにキャリア形成をしていない女性は、最終的には、生活保護などに頼るしかありません。

 よく不貞で婚姻費用をもらい続ければ良いといわれますが、ある程度のところで妥協し離婚しキャリア形成の機会を作っておかなければ、離婚後、収入が全くなくなった後、生活に困窮してしまう人が多くいます。そういう方が法律相談に来られても、「働いてください」としかいう言葉はありません。しかし、実際ブランクの長い人は電話機一つろくに使えない、エクセルが使えないといった理由で、働き口は、それほど多くないのが現実でしょう。

 そして離婚時期が遅れると財産分与が余り期待できなくなるという副作用も伴います。

 短期的な視点のみならず中長期的な視点もみながら対応する必要があります。ところで、夫婦関係が破綻した後に不貞が行われた場合には、あてはまりません。ですから、不貞を行っていても先に婚姻関係が破綻していれば離婚が認められることがあります。したがって、夫婦関係が破綻した後だと有責配偶者のような制約がなくなることになります。

 しかしながら、不倫相手と早く再婚したいからといって、自ら積極的に夫婦関係を破綻に至らしめた例がありましたが、裁判官が妻に同情し、不貞慰謝料と相場の1.5倍の養育費を支払い、財産分与は将来の残された課題として審判で解決することにしなければ離婚を認めない、という判事もいました。つまり、短慮な行動はあまりおすすめできません。

夫婦関係の破綻

 では、どういう状態になれば夫婦関係が破綻したといえるのでしょうか。これは、最近の家裁の傾向では、家庭別居による婚姻関係の悪化があり、別居により破綻するという考え方が主流になってきているように思います。著名な昭和62年の最高裁の判決が別居後3か月で婚姻破綻を認めていますので、いまだ3か月ないし別居直後は破綻しているとはいえない、という見解も成り立ち得ると思われます。

 では、ポイントの家庭内別居ですが、

  ・寝室が別々

  ・性交渉が長期にない

  ・ご飯も別々

  ・これらの時間の継続

 がポイントです。

 そして、別居によって、夫婦関係が破綻したと考えられると思われるということが、暗黙知としてルール化されてきています。別居してしまった場合、同居を再開することはまれであるという経験則が裁判所にあり、現実に別居が長期間続いている場合、別居時をもって破綻と認定する例もあるように思われます。

 しかし、婚姻破綻ほど裁判官の個性が出る解釈はないことから、家庭内別居という概念自体否定する判事もいます。そして、同じ屋根の下で寝起きしている以上、夫婦関係は悪化しておらず別居しても6か月程度は破綻しないという考え方の判事もいます。

 したがって、実際は、別居後1年程度は性交渉を伴うような交際は控えた方が良いように思われます。

 

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