外国人と離婚する方法~渉外離婚について~

 

外国人と離婚する方法~渉外離婚について~

 

日本人と外国人が離婚する際には、日本人同士の離婚とは異なる手続きが必要となるケースがよくあります。日本人同士の場合にはほとんどが「協議離婚」をしますが、外国人相手の場合には協議離婚できない事例も少なくありません。

 

そもそもどこの国の法律が適用されるのか、どの国の裁判所で審理をすべきかなども問題となります。

 

今回は外国人と離婚する際に問題となる事項について、弁護士が解説します。

アメリカ人やフランス人、イタリア人や韓国人などの方と国際結婚されている方はぜひ参考にしてみてください。

 

1.協議離婚が有効にならない?

日本人同士が離婚する場合には、当然のように夫婦が話し合って解決を目指すのが一般的です。合意ができれば離婚届を役所へ提出し、離婚が成立します。この手続きを「協議離婚」といいます。日本では約9割の離婚案件で協議離婚が利用されています。

 

一方、外国人相手の場合には協議離婚できない可能性があります。

世界では、協議離婚が認められていない国も多数存在するためです。たとえばアメリカの多くの州では協議離婚ができず、日本でいうところの裁判離婚しかできません(調停離婚は有効です)。

すると、日本で協議離婚をしてもアメリカでは有効な離婚にならない可能性があります。

その場合、相手と話し合うだけではなく、家庭裁判所で離婚調停を申し立てなければなりません。

 

また、そもそも離婚に日本法が適用されないケースもあります。協議離婚を認めない相手の国の法律が適用されると、相互主義の原則から協議離婚はできません。例えば、中国人同士の夫婦の場合は、離婚準拠法が中国法の場合は、協議離婚が認められています。

また、韓国の場合は、韓国の協議離婚制度は、離婚意思について家庭法院の確認を受けたうえで、戸籍法が定めるところによる申告が必要で、純粋な協議離婚とは異なっています。しかし、日本の戸籍実務では、韓国家庭法院による確認は協議離婚の方式に関するものであるとして、日本においては、協議離婚届けが受理される取扱いです。もっとも、韓国人同士が日本で協議離婚届けを提出した場合は、現在は韓国では承認されません。この場合は、当事者双方が在日韓国大使館に出向いて韓国法に従った手続をとらなければ、離婚の効力が韓国では承認されないということがあります。

さらに、ブラジル人同士の場合は、日本で協議離婚届けは受理されない取扱いです。ブラジルにも協議離婚制度は一応ありますが、未成年者のこどもがいないことや公証が必要とされるなど、日本の協議離婚とは要件が異なるため、ブラジルでは承認されない可能性があります。そこで、日本では、裁判所で離婚をしてそれをブラジルで承認してもらう方が簡単なケースもあるようです。

このように、国際離婚(渉外離婚)の場合には、現地に効力が及ぶかという観点から、協議離婚が難しくなる可能性があるので、頭に入れながら対応を進めるべきです。

 

 

2.準拠法と国際裁判管轄

外国人との国際離婚を進める際には、「準拠法」と「裁判管轄」を意識する必要があります。

2-1.準拠法とは

準拠法とは「どこの国の法律に従うか」という問題です。

日本法が適用されれば協議離婚できますし、財産分与や親権などについても日本法にもとづいて決められます。

一方、相手の国の法律が適用されるなら、相手の国の法律を調べなければなりません。

離婚の際の準拠法は、「法の適用に関する通則法」によって以下のような方法で決まります。

 

  • 夫婦の本国法が同じ…その本国法

日本人同士の離婚のケースなどです。

  • 夫婦の本国法が異なるが、夫婦の常居所地法が同じ…常居所地法

たとえば日本に居住するアメリカ人と韓国人の離婚の場合、日本法が適用されます。

  • 夫婦の本国法も常居所地法も異なる…夫婦に最も密接な関係がある場所の法律

たとえばアメリカに居住するアメリカ人と日本に住むイタリア人の離婚で、婚姻生活は日本で送っていた場合、婚姻生活を営んでいた日本の法律が適用されます。

  • 夫婦の一方が日本に常居所のある日本人

夫婦のどちらかが日本に居住する日本人の場合、日本法が適用されます。

 

2-2.国際裁判管轄とは

国際離婚する際には「国際離婚管轄」を確認しなければなりません。

国際裁判管轄とは「どこの国の裁判所で審理を行うか」という問題です。

日本に国際裁判管轄があれば日本の家庭裁判所で離婚問題を解決できますが、外国にある場合には外国の裁判所を利用しなければなりません。

 

人事訴訟法によると、以下の場合には日本の裁判所に国際裁判管轄が認められます。

  • 被告の住所、住所不明な場合には居所が日本国内にあるとき
  • 被告が死亡時に日本国内に住所を有していたとき
  • 当事者双方が日本国籍を有するとき
  • 当事者の最後の共通の住所が日本国内にあったとき
  • 被告が行方不明であるとき
  • 外国の裁判所での離婚判決が日本国内で効力を有しないとき
  • その他特別な事情があるとき

このように、当事者双方に日本国籍があれば、日本の裁判所に管轄が生じるため、日本で離婚裁判を起こすことができることになります。

「行方不明」の証明方法

人事訴訟法によると、原告が日本に住んでいる場合には被告が「行方不明」であることを証明すると、日本の裁判所に国際裁判管轄が認められます。

行方不明を証明するには、原告の陳述書や被告の出入国履歴に関する資料、被告の住所地に送付したけれども宛先不明で返送された手紙などが証拠として必要です。弁護士に依頼し資料を集めて裁判所へ提出しましょう。

 

「特別の事情」とは

「その他特別な事情があるとき」にも日本の裁判所に国際裁判管轄が認められます。

特別な事情として、具体的には以下のような場合があてはまりやすいでしょう。

 

  • 相手方(外国人)が一方的に帰国し、遺棄されてしまった
  • 配偶者から外国でDVを受け、日本に逃げて帰ってきた

 

3.調停離婚と調停前置主義

日本では「調停離婚」の制度があります。

調停離婚は、裁判所の調停委員が当事者の間に入って意見を調整し、合意によって離婚する方法です。

諸外国では調停離婚の制度がないところもたくさんありますが、調停離婚は裁判離婚に準じるものとして効力が認められる国もあります。

 

一方、調停離婚が外国で必ずしも有効とは限りません。調停離婚の効力が認められないなら、夫婦間で争いがなくても離婚するために訴訟を提起しなければなりません。

そもそも相手の本国で離婚が認められていなければ、相手国においては離婚そのものができません。

 

国際離婚する場合には、調停離婚が相手国で有効かどうか確認しておく必要があるでしょう。

 

3-1.調停前置主義について

日本で離婚する際には「調停前置主義」が適用されます。調停前置主義とは「訴訟前に調停をしなければならない」とするルールです。

日本では、調停を行わずにいきなり離婚訴訟を起こすことは原則的にできません。

 

3-2.調停前置主義が適用されないケース

外国人が相手の場合、離婚調停が無意味な状況も多々発生します。その場合には調停前置主義の例外として、調停なしに離婚訴訟を提起できる可能性があります。

たとえば以下のような場合、調停前置主義の例外が認められる可能性が高いでしょう。

 

  • 外国人配偶者が本国へ帰って行方不明な場合
  • 外国人配偶者を調停に呼び出しても出頭する見込みがない場合(相手が調停による話し合いを拒否している、出頭しないと明言しているなど)

 

3-3.調停前置主義が適用されるケース

相手が外国にいるからといって、必ずしも調停をしなくてよいわけではありません。

相手が出頭する見込みがあるなら原則とおり、調停前置主義が適用されます。

たとえば相手と連絡がとれていて調停へ出頭する意向を示している場合や、相手が日本の弁護士をつけて代理人が出頭する場合などには調停を行うべきでしょう。

 

国際離婚で離婚調停を申し立てるべきかどうか悩んだら、弁護士のアドバイスを受けて正しく判断しましょう。お気軽にご相談ください。

 

4.相手が外国にいるときに離婚訴訟を起こす手順

離婚調停が不成立になった場合や調停前置主義の例外となる場合、離婚訴訟で離婚を認めてもらわねばなりません。

 

日本の家庭裁判所で日本法に従って解決するなら、提出すべき書類や証拠は日本人相手のケースとほぼ同様です。

 

4-1.翻訳文が必要

相手が外国人の場合、日本語を理解できることが明らかな場合をのぞいて提出書類には「相手の国の言葉への翻訳文」をつけなければなりません。

翻訳業者に依頼するか原告が作成する必要があるでしょう。

ただ翻訳業者に依頼すると費用がかかりますし、自分で訳文を作成するのは大変な手間となります。外国人相手に離婚訴訟を起こすなら、できるだけ提出書類をシンプルにまとめるのが得策といえます。

 

4-2.送達に時間がかかる

相手が外国にいる場合、訴状の「送達方法」も特殊となります。

送達とは、訴状を被告へ届けることをいいます。訴状を送達しなければ、判決へ進めてもらうことができません。外国での送達は領事送達などがあります。民事訴訟法108条には、外国においてすべき送達は、裁判長がその国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してするものとされています。

 

相手が外国に居住している場合、送達までに大変な時間がかかるケースが多数です。

日本人同士の離婚のようにはスムーズに進まない可能性があるので、気長に待ちましょう。

 

4-3.相手方が行方不明な場合

配偶者が本国へ帰国したあとどこにいるのかまったくわからない場合には、本国の住所地すら指定できません。

その場合「公示送達」という方法によって訴状を送達できます。

公示送達とは、裁判所へ掲示することによって相手へ訴状を送達したとみなす手続きです。

実際には送達しなくても裁判を進めて判決を出してもらえます。相手は反論しないので、ほとんどのケースで原告の主張が認められます。

 

ただし公示送達が認められるには、相手が行方不明であることを資料によって明らかにしなければなりません。資料も用意しなければならないので、迷ったときには弁護士までご相談ください。

 

 

5.国際離婚は弁護士へご相談を

相手が外国人の場合の国際離婚では日本人同士の離婚と異なる部分が多く、専門知識がなければ対応が困難です。まずは国際裁判管轄、準拠法を明らかにしなければなりません。

協議離婚できないケースでは、調停離婚や裁判離婚を検討する必要があります。訴訟の進め方も特殊です。

 

また国際離婚は弁護士の取扱分野の中でも特殊といえます。対応していない弁護士も多いので、詳しい知識と十分な対応スキルを持った弁護士へ依頼しましょう。

 

名古屋駅ヒラソル法律事務所は創立以来、離婚問題に積極的に取り組んでまいりました。渉外離婚案件にも力を入れています。配偶者が本国に帰ってしまい連絡をとれない方、無視されてお困りの方、外国人との離婚を進めたい方など、まずはお気軽にご相談ください。

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