残置物の処分と留守中の立入り
相手方退去後の残置物の処分
日本で離婚する夫婦の9割程度は「協議離婚」の手続きによって離婚しています。
協議離婚であれば、相手と話し合って離婚届さえ提出すれば離婚が成立するので手間も時間もかかりません。
しかし、離婚をする場合、多くのケースでは、別居が先行していることが多いといえます。そこで、①相手方退去後の残置物の処分、②夫の留守中に入り込んで良いか―の2つのパターンを名古屋市の弁護士が解説します。
きちんと約束事を明らかにしておかないと、別居時にトラブルが生じるリスクが高まります。
今回は別居時の①相手方退去後の残置物の処分、②夫の留守中に入り込んで良いか―の2つの注意すべきポイントをご紹介しますので、これから離婚を進めようとしている方はぜひ参考にしてみてください。
1.相手方退去後の残置物の処分
妻に対する建物明渡請求交渉で、元妻が退去したものの、残置物が残っている場合どのように対処すべきでしょうか。
まず、予防法務のパターンからは、元妻が任意で退去する場合に、合意書を取り交わしておくと良いと思います。
合意書の内容としては、「乙は、本件建物を明け渡したとき、本件建物内に残置した動産類については、その所有権を放棄し、甲が自由処分できることに異議を述べない」というものです。
もちろん、このような合意書があっても、高価品などについて無断処分が許されない可能性はのこりますが、大方の荷物については、元妻が退去した後、元夫において、残置物を処分することができるようになると思われます。
ただ、こうした合意書による残置物の処分は後々トラブルになることも少なくありませんから、控えに元妻に交付するなど手続保障をしっかりするようにしましょう。
では、合意書を締結することもなく、元妻が退去してしまったケースではどうなるでしょうか。このような場合、法律上は、「勝手に処分すること」は認められていません。
結論からいうと、弁護士からは、撤去訴訟などを提起するしかないというアドバイスにならざるを得ないかと思います。
もっとも、訴訟が迂遠と考えられる場合は、元妻と交渉することも考えられるでしょう。
具体的には、元妻に対して、「14日以内に残置物を撤去してください。もし期限内に連絡がない場合には、法的手段や無価値物の処分等を検討せざるを得ないことになりますので、もし価値のある物が含まれていると認識されている場合は、期限内に連絡のうえで撤去してください。この措置を採られない場合は、すべて無価値物と判断されるので処分します」といった内容の通知書を、元妻に書留や配達記録郵便で送付するということも考えられます。
2.夫の留守中に入り込んで良いか
離婚に伴う別居として、妻が着の身着のまま自宅を出た場合、弁護士関与後に、「自宅に荷物を取りに戻りたい」という場合、「勝手に上がり込んでも良い」のでしょうか?
この場合は、相手方に対して、自宅への立入り及び荷物の引き取りに行きたい旨を連絡し、相手方の同意を得て引き取りに行くことにしましょう。
依頼者が一人で引き取りに行くとトラブルになる恐れがあるので、依頼者の親族や、場合によっては代理人弁護士が立ち会うべきでしょう。
直ちに警察官の立ち合いを得るのは、保護命令事件などを除いては難しいところもあると思いますので、相手方から暴力を振るわれたり,揉めたりする恐れのある場合には、事前に最寄りの交番に相談し、何かあれば電話するので直ちにかけつけて欲しいと要請しておくことも考えられます。
たまに、元妻が一人でこなければ渡さないなどというケースもありますが、どうして一人でなければならないのか理由を確認して、話合いを望む場合は、別途、弁護士との話し合いの機会は設けるので、今回は荷物の引き取りのみを希望する、といって対応することもあり得るでしょう。
それでも、相手方が荷物の引渡しを拒む場合には、調停や裁判手続の中で調停委員や裁判官といった第三者を通じて求めるしかないと思われます。
一番避けた方が良いのが、留守中に無断で家に立ち入ってしまうということです。
別居後ある程度時間が経過している場合は、共同占有とは認められず無断立ち入りとなりますので、注意しましょう。
無断で立ち入った場合、場合によっては、立ち入り行為が住居侵入罪(刑法130条)に問われる可能性もあります。
名古屋駅ヒラソル法律事務所では離婚トラブルの解決を積極的に支援しており、協議離婚の代理交渉や公正証書の作成サポートにも力を入れています。名古屋で離婚にお悩みの方がおられましたらお気軽にご相談ください。