預貯金の財産分与で不利にならない方法と気を付けるポイント
預貯金の財産分与で不利にならない方法と気を付けるポイント(名古屋市中村区財産分与に強い弁護士の弁護士)
財産分与の対象として「預貯金」は非常に重要です。日本人は貯蓄を好む傾向があるため、たいていの夫婦にはなにがしかの預貯金があるからです。資産形成が現預金でされている場合は、現預金の財産分与は最も重要といえるでしょう。これは、現預金が、投資信託、有価証券その他現金性の強いものでも同じことです。
ただし預貯金は流動性が高く非常に隠匿しやすいので、双方の名義の口座をしっかり明らかにして、公平に財産分与をする必要があります。
以下では預貯金の財産分与で不利にならない方法と気を付けるポイントについて解説していきます。
1.預貯金の財産分与の財産分与の注意点
預貯金の財産分与の際には、以下のようなことに注意しましょう。
1-1.夫の口座も妻の口座も対象になる
特に妻が専業主婦の場合、積立や生活費の決済などは夫名義の口座で行っているケースが多数です。その場合、夫の給与口座や積立口座は問題なく財産分与の対象にするでしょう。
ただ財産分与は「夫婦の共有財産」を分けるものですから、妻名義の口座も対象になります。たとえば妻がパートをして給与が入金されている口座や、妻が毎月夫の給料から少しずつ取り分けて自分の口座に入金してきた場合、児童手当を妻名義の口座に入金してきた場合などには、妻名義の口座も財産分与の対象になります。
ときどき「妻名義の口座は財産分与しなくて良い」と考えている方がおられますが、そういったことはありません。もっとも、妻名義の口座は把握していない相手方が多いので公平な分配を望まれるのであれば、銀行、支店名を把握しておきましょう。
1-2.対象になるのは「婚姻後に形成した預貯金」のみ
財産分与は「婚姻中に夫婦が協力して形成した財産を半分ずつに分けること」です。そこで対象になるのは「婚姻後に形成した預貯金」のみで、どちらかが独身時代から持っていた預貯金は対象になりません。
またどちらかが親から贈与されたり相続したりした預貯金は夫婦が協力して形成したものではないので、婚姻中に得たものであっても財産分与の対象になりません。
しかし、その立証は「特有財産性の立証」と呼ばれ、分与を拒否する側に立証責任があります。
つまり婚姻前や相続財産でも、立証に失敗すればその不利益は特有財産を有している側にあります。
同族会社などの場合は、多くの資産が相続財産ということもありますので、特有財産またはマンションの頭金がある場合などは、財産分与に強い弁護士、名古屋駅ヒラソル法律事務所にご相談ください。
1-3.退職金なども入金されたら「預貯金」として財産分与の対象になる
財産分与の際、よく「退職金」が問題となります。退職金は通常預貯金口座に入金されますが、いったん入金されたら退職金は預貯金の形に変わるので「預貯金」として財産分与の対象になります。
同様に株式や債券を売却したり積立を解約したりして預貯金口座に入金した場合にも、すべて「預貯金」として財産分与対象になります。
このように預貯金はあらゆる財産が形を変えて入金される可能性があるので、形を変えた財産がどこの口座に入ったのか、またいくら入金されたのかしっかり押さえておく必要があります。
2.預貯金の財産分与で不利にならない方法
預貯金の財産分与で不利にならないため、以下のような対処をしましょう。
2-1.相手に財産隠しをさせない
まずは相手に財産隠しを許さないことです。預貯金は不動産などと比べて隠匿しやすい財産です。また調べる方法も限定されており、相手名義の全国のすべての金融機関を調べ尽くすことは不可能です。
実際には財産を隠そうとする人が多いので、常に「預貯金を隠されているかも知れない」という視点を持ちながら進めていきましょう。
2-2.離婚の話し合いを開始する前に自分で財産調査する
ではどうしたら財産隠しをされずに済むのでしょうか?
重要なのは、相手に開示を任せるのではなく自分で財産調査をすることです。相手に開示を任せるとどうしても隠されてしまうリスクが高まるので、可能な限り自分で資料を集めておきましょう。
いったん離婚や財産分与の話を始めると相手が警戒して財産を隠してしまう可能性が高くなるので、話し合いを開始する前に家の中を探したり郵便物を1か月程度チェックし続けたりして調査を進めると良いでしょう。
2-3.同居中に調査する
離婚する夫婦は、話し合いや調停を進める時に別居するケースが多数です。しかしいったん別居すると,相手名義の預貯金口座を調べるのは極めて困難となります。通帳を探し見つけるのも難しいでしょう。
そこで、預貯金の調査は必ず同居中に行っておくべきです。できるだけたくさんの資料を手元に集め、万全の状態になってから別居しましょう。
2-4.コピーなどによって証拠を残す
財産分与の資料の残し方をご説明します。
預貯金の場合、通帳が発行されている口座と発行されていない口座があります。通帳が発行されているものは、すべてコピーをとりましょう。金額などの明細が印字されている欄だけではなく、表紙と見開きも忘れずコピーしてください。後ろの方の定期預金などのページもコピーが必要です。また、時間がない場合はスマートフォンで撮影することでも足りるでしょう。
ネット口座の場合、最低限どこの銀行の口座を持っているのかを特定しましょう。普段の生活費に使っているなど、取引画面を確認できる環境にあれば取引画面をプリントアウトするか写真撮影して証拠に残すと良いでしょう。
2-5.相手が口座を隠す場合、調停を申し立てる
財産分与の交渉の際、相手が預貯金口座を隠すので合意が困難になるケースが多々あります。その場合、離婚調停を申し立てて財産分与の話合いをしましょう。調停委員を通じて開示を申し入れられる可能性があります。
ただしどこの銀行のどこの口座か分からなければ開示も依頼できないので、事前に調べておくことが重要です。また、どうしてその銀行に一定の預金があるのか、その根拠も述べる必要があり、手あたり次第できるわけではありません。
2-6.訴訟や審判になると裁判所から調べてもらえる可能性がある
調停でも相手が財産を開示せず納得できない場合には、調停を不成立にして離婚訴訟を提起します。訴訟では、相手名義の口座の金融機関名と支店名を明らかにすれば、職権調査嘱託(裁判所からの照会)によって明細を調べることが可能です。ただしこのときにもやはり「金融機関名と支店名」が必要です。
なお離婚後の財産分与請求で、調停が不成立となり「審判」になった場合も、裁判所から相手の財産状況を照会してもらえる可能性があります。現在、調査嘱託に応じる金融機関が増えており実効性が高まっているといえそうです。
2-7.離婚時に取り決めができなかった場合、離婚後も2年間財産分与請求できる
離婚の際に財産分与の話合いができなかった場合、離婚後も2年以内であれば財産分与請求できます。たとえば相手のDVによる被害を避けるために先に離婚だけした場合、親権争いのみ早期の決着をつけたいなど、後に落ち着いてから財産分与を請求しましょう。
ただし2年の期間制限があるので、あまりのんびりしている暇はありません。
2-8.騙された場合、財産分与契約を取り消せる可能性がある
離婚の際、相手が預貯金口座を隠したために過小な財産分与しか受けられなかったケースでは、財産分与契約の際に「詐欺」があったとして取り消せる可能性があります。
取り消すと再度やり直しができるので、あらためて相手に全部開示させた上で財産を分けられます。ただしこの場合にも「離婚後2年」のタイムリミットが適用されるので、早めに手続きを進める必要があります。
預貯金を含めた離婚時の財産分与を有利に進めるためには法的な知識と高度な対応スキルが必要です。特に、弁護士がサポートいたしますので、名古屋で離婚をお考えの方は、名古屋市中村区国際センター前の名古屋駅ヒラソル法律事務所の財産分与に詳しい弁護士に是非とも一度ご相談下さい。