離婚財産分与でローン不動産に特有財産頭金がある場合

結婚後、市橋なるみさんは実家から援助金300万円を頭金として、4500万円で購入した土地建物があります。その後時間の経過で時価は3150万円となりました。

夫の江藤鈴世さん名義の住宅ローンがまだ550万円(別居の基準時)があるとします。別居後の自宅には鈴世さんが住むことになりましたし、ローンも鈴世さんが支払っています。調停では、これらにかんがみ土地建物は鈴世さんが取得することになりました。これに対して、なるみさんは300万円あまりの頭金の返還を請求できるか。

 

 この点については、見解が分かれているところですが、少なくともなるみさんが300万円全額の返還を求めることができるという見解はないとはいえません。建物は減価償却の対象であり、土地相当分はおいても、建物だけで1350万円も減価が生じています。そうすると、それに対応する割合は頭金も返還を拒めるのではないかという論理が成り立ちます。具体的には、約70パーセントしか価値がありません。そうすると、頭金も、270万円を返金するのが妥当ではないかと考えられます。そうすると、1305万円となります。

 

 それでは、この点について法律家はどう考えているのでしょうか。夫が不動産を取得する場合、妻の取得分を算定する事例ですが、50:50は良いとして頭金が入っている場合はどうすべきでしょうか。

 まず、不動産の時価額から別居時の住宅ローンの残債務額を控除し不動産の実質価値を算出しこれを財産分与対象財産とする方法をとるのが一般的です。立命館大学の二宮周平教授も同じ立場をとっています。

 では、頭金を支出している場合はどのように解すべきなのでしょうか。仙台家庭裁判所平成29年4月18日の裁判によりますと、現在の実価額から別居時の住宅ローンの残高を控除して不動産の実質価値を算出し、これに双方の寄与度をかけて清算するのが公表裁判例の中では唯一といえそうです。住宅ローンを共有財産から控除する見解もあります。

 そこでみてみると、現在の実価は3150万円です。ローンは550万円ですから実質価値は2600万円となります。これに双方の寄与度をかけることになりますが、妻が300万円を拠出しているので、寄与度は以下のようになると考えられます。

妻:300万+2100万/4500万=53%=1378万円

夫:2100/4500=47%

そうだとすると、妻は2600万円に対して53パーセントの価値を持つことになります。したがって、1378万円となります。なお、先ほどの見解であるとすれば、270万円の返還を求めることになるので2600+270=2870万円が妥当ということになります。

法律家の間では、①「不動産については、時価から当該特有部分の残り部分のみを分与対象財産として計上し、住宅ローンについては不動産と別立てで基準時の残高を計上する」という見解もあるようです。そうすると、不動産の実質価値は3150-300=2850円が分与対象財産となるものの、他方で、債務として550万円を計上するという考え方があるように思われます。そうだとすれば、通算すると、2300万円ということになるものと考えられます。

次に、②「不動産の時価から住宅ローンの残高を控除した残額に寄与度を乗じて特有部分を計算し、不動産と住宅ローンを一括計上するという考え方」があります。これは、上記で紹介した仙台家庭裁判所の裁判例の見解と思われます。

なお、名古屋家庭裁判所では、仙台家庭裁判所に反対の①の見解が採用されているのではないかとの意見が示されました。その論拠は、清算的財産分与の枠組みに整合的であることと通説であるとされています。

しかし、私見によれば、なるみさんは1305万円、仙台家裁とすると1378万円、名古屋家裁と思われる見解によると以下のとおり1405万円が取り分となります。名古屋家裁と思われる見解で計算すると、妻の特有財産は、3150万円×300万/4500万=210万円、分与対象財産額は、3150万-210万=2940万円、住宅ローンを控除し2940万-550万=2390万となり、ここから半分にすることになります。1195+210=1405万円が取り分となります。

 鈴世さんの弁護士の見解としては、私見ないし仙台家裁をとりたいと考えるでしょう。しかしながら、なるみさんの弁護士の見解は、住宅ローンは夫婦共有負債というべきで、不動産の時価額から各自の特有財産部分を控除した後に、共有財産部分から住宅ローンを控除するのが相当との主張に基づいています。ただし、この見解はオーバーローンではなくプラスの場合に売却益を分配する前提での立論で、森教授らが唱えている見解です。いずれの見解も成り立ち得ますが、仙台家裁と名古屋家裁と思われる見解が有力と思われます。名古屋家裁の場合はローンを引く前にまるまる控除してしまうので、女性に有利な考え方といえるでしょう。なお、名古屋家裁もまるまる控除は認めず減価は認めるという見解もあるとの意見もあります。

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