最近多い年金型の確定拠出年金は財産分与の対象?
確定拠出年金とは、どのような制度でしょうか。財産分与の対象になるのでしょうか。評価額はどうなるのでしょうか。
1 確定拠出年金は、個人または事業主が拠出した資金を個人を自己の責任において運用の指図を行い、高齢期にこれに基づく給付を受給できる制度のことです。個人型と企業型の2つがあります。給付内容は老齢給付金、死亡一時金があります。企業型は退職金の前払いの性格を持つので財産分与の対象となります。基準時の評価額は、運営管理機関(金融機関など)に残高・時価評価額を照合し提示される年金資産残高(評価額)もしくは、基準時までの拠出金の累積額によることになります。
2 厚生年金基金などの企業年金の財政状況が悪化しその再編成が行われ、確定拠出年金ができました。これは、個人または事業主が拠出した資金を、個人が自己の責任で運用の指図を行い、高齢期にそれに基づく給付を受給できる制度です。
このうち、厚生年金適用事業者が単独または共同して実施するものを企業型年金、個人が拠出し、国民年金基金連合会が実施するものを個人型年金といいます。
3 リーマンショック後の退職金制度の廃止などで、個人型年金にシフトする例がみられましたが、これは「国民年金基金の代替・補完」であることから、基本的に現在では企業型年金が主流と考えてよいと思われます。
4 企業型年金は、原則として、サラリーマンなど第2号被保険者である厚生年金保険の被保険者を加入対象とするもので公務員は除かれます。そして、企業が全額掛金を支払うものであり、厚生年金基金等の企業年金の代替及び移行先になっています。
確定拠出年金は、年金資産を加入者が自分で運用し、その結果、損益に応じて受給額を決定するもので、将来の受給額は保障されず拠出金の運用は、個人または従業員自身のいずれも自己責任で行うものとされています。
年金資金は、個人別に区別されており、残高の把握や転職時の資産の移行が容易であることに加えて、企業規模を問わず実施することが可能です。原則として制度からの脱退はできず、積立資産は国税の滞納を除き、差押禁止とされています。掛金の拠出、運用、給付の各段階での税制の優遇措置が高く、60歳までは離転職をしても払い戻しはされず、積立金を従業員が持ち運ぶ点が最大の特徴となっています。以上から、退職金の前払いとしての性質を持つ企業型年金について解説します。
5 まず企業型年金の給付についてですが、5年以上の有期または終身年金(規約によって一時金の選択可)として受給でき、60歳以前では死亡時または一定の障害状態になった場合に支給され、脱退したときには一時金が受給できます。
6 さて問題は財産分与の対象になるかです。
シュシュ:大手企業では、退職金の支払い方法を退職時の一時払いから、一時払いと退職年金払いの合わせ技が多いんだよね。
弁護士:うん。起業買いの退職金積立制度として利用されているのが確定拠出型年金制度だね。
シュシュ:でさ、結局、拠出は分かるけど、いくらもらえるの?
弁護士:確定拠出年金を採用している企業においては、退職金支給規定には、退職に際して支払われる退職金の額またはその計算方法等は規定されず、その代わりに在職中の従業員に対する毎月の拠出金が規定されているんだよね。それを外部機関に支払って、退職金給付債務はその都度履行されたことになるんだよね。
シュシュ:銀行に支払ったら、従業員に対する退職金給付債務がなくなるんだね。
弁護士:退職すると、支給額が決定しますね。掛金と運用益で。
シュシュ:つまり、どんな結果になるのかは運用次第なんだ。なんか証券会社でSMBCや大和証券に訴訟が起こされているじゃない。なんか損させられることもありそうだね。
弁護士:そう。起業は掛金を支払うところまでが、債務であり、運用は従業員の責任なんだ。
つまりね、厚生年金基金みたいに、低金利で運用環境が悪化してもその責任を従業員に転嫁しているから企業は積立不足のリスクから逃れるというために導入された制度で、あまり労働者のためになるための制度ではないね。
シュシュ:財産分与の対象にはなるの。
弁護士:確定拠出年金は、退職金の前払いの性格を有するものであるから、各個人別に管理、蓄積された資産は一時払いの退職金と同様に財産分与の対象財産となります。
シュシュ:でもいくらもらえるかわからないのにどうやって分けるの?
弁護士:まずは、純粋に資産残高を銀行に問い合わせるということになるね。そして、加入者が銀行にお願いしているスタイルは元本確保型に集中しているので、実質的には掛金とイコールと考えられるケースも多いね。さらに税金の問題から老齢給付金を一時金で受け取っている人も多いんだ。裁判官によると、基準時までの拠出額の限度で財産分与の対象になるとしているよ。確定拠出年金の年間の掛金は15万円ていど、年代別だと30代は80万円、40代が190万円、50代が339万円、60代が420万円になっているけど、これはあくまで統計資料です。裁判官としては、基準時までの拠出額を求めるということになるね。