宗教と離婚

夫(妻)が宗教にのめり込んだら離婚できるの?慰謝料や親権についても合わせて解説

パートナーが宗教にのめり込み、子育てや家事、または金銭の問題など家庭にまで影響を及ぼしてしまうことがあります。近時では、二世宗教の問題などが大きくテレビで取り上げられました。

この記事では、パートナーが宗教にのめり込んだ場合の離婚問題や慰謝料、そして子どもの親権などについて解説していきます。

 

 

h2:宗教に入信した場合、離婚できる?

h2:宗教を理由に離婚が認められるケース

h3:宗教入信が原因で婚姻関係が破綻している

h3:配偶者や子どもに宗教への入信を強要する

h3:生活する上で必要な生活費をもらえない

h2:相手に慰謝料を請求できるケース

h3:必要な生活費を渡さない・宗教に使い込む

h3:宗教活動の一環として、配偶者以外の相手と性交渉を行っている

h2:宗教を理由に離婚をしたい場合のやるべきこと

h3:宗教にのめり込んでいる証拠を集める

h3:寄進や寄付の形跡をとっておく

h3:日々あった行動を日記でメモをする

h3:別居生活を検討する

h2:夫(妻)の宗教に困ったら弁護士に相談を

 

宗教に入信した場合、離婚できる?

夫や妻が新興宗教に入信してしまった―こういう場合、離婚を請求することはできるのでしょうか。

 

日本では、協議離婚や調停離婚の場合において、互いの同意があれば離婚が可能です。この点、宗教については「価値観の不一致」や「性格の不一致」を招くことが多いといえます。

 

しかしながら、裁判上の強制離婚原因(民法770条5号)に該当するかというと、そのハードルは高いと考えられます。

 

そもそも、日本では、憲法第20条に「信教の自由」が定められており、憲法が直接私人間に適用されることはないものの、宗教を信じることにより、民法90条の解釈や民法770条5号の解釈上、「公の秩序又は善良な風俗」や「社会的な相当性が損なわれている」といった事情が必要と考えられます。

 

したがって、夫婦間の同意がない場合は、裁判上、宗教を理由とした離婚の難易度は高いでしょう。

 

つまり、日本では、「特定の宗教を信仰する自由、または、信仰しない自由」が民法上も保障されていると考えられています。このため、パートナーが「宗教を信仰している」または「特定の宗教を信仰している」事実だけでは、離婚が成立するための民法770条5号の要件を満たさないことになります。

 

同じく「パートナーによる宗教の信仰が気に食わない」「特定の宗教を信仰している事実が気持ち悪い」などの理由でも、一般的範疇にとどまる限りは、単なる希望とみなされて離婚までは認められないかもしれません。

 

あくまでも、夫婦双方による離婚への同意が原則的なベースラインになる可能性があるということに留意しておきましょう。

 

宗教を理由に離婚が認められるケース

特定の宗教を信仰している事実だけでは、離婚が成立する要件となる「離婚事由」には当たり得ません。

 

一方で、宗教の信仰を原因としたさまざまな間接的な事実が「離婚事由」になる可能性があります。

「離婚事由」になる事例を、いくつかを紹介します。

宗教入信が原因で婚姻関係が破綻している

パートナーによる宗教への入信が原因となり、結果的に婚姻関係が破綻してしまったケースです。

 

民法の第770条1項5号には離婚事由として「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と定めています。また、夫婦はお互いに家庭を支えるための義務である「扶助協力義務」を負っています。

 

パートナーが信仰や布教活動などで家に帰らない、家事や育児を事実上放棄しているなど家庭を顧みない場合、宗教に多額の布施をしてしまう等の行為は、「扶助協力義務」を果たしていないと考えられ、離婚事由になり得るでしょう。また、お互いの宗教に対する価値観が相違しているため、夫婦間に深刻な対立を起こしている場合も「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるといえます。

 

リーディングケースとして、東京地裁平成9年10月23日判決(判タ995号234号)が挙げられます。

 

婚姻した父母がいたところ、3人のこどもがおり、2人は成人しており、3年目はまもなく成人する家庭でした。父の実家は代々神道を信仰していました。他方、妻はA宗教の洗礼を受けて、子らは、中学・高校のころA宗教に入信させられました。夫は帰宅時に妻が集会に参加して不在であることに腹を立て聖書を破棄したり、夫婦間で信仰をめぐって約10数年にわたり諍いを継続してきました。夫は、妻に強い不信感を持ち、一方、妻も夫に対して宗教的寛容さを求めつつ、宗教面での折り合いは困難としています。

 

裁判所は次のように判決しました。

 

「夫婦間の亀裂や対立は、既に10数年に渡って継続されてきた」「本件のように、原告と被告双方がそれぞれ信仰の点を含め自己の考え方に固執し、譲歩の余地を認め得ないような場合にあっては、離婚請求を排斥して、原告に対して被告との婚姻生活を継続させるとすることは、今度は、原告について自己の信仰しない宗教との同調を求めることになるものであって、相当とは解されない」「こうした根源的な問題についての対立が今後とも解消し得ないものと認められる結果、それはどちらの側が悪いというようなものではないのであり、原告のみが宗教的寛容さを書いた有責者であると断ずることはできない」としました。

 

この判決のポイントは、

 

① 婚姻を継続し難い重大な事由があるとしていること

② 十数年に及ぶ諍いや子らが成人していること

③ 信仰が異なることを「夫婦の根源的な問題」と指摘し、亀裂と対立を具体的に認定し破 綻の結論を導いていること

④ いずれかを有責配偶者と断じることはできないとしていること

 

―以上がポイントといえます。

 

一般的な裁判例では、

 

① 宗教活動の程度

② 家庭生活への障害の程度

③ 協力義務違反の有無

④ 別居期間

⑤ 未成熟子の年齢

⑥ 精神的ギャップの大きさ

⑦ 関係の修復の困難性

 

―を総合的に判断しているものと思われます。

 

 

配偶者や子どもに宗教への入信を強要する

基本的な考え方として、「信教の自由」を第三者に押し付けることがあってはなりません。

特定の宗教信仰をパートナーに押し付け、入信を強要することは、「自己の信仰しない宗教との同調を求めることになるものであって、相当とは解されない」のです。

 

この点において、度を過ぎた押し付けや強要または強制があれば、離婚事由になり得ると考えられます。

 

また、押し付けや強要または強制が、子どもに向いた場合も同様です。

 

一般的に、精神が未熟な子どもが自ら宗教を選択することは難しいと考えられます。

そのため、子どもを特定の宗教に入信させ信仰させることも、同様に離婚事由として考えられるでしょう。

生活する上で必要な生活費をもらえない

民法第770条1項2号に定められた離婚事由として、「配偶者から悪意で遺棄されたとき」があります。

 

夫婦は、協力して生活を支えなければいけない「扶助協力義務」があることは前述しました。生活をするためには家事や育児と同様に生活するためのお金が大切であり、いずれも夫婦が協力して補う必要があります。そのため、以下のようなケースはこの民法第770条1項2号に該当すると考えられ、離婚事由として認められる可能性が高いでしょう。

 

  • 宗教信仰による布施、寄付や寄進で生活費まで使い込まれてしまった。
  • パートナーから生活に必要な経費を渡してもらえずに、生活が著しく苦しくなった。

相手に慰謝料を請求できるケース

これまで解説してきたように、パートナーが宗教にのめり込んだ事実だけで慰謝料請求することは難しいといえます。先ほど紹介した裁判例でも、「原告のみが宗教的寛容さを書いた有責者であると断ずることはできない」と判決されています。

 

慰謝料の請求は、婚姻関係が破綻する原因となった不法行為があれば可能です。

必要な生活費を渡さない・宗教に使い込む

民法第752条では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定めています。パートナーへ必要なお金を渡さず、宗教への寄付や寄進に使い込むことはこの法律に違反しているといえるでしょう。

 

つまり、必要な生活費を渡さないことや、布施などへの不相当な使い込みは、離婚事由として定められている民法第770条1項2号「配偶者から悪意で遺棄されたとき」に該当する可能性があると考えられ、慰謝料を請求できる可能性があります。

宗教活動の一環として、配偶者以外の相手と性交渉を行っている

宗教活動の一環といえども配偶者以外の相手と性交渉を行った場合には、民法770条1項1号に定められている不貞行為に該当します。不貞行為は法律に違反する不法行為であるため、不法行為に伴う損賠賠償(慰謝料)請求が可能です。

 

不倫と同様に、パートナーが第三者と性交渉を行った事実を証明する必要があります。

宗教を理由に離婚をしたい場合のやるべきこと

夫婦間で問題が起こった場合、最初に取り組むことは話し合いを行うことです。話し合いを行ったにも拘らず、話し合いが決裂する、もしくは話すらできないなど、パートナーの宗教に困ったら離婚を視野に入れて検討しましょう。裁判例でも、宗教的価値観の不一致は、「根源的な問題」と言及されていることは一つのポイントといえます。根源的問題である場合、対立や亀裂の解消は容易とはいえないでしょう。

 

裁判例においても、

 

離婚を考える際には、調停や裁判を見据えて証拠を集める必要があります。

宗教にのめり込んでいる証拠を集める

パートナーがあなたや家族を差し置いて、宗教にのめり込んでいる客観的な証拠を集めましょう。

 

宗教に関連する活動に出かけた日時や、家事や育児を行わなかった時間など、日々の行動を細かく記録しておきます。

 

また、パートナーによる宗教に関連した言動については、録音や録画などをしておくとよいでしょう。

 

その他パートナーの行動や言動を通して、一般の常識では考えられない点があれば、その都度日記やメモに記録します。

寄進や寄付の形跡をとっておく

パートナーがあなたに必要な生活費を渡さず、宗教活動に使い込んでいる事実がある場合はその日時や金額を記録しておきましょう。

 

その際、通帳の入出金記録やその他の支払いが分かる記録があれば、コピーを取ったり写真を撮るなどをして保存します。

 

パートナーが通帳を管理している場合には、配偶者であるあなたが取引先の金融機関に問い合わせ、入出金の履歴を取り出せる可能性があります。

 

また、宗教とは直接関係がない時計などの動産などを利用して、資金集めをしている可能性もあるので、宗教的意味合いが必ずしもあるとまでは限らないということに留意しましょう。

 

困った時にも諦めず、念のため金融機関に問い合わせてみましょう。

日々あった行動を日記でメモをする

家庭生活について、日々の行動を日記として記載しておきましょう。パートナーが布教活動や集会に行った頻度や、家庭を維持するために夫婦間でどのような話し合いをもったかなども細かく記録する方がよいでしょう。

 

毎日の記録を詳細に記録することで、第三者から見た際、あなたの日記の信用性が上がり、結婚生活を協力して行っていたかを図る判断材料となり得ます。常に録音や録画、メモができる状態を維持しておきましょう。

別居生活を検討する

夫婦は「扶助協力義務」の一環として、同居する義務を負っています。一方で、パートナーが宗教にのめり込んだ場合、さまざまな理由から同居生活を続けることが難しい場合があります。

 

同居生活が苦になった場合は、迷わず別居を検討しましょう。法律的には一定期間別居状態が続いている夫婦は、夫婦関係が破綻しているとみなされます。具体的には、3年から5年もしくはそれ以上の別居状態は破綻しているとみなされる傾向があります。

 

夫婦間の話し合いも滞り、生活に困って離婚を検討する場合は、1日も早く別居を検討しましょう。

夫(妻)の宗教に困ったら弁護士に相談を

日本には「信教の自由」が認められているため、宗教への信仰を理由に離婚し、慰謝料を請求するためには高度で専門的な法解釈が必要です。他方で、東京地裁平成9年10月23日判決(判タ995号234号)のような妻の宗教活動を理由とする夫からの離婚請求が認められた事例もあります。配偶者の宗教活動を原因とする離婚判例はいくつか公開されています。多くはエホバの証人(二宮周平=榊原富士子『離婚判例ガイド』【第2版】(有斐閣、2008年)51頁)とされています。

 

一般論としては、夫婦間においても信教の自由は保障される必要がありますが、夫婦の一方が、宗教活動に過度に専念するあまり、協力義務違反行為がおき、他方の不信・嫌悪感を招き婚姻が破綻することがあるのです。

 

また、被害を受けている個人がパートナーと話し合いで解決することは、非常に難易度が高いでしょう。話し合いで解決しない場合には、調停や裁判で解決を図りますが、そのための証拠集めについても簡単ではありません。

 

パートナーの宗教に困ったときは、早めに弁護士に相談しましょう。

信仰は、人格の核心部分にかかわる問題であり、そうした根源的部分で相容れない価値観を持っていることは、結婚の本質である精神的な結びつきを困難にするといえます。

 

弁護士は将来の調停や裁判に向けた証拠集めの段階から、専門的で的確なアドバイスが可能です。

名古屋駅ヒラソル法律事務所では、離婚や慰謝料請求の経験豊富な弁護士が親身になってあなたの相談に乗りアドバイスします。

悩むよりも、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

 

 

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