保護命令の実情

 

保護命令とは

保護命令(ほごめいれい)とは、配偶者または同棲している交際相手からの身体的暴力や生命・身体に対する脅迫(殺す・●●したら殴るなど)を受けた人が、裁判所に申立てを行うことで、相手が自分や子供に接近しないように制限する制度です。

 

 1 保護命令

 保護命令事件については保全部が担当するのが一般的です。

 

2 事件動向

 東京地裁では平成21年をピークに全体としてDVの保護命令は減少傾向にあります。

 

3 保護命令の内容

 保護命令の内容で最も多いのは接近禁止命令、電話等禁止命令の組み合わせです。次いで、自宅退去命令、接近禁止のみの申立てと続いていきます。人権への制約の程度が大きいのは自宅退去命令で、最も制約の程度が低いのは接近禁止のみと考えられるでしょう。

 

4 対象

 対象については、被害者のみならず親族やこどもも対象にするケースが多いことが分かります。

 

5 当事者

 当事者ですが、婚姻中が多くを占め、離婚後がこれに続くということになっています。平成20年以降、男性から女性への保護命令の申立てがあります。東京地裁では同性間の申立ては今のところないとのことです。

 

6 弁護士代理人の有無

 弁護士代理人の有無ですが申立人側は50パーセントを超えることはなかったのですが平成29年には74パーセントに達しています。近時は相手方にも代理人弁護士が就くケースが多くなっています。

 なお東京地裁では、いわゆる配偶者暴力相談支援センター経由よりも警察経由の申立てが多いのが特徴といえます。

 

7 終局

 およそ3割が却下や取下げで終わっていることにも留意する必要があるかと思われます。なお保護命令には取消しの申立てもあり、一定数できるようです。裁判所や弁護士としては申立人の真意の把握に苦心しているとみられます。なお、一部取消の多くは被害者が身辺整理や転居先の確保ができたことなどが理由であることが多いとみられます。

 

8 審理

 審理は原則として単独の裁判官が担当し非公開で行われます。申立人の話を聴取し暴力被害を受けたことが間違いないとの心証が得られるかがポイントのようです。主には、申立てのきっかけを中心に記載するよう求められています。

 特に不当申立てと考えられるものは、保護命令のみ代理人がついていない場合、調停が相当程度進行してから申し立てられた場合、財産の話しが中心の場合は注意して事情聴取がなされるとのこととみられます。これは、相手方にとっても反論の機会の付与が非常に大事であると考えられます。

 

 

9 相手方の審尋

 申立人の審問が終わると約1週間後に相手方審尋を行います。実務上、口頭弁論期日が開かれることはありません。

 迅速性の観点から審尋は1回ですので相手方で言い分がある場合は弁護士代理人も急いで探す必要があると考えられます。期日の続行は慎重に行っており原則はないと考えた方が妥当と思われます。

 なお相手方審尋の結果、保護命令発令の要件を満たしていないとの心証の場合は再度申立人の審問を行う場合があります。

 相手方の審尋は、形式はないようで、東京地裁では机を挟んで相手方から話しを聴くというものや三重では裁判の口頭弁論室、名古屋ではラウンドテーブルで行います。申立人は同席しません。ただし代理人が同席することは可能です。また事実認定が難しい場合、申立人に補充のため電話連絡のスタンバイをしてもらう場合もあるとのことです。

 

10 決定手続

 保護命令の効力は、決定書の送達又は審尋期日における言い渡しによって生じます。多くは相手方が出頭するでしょうから、その場で言い渡されるということになります。保護命令が発令された後は申立人の相談機関に通知がされます。

 

11 却下される場合

 却下される場合は、東京地裁では3分の1に上ります。大きく分けて暴力の証明ができない場合と更なる暴力の恐れがない場合の2つがあります。

 暴力については、診断書、写真の客観的証拠に加え、申立人の供述に信用性がない場合が考えられます。

 また脅迫については電子メールがあげられます。この点、相手方が暴力自体を否定すると証明不十分として却下せざるを得ない場合もあります。とはいうものの、保護命令は家事同様どの程度の証明力が求められるのかという問題が常につきまとうといえます。この点は保全事件と同じといえましょう。

 なお、裁判所は「客観的な証拠がないからといって直ちに却下できない」と考えているケースもあるので高等裁判所の判断に持ち込まれるケースもあるといえましょう。

 高裁で警察やDVセンターにおける相談供述を取消し、矛盾が発覚し保護命令が取り消され却下されたケースもあります。

 次に将来予測としての危害を受けるおそれですが、過去の経緯に沿うしかありませんが、過去の行為が悪質、別居の直前まで続いていたなどという場合は将来のおそれを認定しやすいとされています。しかし、暴力がかなり昔であるとか、軽微といわざるを得ないもの、暴力の原因事情が明確でその事情が消滅している場合は将来のおそれが否定されると考えられています。なお、DV法による暴力というのは、これに準ずる心身に有害な影響を与える言動も含まれ広くなっていることに注意が必要です。刑法の暴力の概念とは定義が異なっております。

 また、面会交流を阻止するため、などと誤解しているケースもありますが子の接近禁止は、子への暴力を防ぐためのものではなく、相手方が子のことに関して申立人が面会を余儀なくされることを防止するための制度です。つまり被害者自身が相手方との面会を余儀なくされるおそれの認定のための一事情にすぎないということになります。

 

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