親権者の指定の裁判
親権者の指定の裁判
未成年の子は父母の親権に服する。養子は養親の親権に服するが、夫婦が未成年者を養子とする縁組をするには原則とするが、夫婦が未成年者を養子とする縁組をするには原則として夫婦が共同でしなければならないから、未成年者が養子のときは養親夫婦の親権に服することになる。
親権者は、子の教育及び監護の権利及び義務を有する。また、親権者は、子の財産を管理する権限を持ち、未成年者の法律行為につき同意をするかどうかの権限及び子の財産についての法定代理兼を有する。これが親権者となります。
では、父母が婚姻をした後は、親権の共同行使は困難であるから、協議離婚の際、夫婦の協議で一方を親権者と定めることになっている。裁判の離婚の場合には、裁判所が離婚を命ずるときに、職権で、未成年者の子の親権者を定める。日本では、単独親権行使になります。
実際は、当事者が自己を親権者に指定すべきとの申立てをすることが多いが、裁判所は独自の判断で親権者を指定することができる。
したがって、申立人と異なる指定をした場合にも、主文で申立てを却下する旨を掲げる必要性はない。これは東京地裁昭和30年2月18日で明らかにされています。
親権者の指定の基準
親権者指定の基準については直接の規定ではありません。民法819条6項は親権者の変更について、「子の利益のため必要があると認めるとき」としていることや、民法766条1項後段が、子の監護者の指定その他の監護に関する事項の決定に当たっては、「子の利益は最も優先して考慮しなければならない」としていることに鑑みると、父母いずれを親権者と指定するのがより子の福祉に合致するかによって決するべきである。
ではどんな事情が考慮されるのでしょうか。まずは、家族の因子です。
□監護能力(年齢、性格、強要、健康状態)
□精神的経済的家庭環境(資産、収入、職業)
□居住・教育環境
□子に対する愛情や態度
□監護補助者
□親族の援助可能性
次は、監護者指定の実情です。
□監護の実績・実情
□監護の継続性と引き取りの違法性
□子の情緒の安定のためには監護の継続性
□低年齢の子は、一般には監護環境の変化に対する適応が大きいとはいえないし、低年齢の子が環境の変化等により受けた精神的苦痛は成長後にまで影響を及ぼすといえる。
□住居や学校
□交友関係の継続性
裁判所の事実の調査(事実の調査)
裁判所は、親権者の指定をするについて、事実の調査をすることができ、相当と認めるときは、受命裁判官などに事実の調査もできます。私も親権者の子の意向につき裁判長が直接事実の調査をしたという事案を経験したことがあるのです。事実の調査とは、法令上は、法定の証拠調べの方式によらずに、裁判所が事由な方式で裁判資料を収集することをいうものとされています。親権者の指定は、権利義務関係の確定ではなく、裁量によって子の福祉のために適切な処分をすべき家事審判事項であることから、証拠調べによるほか、職権による事実の調査も認められています。事実の調査については、公開しないが公開と認める者の傍聴をゆすることができる(人訴法33条5項)。
面会交流も付帯処分で!
親が離婚したとしても、非監護親と子とが面会し、あるいは、その後の交流を行うことは、元来、必要なことであり、また、子に非監護親からも愛されているとの意識を持たせることなどから、子の成長にとっても有意義であるといわれる。面会交流も附帯処分で申立てをすることができますが、親権争いの場合に提起されることは少ないようです。また、面会交流の申立てがされた場合には、子の状況を踏まえて、面会交流の相当性を慎重に判断し、それを実施するためにはその環境を整える必要性があります。そこで、なかなか実際的ではないという指摘もあります。しかし、親権争いの和解的終結に向けて、むしろ私は裁判所は積極的に取り上げるべきと考えます。