離婚と慰謝料について
ご相談をいただくときに、慰謝料について必ず相談されます。慰謝料というのは離婚によって被る精神的苦痛による損害の賠償のことです。
もっとも、離婚に伴って夫から妻がもらえる金額のことを「離婚給付」といいますが、夫婦で一緒に作った財産が多い場合は、財産分与が多くを占めることがあります。
ですから、「慰謝料」という費目での支払は実務上あまり多くないというのが実態ではないか、と思います。
慰謝料がもらえるケースとは?
慰謝料が認められる事例というのは意外と限られています。具体的には、1.相手の不貞行為(浮気)、2.暴力、3.性交渉の拒否などですが、個人的には性交渉の拒否には様々な事情があることが多く、浮気か暴力がない限り、慰謝料を請求するのは法的には難しいことが多いと考えています。
もっとも、夫の行為によって妻がうつ病になってしまったなど精神的苦痛があれば上記の事情がなくても慰謝料が認められるケースはあり得るのではないかと思います。
慰謝料の請求額について
慰謝料については、相手が悪いほど高くなりますし、肉体的苦痛がある場合も高くなる傾向にあります。また、結婚期間が長く年齢が高いほど上昇する傾向があります。
他方、小さな子どもがいる場合も上昇する傾向にあります。このほか、結局は支払うだけの能力がある場合は高くなるという傾向も指摘されています。また、財産分与という名目での離婚給付が多額になされるという場合には少なくなる傾向にあります。
個人的には、200万円から300万円の振れ幅の中に収まるという印象が多く、しばしばインターネットで紹介される500万円を請求をしたケースもありますが、私の場合は、相当に悪質なケースでしたので、そのようなケースに限られるのではないか、と考えられます。
具体的な慰謝料の金額は?
暴力については程度の問題があるので、DVなどの継続的な暴力、治療の有無、自賠責の基準でいうところの後遺障害があるか、といった要素を考慮して判断されると思います。
裁判例には100万円、300万円を認めた各事例があります。しかし、全くの他人を殴ったというケースで40万円から70万円程度の判決が多いという印象を持っていますので、暴力だけが原因の場合は大きなお怪我をされているなど特別な事情がない限りは裁判例を基準とするべきではないか、と思います。