離婚後の手続~離婚後の氏、こどもの氏等~
離婚後の手続~離婚後の氏、こどもの氏等~
- 離婚後の自分の氏をどうしたらいいのか
- 離婚後のこどもの氏をどうしたらいいのか
- 離婚後の変更手続きはどのようなものか
- 健康保険と年金はどうしたらいいのか
- こどもの学校はどうしたらいいのか。
- 児童扶養手当って何?
夫婦や親子の問題は、離婚したからといってすべて解決するとは限りません。
離婚後にもいろいろな問題が持ち越されるケースが多いので注意しましょう。
今回は離婚後によくあるお悩みに弁護士が答えていきますので、離婚後の手続について不安のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.離婚後によくあるお悩み
離婚後、弁護士にご相談されることが多いものをご説明していきます。
2.離婚後の姓
離婚したのはよいけれど、姓を生来の氏に戻すのか、それとも婚氏続称といって、引き続き婚姻時に名乗っていた氏を名乗るのかを決めなければなりません。
もともと婚姻関係にある夫婦は、同じ戸籍に入っているのですが、日本では、結婚時に氏を変更しなかった戸籍の筆頭者の戸籍に氏を変えた側が入籍することになります。
離婚されて氏が生来の氏に戻る方は、結婚前の親の戸籍に戻るのか、自分を筆頭者とする新たな戸籍を作るのかを選択しなければなりません。
2-1.結婚前の戸籍に戻るパターン
結婚前の戸籍に戻るパターンの場合、「旧姓に戻る」しかなくなります。
2-2.新しい戸籍を作るパターン
新たに「新しい戸籍を作るパターン」は、旧姓に戻るのか、婚姻時の氏をそのまま名乗るのかを選ぶことができます。
結婚時の氏を選ぶ場合は、離婚時から3か月以内に、「離婚の際に称していた氏を称する届」を本籍地のある市区町村の役場に提出することになります。通常は離婚届けと同時に提出してしまうケースが多いように思います。
2-3.一度決まった姓の変更は簡単にはできないこと
一度決まった氏を変更することは簡単ではなく、これからの人生をどの名前で生きていくのかをしっかりと考えましょう。特に、実家との結びつきが強くなる場合、生来の氏に戻った方が良い場合も考えられます。
3.離婚後のこどもの氏の選択
こどもがいる場合、こどもの氏についても考えなければなりません。両親が離婚してもこどもの戸籍と氏は当然には変わりません。母親がこどもの親権を持ち、母親が父親の戸籍を抜けて婚姻前の戸籍に戻ると、母親も生来の氏に戻りますが、こどもの氏は手続をしないままであれば、そのままですので注意しましょう。つまり、母親とこどもで戸籍が別々になります。この場合、通常は、「氏の変更の申立て」をすることが多いといえます。「氏の変更の申立て」が認められれば、こどもも、母親の生来の氏を名乗ることができます。
- 結婚時の氏を使い続けるという選択をするパターン
母親が新戸籍を作り、結婚時の氏を使い続けるという選択をした場合は、こどもと同じ氏を名乗ることになります。氏が変わらないメリットとしては、
・周りの人に知らせる必要がない。
・免許証やカードの名義など姓の変更手続きをしなくても良い。
―などが考えられます。
また、離婚時のこどもの環境変化を嫌って、そのまま姓を変えないという方もいます。
- 復氏するパターン
「そもそも結婚爾から旧姓を変えたくなかった」という人や「元夫と同じ姓でいることが嫌」という方もいるのです。
経験的には、生来の氏に戻るパターンが増えてきたのではないかと思いますが、母親が復氏した場合、こどもにも母親の氏を名乗らせることができます。
自分を筆頭者とする新しい戸籍を作り、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てることになります。
こどもが15歳以上の場合、本人による申立ても可能となります。
現在の日本では、婚姻時に氏を変えるのは女性がほとんどです。そして、女性が氏を変えて結婚し、離婚の場合も女性が親権をとるためこどもの氏にも注意する必要があります。離婚した場合は女性側が離婚後の姓の選択や変更の手続などが必要になります。
4.離婚後の変更手続き―姓・住所の変更
1度養育費の約束をしても、その後金額を変えたいと希望するケースが少なくありません。
たとえば相手の収入が上がったので増額してもらいたい場合、再婚したので養育費の金額を減らしたい場合など。
離婚が成立したら、様々な手続きが待っています。姓と住所が変わった場合は婚姻時の姓と住所で登録している書類などの変更手続きを進めないといけなくなります。
まず着手したいのは次の手続です。
- 身分証明書としても使える運転免許証
- マイナンバーカード
- パスポート
- 住民票
―などの変更手続きです。
そして、戸籍や住民票は毎回のように求められるので、身近に保管しておくと良いでしょう。
次に着手したいのが、
- 銀行口座
- クレジットカード
―などです。
電気・ガス・水道なども変更できるときに変更しておきましょう。
手続きには、戸籍謄本と住民票が必要になることが多いといえます。
戸籍謄本は郵送での請求やコンビニエンスストアで交付してもらえる場合もあります。(通常、マイナンバーカードが必要になります。)
戸籍謄本は、さまざまな手続きで必要になりますので複数用意のうえ、原本還付の手続をとり原本は返してもらうようにしましょう。
金融機関は入手してから6か月以内のものを要求してくる場合もありますので、6か月以内に手続をしましょう。運転免許証の姓や本籍地を変更する場合は、住民票も必要になります。
5.離婚後の変更手続き―健康保険と年金
- 健康保険の加入手続きのパターン
婚姻時に配偶者の被扶養者だった方は、離婚後は、自分で健康保険の加入手続きをしなくてはいけません。
もっとも、結婚時に専業主婦だったというようなパターンで、離婚後すぐに就職した場合、勤務先の健康保険への加入手続きを進めます。元配偶者の扶養から外れたことを証明する書類の提出が求められることになります。
したがって、元配偶者が会社員や公務員の場合は、勤務先から健康保険資格喪失証明書を発行してもらうようにしましょう。
自営業の場合、元配偶者を世帯主とする国民健康保険に入っていることがあります。
その際は、世帯主を改め、自分を世帯主とする国民健康保険に加入し直すことになります。
なお、国民健康保険などは、すぐに保険料を支払うのが難しい場合もあります。その場合は保険料の減額や免除の制度を利用しましょう。
- 年金の変更手続きのパターン
年金に関しては、結婚爾に配偶者の被扶養者だった方は、種別を変更する必要があります。国民年金の被保険者には3つの種別があります。
離婚後すぐに就職した場合は、第2号被保険者、それ以外は第1号被保険者になります。
手続期間は、第3号被保険者でなくなった日から14日以内です。
未納期間があれば、将来受け取る年金額が少なくなる可能性があります。
国民年金を支払うことが困難な場合、減免・免除の手続もありますので、利用されたい方は検討してください。(要件があります。)
6.離婚後の変更手続き―こどもの学校など
離婚後、居住地が変わることで、
- こどもが通う幼稚園
- 保育園
- 学校
―などの手続きが必要になります。
- 未就学のこども
未就学のこどもは、幼稚園や保育園、認定こども園などに通えます。
働きながら子育てをする場合は、厚生労働省が管轄する認可保育園が多く利用されています。
認可保育園にこどもを預ける場合、保護者が働いていることが前提となっています。そして、ひとり親家庭であれば優先的に入園することができます。
ただ、待機児童が多い都市部などでは、すぐに入園できない場合もあるようです。
もっとも、求職中でも認可保育園の申込みは可能になっています。市区町村の役場で新規申込みや転園の手続を行いましょう。保育料は保護者の所得税が基準となるといえます。
- 離婚に伴いこどもが小中学校を転校する際
離婚に伴いこどもが小中学校を転校する際は、学校側(担任の先生)に転校する旨、新住所と転校先を伝えて、在学証明書と教科書給付証明書を発行してもらえます。
そして、市区町村に転出届と在学証明書を提出し、転入学通知書を発行してもらいます。
転校先に必要な書類3点(在学証明書、教科書給付証明書、転入学通知書)を提出して手続きを終えることになります。
ほかの市区町村の公立学校や私立学校へ転校する場合は若干の手続が必要となります。
7.ひとり親への公的支援
- 児童扶養手当
離婚後の生活のために知っておきたいのが「児童扶養手当」です。
これは、父母が離婚するなどして、父または母の一方からしか養育を受けられないひとり親家庭のこどものために、地方自治体から支給される手当です。
所得制限を満たせば、こどもが満18歳に到達して、最初の年度末まで給付されることになっています。
手当の金額は、こどもの数や所得に応じて変わります。
支給を受けるには、市区町村への申請が必要になります。認定申請書や所得申請書、養育費の申告書などの必要書類と面談によって審査が行われることになり、面談では家庭状況や就労状況、養育費について聴かれます。
児童扶養手当を受けていると、交通費の割引や水道料金の減免を受けられることがあります。
- ひとり親家庭を支援する制度
児童扶養手当のほかにも、
- 児童育成手当
- 母子父子寡婦福祉資金
- ひとり親家庭など医療費助成
―などがあります。
児童扶養手当は国の制度であるのに対して、児童育成手当は地方自治体の制度で条件を満たせば、児童扶養手当との併給も可能な場合があります。支給額は自治体によって異なります。
母子父子寡婦福祉資金は、こどもの進学や親自身の技能習得、転居などにかかる資金の貸し付けを行うものです。無利子で連帯保証人不要で借入をすることができます。
あくまで貸付ですので返済できるかを判断されます。
ほかにも、ひとり親を支援する制度が地方自治体によってはある場合があります。