離婚後共同親権・法定養育費令和8年4月1日施行~東京家裁論文も公表

 

離婚後共同親権令和8年4月1日から施行~東京家裁の論文も明らかに

 

政府は、令和7年10月31日の閣議決定で、「離婚後の選択的共同親権」を可能とする令和6年民法改正を令和8年4月1日に施行することを閣議決定した。

 

令和6年家族法制度の核となる「離婚後選択的共同親権」に加えて、「別居中の共同親権行使」に関する規定、「父母間の人格尊重義務規定」、「法定養育費制度(こどもひとり当たり2万円)の一般先取特権付与」のほか、面会交流については、家裁における面会交流の「促し」の規定が入る。

 

令和8年4月1日は、いわゆる「子連れ別居」など、子の居所指定権を巡る「子の利益のために急迫の事情」の有無、かかる事情がない場合に「特定事項親権行使者指定審判」がどの程度実効的に機能するか―など離婚の実際に影響を与える。同時に、継続的なデートDVや離婚後も児童虐待が継続するなど、弊害から共同親権法制が退潮した「オーストラリア法制」の失敗も踏まえた「子の最善の利益」の観点からの家庭裁判所の憲法理念に沿った運用が望まれる。

同時に、共同親権は理念先行であるが、アメリカでは、ACEsといった、こどもの寿命に影響を与え健康に不利があるという医師による10年の追跡調査の結果、その弊害を与えることは、運用でも共有されているところであり、調停実務や弁護士実務でもACEsへの配慮がなされることが望まれる。

離婚後、原則は、共同親権を望む場合は実質的には契約法の理屈からいって「合意」が必要であるが、家庭裁判所の審判又は人事訴訟において、家庭裁判所が離婚後共同親権を命じることができる。もっとも、合意が成立せず、審判又は人事訴訟で共同親権が命じられる事例は、財産を巡る争いに限られる場合、兄弟分属の場合、父母双方が経済的に頼りない場合―など限定的な運用になると立案担当者は著書で解説している。これに対して東京家裁の論文は広めに認める見解のようにもうかがわれる。

法定養育費は一人当たり2万円であるが、一般先取特権の対象となるのは、こども一人当たり8万円であり、今後は「強制執行」ではなく「担保権の実行」として義務者の給与を差し押さえる事例が増えるものと見られる。今後は抵当権のように不払いがあれば問答無用で差押えがされることになる。

なお、施行日より前に離婚している父母でも、家裁に親権者変更を申立て、家裁の審理終結日が施行日以降の場合は、単独親権から共同親権への変更も可能である。もっとも、家裁の最新の論文では、事情変更の原則が必要や子の意向も考慮され得ると考えられる。

したがって、離婚後単独親権から共同親権に変更を求める申立人は、共同親権に変更しなければならない程度に単独親権では差支えが生じる離婚後の事情を証明しなければならないなど、比較的ハードルが高くなることが考えられる。

離婚後共同親権には、監護者指定を行う「単独監護」と、監護者指定を行わず子に重大な影響を与える重要事項は共同親権行使とする「法的共同監護」、交代監護をするなどの監護分掌をする「身上共同監護」の3つがある。なお、「法的共同監護」でも、日常行為については、プライマリーケアを担う監護親が単独親権行使で定めることができる。

例えば、重要な医療行為は共同親権行使の対象となるが、風邪などの治療は日常行為として単独親権行使となる。重要な医療行為でも緊急事務管理に該当するような場合は「急迫の事情」があるときは例外的に単独親権行使ができる。なお、重要な医療行為で父母間で意見対立がある場合は特定事項親権行使者指定審判による裁判を申し立てる必要が生じる。

共同親権は、欧米からのハーグ条約の外圧による影響があったものと指摘され、他方で、「選択的」というバランスのとれた立法法制となっている。

他方、こどもの居所指定権を巡っておのずから葛藤を高めるような仕組みになっており、未来志向のルールメイキングになるか藪蛇な条文であり、法制上の妥当性を欠いているようにも思われる。

今後、外部の利害関係者である医療関係者、保育園、児童相談所の立場などの整理やガイドラインが望まれる。同時に、別居の避難のガイドラインも法務省は示しておらず、立法や運用の瑕疵である。

元裁判所書記官の中矢正晴全司法労組中央執行委員長は、「調停委員は必ずしも家庭問題やこどもに関する専門知識を持っているばかりではない」との指摘がでており、態勢作りについて、調停委員の資質に疑問を呈しています。また、近時は家庭裁判所調査官自体が、法律職採用ばかりで臨床心理士や公認心理師の国家資格を有していないにもかかわらず、わずかな研修として「こどもの専門家」を名乗ることも問題視され、ドイツでは調査官(青年局)の質の低下が法改正に結び付いた歴史もある。

少なくとも、父母の双方が親権者として子にアプローチできる方策が用意されていることが望ましいといえます。それが民法の規定に整合的であるといえます。

もっとも、「離婚後は子の福祉のためにノーサイドと行こうではありませんか」となるのか、国民の精神的成熟の程度も、将来の残された課題といえるでしょう。

今後は、中長期的に見て、あくまで理性的であり、かつ、重要な問題とそうでない問題が区別できる父母を中心に、家庭裁判所としては単独親権とすべき特別な事情がない限り、離婚後の父母を何らかの共同親権の利用が広がるものと考えられます。

具体的な運用(東京改正家族法研究会 東京改正家族法研究会(村主幸子=神野泰一=佐々木清一=森田淳=信夫絵里子)「特別企画・改正家族法の要点と解説1」家法58号4頁~44頁)も明らかになっている。実際の東京家裁の人訴のプラクティス(特に審判・人訴)の考慮要素が多く記載してある。

共同親権者指定の判断枠組みでは、それほど目新しい記載はなかった。

「非合意強制型」について、父母が協力関係を構築できていない事案であっても、専ら単独親権を求める親が、単独親権となるならば、自らが親権者と定められるとの想定の下、他方の親に暴力等のおそれや協力関係を阻害する言動がないにもかかわらず、あえて協力関係の構築を阻害している場合、すなわち、正当な理由悪別居親との連絡や協議を拒絶し、協力関係を構築せず単独親権を主張している場合は、ペナルティ的要素から、それだけをもって協力関係の構築が期待できないとすることはできないとしている(家法58号8頁)。

もっとも、実際、共同親権の利用は、「非監護親」側も理性的であり、重要な事項とそうでない事項の区別がつき、「協調親」であることが求められる。

したがって、父母の実質的協調関係があり、それが子の最善の福祉に資することという「積極要件」もない限り認められないと思われる。

親権者変更に関するものであるが、親権者変更には「事情変更の原則」が妥当するというものであった。したがって、改正前単独親権であった場合に共同親権にする場合は、「事情変更の原則」が問われることが多いと思われる。

そして、民法819条8項について「調停やADRを利用している場合は、適用除外になる」とすら書いてあり、安易な調停やADRの利用は問題があり弁護士関与が望ましくなるようにその効果の強さからは思われる。

調停により共同親権を真意でなく強制されてしまったら、民法819条8項の適用除外とまでいいきっているのが東京家裁である。

やはり家庭裁判所は条文を無視して、民法819条8項が親権者変更をしやすいように改正されたにもかかわらず、協議離婚であっても共同親権に合意しているのであるから基本的な「事情変更が必要」とされていることには注意を要する(家法58号12頁)。

東京家裁は、立法担当官の意図を無視しており誤っていると考えるが、裁判所の「事情変更教条主義」は法律が改正されても変わらないことを明示的に示している。

監護者の定め、監護の分掌である。弁護士実務からとても重要であるが、最高裁家庭局の向井同様、監護者指定は高度の必要性が求められるとか、監護者指定ではなく、親権行使者指定審判や監護分掌で足りる場合は指定の必要性がないと論述しているように思われる。

しかし、実際、ミニマムサイズの「親権」など申し立てる利用者はいないであろうから、今後は、監護者指定を申し立てた場合の必要性議論も高まるものと考えられる。しかし、訝しげに思うのは、「親権行使者指定審判」で家裁が、要するに別居中の家庭も含め、一般的に家裁が関与する必要がない場合についても、これを振り回して介入を強める姿勢を示している。

他方で、親権行使者指定審判の迅速さはほとんど触れられておらず、かえってそれなりに時間がかかるとしか説明がない。もっとも、35日での解決を目指すという35日ルールでの運用を目指すという噂もあるが、実効性のほどは疑わしい。

監護の分掌については、法制審議会では、議論の整理ができていないが、交代監護と権利義務の分掌の二つがあり、実務上は後者(権利義務の分掌=子の居所指定権)が問題になることが多いと思われる。

東京家裁の論考は交代監護についてもかなりの文脈があるが、実際は現実に交代監護が行われて、それを裏付けるというものである以上、社会的実態を余りみないで概念的整理ばかり詰め過ぎても砂上楼閣のように思われる。

そして、監護分掌(交代監護)の場合はタイムシェアリングの発想で養育費も基本額を算定表から修正すると記載されており、監護分掌の場合は、オーストラリア法で共同親権が退潮する契機となったタイムシェアリング方式的な運用もあり得るとのことである。

次に、権利義務の分掌ないし事項の分掌というのは、主に、離婚後のこどもの再移転、教育、医療の3点に絞られているといっても良い。

とりわけ、監護親の再移転がある場合、非監護親が子の居所指定権に同意しない限り、監護親はこどもを手放さなければならない事態も考えられ、憲法の居住・移転の自由に違反する事態も考えられる。この点は家事調停であれば共同親権を選択しても、監護分掌として、子の居所指定権は監護親が分掌を得るとしておくことが妥当なケースが少なくないであろう。

次に、「教育に関する事項」について権利義務の監護分掌を受けていれば、分掌された監護権に基づき在学契約等が締結できるのではないかと思われる。もっとも、通常は保護者の氏名で契約する場合もあるほか、学校実務は保護者と締結すれば足りるとしている。

今後、高校無償化制度が進むと、非監護親の承諾は不要であるという社会通念が形成されていくであろうと予測される。

これらを概念的に、監護分掌者が有する権利義務は、子の身上監護に属する事項であるものとされる。もっとも、事項の分掌も「一部の監護者指定」の実質を有するから、高度な必要性がいるといったような趣旨が記載されているが調停に採用すべき議論とは思われない。

親権行使者の指定であるが、急迫の事情などへの論及はあるものの基本的には、DV・児童虐待以外は急迫性に当たり得ないといったような書きぶりがあるため、別居を巡るトラブルや未来志向ではないトラブルが増える可能性がある。

各論では、在学契約、子の居所の決定・変更、子の財産管理、氏の変更、養子縁組の代諾といった重要論点が触れられている。

なお、東京家裁でも、離婚後のリロケーション(引っ越し)についての制限は自覚されている。

もっとも、法務省がガイドラインを示すとされた子連れ別居などへの言及はなく、明示的に残された課題になっている。

養子縁組の代諾は、今後ホットなイシューになり、判断要素などが記載されている。特別の必要性という要件との関係で、養子縁組がこどもの利益になるだけではならないとしている。

多くは連れ子養子でしょう。再婚相手と親権者である非監護親のプライマリーケアへの監護の程度を比較することだけではなく、権利義務を失わせても養子縁組を成立させる高度の必要性を求めるようである。そして、一般的に礼儀正しい共同親権の非監護親であれば特別の必要性を認めるのは困難とされている。

そのうえで特別の必要性は養育費不払いや親子交流を非監護親が都合で行っていない場合を挙げている。かなり複雑な判断枠組みであるが、養育費の不払いは今後物権で保護された債権であるから、非監護親にかなり不利な要素として考慮されることになると思われる。

共同親権への変更は、①令和8年4月以降に離婚する方のみならず、②現在家事調停が係属中で、令和8年4月以降に調停成立ないし審理終結する場合、③令和8年4月以降に離婚する方、④過去に離婚して単独親権だった方から共同親権への変更も可能となる。今後、④の例が増えるものといわれていますが、事情変更の原則に阻まれるケースも東京家裁の論文によると多いであろう。

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