新しい養育費の司法研究
離婚する際に夫婦が取り決める子供の養育費について、最高裁司法研修所がこれまで裁判で広く活用されてきた算定方法の見直しを検討していることが27日、分かった。これまでは、判例タイムズで公表されていた研究会による論文が事実上の法源となっていた。
裁判の現場では、平成15年に裁判官らの研究会が発表した「簡易算定方式」が主流となってきたが、この間の社会情勢の変化も踏まえて再検討する。もっとも、日本弁護士連合会が提言した1.5倍とする養育費についてには達しない可能性が高い。そして、算定方法が見直されれば、裁判所の判断に大きな影響を与えそうだ。
司法研修所が今年7月から始めたのは「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」。はじめて司法研究で行うことになった。東京、大阪家裁の裁判官4人を研究員に選び、研究期間は来年3月29日まで。5月中をめどに報告書をまとめる予定だが、公表方法などは未定だ。一般的には法曹会の書籍として出版されるケースが多い。
離婚する際の子の養育費は本来、夫婦が話し合って決めるが、まとまらなかった場合は家裁などに養育費支払いを申し立てることになる。養育費の算定方法は法令で定められているわけではなく、それぞれのケースで離婚理由など諸事情を考慮した上で複雑な計算をし、時間もかかっていた。
こうした中、15年に裁判官らの研究会が法律雑誌に「簡易算定方式」を発表。夫婦の収入と子供の年齢や人数ごとに、子供と離れて暮らす親が支払うべき養育費の目安を表で示したもので、素早い紛争解決につながるとして、裁判の現場に広く定着してきた。しかし、平成15年から時間が経過し、インフレ率などの考慮がなされていないなどの具体的問題などが指摘されるようになっていた。そこで日本弁護士連合会が、新算定表を公表し、実務も事実上の影響を受けていたが、今度は裁判所の司法研修上が増額ありきで、養育費、婚姻費用の分析に乗り出したといえる。