養育費は決まったけれども、長期の支払いに信用がなく一括払いして欲しい
離婚協議で養育費の月額・期間は決まったけれども、長期の支払いに信用が得られないため一括で支払って欲しいがどのような方法があるか。
養育費の支払いは月払いが原則であって、当然には一括払いを請求することはできませんが、お互いの合意があれば可能な場合もあります。ただし、税法上、贈与とみなされる可能性があるうえ、浪費をした場合は2重払いを強いられるデメリットを考えましょう。特に芸能人や医師など、関係の清算のために、養育費の一括払いをした例などがあります。判例上は、外国人が帰国する場合に認めた古い判例がみられる程度です。
月払いの原則と一括払いのメリット
養育費の支払いは毎月払いが原則です。養育費は、子どものための生活費であって、必要な都度発生するものですが、合意や審判で養育費を決める場合には、月払いとするのがほとんどです。
しかし、せっかく合意や審判で養育費が決まっても、途中から支払わなくなるケースも多く、また、非監護親の生活状態、経済状態の変化によってその履行が困難になることもあります。
そこで、養育費の一括払いを受けることができれば、子どもを引き取って育てていく親の立場としては、将来にわたって養育費の支払いが履行されるかどうかを心配する必要がなくなり、大変心強く有り難いことです。
そのため、家庭裁判所の離婚調停においても、親権者となる親(監護親)から養育費の一括払いの要求が出されることがままあります。しかし、実際に一括払いで解決するケースはごく稀です。実際には、婚外子との縁切りなど芸能人、プロゴルファー、国会議員などの例で経験したことがある程度です。
一括払いの障害と解決方法
養育費の一括払いを実現するためには、まず、支払い義務者(非監護親)に財政的基盤があることが必要です。支払い義務者がもともと十分な預貯金を持っていない場合でも、離婚に際し、自宅を売却するような場合には、一括払いの可能性が出てきます。この場合は一括払いの提案をしておきましょう。
また、養育費の一括払いは、支払い義務者が応じることが前提となります。支払い義務者が一括払いを拒否する理由としては、監護親に対する不信感から、支払った金銭をこどものためではなく、監護親自らが消費するのではないかという疑念を持つ場合や、一括払いにより子供との縁が切れてしまうような結果にあんることに対する心理的拒否反応などがあるようです。特にこどもが小さい間はこどもにお金がかかりませんので、ほとんどが監護親が浪費しているのではないかと不信感を持たれます。そういうようにならないようにするのも、「養育費は権利」というのではなく納得してもらうことが大事だと思います。
従って、まず監護親としては、一括払いされる養育費を子どものために使うことについての非監護親の信頼を得るよう努めることが必要です。
また、養育費さえもらえればそれで良いというような態度ではなく、非監護親と子どもの面会交流に協力するなど、離婚後も非監護親が子供と関わっていく環境を整えるための冷静な対応を心掛けることが求められます。
その他の問題点
家庭裁判所の調停では、父母双方が養育費の一括払いに合意した場合でも、裁判官は一括払いとした場合の法律的な問題点を改めて説明し、合意が揺るぎないことを確認したうえで一括払いを認めています。ただし、私は家裁のあっ旋で一括払いをした経験はありません。すべて協議離婚の案件です。医師、弁護士、国会議員、スポーツ選手、芸能人など高度に秘密が守れ、相手も信頼でき二重払いの恐れがない場合以外は、難しいのではないかと思います。なぜならこどもの名前で扶養請求されると、非監護親は応じないといけないからです。
一括払いの法律上の問題点は、子どもが途中で死亡した場合には、残された養育費は子の相続財産となり、子の相続人が取得することになるという問題、監護親が非監護親の信頼に反し自分自身のために消費してしまい、子どもが再び要扶養状態となった場合の危険、支払われる養育費の額によっては贈与税の支払い義務が生ずる危険性があることなどです。特に贈与税は45パーセント近いものですので、税理士としてはあまりおすすめできません。税務署としても一括払いをしなければならない特段の事情をみますので、説明ができない場合はおすすめできません。
信託の利用
一括で支払われた養育費が子どものために確実に使われることを担保する方法としては、養育信託の活用があります。これは信託銀行等が一括払いの養育費を預かり、運用しながら子供には定期的に信託時に決めた金額を支払って行くものです。通常の養育費同様、贈与税が非課税扱いになる場合もあります。ただし、取扱い対象や条件が銀行によって異なることや、信託銀行等に相応の手数料を支払わなければならないことに注意が必要です。