離婚とこどもの心理に与える影響

 こどもの親権では、フランスでもDVや精神病がある場合は単独親権になるとされている。我が国においても、子の監護と密接に関連する点や実務において検討を重ねることになるが、重要なのは子の監護については、複数の情報源を用いることにより評価の信用性を高めることが重要である。したがって、少ない情報源から断定的判断を提供すれば、親権紛争に対する納得を得られるものとはいえない。なお、本稿はアメリカ実務とフランス実務の臨床に基づくものが多く、我が国の裁判所に取り入れられることが望ましいが、日本における実情を示すものではない。

 

1 親の統計学的統計

 あくまでアメリカにおける統計では初婚の2割が5年以内に別居ないし離婚し、3割から5割が10年以内に離婚するということになる。アメリカにしても、フランスにしても、ペアリングという文化があり、一人のパートナーと一生を共にするというケースは半数程度にとどまっているといえる。

 特に、フランスでは、PACSという同棲を保護するための立法政策があり、そもそも別居ないし離婚も統計的に捕捉できていないところが多い。

 次に、いわゆる親権は、日本でいえば、財産管理権と監護権に分けられるが、こどもを実際に育てる監護権は、日本もアメリカも8割が、女性が得ている。日本と異なるのは約3割が友好的離婚をしており、監護に関しても、交互的監護をしているが、反対にいえば、7割は非友好的離婚ということも統計的には表れているといえよう。こうした父母の離婚の場合、裁判所の事実の調査を受けるという点は我が国とも異なるところがない。

 

2 文化と民族性の影響

 一般的に監護権者の適格性は、適格性のある2人の親を、子の気質と素行にそれぞれの親がどのように対応するかという観点から比較する。日本の若い女性裁判官や病理的裁判官がしばしば根拠に求める「何が虐待に該当する」とか、「それ自体に価値的な負荷」がかかったなどという児童保護上の解釈を取り込むのは誤りである。それは、ある行為が直ちに虐待や価値的負荷になるのは地域の特性や宗教的影響があるからである。

 

3 子に対する離婚の影響

 フランスでは、中学校の課題で「今夜、僕は夫婦と離婚した」などの離婚とこどもの心理描写の著作がしばしば課題図書であるように、離婚が一般的であるとともに、それに対する子の受け止め方の感受性を広めることが求められる。すなわち、離婚は、子に対する影響があることを受け止め、家族には多様性があることをフランスでは理解させる教育がむしろ正面から行われている。

 別居直後では、幼い子は感情的問題、年長の子は行動逸脱や学業に関する短期的低下、悲観、片親に対する忠誠葛藤と片親疎外、監護親としては、監護意欲が低下することが知られている。なお、一般的に男子の方が女子よりも行動と社会関係に問題を抱えやすいとされている。

 こどもの離婚に対する影響として挙げられるのは以下のようなものである。

  • 別居開始時の自分の部屋がなくなるなどのストレス
  • 離婚のストレスや共同監護がなくなったことによるケアの質の低下
  • 祖父母や友人の喪失
  • 親同士の紛争、忠誠葛藤、片親疎外
  • 転居の繰り返し
  • ステップファミリーに対する順応

以上のように、親が離婚していない子は経験したい痛みを経験することになる。これを解消するには、特に離婚後の父母間の低葛藤の維持(フレンドリーペアレントルール)、十分な経済的資源があること、学業や学問的関心が離婚により疎外されないこと、親族の支援を得ると、子の予後は良いものになる。

 

4 夫婦間の虐待と紛争

 夫婦間の紛争で「最も有害」とされているのは、DVである。たいていの監護権紛争に真偽のほどは定かではないドメスティック・アビューズ(夫婦間虐待)というものである。

 アメリカでもフランスでも、DVの場合は離婚後の共同親権が否定されるので、DVの主張がほぼ全件で出されているという印象を受ける。

 ここでいうドメスティック・アビューズというのは、強制的な支配、紛争に方向づけられた虐待、心理的攻撃なども含まれる。一般的に、諸外国では、ドメスティック・アビューズがあるとしても、紛争に方向づけられた虐待や心理的攻撃は男女を問わず、しばしば行われるものとして、深刻さの判断に重点を置いていることが多い。しかるに、我が国では、ドメスティック・アビューズをすべてDVとして、位置付けているが近時、名古屋高裁事務総長が部総括として出した判決のように、冤罪的なDVは評価を誤らせるものであり、最もアンフェアで「有害」なものといえよう。

 裁判所においても、ドメスティック・アビューズの主張が出されても、監護紛争で頻繁に主張される。しかし、問題はリスクの質的・量的な評価であり、あまり事実があるか否かは重要ではない。仮に存在するのであれば、子に対するリスクの評価を進むことになる。

5 児童虐待

 裁判所にとって、監護紛争にとって児童虐待の主張は評価が困難であり、日本ではたいていこれを軽視し、かつ、無視しがちである。アメリカでは監護権紛争の56%で児童虐待が主張されるが、離婚に関連しない場合は1%から2%程度と考えられている。もっとも、裁判所は2割程度を何らかの児童虐待と認めているが、性的虐待をともなう深刻な児童虐待事件は通常の離婚事件ではなく、日本では市長申立てなどで対処することが一般である。

6 親の精神障害

 フランスでは、共同親権を否定し、特に母親を監護者としない場合、親の精神障害が問題と指摘されることが多い。子の最善の利益は、親の精神的健康を考慮するものとされている。

  • 女性の精神疾患について監護に与える影響

一般的に女性が監護の8割を担っていることから、深刻な精神障害は監護権や親権を失うリスクがある。なぜなら、精神障害によって、家族サービスや仕事ができなくなるなど能力の低下が認められるからである。

  • 精神疾患が深刻であれば監護権を失いやすくなる

 そもそも、家庭を維持することはストレスが多いものであり、以前からある精神疾患が悪化することがある。一例を挙げると、気分障害がある場合は、片親になると、監護や子に対する応答性が失われるといわれている。親の精神疾患は、子の予後も左右するとされている。

7 親の物質濫用

 親のアルコールや薬物の使用や濫用は、子の監護評価において欧米で問題とされるのは常識視されている。これらは、主に母が子の監護権を失う理由となっていることや父と子の面会を制限する事由として散見されるところである。監護評価は、物質の使用や濫用が訴えられるが、これについて、養育や家族の機能に対する影響を評価することは法律家が行うべき問題である。

8 親の疎外と疎遠

 子の監護をめぐる紛争において、議論の的になっているのは、片親疎外である。深刻なものは、子が一方の親との交流に抵抗し拒絶をみせるものである。実態とは異なる言動で非難をするなどが典型的である。しかしながら、中程度の葛藤状態の場合は、こどもは、不平をいいつつ、面会交流や交互監護について受け入れ続けることも多い。訴訟が行われている場合、面会交流妨害の主張もよくなされる。この問題の評価と改善はともに困難であり議論の的にもなり、それだけに面会交流妨害が認められたケースなどは不相当な事例として執務上の参考になると思われる。

 疎外とは、子とそれぞれの父母との関係の連続性であり、一方に愛情を示し他方にも積極的な親密感を示す例、拒絶はしないものの葛藤を示す同調、拒絶を示すように至る疎外というレベルがあるのです。これらは多因子のものであり、複数の資質によって不信のレベルが複合的に決まることが示唆されています。これらを解消させるためには、父子の関係の要因が疎外因子となるのはどのようなものか、それを拡大させることを防止させるにはどうしたらよいか、どのような治療が家庭に効果的であるのか、よりよく理解し周知されることが期待されている。疎外が主張されている場合、好かれている親、拒否されている親、同調しているこども、疎外しているこどもなど父母子の親子不和への寄与度を考慮することが重要と考えられます。

9 養育計画と子の予後

 アメリカにしてもフランスにしても、裁判所は養育計画の関心を持っているが、実は具体的な時間の取り決めやスケジュールについての臨床的研究は乏しい。総合的な見方では父母間の葛藤のレベルに応じて交互監護、法的監護、面会交流といったレベルが臨床的にはこどもには良い結果を与えるとされており、裁判所の決定により両親が高葛藤の場合の交互監護が「子にとってあり得る心理的に最悪」であることがデータで示されていることも、監護親や非監護親は受け止める必要があるでしょう。行政がモデルを示している例では乳児と幼児は大部分、特に夜は母と過ごすモデルとなっている。しかしながら、最近では「主たる監護者」基準に疑問を呈し、こどもは年少であっても複数の愛着を形成でき、父母いずれもが愛情に満ちている限り、父母いずれとも定期的な交流を持つことが重要と解されている。今後、アタッチメントの見地から非監護親との愛着関係形成のため、どれだけ一緒にこどもが非監護親と夜を過ごすことが必要なのか、その必要性を段階を超えて量的分析に入ることが期待される。この点、母親に監護されている子は頻繁な引っ越しにさらされ、過度なストレスを抱えている例が多い。父母は離婚後も一定の距離を保ちつつも自動車で1時間以上の距離となると、心理的な愛着関係は減退していくと考えられている。

10 法律家の意見

 アメリカでは意見を形成するのに、概ね21時間をかけている。これが日本の調査官調査の信用性の低さと直結しているだろう。現在では、さまざまな情報源から情報を得ることが強く推奨されている。その理由は端的にひとりの評価者の自己報告の情報に頼るのは不十分であることが挙げられる。調査官調査の際、他人の家を借りて自分の家のようにして調査を欺く例があるのと同じく、「偽物の良さ=偽善さ」を強調している。加えて、子の心情の把握は、たいていこどもは父母いずれとも離れたくないと願っていることから、子の自然で理解可能な願いの価値をゆがめ矮小化させることになる。

 その例としては父子の交流場面観察、双方の家庭訪問、参考人からの事情聴取、他の情報源、特に医療機関や学校などの記録の点検、心理テストが挙げられる。日本の調査官調査は、母子優先の原則という限られた評価要件しかないため、調査は「結論ありき」になり、こどもが家庭訪問の結果、元気にしていたという「子の監護状況」の調査しか行われておらず、こうした一方的な事実調査は一方的な自己報告になることは明らかではなく、法律家ではない非法曹の家裁調査官にこのような調査をさせることの相当性も常に疑問視される普段の努力も必要である。

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