子の引渡し事件で引渡しが命じられた事例

別居中の夫婦の一方から、現にこどもを監護している他方に対する子の監護者の指定及び子の引渡しの請求は、子の監護に関する処分の一態様として扱われており、子の監護について必要な事項は子の最善の利益を考慮して決められます。そして、監護者の指定及び引渡しの判断基準は、本来ケースワーク的機能を果たしてからの判断が必要ですが、家裁は民事司法裁判所的解決で、比較衡量をしているとのことです。したがって、子の利益といっても「比較衡量の結果」であるということになります。しかし、アドホックバランシンぐでは困りますし、そこには一定の指針、他方、引渡しを命じられる親には家裁のケースワーク的機能が本来発揮されるべきように思われます。

アドホックを防ぐために、最近は、子の出生以来、主として子を監護養育してきた「主たる監護者」の要素が重視されています。しかし、これでは母子優先の原則と変わらないとの批判もあります。

もっとも、主たる監護者が別居する際にこどもを連れ出すのは自然なこと、と説明されています。すなわち、子の精神的安定を図り、その影響をできるだけ少なくするには、子との間の情緒的交流や精神的つながりを図り、その影響をできるだけ少なくするためには、子との間の情緒的交流や精神的つながりを有する「主たる監護者」による監護を継続するのが子の成長に重要であるという考え方を基本としています。そこで、主たる監護者を認定し、その監護能力や監護態勢等に問題がなければ、今後の監護は主たる監護者に委ねるものをベースラインとしています。

しかし、別居後の母の精神状態により、監護意欲が損なわれていること、監護補助者である相手方家族を含めた別居後の未成年者らの監護態勢の具体的な問題点、さらに相手方の監護下では、間近に小学校入学という重要な時期を迎えた長女の就学の見通しが立たないといった点を重視して、主たる監護者であった者以外の者である申立人を監護者として指定して、引渡しを命じたものである。

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