離婚調停を自分の住所地で行うのは難しい!

仙台高裁平成26年11月28日が、調停につき仙台家裁での自庁処理決定をしたところ、仙台家裁がこれを移送する決定をしたことから、仙台市在住の女性が即時抗告していたものです。

まず、前提のポイントを確認しておきたいと思います。

調停は、相手方住所地で行い、例外は、相手方が承諾をしたときだけ

というように考えてもらってよいと思います。

特に必要があるときは、自庁処理もしてもらえますが、あまり家事事件で特に必要がある場合というのは想定できません。

何より、家事事件手続法で、相手方は自分の管轄で調停を受ける権利があると解説されている点です。

理由は、調停の相手方が出頭しやすい場所でないとそもそも出頭しないと考えられることや話し合いのまとまりやすさを考えたものです。

今回は、自庁処理をしなかったケース、つまり相手方男性の引っ越し先であるさいたまでなく、仙台で調停をする決定をしなかったものにつき、大論文のような判決を出しています。

逆に言えば、専属管轄で、権利でもあると断言されている相手方の住所以外で調停をするというのは、こういう前向きな裁判例はあるものの、かなり難しいように思いますね。

裁判官の執筆にみられる自庁処理をしないことが違法とした裁判例がないのも、そもそも、自庁処理するかに裁量があるわけで、原審の裁量を超えて違法になるケースが余りにレアだからといえるからかもしれません。

ざっくりポイントを整理すると、自庁処理になった論拠としては、
・前件調停が係属中であり、DNA鑑定などから審理が仙台家裁で凍結状態にあること
・男性側が仙台で前調停を申立人となって申し立てていること
・今回は、認知・慰謝料調停で、実質男性が申し立てた前調停と中身がかぶっていること
が理由のようです。

通常、前調停が先行して係属して、後行調停が提起されるという状態自体があまり弁護士関与がある場合、考えられないので、病理現象的な裁判例といえるかもしれません。反対にいえば、こうした先行調停があるなどの特段の事情がない限り、移送されてしまう可能性がある反対の結論を強く示唆する裁判例のように思われます。

1 本件抗告の趣旨は,原決定の取消しを求めるというものであり,その理由は別紙1「即時抗告理由書」写しに記載のとおりである。これに対する相手方の意見は,別紙2「意見書」写しに記載のとおりである。
2 当裁判所は,基本事件は原裁判所で自庁処理されるべきものであり,原裁判所が,家事事件手続法245条1項,同法9条1項に基づき,職権により基本事件をさいたま家庭裁判所に移送したのは,原裁判所に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであって違法であるから,原決定は取消しを免れないものと判断する。その理由は,次のとおりである。
(1) 本件及び関連事件の記録によると,以下の事実を認めることができる。
ア 抗告人と相手方は,平成24年□□月ころから,性的関係を伴う男女の交際をしていた。当時,抗告人は肩書住所地に,相手方は仙台市内に居住していた。抗告人は,平成25年□月ころまでに妊娠に気づき,相手方との婚姻を希望するようになった。
イ 相手方は,平成25年□□月ころ,仙台市内の住居を引き払い,さいたま家庭裁判所の管轄内にある肩書住所地に転居した。
ウ 抗告人は,平成25年□□月,□□日,男児(以下「子」という。)を出産した。
エ 抗告人は,相手方に対し,子の認知及び出産費用の負担等を求めていたところ,相手方は,平成26年,抗告人を相手方として,仙台家庭裁判所に対し,男女関係解消調停事件の申立てを行った(同裁判所平成26年(家イ)第□□□号。以下「前件調停」という。)。
オ 平成26年□月□□日,仙台家庭裁判所において,前件調停の第1回期日が開かれ,同期日には当事者双方が出頭した。同期日において,相手方は,認知や出産費用の負担について協議するためには,子との親子関係を確認することが先決であるとして,DNA鑑定を行うよう希望し,抗告人もそれに応ずる意向を示した。
カ 抗告人は,平成26年□月□□日,原裁判所である仙台家庭裁判所に対し,子の法定代理人親権者母として,相手方を調停事件の相手方として,認知調停(以下「本件認知調停」という。)を申し立てるとともに,同日,同裁判所に対し,相手方に婚約不履行があるとして300万円の支払を求める慰謝料調停(以下「本件慰謝料調停」といい,本件認知調停と併せて「本件両調停」という。)を申し立てた。抗告人は,本件両調停の申立ての際,原裁判所に対し,当事者間には前件調停が既に係属していること,本件認知調停は,相手方が前件調停の期日において,認知調停の中でDNA鑑定を行いたいと希望したため,抗告人側でこれを申し立てたものであること,本件慰謝料調停と前件調停とは,協議されるべき事実関係がほぼ重なること,子は当時生後7か月であり,抗告人がさいたま家庭裁判所に出頭するのは身体的にも経済的にも負担であること等から,本件両調停を原裁判所で自庁処理するよう上申した。
キ 相手方は,原裁判所に対し,平成26年□月□日に予定された前件調停の期日に出頭できない旨を連絡し,その理由について,最近足の手術をして出頭が困難なためであると説明した。その際,相手方は,原裁判所に対し,前件調停及び本件両調停については,相手方も弁護士を選任して進める予定であること,本件両調停については,さいたま家庭裁判所で処理するよう希望すること,前件調停については,本件両調停が進行しないと話合いを進めるのは事実上困難であること等を述べた。
原裁判所は,同月ころ,相手方に対し,改めて意見を聴いたところ,相手方は,本件両調停を原裁判所で行うことに同意せず,さいたま家庭裁判所で調停が行われる場合にはこれに出席すると回答した。相手方は,その理由として,抗告人は代理人弁護士を選任しており,さいたま家庭裁判所への移動が容易であること,相手方は同年□月ころ,足の手術をしたばかりで長距離の移動が難しいことを挙げた。
ク 原裁判所は,平成26年□月□日,本件両調停をいずれもさいたま家庭裁判所に移送する旨の原決定をした。
(2) 家事事件手続法(以下「法」という。)245条1項は,家事調停事件は,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する旨を定めている。このように家事調停の原則的な管轄が,当事者間に合意で定める管轄裁判所がない限り,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所と定められたのは,家事調停の手続は,一般に申立人が相手方のもとに出向いてする方が,申立人と手続に関与させられる相手方の公平の理念に合致するとともに,話合いもまとまりやすいことを趣旨とするものと解される。本件両調停においては,相手方の現住所を管轄する家庭裁判所はさいたま家庭裁判所であり,当事者が合意で定める管轄裁判所はないから,本件両調停の管轄裁判所はさいたま家庭裁判所であり,原裁判所には管轄がないと認められる。
もっとも,同法9条1項は,家庭裁判所は,家事事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認める場合であっても,事件を処理するために「特に必要があると認めるとき」は,職権で,これらを自ら処理することができる旨を定めるところ(自庁処理),これは,上記の原則的な管轄の定めを前提としても,事案によっては,管轄権を有しない家庭裁判所で調停等を行う方が適切な場合があるため,このような場合に例外的に家庭裁判所が職権で当該事件を自ら処理することを可能にするものである。これらの規定によれば,法は,自庁処理をすべきかの判断については,原則的な管轄裁判所を相手方の住所地とした法の趣旨を踏まえつつ,当該事件の事案の内容,当該事件が管轄権のない裁判所に申し立てられた経緯等を総合的に考慮して行われる家庭裁判所の合理的な裁量に委ねていると解される。
そうすると,当該事件の事案の内容や当該事件が管轄権のない裁判所に申し立てられた経緯等によれば自庁処理をすべき特段の必要があることが明らかであるにもかかわらず,当該家事事件の申立てがあった裁判所がこれを管轄裁判所に移送した場合には,その移送の決定は,裁量の範囲を逸脱又はこれを濫用した違法なものとなるというべきである。
(3) そこで,上記の観点から,本件両調停について自庁処理を行わず,これをさいたま家庭裁判所に移送すべきものとした原裁判所の判断の適否を検討する。
前記認定事実によれば,抗告人と相手方は,仙台家庭裁判所の管轄区域内で性的関係を伴う男女の交際を行っていたから,本件両調停の前提となる基本的な事実関係は,もともと仙台家庭裁判所の管轄区域内で生じたものであったこと,さいたま家庭裁判所に管轄が生じたのは,その後の相手方の転居という事情によるものであったことが認められる。また,前記認定事実によれば,仙台家庭裁判所には,本件両調停の申立てに先立ち,相手方が申し立てた男女関係解消に関する前件調停が既に係属していたこと,前件調停については,仙台家庭裁判所において第1回調停期日が開かれて当事者双方が出頭したこと,その調停の席上で,相手方が,協議を進める前提として,まずDNA鑑定を行って抗告人との親子関係を確認したいと希望したこと,そこで,抗告人はこれに応ずることとし,認知調停の中でDNA鑑定を行うことを予定して本件両調停を申し立てたことが認められる。
これらの事情によれば,本件両調停は,そもそも仙台家庭裁判所の管轄区域内で生じた男女関係の問題に関し,相手方から仙台家庭裁判所に申し立てられた前件調停の話合いを実質的なものとするために,特に本件認知調停は相手方の意向を受けて申し立てられ,本件慰謝料調停はこれと同時に申し立てられたものと認められるから,事案の内容及び申立ての経緯等に照らし,前件調停と併せて仙台家庭裁判所で行うのが当事者間の公平に沿うものである。それにもかかわらず,本件両調停をさいたま家庭裁判所に移送すれば,前件調停と本件両調停が別々の裁判所で行われるか,前件調停が取り下げられるなどして,実質的にこれらが併せてさいたま家庭裁判所で行われることが容易に予想されるが,そのような結果は上記に指摘した点に照らすと,当事者間の公平を著しく害するものというべきである。
(4) 次に,話合いのまとまりやすさという観点から検討しても,子は生後1年を経過しない乳児であり,抗告人がさいたま家庭裁判所に出頭するには相当の困難を伴うことが容易に予想されるのに対し,相手方は,もともと自分から仙台家庭裁判所に前件調停を申し立て,実際に現住所から仙台家庭裁判所に一度出頭し,本件両調停の申立てという事情がなければ今後も仙台家庭裁判所に出頭することが予定されていたのであるから,本件両調停を仙台家庭裁判所で行うとしても,これによって相手方に新たな出頭の負担が生ずるものではない(これらの調停の基本的な事実関係がほぼ重なることに照らせば,本件両調停の期日は,前件調停の期日と同一機会に開かれることが予想される。)。
これに対し,相手方は,本年□月に左足関節脱臼骨折を生じ,手術を受けたため,長距離の移動が困難であると主張するが,相手方の提出する資料を検討しても,相手方が受傷や治療のために仙台家庭裁判所に出頭することが著しく困難な状況にあるとは認められない。また,相手方は,抗告人に代理人弁護士が選任されていることも指摘するが,調停期日において充実した話合いをするためには,代理人弁護士のみならず抗告人の出頭が望まれる場面が生じ得ると考えられるし,相手方も代理人弁護士を選任する予定であると述べているから(前記(1)キ),この点を重視することもできない。
そうすると,本件両調停は,さいたま家庭裁判所より原裁判所である仙台家庭裁判所で行う方が,当事者の出頭を確保しやすく,ひいては話合いがまとまりやすいと認められる。
(5) 以上によると,本件両調停は,事案の内容,調停申立ての経緯及び当事者の出頭の確保の観点に照らし,原裁判所で行う方が当事者間の公平に資する上に,話合いがまとまりやすいと認められるから,法245条1項の趣旨に照らし,これを原則的な管轄裁判所であるさいたま家庭裁判所で行う必要性に乏しく,むしろこれを原裁判所において自庁処理すべき特段の必要があることが明らかに認められる。それにもかかわらず,本件両調停をさいたま家庭裁判所に移送すべきものとした原決定は,自庁処理をすべきかの判断が家庭裁判所の合理的な裁量に委ねられていることを前提としても,本件事情の下では,同判断の際に考慮すべき事情を十分考慮せず,その結果,当事者間の公平を著しく欠くなど法の趣旨に悖る結果を生ずるものであるから,原裁判所に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものというべきである。
3 よって,原決定を取り消すこととし,主文のとおり決定する。

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