面会交流支援の実情

面会交流支援の実情と外延

 私の指導教官であった吉田容子先生が、「面会交流支援の実情と限界」という論文を上梓された。もっとも、吉田弁護士との論考を通じて、弁護士サイドが感じている面会交流の実情を彼女の論も借りながら、眺めていくことにしたい。なお、本件は中間的な事象を対象にしており、極端な配偶者暴力事案は全く対象にしていない。

面会交流支援の実情

 

 面会交流について、裁判所は特段の事情のない限り原則実施するべき、との立場をとっている。たしかに、世界的潮流の中で、単独親権になり実質的に両親のうち非監護親と疎遠になっていく立法政策を採用しているのは我が国くらいである。そうすると、本稿では極端なDVや児童虐待はベースにせず、健康的な事例を中心とするが、多くは父親という前提になると思うが、そういう限定がつけば原則実施説はやむを得ないことだろう。

 問題は、原則実施説に伴う「受渡し」をどうするのか、という問題だ。名古屋高裁金沢支部は、「受渡し」は短時間であり通常甘受すべき負担として、この問題に処方箋を示した。しかしながら、低葛藤の人はそれで良いだろうが、裁判所に持ち込まれるのは中間的な事案が多い。このような事例で、外務省が策定した支援機関のまとめでは、例えば東海では、三重には実施施設がないし、愛知にも名古屋市に2か所ある程度にとどまっている。つまり、原則実施説に伴い需要が高まっている受渡援助に対する供給が見合っていないというところに問題意識を置くのが相当だろう。

エフピックよりも行政の支援が必要

 

 まず、吉田論文と私見は意見を異にするのは、エフピック、厚生労働省の面会交流支援事業、あったかハウスなど各地での事業について、「応急的措置」と非難している。

 しかし、裁判所に持ち込まれるケースのほとんどは中間的ケースであり、最初は高葛藤でも次第にクールダウンしていくケースが心理学的に自然といえる。そして、当事者の懸念や不安が高いのが「導入期」であり、基本的に面会交流については「導入期支援」と位置付けるのが相当である。この限りで吉田論文は前提を欠いており失当である。

 そして、エフピックによる支援については、元家裁調査官、元家事調停委員が援助を行っているので、家裁において信用があり、困難な面会交流の解決策として利用することが多いのだが、最近は中間的な事例でも、「導入期」についてはエフピックを利用するケースもある。導入期特有の監護親の懸念の強さのためである。

 吉田論文も「応急的措置」がエフピックだ、という前提に立っているので、誤導のインタビューも採用できないというべきであろう。

問題は運営ができないこと

 福井の怪しげな面会交流支援機関から、「弁護士には個人的に寄付してもらう」と恐喝じみたことをいわれたことがあった。

 面会交流支援機関の問題点としては、日本では、「働き方改革」が進んでおらず、こどもが定期的なターンで平日に休みになるということがないこと、男性の有給休暇の取得率の低さや人材難などの問題が挙げられる。

 そうすると、面会交流支援は、土日に集中することになるが、土日のみでは、民間のみでは採算ベースに乗せていくことは実際上困難と思われる。そのため、定年退職をした調査官や引退した調停委員などで細々と運営されているという実態もある。

 個人的な意見としては、保育施設などに、このような機能を福祉機能として持たせることができないか、ということを考えている。イギリスでは、面会交流は、こどもの福祉に重要という認識になっており、別居親とこどもの親との交流は強調されている。それに沿うように国内365か所に民間機関こども交流センターが設置され、場所の提供、交流、間接交流、センター外への動向、引渡支援などをしている。もっとも、これは公務員がやらないという程度の意味合いにすぎず、実際は国費が投入されなければ実施されることは不可能な規模のものである。

日本で特筆されるのは、厚生労働省の面会交流支援事業

 厚生労働省の母子家庭等就業・自立支援事業の一つとして、面会交流支援事業がある。支援の条件は、15歳以下、児童扶養手当受給要件水準、面会交流支援員の配置、支援計画の作成、こどもの受け渡し、連絡調整、面会交流の場所のあっ旋である。

 私見と厚生労働省は前提が同じく導入期支援が難しい、あるいは、離婚直後の支援に困難がある、というものである。そのため、支援機関は1年、実子頻度は月1回とされている。

面会交流の実情と問題点

 面会交流を望む両親というのは、たいていはこどもが幼児や10歳前後であることが多く、その両親も、30代、40代がほとんどで、所得が50代、60代ほど余裕がない。また、男性は養育費の負担をしているほか、単身生活による生活の不効率化で生活費も上昇するのが通常である。

 このため、現在、面会交流支援機関の相場である月1万円から3万円の金額が高すぎると考える人は少なくないように思われる。そして、こうした場合、祖父母の支援を受ければ良いが、我が国では祖父母に面会交流権がないとされ、監護親が嫌がれば施設側も祖父母と会わせることができない。勢い祖父母からの経済的援助も期待できない、ということになるわけである。実質的には養育費のかさ上げに等しく、費用を負担することが多いだろう非監護親にとって著しく過酷といえる。

 そして、残念であるのは、離婚すると、30代、40代はともに忙しいということである。それこそ母子家庭の女性には神業的に仕事をして家事をこなしこどもの世話をして、パッパッパと物事を処理していくことが求められる。他方、男性も、30代、40代は仕事における実働部隊のエースであることが多くいそがしくしていることが多い。

 このため、土日のいずれかも出社していたり、疲弊して休養にあてたいという双方の願いもあり、予定変更も片方の親から頻繁に申し出られるというのが実情だと思う。そうした、厚生労働省が行っているような手厚いことは、1万円から3万円で、かつ、保育事故と同じリスクをはらむ面会交流支援機関では、なかなか実施が難しい。ゆえに事業的広がりが見られないということだ。

 国としても、共同親権論が、一定の理解を示されるようになっているが、面会交流の具体的実施については、市役所の施設の有効活用等で、実施自治体の数を増やしていってもらいたい。

結びに代えて―健康的な議論と発展的な実施を

 私見は、原則実施をするのであれば、行政機関との架橋や幼稚園、保育園といった社会福祉法人などとの連携、施設への補助金などへの立法政策が欠かせないと思われる。ただ、実施の審判が出ても「守らなくても良い」という口論レベルの論文が上梓され弁護士がみなそう考えているとみられて、なかなか健康的な面会交流支援センター、ある意味でのチャイルドセンターの設置が進まないだろう。

 吉田論文は、要するに、現在のエフピックなどの面会交流などが、応急的措置などと非難して、それが故、面会交流審判を蒸し返すことを民間機関に認め司法を否定するような内容になっている。そして、吉田論文は、審判で決まったことの蒸し返しを言うにすぎず、これは法律論でも議論でもなく、「口論」のレベルだといっておかなければならない。論旨は、民間の保育一時預かり所の延長なような団体に、裁判記録の詳細を求める。しかし、法律家の関与による討議は終了しており、裁判記録の詳細な検討は必要ない。また、こどもが、監護親に遠慮して監護親に迎合的な態度をとることは経験則になっており、安易に子の拒絶も認められないことに照らすと、円滑な実施を目的とするべき団体が「面会交流を妨害することを目的とするべき団体」になるのは本末転倒である。論旨は、導入期支援と応急的措置を区別しておらず応急的措置の意味がそもそも不明である、応急的措置で足りるとする場合も謙抑的な面会交流にとどめるように求め非監護親からの愛着形成を妨害する論拠がない、応急的措置で対応してはならないという判断であれば、エフピックや行政機関の介在が期待され、司法機関の審判を否定する論拠とはならない。また、こどもとのラポールは次第に形成されていくものであって、こどもが一時的に否定したらすべてシャットダウンしてしまうというのは基本的な児童心理の理解に欠けている、支援の内容の詳細な実施まで求めると実施する機関が広がらず政策論として破綻している。以上によると、吉田の提言はすべて失当であり、採用することはできない。

 吉田論文は「DV」の定義が、あまりに広く名古屋地裁で冤罪DVによる賠償命令が出たことも踏まえると、家庭裁判所が面会交流を実施すべきと判断した事案について、「口論」レベルで実施を妨げようとするのは、判決の内容の実施を妨害しようとするのと等価であり、強制執行妨害罪が刑法に規定されているが利益衡量によれば、吉田論文は、司法の否定や司法への社会的信頼を揺るがせにするものではないかという疑問も、ささやかながら提示しておきたい。吉田論文を述べて面会交流を拒否した場合、フランスでは、刑法に違反することも指摘せざるを得ない。加えていつまでも閉鎖空間での面会交流も継続性の観点や健康性の観点から非現実的である。レゴランドで遊ぶのも楽しいものです。

 

 

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