日弁連作成の新算定表はどういう点で裁判所算定表と違うの?
日本弁護士連合会が、新算定表を作り、1,5倍の金額になるということで話題になりました。理念的には、生活保持義務の理念を反映しておらず、養育費が低廉にすぎるので子の福祉の観点から作り直すという意味でした。
裁判所の算定表と何が違うの?
シュシュ:叔父さん、日弁連の算定表は、裁判所の算定表と何が違うの?
弁護士:①基礎控除において特別経費を控除しない、②公租公課は原則として実額で控除する、③職業費を稼働者のための支出に限定した、④基礎収入を6割~7割となる。今でも、標準的算定方式より約2割ないし3割増加するんだ。
シュシュ:ふーん、数字いじりをしているだけ、って感じだね。
弁護士:特に、特別経費を、総収入から控除しない、というのは全く理解されていません。数字合わせの典型ですね。配分後の生活費に含まれているなどといっていますが、それでは特別経費ではないでしょう(笑)住宅ローンの負担がある場合や医療費が高額な場合でも算定表では、「生活費に含まれる」と強弁されることになり、男性を貧乏にするための表ですね。
日弁連の新算定表は、特別経費を控除しないことが最大の特徴
シュシュ:特別経費を控除しないと、基礎収入が2割以上増加して採れる養育費が増えるもんね。
弁護士:従前の実務では、労研方式という昔ながらの養育費の算定方式から特別経費を控除してきたので、基本的に合理性はありません。
シュシュ:特別経費というのは、住居関係費、保険医療費、保険掛金だよね。これらは、伸縮性に乏しくすぐには変えられないので日弁連は馬鹿なんじゃないの?
弁護士:たしかに、個別具体的で弾力性・伸縮性に乏しいので、生活様式を相当変更しなければその額を変えることなんかできないから不可能を強いるものだよね。思うに、消費生活は、住居など生活基盤を確保した上でなされるものであるから、生活基盤に必要な固定的な費用はこれを控除して基礎収入を算出のが合理的であり、この点で日弁連の新算定表は失当だね。
シュシュ:もともと離婚したところで、男性の側は、住居は再生産の拠点になるので、離婚と関わりなく必要になるのであって、これを特別経費として基礎収入とする経過を知らないのですかね。
養育費は子の福祉から操作する?
弁護士:新算定表は、子の利益から子の住居費を独立に認めていますが親と同居するのが通常ですから間違っていますね。
シュシュ:なんか、日弁連は、抽象的で個別的な事情を考慮しておらず、必要に応じて柔軟に、と自分でいっておきながら、特別事情も考慮しないし、独立の住居費はいらないこどもに住居費は認めたり、義務者に過酷でブーメランみたいで、民主党みたいな算定表だね。
弁護士:さっきもいったけど、離婚したからといって住居をすぐに変える人は少ないので、同額の住居費を前提とするのは不公平ですね。結局、調停で合意が成立することはできないでしょうから、審判事件が大量に増加することが予測され、しかも義務者の任意の履行も期待できず社会がパニックになってしまうくらいのものですね。現実的ではない夢見人ですね。
シュシュ:叔父さんの新算定表の評価は?まず、14歳までは?
弁護士:まず0歳から14歳までについては、変更する理由はないね。もっとも、日弁連の費用の教育費のうち公立中学校を適用したのは相当と思われます。良い点もあるということね。これは小学生でも習い事に行くことが一般化しているし、現実には中学と同じくらいの支出があるということです。また、病気の可能性もあるので、このため母親が就労を減らすこともならせば、合理的といえるので、子の指数に加えるのは実務的な合理性があると思うよ。
シュシュ:では15歳以降は?
弁護士:まず、公立高等学校教育費は、14年前の統計と比べると23万7066円減少しています。月額にして、約8000円の減少であり、指数に換算すれば約10パーセントである。
その理由は、高校が無料化されてしまい、この点はむしろ減額しても良いように思うね。これはこども手当的な政策的なものだから反対、という論者が多いですけど。
日弁連の算定表によって、裁判所の算定表は影響を受けるの??
シュシュ:日弁連の算定表は無意味だったのかなあ。
弁護士:そうですね。相対的基準で判断すべき養育費ではあるものの、絶対的にみると少ないということを印象付ける「政治活動」としての意味はあったのではないでしょうか。
シュシュ:はっきりいって、理想に偏していて現実的ではないね。そして実額主義を取り入れてしまったから、即時抗告まで誘発する複雑な計算になるよね。
算定表も、5パーセントから10パーセント加算するのが相当ではないか??
弁護士:結局、絶対的基準からは批判が強いけどそれは社会福祉の問題であって、相対的基準の養育費で解決するのは間違いということですね。もっともね、算定表も、ここ15年で、公租公課、職業費、特別経費は2パーセント減少しているんだ。だから、その割合は低いものなんだけど、分担額に引き直すと、5パーセントから10パーセントになるんだよね。その数値は、当事者にとっても無視できないので、総収入が200万円を超える事例では、算定表に、5パーセントから10パーセントを加算するのが相当です。