夫からのDVによる離婚の際、面会交流はどうなりますか。

 

  • 夫からのDVによる離婚の際、子の親権者は妻として定めるも面会交流に関しては定めなかった場合、元夫が面会交流を求めて元妻の自宅に押しかけることがあります。子へのDVはなくとも元妻は自身がDVを受けていた記憶から面会交流を拒否したい場合はどのような対応が取れるでしょうか。

面会交流について取り決めはあるのか?

  • 夫からのDVによる離婚の際、子の親権者は妻として定めるも面会交流に関しては定めなかった場合、元夫が面会交流を求めて元妻の自宅に押しかけることがあります。
  • 最近は早く離婚したいがために入れた抽象条項を理由に、民事訴訟で慰謝料を請求してくるDVの人も増えてきています。安易に面会交流は抽象条項でもいれないことが大事です。
  • 子へのDVはなくとも元妻は自身がDVを受けていた記憶から面会交流を拒否したい場合はどのような対応が取れるでしょうか。

 まず、面会交流について改めてきちんと取り決めるために、家庭裁判所に面会交流についての調停を申立てることが考えられます。DVがある場合は却下や制限がされることもありますので、調停でのルールを作ることがいきなり押し入ってくるということがないことの根拠となるでしょう。ただ、実際は養育費を現金で渡す際、こどもと公園で30分程度渡せればそれでよいという人もいるので、ニーズをつかんであげることも必要かと思います。

過去の審判例と現在の動向

  同居中に前夫から前妻に対するDVがあった場合、子らは、直接DVを受けていなくても、暴力を目撃することにより、心身に多大な影響を受け、離婚(別居)後も精神的に不安定な状態に陥っている例が多く見られます。

 児童虐待防止法によれば、「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者の身体に多雨する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)」を「児童に著しい心理的外傷を与える言動」として児童虐待にあたるとしています。

 したがって、前夫からの、子との面会交流を求める申立については、被害者の保護と子の福祉の観点の双方から慎重に判断すべきです。

 面会交流を却下した審判例(平成14年東京家裁)では、離婚の原因が前夫の暴力にあり、前妻が離婚後PTSD(心的外傷ストレス障害)と診断され心理的にも手当が必要な状況にあり、母子の生活を立て直すために努力していることなどから、裁判所は、現時点で面会交流を実現させることは前妻に大きな心理的負担を与え、その結果、母子3人の生活の安定を害し、子の福祉を著しく害するおそれが大きいとして、前夫からの面会交流の申立てを却下しました。

最近は、間接交流→エフピックという路線も

 しかし、面会交流については、従前は法律に特段の定めはありませんでしたが、近年、子の利益の観点から面会交流の必要性が認識されるようになり、平成23年の民法改正により、面会交流についても協議離婚の際に決めるべき事項の一つとして明記されました。そのため近年は、婚姻中に前夫から前妻に対するDVがあった場合でも、子への直接の暴力が無い限り、非監護親との面会交流を行うことが子の利益に適うものとされる傾向にあり、母親とは短時間でも離れることができない乳児でない限り、これを禁ずる審判を得るのは、以前より難しくなってきているように思われます。

面会交流の支援

 離婚に際し、子どもと非監護親との面会交流を行うことについては合意ができても、第三者の協力を得ない限り、実施すること自体が不可能であったり、円滑に実施することが難しいケースも多く見られます。特に同居中にDVがあったケースでは、被害者の安全のためにも前妻が前夫に会うことは避けさせなければなりません。面会交流に協力してもらえる第三者が周囲に見つかる場合は非常に限られていますので、面会交流の支援を行う第三者機関の存在が面会交流の実施に重要な役割を果たしています。

 面会交流の支援を行っている団体としては、公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC、エフピック)が最も規模が大きく扱っている件数も多いと思われます。

 また、東京には資力のない家庭を対象とした、一般財団法人東京都ひとり親家庭福祉協議会による「東京都ひとり親家庭支店センターはあと」等もあります。そのほかにも、NPO法人や民間の団体がありますが、いずれも規模が小さく、取扱い件数も限られているようです。名古屋には千種にエフピックがありますが、DVがない場合でも受渡のトラブルを防ぐために利用されるケースも多く混雑しています。

 FPICは、元家庭裁判所調査官を中心とした天下り団体で、「夫婦は別れても、親子は親子」とのスローガンを掲げ、離婚によって子供と別れて暮らす親が子供と会いたい時に、面会交流を円滑に実現するため、子どもの両親である元夫婦が協力できるように、有料で、カウンセリング、面会交流ルールの相互確認、面会交流の際の付き添いなどの援助サービスを提供しています。FPICは全国の一部主要都市で援助事業を行っています。

また、「東京都ひとり親家庭支援センターはあと」は、子と同居している親が東京都内に住所を有しており、父母双方の年収が児童扶養手当受給相当であり、面会交流を実施するという合意がなされている場合に利用することができます。面会交流の支援を受ける費用は無料とされています。しかし、父母双方の年収が考慮されますので、父親に資力があるにも関わらず、FPICの費用を負担しようとしない場合などには使えず、対象となる件数は限られています。名古屋市にはほかに、「あったかハウス」もありますので調べてください。 

DVの場合冒頭の事案ではどうなるか?

  • 冒頭の事案の場合

 離婚前に、前夫から前妻に対するDVがあったとしても、子に対する直接のDVが無い場合は前夫と子の面会交流を禁じる審判を得るのは困難でしょう。ただし、前夫が突然前妻の自宅に押しかけてきたりすることの無いよう面会交流についてきちんとした取り決めをし、その範囲内で面会交流を実現することは可能だと思われます。

 前妻と前夫間での話し合いによる取り決めが困難な場合、親権者である前妻から家庭裁判所に対して面会交流調停の申立てをして、面会交流に関する取り決めを求めることができます。

 その際、FPICなどの面会交流支援団体の利用を取り決めに含むなどすれば、直接前夫と会うことなく、面会交流を実施するよう取り決めることも可能です。

 調停では、前妻に対する前夫からのDVを主張し、そのような団体を利用することを条件として面会交流を実施する方向での協議が妥当です。なお、エフピックを利用する場合は調停調書などの債務名義が必要です。いきなりいっても利用できませんので注意してください。

 

  • 接近禁止命令の申立て

 なお、もし、前夫が前妻にふたたび暴力を振るう恐れがあったり、子を連れ去る危険性がある状況であれば、接近禁止命令を地方裁判所に申し立てることも考えられます。

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