こどもの親権者の母から父に面会交流は申し込めますか。

市橋なるみさんと江藤鈴世さんは,幼稚園のころからの幼馴染。大学生まで順調に交際を続けて,市橋なるみさんは保育士になりましたが、江藤鈴世さんは,マッキンゼーのコンサルタントとして激務をしていました。その際、海外赴任や海外での家族パーティーになるみさんは、なれることができず、ふたりには緋生くんと千騎くんというこどもがいましたが、ふたりが5歳、3歳までのときまでに離婚してしまいました。そして、なるみさんのお父さんと鈴世さんの葛藤が強かったところから,鈴世さんは,面会交流をあきらめてしまい、現在は、英国籍のココ・ウォレンサーさんと再婚し,現在は,充路(ジュール)くんというこどもと一緒に、東京・ロンドンをいったりきたりの生活をしています。

しかし、なるみさんは、自分の父親や祖母も亡くなったことや学生生活では常に鈴世と一緒にいたことから友人の輪も多くありませんでした。

なるみさんは、鈴世さんとの復縁までは望んでいませんが,せめて緋生くんと千騎くんに会ってほしいという希望をもっています。このように監護親から面会交流を申し込むことができるのでしょうか。

一般的には,裁判体の判断によるものと解されており,私も三重県で申し立てたことがあります。しかし、私見では、面会交流は、非親権者の権利という位置づけを与えるべきで確立されるものですので、法律家としては消極的な見解です。もっとも調停では,限界がありませんですから親子に関する限りは家事審判事項に限られません。ですから,家事審判事項にあたらない調停はできるのですが、家事審判事項にいう「子の監護に関する処分」に該当するかが問題となりそうです。

結論からいうと法的な問題はない、というのが東京高裁平成28年5月17日の前提のようです。

そのうえで、面会交流の重要性を指摘し、原審が、請求に申立てを却下したのはやりすぎ、あるいは、調査官インテークの調整方向性を誤ったものと指摘したものといえそうです。別居中の父母が感情的に激しく対立する状態にある場合の面会交流の調整は困難を極めますが、それでもできる限り実現可能性を模索し、当事者への働きかけに努めることが必要であるという点で、本件決定は、面会交流を父母間の感情の問題と整理し、葛藤が激しければ早々に却下方向のインテーク意見と調整を始める家裁に警鐘をならすものといえそうです。原審は直ちに申立を却下しました。しかし、東京高裁が原審を覆しました。

つまり、監護親からの申し立てで、非監護親が面会交流に消極的でも家裁の裁判官はしっかり働け!と怒鳴られたのと一緒ですね。

つまり、男性の側は常にこどもと会いたがるわけではなく、うんざりして「もう会わなくてもいい」となる場合もあるわけです。女性からすればそれはときに望ましい結論になるのですが、東京高裁は、面会交流が、未成年者の健全な成長と発達にとって非常に重要なものであり、本件事案のように、非監護親が面会交流に消極的な姿勢を示している場合であっても、監護親から面会交流を求めるときには、その実現に向けて調整を図る必要があるということはいうまでもないとされた点で、着目すべき子の最善の福祉から判断した事例として参考になるものと思われます。

第2 当裁判所の判断
1 一件記録によれば,次の事実が認められる。
(1) 抗告人と相手方は,平成24年□月□□日に婚姻をし,平成26年□□月□日に未成年者が生まれたが,平成27年□月□□日頃,相手方が家を出て,現在まで別居状態にあり,現在,抗告人が,その実母と同居して,未成年者を監護している。なお,抗告人と相手方は,それぞれ地方公務員として稼働している。
(2) 相手方は,抗告人からの連絡に一切応答しようとせず,抗告人に対して,その実際の住所を明らかにしていない。
(3) 抗告人は,平成27年□□月□□日,水戸家庭裁判所下妻支部に本件申立てをし,平成28年□月□□日,第1回調停期日が開かれたが,相手方が出頭せず,抗告人の言い分のみが聴取され,同年□月□□日に開催された第2回調停期日にも相手方が出頭しなかったため,調停の成立の見込みがないとして調停の手続が終了し,審判に移行した後,同年□月□□日,原審判がされた。なお,抗告人は,本件申立てに先行して,水戸家庭裁判所下妻支部に婚姻費用分担の申立て(平成27年(家)第□□□号)をしている。
(4) 抗告人は,上記第1回調停期日において,相手方と未成年者との面会交流の条件として,①少なくとも2か月に1回の割合で面会交流して欲しい,②未成年者の年齢等を踏まえて,面会交流時における抗告人の立会いを希望するが,第三者機関を利用する場合には,立会いを条件としなくとも良い,③2か月に1回の割合での面会交流に応じられなければ,相手方が未成年者の通う保育園の行事に参加して,未成年者との交流を図って欲しい旨の希望を述べた。
(5) 相手方は,上記第1回調停期日前,水戸家庭裁判所下妻支部から進行に関する照会を受けた際,調停に出席するつもりはない旨を回答して,同期日を欠席した。さらに,同期日の後,家庭裁判所調査官の書面による意向照会に対し,抗告人が円満に離婚に応ずることが面会交流の条件であるとした上,円満に解決を望むならば,第三者機関を利用した面会交流の実施も検討できるとし,保育園と連絡を取ったが,未成年者に会わせることは難しいと伝えられた旨を回答した。
2 未成年者と非監護親との面会交流が,未成年者の健全な成長と発達にとって非常に重要であることはいうまでもなく,未成年者は,別居当時には生後10か月で,現在1歳7か月になったばかりの乳児期にあって,母親である抗告人の身上監護を受けているとはいえ,できるだけ速やかに父親である相手方との定期的な面会交流の実施が望まれるところである。抗告人と相手方との間には,離婚をめぐって厳しい対立関係にある様子がうかがわれ,相手方において,未成年者との面会交流の実施につき,抗告人が離婚交渉に応ずることを条件とするようであるが,そもそも面会交流は,上記のとおり未成年者の健全な成長と発達にとって非常に重要であり,その未成年者の利益を最も優先して考慮して実施すべきものであるから,監護親及び非監護親は,その実施に向けて互いに協力すべきものであって,本件においては,監護親である抗告人が面会交流の実施を強く望んでいることは上記のとおりであり,一件記録によれば,非監護親である相手方も未成年者との面会交流自体には必ずしも否定的な姿勢ではなく,第三者機関を利用した方法による実現の可能性も考えられるところである。そうすると,なお,当事者に対する意向調査等を通じて,面会交流の趣旨の理解とその実施への協力が得られるように働き掛けを行うなど,面会交流の実施に向けての合意形成を目指して両当事者間の調整を試み,これらの調査や調整の結果を踏まえた上で,最終的に面会交流の実施の当否やその条件等を判断する必要があるというべきである。
したがって,本件については,原審において,更に審理をする必要があると認められるので,原審に差し戻した上,改めて面会交流の実施に向けた調整等をし,その結果を踏まえて判断することが相当であるといわなければならない。
3 以上によれば,本件申立てを却下した原審判は相当ではないから,これを取り消した上,本件を水戸家庭裁判所下妻支部に差し戻すこととして,主文のとおり決定する。

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