正相続法は内縁の配偶者に適用される?~配偶者居住権、配偶者間贈与の持ち戻し免除推定、遺言書作成方法について~

 

改正相続法は内縁の配偶者に適用される?~配偶者居住権、配偶者間贈与の持ち戻し免除推定、遺言書作成方法について~

 近年、相続法に関する大改正があり「配偶者」に関しても取扱いが大きく変更されました。

  • 配偶者居住権
  • 配偶者へ家を贈与したときの特例

子会はは改正相続法と内縁の配偶者の関係、内縁関係のご夫婦が行っておくべき相続対策方法を名古屋の弁護士が解説します。

 

1.改正相続法で新設された配偶者のための保護規定

今回の相続法改正により、配偶者を保護するために以下の2つの規定が制定されました。

1-1.配偶者居住権

生前から被相続人と同居している配偶者がいる場合、配偶者は遺産分割時に「配偶者居住権」という権利を取得できます。配偶者が配偶者居住権を取得する場合、子どもなどの他の相続人が家の「所有権」を取得します。

このように配偶者居住権と所有権を分けると、配偶者は所有者にならなくても家に住み続けられます。また配偶者居住権の評価額は完全な所有権より小さくなるので、配偶者は残りの法定相続分により預貯金などの他の遺産も相続しやすくなり、生活資金に使えます。

 

また「配偶者短期居住権」も新設されました。これは相続開始後「6か月間」または「遺産分割が成立するまでの間」の長い方の期間、配偶者が家に住み続けられる権利です。

被相続人が亡くなったからといって配偶者がすぐに家から退去を求められず、権利が守られます。

 

1-2.配偶者へ家を贈与したときの特例

改正法により、20年以上連れ添った夫婦の場合、家を生前贈与しても原則として「特別受益の持ち戻し計算」をしないことになりました。特別受益の持ち戻し計算とは、特別受益を受けた相続人がいるときに受益した相続人(受益者)の相続分を減らす計算方法です。

 

これまでは配偶者が家の生前贈与を受けた場合、死後に遺産分割協議をするときに「特別受益の持ち戻し計算」が行われて配偶者の取得分が減らされる可能性がありました。今後は婚姻期間が20年以上になっている場合、家の贈与を受けても遺産相続分を減らされず、配偶者の権利が強化されます。

なお被相続人があえて「特別受益の持ち戻し計算をすべき」と意思表示した場合には、配偶者への家の贈与にも特別受益持ち戻し計算が適用されます。

 

2.内縁の配偶者や同性婚へは適用されない

上記の配偶者居住権や配偶者短期居住権、配偶者へ家を贈与したときの特例は、「法律婚の配偶者」のみを対象にしています。内縁の配偶者や同性婚の配偶者には適用されません。

内縁の配偶者が残された場合、遺産相続権はなく配偶者居住権も取得できません。配偶者短期居住権を主張して家に住み続けるのも不可能です。

 

ただし内縁の配偶者に無償で家に住み続けるための「使用貸借権」を認める裁判例は存在するので(大阪高裁平成221021日)、子どもなどの相続人が明け渡しを請求しても当然には認められません。

 

3.特別寄与料も認められない

改正法では、相続人以外の親族に「特別寄与料」を認めています。特別寄与料とは、相続人でない一定範囲の親族が被相続人を献身的に介護した場合、寄与に応じて受け取れる金銭です。たとえば長男の嫁や孫などの親族が被相続人を看護した場合に特別寄与料が認められます。内縁の配偶者や同性婚の配偶者が介護した場合にも、子どもなどの相続人に特別寄与料を請求できるのでしょうか?

 

実は、内縁の配偶者や同性婚の配偶者には特別寄与料も認められません。

特別寄与料が認められるのは「6親等以内の血族と3親等以内の姻族」に限定されており、内縁や同性婚の配偶者はそもそも「血族」や「姻族」にならないためです。

 

内縁の配偶者は、ほとんど改正相続法による恩恵を受けられないといえるでしょう。

 

4.遺言書を作成しておく必要がある

配偶者には遺産相続権も配偶者居住権も認められないので、死後に内縁の配偶者を保護するには「遺言書」の作成が必須です。

遺言書により、居住用の不動産や生活に必要な預貯金、2人で築いた株式などの財産を内縁の配偶者へ「遺贈」しましょう。すべての遺産を内縁の配偶者へ遺贈することも可能です。

 

5.自筆証書遺言についての変更

遺言書についても、改正法によって要式や保管方法に変更が行われました。

5-1.自筆証書遺言の要式

自筆証書遺言とは、遺言者が全文自筆で書かなければならない遺言書です。これまでは「遺産目録」の部分もすべて手書きする必要がありました。遺産目録とは、遺産の内訳表のことです。

ただ目録まですべて自書するのは非常に面倒なので法改正が行われ「遺産目録についてのみ、パソコンやコピーの添付などで対応してもかまわない」とされました。

今後は遺産目録について、エクセルで作成したり預貯金通帳や不動産全部事項証明書のコピーを添付したりしてもかまいません。ただしエクセルで作成した表や預貯金通帳等のコピーには「遺言者の署名押印」が必要です。署名押印しないで添付すると無効になるので注意してください。

 

また遺産目録以外の部分は「すべて自書」しなければなりません。本文までパソコンで作成したり他人に代書してもらったりすると、遺言書全体が無効になってしまいます。

 

遺言書作成の際、きちんと対応できているか不安があれば弁護士までご相談ください。

 

5-2.自筆証書遺言の保管方法

改正法により、自筆証書遺言の「保管方法」も変更されました。

これまで、自筆証書遺言は遺言者が自分で保管するか、弁護士などの専門家に預けるしかありませんでした。しかし自分で保管すると紛失したり、子どもなどの同居者に破棄、隠匿されたりするリスクがあります。

そこで改正法により「自筆証書遺言を法務局に預ける」制度が新設されました。法務局が保管すれば紛失や破棄隠匿の危険もありません。

これから内縁の配偶者のために自筆証書遺言を書かれるなら、法務局に預かってもらうと良いでしょう。

 

なお従来通り公正証書遺言を作成する方法もあります。公正証書遺言なら公証役場で原本を保管してもらえますし、無効になるリスクも低く死亡後の検認も不要です。安全性を重視するならぜひ、検討してみてください。

 

6.遺留分侵害額請求に注意

「内縁の配偶者へすべての遺産を相続させる」内容の遺言を作成すると、前妻の子どもなどの他の相続人が内縁の配偶者へ「遺留分侵害額請求」をする可能性があります。遺留分侵害額請求とは、相続人に認められる「遺留分」に相当するお金を遺留分侵害者へ請求することです。

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の遺産取得分です。遺留分を侵害された相続人は、侵害者へ「金銭的な補償」を要求できます。それが遺留分侵害額請求です。

 

子どもには遺留分が認められるので、死後に子どもが内縁の配偶者へ遺留分侵害額請求を行い、大きなトラブルになるリスクがあります。

遺言書を作成するときには、内縁の配偶者以外の相続人の遺留分にも配慮すべきといえるでしょう。

 

内縁の配偶者を保護するために遺言書を作成するとき「どの方式の遺言書にするか、なるべく遺留分トラブルを起こさないためにどうすべきか」慎重に検討しなければなりません。

お困りの際には弁護士がアドバイスいたしますので、名古屋で内縁関係の夫や妻のある方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。

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