行方不明者と離婚するには?

行方不明者と離婚するには

 

個人的な意見を述べると、私が裁判官であれば、特に理由がないのに行方不明になった場合は、婚姻を継続し難い重大な事由に該当すると考えてよいと思っています。つまり、単身赴任、介護、会社の都合など合理的な理由がないのに、消息を絶つというのは普通の夫婦ではあり得ないことでしょう。もちろんDVなどの暴力があれば別ですが、基本的に事件に巻き込まれたわけではないのに行方不明という場合に、夫婦の信頼関係が続く例はほとんどありません。そして、我が国のような警察国家の場合、警察に居場所をさとられずに生活をするのは困難です。警察は、携帯会社やTポイントカードの利用歴からすぐに場所を割り出せますし、免許証の更新の際に事情を聴くことも可能です。そのような場合、たいていは不倫をしているという事情が出されるため、警察も事情は話せないが、旦那は心配ないとだけ伝達してくることもあります。

したがって、教科書通りの対応で良いのか、そうでないのかの見極めも必要でしょう。 

  • 夫が長年行方不明になっている
  • 夫が家出してどこに行ったかわからない
  • 夫が精神を病んで行方不明になってしまった

 

 

配偶者が行方不明になって長年が経過したら離婚できる可能性あります。

離婚トラブルでお悩みの場合、名古屋ヒラソル法律事務所の弁護士がサポートいたします。

 

1.相手が行方不明の場合、法定離婚原因が認められる?

夫や妻が行方不明になったら離婚できるのでしょうか?

法律は裁判によって離婚できる要件を5種類、定めています。その事情を「法定離婚原因」といいます。

民法の定める法定離婚原因は、以下の5種類です。

  • 不貞
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復しがたい精神病
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

夫や妻が行方不明になって3年以上が経過しているなら、③の3年以上の生死不明に該当して離婚が認められる可能性があります。

 

23年以上の生死不明が認められる要件

3年以上の生死不明と言えるためには、相手が家からいなくなって「生きているか死んでいるかわからない状態」が3年以上継続している必要があります。

相手から手紙やお土産などがときどき届いていたり送金があったりして「行方不明だがおそらく生きている」状態では要件を満たしません。しかし、若い夫婦の場合はこどもがおり住民票が移されていると、課税証明書がとれず保育園に入るのに相当な苦労を要するなど、教科書では語れない苦労もあり実際、夫婦共同生活の平和の維持は相当困難でしょう。愛知県瀬戸市では、行方不明者の課税証明書が提出できないと、最大の保育料を要求するので、保育料を支払うために働くということになり驚いたことがあります。非常識にもほどがありますね。結局、裁判所を通じて課税証明書を入手しましたが、もうそういう時点で、婚姻関係は破綻しているといえるでしょう。

たとえば事故に巻き込まれたり出先で災害に遭ったりして、その後連絡がとれていないケースなどではこの要件を満たしやすくなります。

もちろん通常の家出事案でも生死不明であれば離婚可能です。もっとも、婚姻期間が短い場合、突然悪意の遺棄で出て行った場合は3年の経過を待たずしても婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、離婚が認められた例を扱ったことがあります。 

33年以上の生死不明の立証

夫や妻が3年以上生死不明であることを証明するには、出ていく直前の夫や妻とのやり取りを示す書面やメール、出ていった後警察に捜索願を出した資料、家出前後から現在に至るまでの経緯をまとめた陳述書、証言(供述)などが証拠となります。具体的には捜索願いと受理番号になるでしょう。

事故や災害に巻き込まれた場合には、その事故や災害に関する資料も必要です。ただ、事故や災害などは、失踪宣告の利用可能性もあり、法的な立論は分かれます。家族法に詳しい弁護士にご相談ください。

 

43年以上生死不明でなくても離婚できるケース

法定離婚事由には5つあり、そのうち1つでも満たせば訴訟で離婚が認められます。そこで3年以上の生死不明とは別の事情に該当するケースでも離婚可能です。

たとえば、以下のような場合が考えられます。

4-1.夫や妻が行方不明になる前に不倫していた

配偶者が家出前から別の女性や男性と不倫関係にあり肉体関係ももっていることを証明できるなら「不貞」に該当するので離婚を認めてもらえます。ただし肉体関係をともなう付き合いがあったことを裁判で立証する必要があります。もっとも、公示送達による裁判になるので、家裁での訴訟は、比較的証明レベルは低い形で不貞が認められる可能性もあるのではないでしょうか。

4-2.夫から生活費をもらっていなかった

 夫が家にいた頃、生活費を渡してもらえていなかったなら「悪意の遺棄」として離婚が認められる可能性があります。また今回の家出が相手の勝手な都合によるケースでも、やはり「悪意の遺棄」にする場合があります。

 行方不明を理由に離婚する場合、一度家族法に詳しい弁護士に相談をすることをおすすめします。というのも行方不明になるのは、不倫をしていて、不倫慰謝料の証拠が散逸してから財産分与審判を起こしてくる例もあるからです。特に、別居前などによりよく財産調査などをされているケースでは、不貞の証拠集めや失踪宣告(7年)の利用の方が望ましい可能性もあります。

 以前、不倫妻が不倫をして駆け落ちをして、行方不明と不貞を理由に公示送達で離婚したものの、財産分与の除斥が過ぎる2年の直前にリターンマッチ訴訟が起こされたケースがありました。この場合、前に離婚訴訟で不貞が認定されていても欠席判決であるため、それほど大きな証拠にはならないのではないかと考えられます。このような場合は、妻に対して、不倫を理由とした地裁での訴えを起こしておくなどのリスクヘッジが大事です。法律に行方不明が離婚事由といっても、実際は不倫で身を隠しているケースも多いのです。 

4-3.行方不明前、夫からDVを受けていた

夫が家にいた頃、暴力を振るわれていたDV事案でも暴力の事実を証明できれば裁判で離婚を認めてもらえます。

4-4.夫からひどいモラハラを受け、すでに夫婦関係が破綻していた

夫が家にいた頃、モラハラを受けて既に夫婦関係が壊れていた場合には⑤の婚姻関係を継続し難い重大な事由が認められて離婚できます。

 

5.失踪宣告との比較

5-1.失踪宣告とは

配偶者が行方不明のまま長年が経過すると、離婚だけではなく失踪宣告も可能となります。

失踪宣告とは、死亡した可能性が極めて高いケースや長年行方不明になっているケースにおいて死亡扱いにする制度です。

死亡した可能性が高いのにいつまでも生きている扱いにしておくと、残された家族や関係者に不都合が及ぶことから失踪宣告が認められます。

 

失踪宣告には2種類があります。

1つは戦争や海難事故、大災害などに巻き込まれて死亡した可能性が高い場合です。その場合、事件や事故、災害などから1年が経過した時点で失踪宣告が認められます。

もう1つは通常の行方不明です。その場合、行方不明になってから7年が経過すると失踪宣告が認められます。

5-2.失踪宣告と離婚の違い

失踪宣告と離婚との違いは、失踪宣告になると「死亡」扱いになることです。残された妻は未亡人となり、夫から「遺産相続」します。子どもがいたら子どもと「遺産分割協議」をして遺産分けをする必要があります。子どもがいなかったら夫の親が共同相続人ですので親と協議して遺産を分けねばなりません。

一方離婚の場合には、遺産相続ではなく財産分与によって財産を受け取ります。

 

また失踪宣告すると夫は死亡した扱いになるので、要件を満たせば遺族年金を受けとることが可能です。

 

5-3.財産分与か相続か

配偶者がいなくなって7年以上が経過すると、離婚か失踪宣告かを選ぶことが可能となります。

このとき、どちらが得になるのか慎重に検討すべきです。

離婚の場合、財産分与によって夫の財産を半分もらえます。ただし財産分与の対象になるのは「婚姻後に形成した財産」に限られます。また夫が実家から相続した遺産などの特有財産は控除されます。ただし財産分与の場合、借金の分与はないので夫の借金を背負わされることは考えなくても大丈夫です。

 

一方遺産相続の場合、子どもと相続するなら妻が2分の1、子どもが2分の1相続できるので合計ですべての遺産をもらえます。親と相続するなら妻が3分の2、親が3分の1なので財産分与割合(2分の1)よりも大きくなります。親もいなくて兄弟姉妹と相続する場合、妻が4分の3、兄弟姉妹は4分の1です。ただし遺産相続では「負債」も相続対象となるので、夫が借金している場合には妻が引き継がなければなりません。

遺産相続をすると、遺族年金をもらえるので、そのことも頭に入れて検討する必要があります。

 

5-4.子どもへの影響

離婚した場合も失踪宣告した場合にも、子どもの親権者はあなたとなります。

そして離婚すると子どもは夫から何も引き継ぎません。将来夫が死亡したときに遺産を相続します。

一方失踪宣告すると、あなたとともに夫の遺産を2分の1ずつ分け合うことができます。

 

配偶者が行方不明で離婚を検討しているなら、まずは現状の整理から始めなければなりません。特に行方不明といっても事件に巻き込まれなければ、何らかの背景事情があるものです。

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